みぃねこの備忘録

いろいろなこと、主に趣味の備忘録として活用。アフィリエイトやってません。お気軽にリンクからどうぞ。

KZ ZNA レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、低価格U5000帯で発売された1BA+1DDモデルのKZ ZNAについてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonで取扱いがあります。

 

 

AliExpressでも取り扱いがあります。

 

ja.aliexpress.com

 

 

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1. KZ ZNAについて 

KZ ZNAは、久しぶりに同社の得意とする低価格帯の片側デュアルドライバの最新モデルとして、今回「ZNA」が1BA+1DDハイブリッドモデルとして昨年末に新発売されました。

KZといえば、これまでにも1BA+1DDハイブリッド構成のイヤホンを多数発売しておりますが、2020年中盤に発売したZSN pro Xを最後に同年後半にU2K帯で同社のEDXに始まった1DDモデルがトレンドとなり2021年前半の低価格中華イヤホン市場を席巻しました。そして同年後半から2022年前半にはBAに代わるドライバとしてESM(Electro Static Magneticの略。EST省電力タイプ)を採用したハイブリッドモデルのZEX等を登場させましたが、従来のBAとは異なりESMドライバの出力を抑えたチューニングが「鳴っていない」と揶揄され「実質1DD」という評判の憂き目を見ました。そこからはかつてのライバルTrnの躍進により、トップランナーの地位を追われる形となり、同社10周年記念モデルESXは1DDモデルでの発売と1BA+1DDハイブリッドで躍進した同社にとって不本意な形だったのではと推察します。そのESXも記念メダルを同梱する等、特別なモデルとして新型ダイナミックドライバを投入しましたが、販売的には成功とはいえず見る影もありませんでした。過去の栄光は今は昔と相成り2022年は新技術よりもZS10 pro Xの様に過去にヒットした製品の焼き直しに頼らざるを得ない同社にとって苦しい状況が続いたと云えます。

そんなKZが昨年の終わりに発売したのが、今回のZNAとなります。記念モデルESXで新投入した12mmDDを改良し、1BA+1DDハイブリッドモデルとしたそれが本当の意味でのKZの記念モデルとして期待が高まります。

 

では、KZ ZNAのスペックを詳しく見ていきます。先述の通り1BA+1DDハイブリッドモデルです。1BA+1DDハイブリッドモデルの超高音~高音域のバランスドアーマチュアドライバ(BA)にはKZのカスタマイズ30095を採用し超高音~高音域を担います。中音~低音域はKZの最新12mm径ダイナミックドライバ(DD)が担います。この振動膜には0.15mmの薄膜液晶ポリマー(LCP)ダイアフラムが採用されています。ESXでも12mm径DDにLCPダイヤフラムが採用されていますが、ESXでは厚さ5ミクロンの超薄膜ダイヤフラムとなりますので、ZNAとは異なります。更にZNAのダイナミックドライバには、従来のKZ同様に二重磁気コイルとデュアルキャビティと組み合わせることで、応答性の高い中音域と豊かな低音域を実現しています。また、BAの配置は従来のKZではステムノズル内部に配置していますが、ZNAではDD傍に並列に配置しています。

昨年はLCPダイヤフラム(=振動膜)採用のドライバがトレンドの一つでした。LCPダイヤフラムダイナミックドライバの特徴としてキレの良い解像感の高い音を表現できますが、反面音が軽く感じやすく、それを二重磁気とデュアルキャビティによってLCPダイヤフラムだけの低音では物足りないところを補います。

次にシェル本体は樹脂製、フェイスプレートは金属製です。KZでは上位のASシリーズなどで音導管の効果を狙い、内部キャビティ構造を用いていますが、ZNAでは低価格帯でよくある製品と同じく音導管は採用していません。

音質を突き詰めればシェルの材質による音への影響は無視できません。金属製シェルは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなります。響きの美しさは金属が一枚上手ですが、良い事だけではなく、反響が強くなることで不自然な残響音となる場合があります。一方樹脂製シェルでは高音域の響きが吸収されてしまう傾向があり、金属シェルと同じ音圧をにするために高音域の減衰を考慮しやや強めに鳴らす必要があります。加えて、音導管の有無も重要でこのバランスが難しいのは言うまでもありません。

そして最も大事なことですが、異なる複数のドライバを搭載するハイブリッドモデルでは各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングが重要です。低価格帯はもとより、中価格帯のモデルでも曲によってつながりにやや不自然さを感じる場合があります。この辺りが各社のチューニング技術の腕の見せどころと云えます。

最後に付属ケーブルです。最近のKZで採用されている並列フラットケーブルは銀メッキ無酸素銅(OFC)線を採用しています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしているところもあり、特に低価格帯では顕著です。KZ付属ケーブルもその類と云えますので、必要に応じてリケーブルを検討してください。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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KZ ZNAの納期としては現在(2023/2/4)国内amazonでも本国発送扱いです。prime扱いの当日発送、翌日配達ではありませんが、amazonの安心感があります。AliExpressでオーダーした場合では感染症の影響は回復傾向であり国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定してきました。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. KZ ZNA実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは白を基調としたいつものスリーブタイプ。スリーブ表面にはイヤホンイラストがプリントされています。

 

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スリーブを外すと内箱が。こちらも白を基調としています。

内箱の上側にイヤホンが収納されています。

 

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内箱の下側のカバーを開けると付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種1セット、他にはケーブルです。低価格U5,000帯として必要最低限の付属品となります。

 

次に本体を見ていきます。

 

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一見してKZと分かるデザインのフェイスプレートに対し、シェルの造形はオーソドックスなもの。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの低価格帯として十分に綺麗な仕上りでシェルの合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは黒色のみ。

 

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付属ケーブルは先述の通り最近のKZに付属する並列フラットケーブルタイプ。銀メッキ無酸素銅(OFC)線を採用しています。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はKZ-C 2ピン仕様のKZ極性(上側がプラス)です。この付属ケーブルは被膜に多少引っ掛かりがありますが、タッチノイズは抑えられております。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にやや堅さを感じますが比較的しなやかなさはありますので取り回しは悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からZES、ZNA、ZSN pro X

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ZNAとZSN pro X、ZESとの外観の比較として、サイズ感はほぼ同じ。比較的シェルに厚みがあります。造形はオーソドックスで過度の落ちた丸みのあるもの。

ステムノズルの長さと太さ、角度は三機種共にほぼ同じ。太さはZSN pro Xが太め、ZESが細め、ZNAがその中間です。長さは三機種共にやや長め、先ずかにZNAがその中でも長めです。

三機種共に耳への収まりが良く装着感は悪くありません。

イヤホンとケーブルを接続するコネクタには全てQDCタイプのKZ-C 2ピン仕様。リケーブルの際は2ピン仕様でも使用できますが、コネクタ部の強度を考慮すればKZ-Cタイプを選択した方が良さそうです。

シェルの材質は、全て樹脂と金属のハイブリッドに対し、ZSN pro XとZESはステムノズルも金属です。

重量は三機種ともにほぼ同じ。そこまで軽量とはいえませんが、特別重量を感じる事もありません。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくZNAは細めと云えますのでイヤピのサイズで調整しやすいと思います。

ステムノズル部には全てにメッシュフィルタがありZNA以外は金属フィルタを採用。ZNAは本来のフィルタタイプで音質への影響のあるタイプです。

三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通り三機種全てステムノズルが比較的太めなものの、実際の装着感は悪くなく、寧ろ付属イヤーピースの形状からは耳に密着させ装着する想定の様子。付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは従来のKZで付属していたものと異なり傘の内側にフィン?があり口径の大きなタイプ。一般的な形状の丸穴径、傘の裾野が弾丸タイプ。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。AliExpressでは見かけたことのあるイヤーピースです。

付属イヤピは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプに感じます。従来の溝有黒と付属白の中間の印象で、中高音がはっきりと聴こえつつ低音もしっかりと鳴る印象です。軸はやや短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳にやや浅めに栓をするように耳へ密着させることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸いこの付属イヤーピースで私は耳に浅めに栓をするようにしてフィッティングが上手いきましたのでそのまま使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回も付属のシリコンイヤピで上手くフィットできず他社製を使用しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. KZ ZNA音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはSedna EarFit MSサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「豊かな低音と高音に華やかさがある。やや中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き、低音は締まった印象です。

 

音場

普通の広さ。前後はやや奥行があり、左右もやや広さを感じられますが、立体感はそれ程感じませんし、空間の広さもそれ程感じません。

 

高音域

煌びやかで響きが良く上までの伸びやかさも感じられますが、特筆する程ではありません。一方、存在感は十分で華やかに鳴りますが、常に前に出るような出しゃばった感じはありません。刺さりや尖りは感じ難く、適度に抑えられた鳴り方。

 

中音域

高音よりも空間に響く華やかさがありますが、音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは抑えられていますが分離はそれなり。音の立ち上がりは良く解像感も良好ですが、多少描写の甘さを感じられます。ボーカルはクリアでやや近め。僅かにドライ気味ですが息遣いを感じられ瑞々しさを感じます。

 

低音域

量感は十分で響くような広がりもありますが、音階や強弱といった低音域の解像感の高い鳴り方。雰囲気の良い曲ではその片鱗を感じられます。ベースラインは追いやすい。重低音は沈み込みは深さはそれ程ではありませんが、十分な強さがある鳴り方です。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りのドンシャリ。高音域はしっかりと鳴り、低音域は強く鳴る音。

 

高音は煌びやかで響きも良く華やかに鳴る音は下品に主張をしませんが、やや前のめり気味。多少の誇張を感じますが、嫌味の無い印象ですが、超高音までの伸びはそれ程感じません。その分不快に感じる刺さりや尖りは抑えられています。低価格帯で採用しているBAの限界を感じる強めの音で強調されシャリ付く演出感のある不自然さはありますが、全体のバランスでみればやや誇張された程度の音です。この辺りはESMの方が質の高い音を表現できていた印象です。

中音は凹みを感じますが、ボーカルが近く楽器の音はボーカルの周りから少し離れやや後ろ辺りに位置し奥行は感じられますが、分離がそれ程よくないので重なりは抑えられてもご茶付く印象があります。それでも適度に統制された響きの良い華やかさは見通しが悪くないので不快には感じません。

ボーカルは近めの位置からクリアで聴きやすく、周りの音や高音や低音に埋もれる事はありませんがやや重なりは感じます。声色は僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ不自然さを感じ難く、瑞々しさを感じられます。その分女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しみたい場合には多少分の悪さを感じるかもしれません。

低音は量感は十分で響きや広がり、音階や強弱を描写します。それでもやや低音が強調された強めの音という印象は拭えず解像感の高さはやや良い程度。低音が強めのために雰囲気の良さを感じられ相性は良好ですし、ベースラインが邪魔しない程度に適度に前に出る様は音楽を聴いている心地良さがあります。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、十分な強さを感じられます。これまでの低価格帯の様なただ強く鳴らすだけの下品ではない音。低音の強い曲では少々支配的な低音域が高音や中音域を邪魔することもありますが、雰囲気は悪くないので音楽を聴く楽しさを感じられます。

 

箱出し一聴した時点で「やばい奴が返ってきた」と思いましたが、鳴らし込み、聴き込んでいくとあの頃のKZに戻ったというよりは、高音も低音も質感を疎かにせずに、自社の音を追求したのかな?と。確かに出音はドンシャリです。しかし、高音も五月蠅いだけの音からは一歩引いた弁えた感じがあり、シャンシャン、シャリシャリとは違います。低音にしてもドンドンする音ではなくド-ンとドゥォンの違いと云えば伝わるでしょうか。

これはZSN pro Xと比較した場合にZSN pro Xの様な高音と低音とは質感に違いがあってZNAの方が上の印象。特に低音は純粋な音のインパクトではZSN pro Xの方がありますが、中低音域の厚みや情感を感じるのはZNAです。高音はZSN pro Xの方がもっとレンジが広く中高音域にシャリ感がありますので、質感はZNAの方が上。勿論ZSN pro XはこれまでのKZの中で良バランスの機種として評価していましたので、これは私の嗜好がそう評価させるのかもしれません。

次にZESとの比較ではZESの高音は非常に質感の高い音です。統制の取れた鳴り方は小さい音でも搔き消されず、潰れずに耳に届けてくれます。それに対しZNAではZESの理想的な鳴り方とは言えずにやはり誇張した鳴り方であり、従来のKZサウンドがベースになります。中低音域はZESも12mmDDを採用しておりますが、ZNAのLCPダイヤフラムとは異なり、従来の二重磁気DDと同素材の大口径です。その違いもあるのでしょうかZESの低音域はやはり従来のKZサウンドの延長線上と云え強く鳴る音はZNAの低音の質感とは異なるものとなります。

個人的にはZSN pro XよりもZESの方が良い音だと思います。特に高音域の質感は低価格帯の中華BAでは真似できないと思います。そして12mmDDがZEXでは不足した低音域をカバーして完成度が上がったという印象を持っており、この時点でZSN pro Xを超えてきたなと評価しています。しかしながらZESの低音は所謂KZサウンドの低音とも云えますので高音の質感と中低音域の質感がアンマッチしていることをZNAが気が付かせてくれました。

 

※宜しければ過去記事もご参考ください

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まとめるとZNAのドンシャリは従来のKZサウンドドンシャリとは異なり高音域と低音域の質感を向上した一クラス上の1BA+1DDハイブリッドの音を目指した音と云えそうです。例えば先日レビューしたTRIPOWIN Rhombusの傾向に近いと云えます。とはいえあと一歩、いや後二歩ぐらいの差は感じられますし、Rhombusの壁は価格だけではないと言うのが正直なところです。それでもKZが低迷した2022年の最後にZNAを投入し、我々中華イヤホンファンに健在を示し、前を向いている姿を見せてくれたことは中華イヤホンファンの一人として嬉しく思いますし、これからも動向を追っていきたいと思いました。

ZNAは従来のKZのドンシャリサウンドをブラッシュアップした音質傾向は音楽を楽しく聴く事ができます。一方でモニター用途としては聴いていて楽しいドンシャリバランスと云えるため不向き。そして高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方にはZSN pro Xの方が評価が高くなるかもしれません。

 

高音   ZES ≧ ZNA ≧ ZSN pro X (質感の順。強さはZSN pro X)

中音   ZES ≧ ZNA ≧ ZSN pro X (質感の順。華やかさはZSN pro X)

低音   ZNA ≧ ZES ≧ ZSN pro X (質感の順。強さはZSN pro X)

ボーカル ZNA ≧ ZES ≧ ZSN pro X (質感の順)

 

 

4. KZ ZNAの総評

KZ ZNAは同社が従来のドンシャリサウンドをブラッシュアップしたサウンドであり、同社の良さを感じられながらも高音域と低音域の質感を向上させたモデルとして音楽を楽しく聴く事ができます。安価に良いイヤホンが欲しいというニーズに4,000円までという予算で選択する場合に国内メーカーとの競合に加えて欲しいモデルと云えそうです。

 

最後に、今回は低価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年2月4日)は国内amazonやAliExpress等で発売されておりますが、何れも本国発送と昨今の円安のため、保証の観点からは国内amazonでの購入がお勧めです。AliExpressでも本国発送のため、納期は同程度掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

ZNA

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5使用
高音★★★★ 
中音★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★☆
分離★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

ZES

以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

ZSN pro X

以下、付属ケーブル、付属溝無黒イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★☆
分離★★★
お勧め度★★★★★ (演奏重視の方に)

※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンのレビューとなりました。結構久しぶりになりますね。最近は少し価格帯が上の1DDモデルや多ドラハイブリッドモデルに触れる機会が多かったのですが、特にあのKZの新商品ということで楽しく書く事ができました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも楽しみですが、今後も変わらず低価格?を中心に、手ごろな価格帯の中華イヤホンのレビューをしていきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Joyodio SHINE(光耀) レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、中価格A10000帯で発売された2BA+1DDモデルのJoyodio SHINE(光耀)についてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのLinsoul Audio(@Luke32344614)で取り扱いがあります。

 

 

AliExpressでも取扱があります。

 

ja.aliexpress.com

 

Linsoul Audioの直販サイトはコチラ

JOYODIO SHINEwww.linsoul.com

 

 

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1. Joyodio SHINEについて 

Joyodioは中国のオーディオブランドです。といってもそれ以上の情報が無く、以下はHPからの引用です。

トレンドを先導するヘッドフォンデザインと革新的な音響技術を世界中のオーディオファンにもたらすことを目的として設立され、そのコンセプトを達成すべく、Joyodioは独自のアイデアとして4つのスイッチにより音質チューニングを調整可能としたインイヤーモニターを開発し業界の新しいスタンダードを提案しました。
この新発売したSHINEは、光と影という観点からインスピレーションを得ています。暖かい日差しは目に見えても触れることはできませんが、光に照らされた表に対しその裏には影があります。その影は光があればこそ存在し、表は暖かさを感じることができるのです。その光はあなたに希望と力を与えてくれるでしょう。私たちJoyodioは独自の方法で光による暖かさを提供し、輝く瞬間を一緒に掴もうとしています。それは絶妙な造形や他に例をみない4つの音質調整スイッチを搭載し、3Dプリントによる音導管構造を採用したSHINEはJoyodioのハイエンドヘッドフォンコンセプトを実現する為に細部を妥協せずにあらゆる部分に拘り製品化されました。

以上がSHINEのリリースノートですが、Joyodioの自信の現れを感じます。実際に商品としてもSHINEの訴求性は高く、2BA+1DD構成の多ドラハイブリッドモデルという事や音質調整スイッチを4つも搭載していること。3Dプリンタによる成形技術による音導管を用いたりとJoyodio自体の詳細は分かりませんが、SHINEに興味が沸いたというのが素直な想いです。

そしてなによりも興味深いのは4基搭載したディップスイッチによる音質調整機能に心躍ります。「男の子ってこういうのが好きでしょ?」と脳に直接語り掛けられているような錯覚すら覚えます。

冗談はさておき。今回、Joyodio SHINEを入手しましたので、同クラスのBQEYZ TOPAZやTRIPOWIN Rhombusとの比較を含めながら記事をまとめたいと思います。

 

SHINEのスペックは先述の通り、片側2BA+1DDのドライバ構成です。搭載ドライバは低域用ドライバに7mm径の二重磁気及びデュアルキャビティを採用した新型ダイナミックドライバを。超高音~高音域用BAにカスタマイズBAの30019シングル1基を採用しシェル内部に配置。高音域~中音域用BAにこちらもカスタマイズBAの29689シングル1基を採用しこちらもシェル内部に配置。それらのドライバはシェル内部の3Dプリントにより音導管が造形されステムノズルへ伸びています。

次に、先述の通りSHINEには音質調整用のディップスイッチが4基搭載されています。4つのディップスイッチ(SW)をシェル側面に並列配置しデフォルトは全てoffです。

ディップスイッチ1(SW1)、ディップスイッチ2(SW2)、ディップスイッチ3(SW3)、ディップスイッチ4(SW4)は以下のようにon/offすることで音質傾向を調整できます。

 

パターン SW1 SW2 SW3 SW4 音質傾向
1 off off off off Standard
2 on on on on POP
3 off off on on Classical
4 on off off on R&B/Rock
5 off off off on HiFi

 

後述しますが、上表の通り音質傾向調整SWにより最大16種の音質へ調整することができ、デフォルトのスタンダード含む好みの音質傾向を主な5種に調整することができます。

以下、HP引用です。

 

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ディップスイッチをスタンダードにセットしたときのf特です。

 

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各ディップスイッチによる変化をf特で示していますが、結構変化することが分かります。音質レビュー項では実際にメインの5種を聴き比べてみたいと思います。

 

さて、SHINEはスペックだけ見れば片側3ドライバ、2BA+1DD多ドラハイブリッドモデルと中華イヤホン中価格帯A10000-U20000として特筆するものはありませんが、侮るなかれ堅実なドライバ数と音導管による音響調整に加え、ディップスイッチによる音質調整機能による嗜好の多様性に対応していることが、真骨頂と云えます。

次にシェル本体は樹脂製とし、フェイスプレートには金属製を採用しています。特にフェイスプレートのデザインは流線形の造形であり美麗なデザインは一目置かれるものとなります。

そして、音質チューニングを突き詰めればシェルの材質による音への影響は無視できません。金属製シェルは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなります。響きの美しさは金属が一枚上手ですが、良い事だけではなく、反響が強くなることで不自然な残響音となる場合があります。一方樹脂製シェルでは高音域の響きが吸収されてしまう傾向があり、金属シェルと同じ音圧を得るためには高音域の減衰を考慮しやや強めに鳴らす必要があります。加えて、音導管の有無も重要でこのバランスを含めたチューニングは難しく、メーカーの技術力の証となります。

最後に付属ケーブルです。高品質銀メッキ銅線の8芯編込みケーブルです。中価格帯中華イヤホンとして過不足のないケーブルです。更に、8芯編込みケーブルはしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、SHINEではバランス接続を試したい方以外はリケーブルする必要を感じません。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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Joyodio SHINEの納期としては現在(2023/1/28)国内amazon取扱がありますが、本国発送ですので当日発送、翌日配達とはいきません。私の場合も本国発送のため、AliExpressでオーダーした場合と同様に少々時間はかかります。昨今、感染症の影響は回復傾向であり国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定しており、10日前後で届きました。ほぼ平時に戻った印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Joyodio SHINE実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調とした大箱のスリーブタイプ。表面には大きくプリントされたイヤホンとメーカーロゴと商品名が記載されています。

 

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スリーブを外すと内箱も黒を基調としたシックなデザインです。

 

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内箱の上蓋を開けると黒地の内装右上側にイヤホンが収納されています。その下側にはイヤーピースが収納されています。


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内箱左側には黒地箱があり、その中には発色の強いイヤホンケースが収納されています。


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そのイヤホンケースには付属品が収納されています。全体の造りはしっかりとしています。残念なのはケースの開口部が全開にならず、開口幅に限度がある事。長財布のマチみたいな造りで出し入れし難いです。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セットに加えイヤホンにセットされた黒いイヤーピースMサイズ1組。他にはケーブルとイヤホンケース、ディップスイッチの操作用ピンです。中価格A10000帯として必要最低限なものが揃った付属品となります。

 

※ディップスイッチ操作用ピン

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※イヤホンケース。イヤホン等とは異なり発色強めの青色。
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次にイヤホン本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は丸みを帯びたカスタムIEM風のもの。シェルは比較的コンパクトですが、厚みがあります。個人差がありそうですが、樹脂シェルの軽さも相まって装着感は良好と云えます。フェイスプレートには先述の通り流線形の造形が施され、比較的目を引きそうなデザインです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格A10000帯として十分に綺麗な仕上りでありシェルの合わせ面も揃っています。

カラーバリエーションは黒のみです。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質8芯銀メッキ銅線を編込み線としたもの。価格帯的にはケーブルにもコストを掛けたものと云えます。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はQDCタイプのKZ-C 2ピン仕様。極性はやはりKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルはしなやかでタッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。シュア掛け用にチューブで癖付けされており、全体的にしなやかで取り回しは悪くありません。

ここで一つ。お気づきでしょうか。何処かで見たことのあるケーブルだということを。KZのアップグレードケーブルによく似ています。ZASやZES、PR1 Proに付属していたものとよく似ています。まあ中華の汎用パーツを使用している為、似ている商品があっても何の不思議もありませんが。

さて、参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からRhombus、SHINE、TOPAZ

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SHINEとTOPAZ、Rhombusの外観の比較として、サイズ感はRhombusが一番コンパクト。SHINEとTOPAZはシェルの厚みがありそれと比べるとやや大柄に見えます。Rhombusがシェルの厚みが無いためにSHINEやTOPAZが大きいと誤解されそうですが、一般的には十分コンパクトな部類になると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはこの中ではSHINEが長くTOPAZが一番短い。角度はSHINEがやや起きています。太さはTOPAZが一番太くSHINEとRhombusがやや細め。TOPAZとRhombusは耳奥に。SHINEは浅めの装着を想定していることが窺えます。

SHINEはこの中ではそのコンパクトさが目立ちませんが、一般的なサイズ感と云えますので決して大きいという事はありませんし、オーソドックスな造形と云えます。意外と耳への収まりが良く装着感は良好です。

イヤホンとケーブルの接続コネクタはSHINEはQDCタイプ。Rhombusはフラット2ピン。TOPAZが埋め込み2ピンです。そのためリケーブルの際はSHINEのみQDCタイプ及びKZ-Cタイプを選択する方がコネクタ部の破損を防ぐ意味でも無難。他は2ピンケーブルのコネクタ部の長さに注意が必要です。

シェルの材質は、SHINEとTOPAZが樹脂と金属のハイブリッド。Rhombusはオール金属製となります。

重量はオール金属のRhombusが一番重そうですが、実は三機種共にほぼ同じ。ややSHINEが重量を感じます。とはいえ、SHINEは思ったよりも耳への装着感が良く、それほど重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくSHINEとRhombusは細めと云えますのでいつものイヤピのサイズ感で問題ないと思います。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。SHINEはメッシュフィルタなので他の機種よりも音質への影響のあるタイプと云え、他は異物混入による故障を防ぐタイプの様です。

三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りSHINEはステムノズルがやや細めのため、実際の装着感も良好。付属イヤーピースで耳に浅めに栓をするように密着させ装着し付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースはグレー傘赤軸の傘にフィンのあるタイプ。形状自体は一般的な丸穴径、傘の裾野が弾丸タイプ、開口部広め、軸短め。同じくシリコンタイプの背の低い白傘の軸短、開口部広めのお椀型。イヤホン初期装着されていたイヤピはなんとKZの付属品と同じ溝有黒傘タイプ(何か気が付いた方もいるかもしれませんが、「カンの良いガキは嫌いだよ」という名台詞が脳裏に浮かびまして、気が付かなかったことにします)。幸いにも他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属イヤピグレーは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がすっきりとするタイプの印象です。一方白は中高音をクリアにし全体をバランス良く届けてくれるタイプの印象です。溝有黒以外は論外として、他2種は軸が短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳に浅めに挿入し耳へ密着させることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属イヤーピースで私はフィッティングが上手くいきましたし、低音が逃げる事もありませんでしたので、そのまま付属白を使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Joyodio SHINE音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属イヤーピース白 Mサイズ、付属ケーブル、ディップスイッチは全てoffのデフォルトです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「全体的に籠りを感じる音。音場も狭くボーカルが近いのに演奏が後ろに離れすぎている定位に違和感を感じる音。」です。これは久しぶりにハズレか?と思いました。そのため、通常聴いているローゲインからハイゲインに変更してみましたが少しまともになった程度。そのためSony NW-WM1AM2に変更。ハイゲインに設定し聴いてみました。するとUP5で聴いた印象から一変し「籠り感は無くなり、ボーカルの位置は自然な位置で楽器の音も定位に不自然さの無いフラット寄りの出音の弱ドンシャリ」となりました。音量も従来はローゲインの25前後位でしたが、前述の通りハイゲインで45とかなり大きくする必要がありました。

また、箱出しでは低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まり、バランスの良い音という印象です。

 

音場

普通からやや広め。前後はやや奥行があり、左右にやや広さを感じられ、立体感を感じられますが、空間の広さはそれ程感じません。

 

高音域

煌びやかさはありますが響きは抑え気味。上までの伸びやかさは程々。それでも十分な存在感があります。華やかに鳴りますが、騒がしいとかしつこいと感じるような常に前に出る様な感じのない適度に強調感のある音。最近の中華イヤホンの傾向と同じ様な刺さりや尖りは感じない弁えた鳴り方をします。解像感は普通程度ですが、鮮明さは感じられます。

 

中音域

華やかさがある鳴り方ですが、分離は良好でボーカルに被らず、音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じ難い。立体感のある鳴り方は解像感も良好。ボーカルはクリアで自然な位置。声音はややドライ寄りの印象です。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりは抑え気味。音階や強弱を感じられますが低音域の解像感はそこまで高くはない、どちらかと云えばタイトに締まった音。ベースラインは追いやすくですが、ボーカルよりも前に出るような不自然さはありません。重低音は沈み込みそれ程深くありませんが、強さがありますので過不足はありません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りの弱ドンシャリ。高音域はやや暗めながらも必要な量をしっかりと鳴らす。低音は適度で過不足のない強さで鳴り、出音のバランスに偏りのない音。フラット寄りの音は特定の音域を誇張していません。

 

高音の煌びやかさは十分に感じられますが、響きは抑え気味。そのため華やかさはありますがしつこさは感じない。どちらかと云えばやや暗めに聴かせてくれる音。それでも必要な時に必要な量を鳴らし不足を感じる事はありません。中華イヤホンの明るい高音域に慣れた方には不足を感じるかもしれません。演出感は少なく不快なシャリつきもない整った鳴り方は耳障りの良い音。超高音までの伸びやかさはそこまで高さを感じませんが、中低音域の音圧に隠れません。小さな音でも感じ取れますが鮮明さや解像感はやや描写が丸く感じられますが、決して低くはありません。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルの自然な位置に対し楽器の音はその周りから少し離れやや後ろ辺りに位置し奥行を感じられます。見通しの良い空間に華やかさを感じられ、その音は整って聴こえ解像感は良好です。

ボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすく、周りの音や高音や低音にも埋もれません。声色はドライ寄りですが息遣いを感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでは相性を感じるかもしれません。

低音の量感は適度で響きや広がりは抑えられています。どちらかと云えば広がりよりもタイトに締まりのある音は音階や強弱を感じ取れますが、解像感はそこまでといったところ。その分雰囲気の良さにも対応できるバランスを整えた音。逆に云えば音階や音の強弱を誇張せずに描写してくれているとも云えます。そのため多少器用貧乏、どっちつかずの印象があります。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、強さを感じられる音。低価格帯でよくあるただ強く鳴らす音ではありませんが、そこまで質の高さを感じません。

 

次に音質調整SWの効果を確認してみます。先述の通り結構変化があります。

SW全offのデフォルトから全onへ変更した場合、先ず音量を下げる必要があります。ハイゲイン45からハイゲイン33に下がります。肝心の音質は音が明るく明瞭になりクリアで見通しの良い音に変化します。それによって音にメリハリが感じられこれだけでもデフォルトよりも明らかに良い音に感じられます。これは好みもあるのかもしれませんが、f特では全音域が持ち上がるように変化する筈です。しかし、デフォルトのSW全offで感じた暗い音から明るい音質傾向に変化し印象が良い方向に変化したのは間違いありません。例えるなら、Astell&Kren SE200のESS側がデフォルトSW全off。AK側がSW全onのPOPでしょうか。このくらいの変化があります。 

次にClassical(SW1:off、SW2:off、SW3:on、SW4:on)の場合です。デフォルト(SW全off)よりPOP同様に音量を下げる必要があります。POP同様に明るい音で高音域が明瞭になり聴きやすくなりますが低音域はそれ程でもありません。。クラシック等の管楽器の金属音などは聴きやすくなるチューニングと云えます。

次にR&B/Rock(SW1:on、SW2:off、SW3:off、SW4:on)の場合です。デフォルトよりもPOP同様に音量を下げる必要があります。低音が強調されベースラインが明瞭に出ますが、深く沈み込む低音とまではなりません。高音中音域はクリアで明瞭になり、ボーカルに違和感を感じます。ボーカルにスポットが当たった様な前に出る訳ではなくボーカルよりも演奏が後ろに離れるというか、何でしょうねコレ。

最後にHIFI(SW1:off、SW2:off、SW3:off、SW4:on)の場合です。デフォルトよりもPOP同様に音量を下げる必要があります。高音域がやや誇張され高音中音域はクリアで明瞭になります。デフォルトが中低音寄りに感じたバランスでしたが、HIFIでは中高音寄りに感じられます。非常に聴きやすい耳馴染みのある音はPOPよりもこちらのバランスが好きという方が多そうです。

個人的にはPOPが一番SHINEの良さを感じられるのではないかという印象です。

 

折角なので、据え置き機材でも試してみました。というのも冒頭UP5では明らかに鳴らしきれていないため、今回はWM1AM2で音質確認をしていますが、据え置き機材ならばもっと好印象に変わるのではないかという興味からです。DACはGustad A18、アンプにTopping A90を使用しています。DACからアンプへはXLR出力-XLR入力。PCからDDCのGustad U18にUSB入力しU18からI2S接続。U18には外部クロックをGustad C16から入力しています。A90はハイゲインのSE出力ステレオプラグ-ステレオミニプラグ変換です。

結果は思った通りです。SHINEはアンプの駆動力が高いほど本領発揮できるようですね。SHINEのデフォルト設定でさえもWM1AM2で聴いたときよりも更にクリアで明瞭な音を聴かせてくれますし、中高音寄りに変化し見通しの良い高音域を表現してくれます。モバイル用USB-DACのUP5では駆動力が不足して本来の性能を発揮できませんでしたが、それなりのDAPや駆動力のあるアンプを通すことで本領を発揮し、SHINEは普通に良い音という感想です。

 

最後に他社製品との比較です。BQEYZ TOPAZとの比較ではTOPAZは中高音重視の瑞々しいリスニングサウンドです。全体の出音を僅かに高音を強めにしながらも解像感の高い音は、高音寄りのフラットな音でした。SHINEのデフォルトが中低音寄りのやや暗い音とは異なると云えます。一方でSWをPOPに設定すると明るさや華やかさがあり明瞭な音はSHINEが1枚上手という印象です。HIFI設定では近しい音と云えるかもしれません。

次にTRIPOWIN Rhombusとの比較です。Rhombusはドンシャリの出音が音楽を純粋に楽しめました。低音の方が出音が多めに聴こえますが、実は高音域の清々しいリスニングサウンドです。SHINEのデフォルト設定とは方向性の違う音質傾向であり完全なるリスニングサウンドです。SHINEをR&B/Rock設定にしてもリスニングサウンドという土俵ではRhombusには敵わないです。一方で中高音重視で聴きたい方にはRhombusの低音は邪魔という印象を持つかもしれません。SHINEはあくまでもフラット寄りの出音がベースにあるサウンドバランスとなっています。

 

※音質調整SW付他製品の過去レビューも参考ください

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まとめるとJoyodio SHINEのフラット寄りの弱ドンシャリサウンドバランスはデフォルト設定ではやや暗めに鳴らしながらもどこかの音域を強調しない音造りです。ポータブルデバイスでは力不足になる場合もありますが、駆動力の高いアンプ部を持ったDAPであれば本来の音を楽しめます。また、音質設定SWをPOPにすることで劇的に変化する音質傾向はJoyodioが我々ユーザーに提案した作品と云えるのかもしれません。とはいえ、イヤホンをDAPで愛用する方が多い中で、それなりのアンプ性能を求めるため、スマホ直挿しやスマホにUSB-DACというユーザーにはハードルが高い商品となるかもしれません。やはりマニア向けの商品と云えます。

一方で駆動力の高いアンプ部を持ったDAPやポータブルアンプをお持ちの方には音質調整SWによって、いろいろな音を楽しめる製品と云えそうです。だって今回はメインの5種のみしか紹介できていませんので(全16種類ですよ!)。

 

高音   Rhombus ≧ TOPAZ ≧ SHINE  

中音   TOPAZ ≧ SHINE ≧ Rhombus

低音   Rhombus ≧ SHINE ≧ TOPAZ

ボーカル Rhombus ≧ SHINE ≧ TOPAZ

※SHINEはデフォルトで評価

 

 

4. Joyodio SHINEの総評

Joyodio SHINEは同社のA10000帯モデルとして、非常に他社製品を研究し同社の技術を惜しみなく投入した意欲作と云えます。中華で最近主流のフラットバランス寄りの音はそれでは物足りない方に音質調整SWによって調整する事ができる何度でも楽しめるイヤホンです。一方でポータブル製品のカテゴリでありながらアンプに高い駆動力を求められるためにライトユーザーには少々ハードルが高くなります。勿論ちゃんとパワーを掛けると普通に高音質で音楽を楽しめますので、やはりマニア向けの製品と云えます。

 

最後に、今回は中価格A10000-U20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年1月28日)は国内amazonやAliExpress等で発売されております。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。AliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンでちょっと面白いものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内での取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpress等での購入も検討してみてくださいね。

 

SHINE

以下、付属ケーブル、付属イヤピ白 MDAP WM1AM2 ハイゲイン
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ (スマホ直挿し又はUP5等のドングルUSB-DAC★3) 

※☆0.51.0

 

TOPAZ

以下、付属ケーブル、イヤピ Sedna EarFit MSDAC UP5使用
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

Rhombus

以下、付属ケーブル、イヤピ Sedna EarFit MSDAC UP5使用
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A10K-U20K帯中華2BA+1DD多ドラハイブリッドイヤホンの商品のレビューとなりました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

TKZK OURANOS レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、中価格A5000-U10000帯で発売された1DDモデルのTKZK OURANOSについてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのLinsoul Audio(@Luke32344614)で取り扱いがあります。

 

 

AliExpressでも取扱があります。

 

ja.aliexpress.com

 

Linsoul Audioの直販サイトはコチラ

TKZK Ouranoswww.linsoul.com

 

 

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1. TKZK OURANOSについて 

TKZKは中国のオーディオメーカーTiNHiFiのサブブランドです。TiNHiFiと云えば、初期のT2やT2 Pro及び、T3は見通しの良いクリアな高音が特徴的な高音域特化の音質傾向が好きな人にはハマるイヤホンだったのに対し、その後発売したT2 plusやT3 plusに加え、以前レビューしたC3では一変して音楽的なバランスの良い音質のイヤホンを世に送り出しています。その音質は良い意味で普通でありながら、堅実な音質傾向が多くの中華イヤホンファンから支持され、音質に定評のあるメーカーとして現在の地位を確立しています。

そのTiNHiFiのサブブランドとして近年TKZKブランドからWaveを発売。1BA+1DDハイブリッドモデルはTiNHiFi T3の金属シェルに対し、Waveは樹脂シェルモデルと棲み分けされていました。そして今回TKZKからOURANOSが登場。先日のTiNHiFi C3同様にシングルダイナミックドライバ搭載の樹脂シェルモデルとなりますが、採用されているダイナミックドライバが異なります。このドライバ違いがメインとサブブランドの棲み分けであることは間違いないと思いますが、一体どんな違いを魅せてくれるのか。今回TiNHiFiのサブブランド、TKZK OURANOSを入手しましたので、C3や同クラスのCADENZAとの比較を含めながら記事をまとめたいと思います。

 

TKZK OURANOSのスペックですが、シンプルなシングルダイナミックドライバ(1DD)モデルです。メインブランドのC3のダイナミックドライバには10mm径の薄膜液晶ポリマー(LCP)とポリウレタン(PU)の複合素材のダイヤフラム(振動膜)を採用していますが、OURANOSでは10mm径のカーボンナノチューブ(CNT)ダイヤフラムを採用しています。何れも強力な磁気コイルN52とデュアルキャビティを採用しており、OURANOSとC3はダイヤフラム違いのダイナミックドライバを採用しています。

次にOURANOSのシェル本体はオール樹脂製です。TINHiFiでは金属シェルモデルを得意としてきましたが、近年は樹脂シェルも採用されておりC3では樹脂シェルが採用されています。OURANOSのフェイスプレートにはローズゴールドカーボンファイバーパネルデザインを採用。C3のカーボン調のデザインが地味に見えてくる不思議な感覚。何れも3Dプリント造形と樹脂シェルによる軽い装着感が得られます。

以前にも述べましたが、音質チューニングを突き詰めればシェルの材質による音への影響は無視できません。金属製シェルは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなります。響きの美しさは金属が一枚上手ですが、良い事だけではなく、反響が強くなることで不自然な残響音となる場合があります。一方樹脂製シェルでは高音域の響きが吸収されてしまう傾向があり、金属シェルと同じ音圧を得るためには高音域の減衰を考慮しやや強めに鳴らす必要があります。加えて、音導管の有無も重要でこのバランスを含めたチューニングはメーカーの技術力の証明と云えます。

最後に付属ケーブルです。OURANOSのケーブルには高品質銀メッキ銅線を採用しています。イヤホン側接続コネクタ部には0.78mmの金メッキ2ピンを採用した中価格帯中華イヤホンとして十分質の高いケーブルです。更に、PVC被覆の線材はほど良い堅さがありながらしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、OURANOSではバランス接続を試したい方以外はリケーブルする必要を感じません。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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TKZK OURANOSの納期としては現在(2023/1/25)国内amazonでも取扱がありますが、本国発送扱いですのでPrime扱いの様に当日発送、翌日配達とはいきません。私の場合も本国発送でしたが、AliExpressでオーダーした場合と同様に感染症の影響は回復傾向であり国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定しており、10日前後で届きました。ほぼ平時に戻った印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. TKZK OURANOS実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは白を基調としたシンプルな小箱でスリーブタイプ。表面にはメーカーロゴと商品名のみというシンプルなもの。

 

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スリーブを外すと黒を基調とした内箱は貴金属の化粧箱の様なちょっと高級感があります。

 

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内箱の上蓋を開けると黒地の内装にイヤホンが収納されています。

 

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内装を取り外すとその下に白地の小箱があります。


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小箱には付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セット。他にはケーブルとケーブルバンド、イヤホンポーチです。中価格A5000帯として必要最低限なものが揃った付属品となります。

 

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光沢のあるイヤホンポーチは綺麗です。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は丸みを帯びたカスタムIEM風のもの。シェルは比較的コンパクトですが、厚みがあり耳甲介艇の突起のある造形となります。この突起は個人差がありそうですが、樹脂シェルの軽さも相まって装着感は良好と云えます。

フェイスプレートには先述の通りローズゴールドカーボンファイバーパネルデザインが施され、凝ったデザインと云えます。特徴的なフェイスプレートデザインが施されたイヤホンは他の人とは違うものを求める人には良さそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格A5000帯として綺麗な仕上りでありシェルの合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは黒のみです。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質4芯銀メッキ銅線を撚線としたもの。価格帯的には十分にケーブルにコストを掛けたものと云えます。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様の極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルはやや硬さがありますが、十分なしなやかさがあります。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは悪くありませんので、そのまま使用しても不都合を感じる事はないと思います。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からTiNHiFi C3、TKZK OURANOS、KiwiEars CADENZA

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OURANOSとC3、CADENZAの外観の比較として、サイズ感はOURANOSとC3がほぼ同じ。というか同じシェルです。OURANOSとC3の違いはステムノズルです。C3のオール樹脂に対し、OURANOSは金属となります。OURANOSやC3はCADENZAよりも僅かに大きくなりますが、CADENZAはシェルの厚みがあるものの一回り小さく見えます。とはいえOURANOSは一般的には十分コンパクトな部類になると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはこの中ではOURANOSが僅かに長くC3とCADENZAがほぼ同じ。角度は三機種がほぼ同じ。太さはOURANOSとC3がこの中では細くなりますが、一般的にはやや太めの部類。CADENZAが一番太くなります。

OURANOSはC3と同サイズ感であり、この中ではそのコンパクトさが目立ちませんが、一般的なサイズ感のCADENZAと比較しても決して大きいという事はありませんし、オーソドックスな造形と云えます。何よりもその造形からは意外と耳への収まりが良く装着感は良好です。

イヤホンとケーブルを接続するコネクタにはOURANOSとC3、CADENZAのすべてフラット2ピンのため、リケーブルの際はそれほど気にする必要はありません。

シェルの材質は、C3とCADENZAはオール樹脂製。OURANOSは前述の通りステムノズルが金属製、シェルは樹脂製となります。

重量は三機種共に軽量です。軽量と造形が相まって耳への装着感が良く、重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすく三機種共に太めと云えますのでイヤピ選びは重要です。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。OURANOSとCADENZAは金属フィルタですが、C3はメッシュフィルタなので他の機種よりも音質への影響のあるタイプと云えます。それに対し、OURANOSとCADENZAは異物混入による故障を防ぐタイプの様です。

三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りOURANOSはステムノズルがやや太めなものの、実際の装着感は悪くなく、付属イヤーピースで耳にやや浅めに栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。あまり奥に入れると逆に低音が抜けて軽くなってしまいました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースはC3と同じ黒傘黒軸の一般的な形状の丸穴径、傘の裾野が弾丸タイプとグレー傘赤軸の黒軸イヤピと同形状の2種です。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒イヤピは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプの印象です。グレーイヤピは僅かに低音を弱めて全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象です。どちらのイヤピも軸はやや短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入するよりはやや浅めに栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属イヤーピースで私はフィッティングが上手くいきました。また、グレーイヤピの方がバランスが良く感じましたので、そのまま付属グレーを使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. TKZK OURANOS音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属グレー傘赤軸イヤーピース Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中低音に厚みがあり華やかさのある音。高音はやや抑えられ低音はしっかりと鳴る音。やや中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まり、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

普通からやや広め。前後はやや奥行がある印象。左右はやや広さを感じられ、立体感を感じられるものの、空間の広さはそれ程感じません。

 

高音域

適度な煌びやかさは響きが抑えめであり少々物足りなさがあります。上までの伸びやかさはそれ程感じらませんが、適度な存在感があります。華やかさはありますが、騒がしいと感じる事はなく出しゃばった感じはないあくまでも適度な鳴り方。中華イヤホンでよくある高音が常に前に出るようなことはありません。そのため刺さりや尖りは感じません。解像感も良好ですが、特筆する様なものではなく、鮮明さもそれ程感じません。

 

中音域

華やかさはありますが、やや離れた位置から聴こえる印象があります。その分音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じ難く立体感のある鳴り方です。音の立ち上がりは良好で解像感も悪くありませんが、何方かと云えば明朗に鳴らします。ボーカルはクリアで僅かに近い位置から声音も自然でニュートラルな印象です。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりも感じられますが、強さで誤魔化す鳴り方ではなく音階や強弱といった低音域の解像感は良好です。ベースラインは追いやすいのにボーカルよりも前に出るような不自然さはありません。重低音は沈み込みは深く、強さがありますので過不足はありません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りの弱ドンシャリ。高音域はやや暗い印象がありますが自然な量をちゃんと鳴らしてくれます。低音は適度な量感で過不足はありません。出音のバランスが良くピラミッドバランスという印象。最近の中華イヤホンの流行りのハーマンターゲット近似の音。

 

高音の煌びやかさは必要十分に感じられますが、響きは抑え気味。そのため華やかさはあるものの何方かと云えば暗めの高音域となりますが、その分しつこさは感じません。それでも必要な時に自然な量で鳴らし不足を感じる事はありません。中華イヤホンの明るい高音域に慣れた方にはもの足りなさを感じられるかもしれません。演出感はなく不快なシャリつきがありませんので、自然な鳴り方は耳触りの良い音。超高音までの伸びやかさはそれほどなく、寸止まり感をやや感じられる事がありますが、なめらかさはあります。小さな音でも感じ取れますが鮮明さはそれ程感じませんので解像感や描写はやや丸みを感じられますが、寧ろ全体とのバランスを整えられている印象です。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルは僅かに近い位置にあり楽器の音はその周りから少し離れやや後ろ辺りに位置していて奥行を感じられます。厚みのある中低音域は華やかさがあり分離も良く整った音は解像感も悪くありません。

ボーカルは僅かに近くクリアに聴く事ができます。周りの音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は適度で響きや広がりは適度に感じられます。一方で締まりのある音は、音階や強弱を描写してくれ掴みやすく、解像感と雰囲気の良さを感じられる整った音。締まりのある音は小気味良く誇張せずに描写します。

重低音は沈み込みは深く、強さを感じられる音。低価格帯でよくあるただ強く鳴らす音ではありません。適度な低音域は中音域の下の方に厚みを持たせてくれます。

 

同社のC3と比較した場合、ほぼ同じ音質傾向という印象です。OURANOSの方がやや高中音域の主張を感じます。超高音域の伸びも同等です。一方、低音域はC3の方がややしっかりと鳴らす印象ですが、イヤピの影響かもしれません。中音域の厚みは同様ですが、C3の方が僅かに厚みを感じますし、中高音の解像感はC3の方がやや良好。全体のバランスはどちらも暖色傾向という印象ですが、OURANOSの方が僅かに重心が高い印象です。OURANOSとC3はダイヤフラムの違いで若干の味付けが違うこと。中高音の解像感に違いがある印象です。サブブランドとしてのポジションを理解しやすく、T3 plusやC3の系譜と云えそうです。

OURANOSもC3も弱ドンシャリと云え、音色が暖色傾向という音質傾向は違いが殆ど感じられないかもしれませんが、中高音域の解像感はC3に分があり、低音域もC3の方が厚みがあるためよりドンシャリに感じられ、それがC3の聴きどころです。一方でOURANOSはサブブランドとしての若干のチューニング違いを楽しめます。それはC3よりもフラット寄りにすることで「同社らしさ」を感じられますので、以前のTiNHiFiらしさを捨て難い方にはOURANOSの方が好きという方も一定数いらっしゃるかもしれません。

 

次にCADENZAとの比較では、CADENZAがやや中高音寄りのドンシャリです。以外にも低音がしっかりとした音は、高音域は鮮明にしっかりと鳴らし、中音域を華やかに彩らせた高中音域を聴かせる硬質な音です。そのためOURANOSの高音域をやや暗めに鳴らし中低音域を厚めに充実させた音とは真逆の音と云えます。

 

※過去レビューも参考ください

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まとめるとTKZK OURANOSはTiNHiFi C3と同傾向の音質傾向であり、若干のアクセント違いのある弱ドンシャリは高音域は自然に鳴らし中低音域を厚めに鳴らす音造りが万人受けしやすい音であり、聴きやすさが特徴と云えます。海外では人気の出やすい音造りなのですが日本国内のポータブルオーディオファンは中高音寄りフラットが人気が高いこともあり新陳代謝の激しくライバルの多い価格帯ではやや苦戦しそうな印象です。それでも同価格帯では間違いなく高音質という評価であり個人的には好きな音と云えます。

一方で従来のTiNHiFiの音が好きな方には中低音寄りのドンシャリバランスと云えるため評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   CADENZA ≧ C3 ≧ OURANOS 

中音   OURANOS ≧ C3 ≧ CADENZA

低音   C3 ≧ OURANOS ≧ CADENZA

ボーカル OURANOS ≧ C3 ≧ CADENZA

 

 

4. TKZK OURANOSの総評

TKZK OURANOSはTiNHiFiのサブブランドとして同社のC3の若干のチューニング違いモデルとしても楽しめます。またA5000帯モデルとして、最近の同社ラインナップ同様にの普通に高音質のイヤホンと云えます。C3同様に中低音域を厚めに充実させた音造りは一般層には受けが良いと思いますし、海外では高評価となりそうな音質傾向は日本国内のマニアには高音域中心の音が好まれる傾向があり、C3同様に評価は分かれそうです。それでもOURANOSは普通に高音質と云えますしバランスの良い音質は音楽を楽しく聴く事ができる良いイヤホンと云えます。

 

最後に、今回は中価格A5000-U10000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年12月24日)は国内amazonやAliExpress等で発売されております。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。AliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

OURANOS

以下、付属ケーブル、付属グレー赤軸イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

C3

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

CADENZA

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (硬質な音)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A5K-U10K帯中華1DDイヤホンの商品のレビューとなりました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Trn XuanWu(玄武) レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、低価格U5000帯で発売された1BA+1PDハイブリッドモデルのTrn XuanWu(玄武)についてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのHiFiGoで取扱があります。

 

 

HiFiGoサイトはコチラ

TRN Xuanwu 10mm Square Planar Driver + 1BA Hybrid In-Ear Monitors IEMshifigo.com

 

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1. Trn XuanWuについて 

Trn XuanWu(玄武)は低価格U5000帯中華イヤホンの多ドラハイブリッドモデルとして昨年11月に新発売されました。

Trnといえば低価格帯のドンシャリサウンドのモデルを中心に発売し当時市場のトップランナー、KZのライバルとして鎬を削っていましたが、近年のKZのやらかしによる失速とTrnの音質重視のビジネスモデル変更が功を奏し、現在は他社に一目置かれる存在となり、我々中華イヤホンファンから注目されています。何の業界でも実直さは大切ということなのかもしれません。

近年Trnが発売したイヤホンは何れも「普通に音が良い」モデルという評価が定着しており、以前レビューした多ドラハイブリッドのVX Proや平面磁気駆動ドライバのKirinは中価格A10000帯のモデルとして他社に遜色のない音質は販売価格に対してコストパフォーマンスの高いモデルという評価です。同様に中価格A5000帯の4BA+1DD多ドラハイブリッドモデル ST5も近年では大人しいスペックながら最近のTrnの勢いそのままに評価が高いモデルとなっています。

そんなTrnが昨年最後に発売したXuanWu(玄武)は昨年のトレンドである平面磁気駆動ドライバを採用し、更にBAを搭載した1BA+1PDハイブリッドモデルという「中華イヤホンファンを理解している」モデルを登場させました。これは注目せざるをえないですよね。

1BA+1PDハイブリッドモデルと云えばCelest Gumiho(九尾)が記憶に新しいですが、そのGumihoで採用された平面磁気駆動(PD)はSquare Planar Driver(SPD)という従来とは異なったドライバだったことと、BAとSPDのデュアルドライバだったこと話題になりました。一般的なドライバの円形ですが、SPDは四角形のドライバです。加えて、PDドライバモデルが6,000円台と安価な販売価格が評判になりました。その後同社はこのSPDを改良した第二世代SPDを一基搭載したモデル、Pandamonを昨年末発売しています。このPandamonについては以前レビューしていますので、宜しければご参考ください。

 

※Xuanwuのf特(メーカーHP抜粋)

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以前レビューしたPandamon同様にメーカー発表のf特を引用します。グラフからはやや高音域寄りにピークがあり、2k付近に最大ピークがあります。そこからは高音域に掛けてやや右下がりに振れ幅も大きめに上下しています。音域全体を見ると中音域が凹むよくあるドンシャリサウンドのf特性となっています。

 

※Pandamonのf特(メーカーHP抜粋)

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次に比較としてCelest Pandamonのグラフからはやや高音域寄りにピークがあり、2kを少し超えたところに最大ピークがあります。そこからは高音域に掛けてやや右下がりに振れ幅も大きめに上下しています。音域全体でみるとf特は凹傾向ではありますが、中音域の凹みの少ない高音域寄りのフラット傾向であることがわかります。

実際にPandamonを聴いてみると高音と低音がしっかりと鳴る弱ドンシャリ傾向のサウンドです。

 

※Trn Kirinのf特(メーカーHP抜粋)
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Pandamonのf特をみて思いつくのはTrn Kirinです。価格帯は一クラス上となりますが、Kirinのf特とPandamonのf特は全体的に同傾向の印象です。

実際に聴き比べてみると全体の印象は似ていますが、高音域の繊細さと低音域の質感は流石の中価格A15000-U20000帯モデルと云えます。全体では高音やや強めのフラット寄りのドンシャリです。解像感の高い高音域は華やかでありながらしつこさの無い繊細な音は耳障りが無く、一クラス上の音質を感じられます。

 

以前のレビューでも考察した通り、f特は出音の参考にはなりますがそれで音質が分る訳ではなく聴いてみて音質を評価することが一番だと個人的に考えています。そういう意味ではTrn XuanWuがどのような音を聴かせてくれるのか?楽しみです。

 

さて、Trn XuanWuのスペックですが昨年の中華イヤホンのトレンドの一つ、平面磁気駆動ドライバとバランスドアーマチュア(BA)各一基を片側に合計二基搭載したデュアルドライバ構成のモデルです。所謂1BA+1PDハイブリッドモデルとなります。BAにはTrnのカスタマイズドBAを採用し高音域を担います。中音~低音域にはKirinの平面磁気駆動ドライバ、直径14.5mmの円形ドライバとは異なる10mm x 10mmの四角形のSPDドライバを採用しています。

複数ドライバ機で最も大事なことですが、異なる種類や複数のドライバを搭載するモデルでは各ドライバの担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングが重要です。低価格帯はもとより、中価格帯のモデルでも曲によってつながりにやや不自然さを感じる場合があります。前述の通りXuanWuはBAとSPDを採用しておりますが、実質的にはSPDがフルレンジを担い、BAが高音域を補完する構成です。そのためやや高音域につながりの不自然さを感じられる事があるのが気になります。

次にイヤホン本体にはステムノズルが金属製。シェル本体に樹脂製、フェイスプレートにはアルミニウム合金を採用し高級感のある外観としています。

最後に付属ケーブルです。高品質銀メッキ無酸素銅(OFC)線の編込み線を採用。元々中華ケーブルメーカーの利点を活かしたものとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしているところもありますが、付属として必要十分な高品質線材を採用しています。

 

※宜しければ平面駆動ドライバの搭載モデルの過去記事もご参考ください

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Trn XuanWuの納期として今回HiFiGoでオーダー、1週間強で届きました。現在(2023/1/14)は国内amazonでもPrime扱いとなっています。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なくほぼ回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販のリスクです。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Trn XuanWu実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングは黒を基調とした商品名とイヤホンイラストがプリントされたスリーブタイプの化粧箱です。

 

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スリーブを外すと内箱の黒地の台座にイヤホンが収納されています。

下側には付属品が収納されています。

 

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付属品は2種のシリコンイヤーピースS、M、Lの2セットに加えTrn新型イヤーピースT-earのMサイズ黒軸1ペアの計3種。ケーブル、ケーブルバンドです。低価格U5000帯として十分な付属品となります。

 

次にイヤホン本体を見ていきます。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせません。低価格帯でよくあるシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションは黒色のみ。

 

次にケーブルをみていきます。

 

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付属ケーブルは4芯銀メッキ無酸素銅(OFC)線材の編込み線のシルバー(白?)カラーです。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はQDCタイプのKZ-C 2ピン仕様。極性はKZと同じ極性の上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に多少引っ掛かりがありますが、タッチノイズは殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からCCA PLA13、XuanWu、Celest Pandamon

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XuanWuは比較的オーソドックスな造形です。Pandamonが特徴的な造形のため、PLA13の一般的な造形と少し異なりますがサイズ感は厚みがあるPLA13の方が大きく見えてしまいます。Pandamonはコンパクトと云えます。XuanWuは一般的なイヤホンと殆ど同じ。PLA13はシェルの厚みがあります。XuanWuは比較的軽量となり、装着時にはその装着感の良さもあり殆ど重量を感じません。

また、XuanWuはステムノズルが金属で、PLA13はステムノズル一体型樹脂シェルです。フェイスプレートもXuanWuとPLA13は金属製となります。

ステムノズルの長さや太さと角度はXuanWuとPLA13がほぼ同じ。Pandamonが太くやや短め。角度はやや起きています。

また、ステムノズル部には三機種全てにフィルターがあり異物混入による故障を防げます。XuanWuは繊維フィルタを採用しPLA13同様のタイプ。Pandamonの金属フィルタと異なり音質に影響があるタイプです。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、装着感はステムノズルの長さや太さに影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。

 

最後に付属イヤーピースです。

 

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付属イヤーピースは音質の好みで使い分け可能な3種のタイプです。注目は新型T-earイヤピです。某メーカーのイヤピを彷彿させるもの。傘はしっとりと柔らかい中にコシもありフィット感は良好です。音質的には高音域をやや減衰させるタイプです。

黒傘はく高音と低音をしっかりさせるバランスタイプ。白傘は開口部が大きく、中高音域をクリアにするタイプです。

音質的には好みにもよると思いますが、白傘タイプが個人的にはしっくりきました。このイヤーピースを私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Trn XuanWu音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属白 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「癖のある高音域は華やかで明るく派手に鳴らす。平面駆動らしい中音域としっかりと鳴る低音域のドンシャリ」でした。

箱だしでは高音域にやや荒さと膨らむ低音は緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音は締まった音になり高音域も荒さが落ち着きました。

 

音場

普通の広さ。前後の奥行はそれ程を感じません。左右の空間もそれほど広さを感じません。

 

高音域

煌びやかで明るい華やかな鳴り方は、必要以上に華やかさを感じるような鳴り方です。想像よりも刺さるギリギリのキンキンと鳴る感じは、高音好きには刺さるのかもしれません。誇張された煌びやかさは響きや余韻を楽しむというよりは、瞬発的なキレの良い音。超高音域までの伸びはそれ程ありませんが、かなり攻めた高音域であり刺さりや尖りを感じることがあります。その分存在感は抜群です。悪く云えば描写よりも音圧で勝負している音。良く云えば高音域を余すことなく表現する為にギリギリを攻めたシャープな音。高音域のBAが仕事をしていることが分かり易い音です。ゆったりとした音数の少ない曲では小さな音も拾ってくれる印象ですが、繊細に鳴らすというよりは大雑把に鳴らしている音は、細やかな音を描写するのは得意ではない印象です。

 

中音域

空間は広さを感じられず、普通からやや狭い印象です。広さを感じない空間に華やかに鳴る音は、平面磁気駆動ドライバの特徴を感じられ複数ドライバのような音数の多さを再現しています。しかし複数ドライバでよくある音が重なり中心に集まる団子感や音がゴチャつかずに、分離の良さは感じます。高音域よりも解像感のある音の大小を適切に描写してくれます。ボーカルはクリアで近い位置から聴かせてくれ、ややドライ気味なものの息遣いを身近に感じられます。

 

低音域

量感は適度に抑えられ、余韻を楽しむような広がりはありませんが、タイトな面白みのない音ではありません。適度に強さのある芯を感じられる締まった音。全体的な印象として締りとキレは良好で音の強弱や音階を淡々と描写します。ベースラインは追えますが、前に出すぎる事はありません。重低音の沈み込みはそれほど深さを感じませんが、芯の強さを感じる音。

 

出音のバランス

一言で云えば華やかで明るい中高音寄りの弱ドンシャリ。出音は高音の主張が強く低音は適度に強さがあるので万人受けし難いバランスです。高音強調の弱ドンシャリバランスという印象です。

 

高音の華やかさは少々やり過ぎの感じの印象ですが、低音はTrnの得意な中高音域をマスクしない見通しの良さを確保した締まりのあるタイトに鳴るバランス。やはり高音域が誇張された印象を受け、不自然さを感じます。確かに多少誇張することで高音は煌びやかで響きも良く華やかに明るく鳴り解像感を高く感じてしまいますが、不自然な金属の響きだけが耳に残ります。Pandamonの高音がXuanWuに比べると地味な音に聞こえてしまうかもしれませんが、僅かに誇張したバランスが解像感と音楽性を両立させており「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と昔の人は言っています。

それでもゆったりとした音数の少ない曲では小さな音をかき消さずに描写してくれますが音圧は強め。超高音までの伸びももう少しといったところ。強めの音で尖り刺さりを感じられるバランスは長時間のリスニングに影響を与えます。そのため解像感の高さよりも音楽性を重視した音という印象です。

一方中音は高音域よりも落ち着いた華やかさが心地良い。凹みを感じ難くボーカルと楽器の音はやや後ろ辺りの離れた位置に感じられますが、曲によって平面的に感じられます。中音域の音は統制されており、空間の見通しも良くクリアです。音の描写力は良好で解像感の高い分離の良い音を感じられます。

ボーカルは近い位置からクリアで聴きやすく、高音や低音の音に埋もれません。中音に重なり、かき消されることはありません。声色はややドライ気味なものの息遣いを感じますので、ボーカルを中心に聴きやすい反面、しっとりとした曲との相性は感じます。

低音は量感は適度に抑えられ、締まりのあるタイトな鳴り方のため余韻を楽しむような広がりはあまり感じません。締りの良い音はキレも良い鳴り方でなんでもこなす万能な低音域はアップテンポな曲から低音はバラードなどのしっとりとした雰囲気の良い曲との相性も悪くはありません。中高音寄りの弱ドンシャリの出音は決して低音を犠牲にしていません。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、芯のある強さがあります。明るく華やかに鳴る高音中音域をキレの良い低音は音楽を楽しく聴く事ができます。

 

Pandamonとの比較では中音低音の音は似ていて、高音域が強調された華やかさがあり、低音域はほぼ同じ。価格帯が上のクラスのKirinとは全く性質が異なる低価格帯によくある元気で明るいサウンドバランスはPLA13の高音域を少々やり過ぎにし、音場は狭めにボーカルを前に出した音質傾向と云う印象です。正直SPDのみのPandamonの方が高音域中心に低音域も適度に聴かせることでバランスの良い音づくりという印象です。そういう意味でXuanWuはTrn V90Sを思い出すTrn系のドンシャリサウンドと云えそうです。一方、Pandamonでも採用されている平面磁気駆動ドライバSPDは従来の円形PDよりも荒さがあるのは印象でBAではなくPiezドライバだったら?という想いが生まれています。Hook-Xはそういう構成ですから。

とはいえ、ポジティブな面として中音域では平面駆動らしい繊細な音を奏でてくれます。一方でやや線が細くなる部分もあり、響きもそこまで感じません。TrnのSPDは分りませんが、Celest Gumihoは第二世代SPD全音域を満遍なく鳴らせるようにしているらしいので、恐らくGumihoと同様世代のドライバなのかもしれません。

 

※以前のCCA PLA13のレビューもご参考ください

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まとめるとTrn XuanWuはBAとSPDのハイブリッド構成を採用することで平面磁気駆動ドライバ搭載モデルのエントリー機として安価に平面磁気駆動ドライバを試してみたい方や平面磁気駆動ドライバのみでは高音域が物足りない方にハマるかもしれません。その音質傾向は高音域が強調された中高音寄りの明るい華やかな弱ドンシャリサウンドは高音好きへのTrnの回答かもしれません。

XuanWuで採用されたSPDはPandamonで採用された第二世代SPDとは異なりそうです。そういう意味では安価なSPDの改良型が昨年のトレンドである平面磁気駆動ドライバを引き続き継続していくのかもしれません。

なお、XuanWuはリスニング用途としてのバランスであり音楽を分析的に聴きたい方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   XuanWu ≧ Pandamon ≧ PLA13 (出音の強さ)

中音   PLA13 ≧ Pandamon ≧ XuanWu (出音の強さ)

低音   Pandamon ≧ PLA13 ≧ XuanWu (出音の強さ)

ボーカル XuanWu ≧ Pandamon ≧ PLA13 (出音の強さ)

 

 

4. Trn XuanWuの総評

Trn XuanWuはBAとSPDのハイブリッドドライバ構成によりSPDのみでは不足する高音域を補う意図を感じられる音質は少々やり過ぎた印象もありますが、従来の平面磁気駆動ドライバを安価に置き換えるSPDの登場により新たな技術が生まれるそんな期待をさせてくれました。今後SPDの完成度が上がることで低価格帯でも複数ドライバに頼らずに高音質を実現してくれる日もそう遠くないのかもしれません。

XuanWuは高音域強調の中高音寄り弱ドンシャリは高音好きにハマるかもしれない音質傾向であり、そういう意味でTrnらしさを垣間見せてくれましたが、後継機に期待したいと思います。

 

最後に、今回は今年12月に発売された低価格U5000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年1月14日)はHiFiGoで3,000円台後半で販売し、国内amazonではPrime扱いの5,000円台となっています。海外通販でもHiFiGoの発送は早く届くのも早い印象があります。これまでの中華イヤホンの中では手頃な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、低価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

XuanWu

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ (高音強調が苦手の方★4)

※☆0.51.0

 

Pandamon

以下、付属ケーブル、付属赤軸イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

PLA13

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル4.4mm、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの低価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

QKZ x HBB Khan レビュー

 

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格A5000帯で発売された2DDモデルのQKZ x HBB Khanについてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのLinsoul Audio(@Luke32344614)で取り扱いがあります。

 

 

AliExpressでも取扱があります。

 

ja.aliexpress.com

 

Linsoul Audioの直販サイトはコチラ

QKZ x HBB Khanwww.linsoul.com

 

 

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1. QKZ x HBB Khanについて 

QKZと云えば、これまで中華イヤホンのオマージュ製品を安価に発売している異色のメーカーという認知度でしたが、数年前に登場した同社のVK4が1,000円以下で買えるのに音は良いと評判となりました。それは見た目が某中華K社のイヤホンなのに中身が某中華T社のドライバと同じでは?と話題となったことが記憶に新しいです。尤も、同社の商品ラインナップには中華オマージュ性質上やはり音質的には当たり外れがありまして、そういう意味でも同社のVK4は中華イヤホンファンにインパクトを与えてくれました。

そんなQKZも昨今の中華イヤホンのレベルアップと歩調を合わせ従来のイメージから脱却すべく、昨年末に発売したQKZ x HBBは海外レビュワーのHBBとのコラボモデルとして注目され、販売価格2,000円台という低価格帯1DDモデルとして音質評価も高いモデルとして注目されています。特に低音好きには評価が高いようです。

そのQKZが次の一手としてコラボモデル第二弾の2DDモデル QKZ x HBB Khanを今年2023年1月に発売しました。Khanでは先ず注目されるのが、前作の1DDに対し2DDというデュアルダイナミックドライバ構成となっていることです。中華イヤホンの低価格帯でよくある1BA+1DDハイブリッド構成とは異なり、大小径のサイズの違う二つのダイナミックドライバ(DD)がそれぞれの音域を担当し、二つのドライバのクロスオーバーチューニングを含めHBBの監修によってどのような音を聴かせてくれるのか?楽しみで仕方がありません。

 

それではQKZ x HBB Khanのスペックを詳しく見ていきます。先述の通り1BA+1DDハイブリッドモデルではなく異なる直径のDDを二基採用したデュアルダイナミックドライバです。7.8mm径の小径ダイナミックドライバは高音域~中音高域を担います。中低音~低音域は10mm径の大径ダイナミックドライバを採用し、振動膜には液晶ポリマー(LCP)を採用しています。このLCP振動膜は非常に薄膜であり音の立ち上がりの良さによるキレの良いサウンド特性を実現しています。これを大小径の二種とすることでそれぞれの特性を活かした音色をHBBのチューニングにより得ています。更にダイナミックドライバの応答性を高めるために、強力な磁気コイルを組合わせることで、力感と質感を生み出します。実際にKhanを聴いてみればキレの良さと繊細さを感じる高音に、厚みある中音域。豊かさを感じられ情感のある低音が好印象です。

LCPダイヤフラム(=振動膜)採用のドライバは昨年のトレンドであり、キレの良い解像感の高い音を実現しやすいのが特徴です。しかし低価格帯に採用されるドライバではLCPに拘らずフルレンジを担うには荷が重く低価格帯のコスト制約の中では一定の水準の音を追求するのは難しいのが現状です。例えば中高音の解像感を重視すれば、反面低音が軽くなるという欠点があります。そのため1BA+1DDハイブリッドの様な互いに補い合うドライバ構成が必要となったり、最近ではLCP/PUの複合ダイヤフラムによってそれを対応する等、各社の技術の研鑽が我々中華イヤホンファンを楽しませてくれています。

次にシェル本体は樹脂製。フェイスプレートにはCNC切削のアルミニウム合金製と樹脂の複合材です。注目はシェル内部の樹脂製音導管、音響キャビティ構造を採用し、それを3Dプリンタで造形しています。音質を突き詰めればシェルの材質による音への影響は無視できません。金属製シェルは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなります。響きの美しさは金属が一枚上手ですが、良い事だけではなく、反響が強くなることで不自然な残響音となる場合があります。一方樹脂製シェルでは高音域の響きが吸収されてしまう傾向があり、金属シェルと同じ音圧をにするために高音域の減衰を考慮しやや強めに鳴らす必要があります。加えて、音導管の有無も重要でこのバランスが難しいのは言うまでもありません。Khanでは単純な樹脂シェルに留めずに内部樹脂キャビティ構造としての音導管を用いて音響チューニングを実現しています。

そして複数ドライバ機で最も大事なことですが、異なる種類や複数のドライバを搭載するモデルでは各ドライバの担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングが重要です。低価格帯はもとより、中価格帯のモデルでも曲によってつながりにやや不自然さを感じる場合があります。前述の通りQKZ x HBB Khanでは7.8mm小径と10mm大径のLCPダイヤフラムダイナミックドライバを採用しておりますが、一聴した限りつながりの不自然さは抑えられておりQKZ x HBBのチューニング技術の巧さを感じられます。

最後に付属ケーブルです。高純度無酸素銅(OFC)を編込み線を採用。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしているところもありますが、付属として必要十分な高品質線材を採用しています。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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QKZ x HBB Khanの納期としては現在(2023/1/13)国内amazonでprime扱いですので当日発送、翌日配達で直ぐに届く安心感があります。AliExpressでオーダーした場合でも感染症の影響は回復傾向であり国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定してきました。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. QKZ x HBB Khan実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたスリーブタイプ。スリーブ表面にはメーカー名やイヤホンイラストなどが賑やかに印字され、裏面にはスペックなどが記載されています。

 

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スリーブを外すと内箱が。こちらも黒を基調とし、中央部にQKZロゴが描かれています。

 

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内箱の上蓋を開けると黒地の内装にイヤホンが収められています。その下側には金色のHBBロゴのメダルが収められています。


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メダルの収納された内装を開けると、その下にイヤホンケースが収められています。

 

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イヤホンケースには付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースのS、M、Lの白色黒軸タイプ3種が1セット。他にはケーブル、イヤホンケース、メダルです。中価格A5,000帯として必要最低限の付属品となります。

 

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樹脂製イヤホンケースはQKZロゴ入り。

 

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謎のメダルが付属します。500円硬貨よりも大きく重い。片面にHBBとQKZロゴが刻印されています。用途はわかりませんが記念メダルとして飾ろうかな。

 

次に本体を見ていきます。

 

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樹脂シェルの艶消し黒に対し、金属製フェイスプレート中央樹脂部には片側にQKZとHBBのロゴがあり、コラボモデルを前面に出したデザインと云えます。比較的シェルの造形はオーソドックスなものでシェルの角は丸みがあり装着感は悪くありません。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格A5,000帯として綺麗な仕上りでシェルの合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは黒色のみ。落ち着いた色調は普段使いにも問題なさそうです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質OFC線を採用しています。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はQDC、KZ-Cタイプ2ピン仕様の極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に引っ掛かりは少なく、タッチノイズも抑えられています。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にしなやかなさはありますので取り回しは悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からTruthear x crinacle ZERO、QKZ x HBB Khan、TiNHiFi C3

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KhanとC3、ZEROとの外観の比較として、サイズ感はKhanとZEROはほぼ同じ。C3は横に大きく厚みがなく僅かに体積は小さい印象。造形はKhanとZEROはオーソドックスで似ていて、C3は耳甲介艇の突起があります。

ステムノズルの長さと太さ、角度はKhanとZEROがほぼ同じ。僅かにZEROが長い。C3は角度と太さはほぼ同じですが、短くなっています。

Khanはこの中では比較的オーソドックスな造形ですが、三機種共に耳への収まりが良く装着感は悪くありませんし、C3はその中では最も良好です。

イヤホンとケーブルを接続するコネクタにはKhanがKZ-Cタイプを採用し、他がフラット2ピンコネクタ仕様。KhanはQDC、KZ-Cタイプのためリケーブルの際は注意が必要です。

シェルの材質は、Khanは樹脂と金属のハイブリッドに対し、ZEROとC3はオール樹脂製です。

重量はKhan含め全て比較的軽量。Khanは耳への装着感の良さからは殆ど重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすく三機種共にやや太めと云えますのでイヤピ選びは重要です。

ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり穴が大きめのタイプです。音質への影響のあるタイプと云うよりは異物混入による故障を防ぐタイプの様です。

三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通り三機種全てステムノズルが比較的太めなものの、実際の装着感は悪くなく、寧ろ付属イヤーピースの形状からは耳に密着させ装着する想定の様子。付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは白傘黒軸の一般的な形状の丸穴径、傘の裾野が弾丸タイプ。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属白傘黒軸は中高音のクリアさに加え、開口部が小さめでステム開口部からイヤピ開口部までの軸管内部が長めになる構造の為のため、低音はしっかりと感じられる印象です。耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入し栓をすることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択してください。

幸い私は付属イヤーピースでフィッティングに問題なく、音質的にも十分と感じられた為、Mサイズで耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. QKZ x HBB Khan音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「高音は控えめ。中音は下の方に厚みがありますが上の方は見通しが良いすっきりした音。低音は雰囲気が良くしっかりと鳴る音。中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まり、雰囲気の良い音という印象です。

 

音場

空間は普通。前後はそれほど奥行を感じませんが、左右はやや広さを感じられます。立体感はそれほど感じられず、空間の広さもそれ程感じません。狭くはありませんが広さを感じる程ではない普通程度という印象です。

 

高音域

やや抑え気味に感じられ煌めきは諄さもしつこさもなく響きも適度。上までの伸びやかさもそれほど感じません。その分尖りや刺さりとは無縁です。抑え気味の印象のある高音ですが存在感は必要十分に華やかに鳴りますが、常に前に出るような出しゃばった感じの無い音。

 

中音域

高音同様に比較的にお淑やかな印象を持ちますが、空間に響き見通しの良い中高音に対し、厚みある中低音が華やな部分を引き立てます。音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは抑えられており、音の立ち上がりの良さから分離や解像感は高い印象です。ボーカルはクリアでやや近め。自然で暖かさのある声色は息遣いを感じられ生々しさも感じ易くなっています。

 

低音域

量感は多くありませんが十分で響きや広がりを感じます。音階や強弱といった低音域の解像感の高い雰囲気の良さは情感を感じられる鳴り方ですが、決して高音や中音域をマスクすることはなく見通しの良い空間を得られています。ベースラインは追いやすい。重低音は沈み込みは深さがあり、強さもあり中々のものです。

 

出音のバランス

一言で云えば中低音寄りのドンシャリ。高音域は相対的に控えめですが、主張の強い音ではなく、必要な音を必要なだけ誇張せずに自然に鳴らします。中音域は低音のバランスが強い印象なのにそれにマスクされずクリア。見通し良く整理された音。低音域が魅力的で情感を感じられる鳴り方がKhanの特徴です。

 

高音の煌めきや響きの良さは前に出るような主張ではなく、必要なだけ鳴る自然な印象。超高音までの伸びはそれ程感じませんがなめらか。その分不快に感じる刺さりや尖りとは無縁です。低価格帯で採用されているようなBAでは強く大きな音で強調されシャリ付く演出感のある不自然な鳴り方ではありません。全体を相対的に見れば控えめのバランスという印象です。

中音は僅かに凹みを感じます。ボーカルと楽器の音はボーカルの周りから少し離れた横や後ろ辺りに位置し奥行はそれほど感じません。低音が強めのイヤホンでは中音が曇ってマスクされたような音に感じる事が多いのですが、Khanでは見通しの良い中音域は分離が良く統制されています。

ボーカルは近めの位置からクリアで聴きやすく、周りの音や高音や低音にも埋もれません。声色は暖かく息遣いを感じられ生々しさも感じられます。女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめます。

低音は量感は十分で響きや広がり、音階や強弱を情感豊かに描いてくれます。それでも低音が強調された強く大きく鳴る音というよりは解像感の高い雰囲気の良さを感じられる質の高い音です。音階や音の強弱の掴みやすさを重視した解像感の高い鳴り方は雰囲気の良い曲との相性は良好ですし、ベースラインが気持ちよく聴こえます。

重低音は沈み込みは深く強さを感じられます。低価格帯の様なただ強く大きく鳴らす音ではなく、情感を感じられます。低音域が高音や中音域をマスクせずに雰囲気良く鳴らす音は音楽を楽しく聴く事ができます。

 

箱出し一聴した時点でTiNHiFi C3に近しい出音と感じました。C3はもう少し高音域が強めに感じますし、低音域はKhanの方が重厚感があります。一方でC3との大きな違いは高音と中音域です。どちらも自然な高音中音域ですがKhanの方が見通しの良い音であり、華やかさはC3の方が感じられます。この辺りは好みの差と云えるでしょう。両方共に同じような価格帯となりどちらもリスニング寄りですので、分析的にも聴きたい場合はKhanでしょう。しかし、音楽的に聴きたい場合はC3をお勧めします。

次に興味深いのはTruthear x crinacle ZEROとの比較です。ZEROもLCPダイヤフラムの2DDモデルですが、音の傾向が違います。Khanの中低音寄りに対し、ZEROは中高音寄りです。ZEROのレビューを公開できていませんが、下書きの状態の記事を読み返すとこちらも別の海外レビュワーとのコラボモデルでチューニングを監修しており、二人の音に対する嗜好の違いを感じられます。何れ公開する予定ですので、気長にお待ちいただければと思います。

 

まとめるとQKZ x HBB Khanは中低音寄りのドンシャリです。低音が描く情感はよくある低音強めホンで感じられる中高音域をマスクしていますが、Khanでは見通しの良さが特徴です。低音の方が出音が多めに聴こえるために低音重視と誤解されるかもしれませんが、実はKhanの高音中音域の見通しの良いリスニングサウンドは全体の出音のインパクトを低音に印象付けながらも分離と解像感の高い音は、音楽を楽しく聴く事ができるイヤホンです。

一方でモニター用途としては分が悪く、聴いていて楽しいドンシャリバランスと云えるため低音域以外は不向き。そして高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方はもの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   ZERO ≧ C3 ≧ Khan  

中音   ZERO ≧ Khan ≧ C3

低音   Khan ≧ C3 ≧ ZERO

ボーカル Khan ≧ C3 ≧ ZERO

 

 

4. QKZ x HBB Khanの総評

QKZ x HBB Khanは同社が海外の有名レビュワーとコラボしたモデルの一つとなりますが、HBBの嗜好を反映したモデルと云えそうです。そのサウンドはクリアな高音中音域に雰囲気の良い低音域により音楽を楽しく聴く事ができます。ちょっと良いイヤホンが欲しいという、約5,000円で良い音を聴きたいというニーズに応えてくれるモデルと云えます。

 

最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年1月13日)は国内amazonやAliExpress等で発売されておりますが、国内amazonでは国内amazon倉庫発送となったことと昨今の円安のため、国内amazonでの購入がお勧めです。AliExpressでは少し安価に購入できますが本国発送のため、納期が掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

Khan

以下、付属ケーブル、付属イヤピ M、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

C3

以下、付属ケーブル、付属イヤピ M、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

ZERO

以下、付属ケーブル、付属イヤピ白 M、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A5K帯中華2DDイヤホンの商品のレビューとなりました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

TiNHiFi C3 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、中価格A5000-U10000帯で発売された1DDモデルのTiNHiFi C3についてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのLinsoul Audio(@Luke32344614)で取り扱いがあります。

 

 

AliExpressでも取扱があります。

 

ja.aliexpress.com

 

Linsoul Audioの直販サイトはコチラ

TINHIFI C3www.linsoul.com

 

 

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1. TiNHiFi C3について 

前回のC2のレビューでも触れた通り、TiNHiFiは中国のオーディオメーカーです。初期はTiN Audioという名称でしたが、数年前に現在のTiNHiFiという名称に変更しています。初期のTiN Audioの頃に発売したT2やT2 Pro及び、T3は、高音域特化の見通しの良いクリアな高音が特徴的な音質傾向でしたが、その後のT2 plusやT3 plusでは一変。音楽的なバランスの良い万人に受ける音質は多くの中華イヤホンファンからも支持され、音質に定評のあるメーカーとしてその地位を固めています。

これまでにTiNHiFiの製品を複数レビューをしてきましたが、それらはどれも高音質と云え特に先述のT2やT3シリーズのplusモデルに加え、その後登場したT2 Evo等は価格に対する音質の良さはコストパフォーマンスの高い製品です。

そのTiNHiFiからT2シリーズとは異なる展開として新たにCシリーズが登場し、C2とC3を発売しています。前回レビューしたC2はT2シリーズ同様に金属シェルを採用していますが、C3は最新T3シリーズ、T3 plus同様に樹脂シェルを採用しており、C2とC3に有意差を与えていることを窺わせます。それはT2 plusとT3 plusの関係にも現れており、どちらも初期の高音域特化からは離れた全音域でバランス良く鳴らす音質傾向としながらも金属シェルによる高音域の響きを活かした寒色寄りのT2 plusに対し、T3 plusでは樹脂シェルによって金属音の過度な響きを抑え、中低音域を豊かにした暖かみのある音とシリーズによって音質傾向を変えていることを窺えます。そしてC2がT2 plusと近しい音造りであること。C3を一聴した時にT3 plusと同じ傾向となっている印象を受けたことから、TiNHiFiがそれを意図してモデル毎に音づくりをしていると推察しています。

さて、今回はTiNHiFiの最新Cシリーズ、第二弾としてC3を入手しましたので、C2や同クラスのCADENZAとの比較を含めながら記事をまとめます。

 

TiNHiFi C3のスペックですが、シンプルなシングルダイナミックドライバ(1DD)モデルです。C3のダイナミックドライバには10mm径の複合素材のダイヤフラム(振動膜)に加え、強力な磁気コイルを採用しています。その複合素材の振動膜には今年のトレンドの一つである薄膜液晶ポリマー(LCP)層とポリウレタン(PU)層を二重複合構築した物を採用しています。この複合素材振動膜は、一つの素材の振動膜を使用したダイナミックドライバのような音の均一性を保ちながら、複数ドライバを搭載したモデルのような快活な音色が特徴となります。そして、強力な磁気コイルN52とデュアルキャビティによりレスポンスの良さと力強い音を実現することで、複数ドライバと遜色のないポテンシャルを持つダイナミックドライバとなります。

以前のレビューでも触れましたが、今年のトレンドとなった薄膜LCP振動膜採用のダイナミックドライバはキレの良い解像感の高い音が特徴です。しかし、やや低音域が軽くなる印象があり、それをPUとの二重複合層とすることで、しっかりとした低音を得ることができる高特性ダイナミックドライバと云えます。

次にシェル本体はオール樹脂製です。同社は創業当時から金属シェルモデルを得意としてきましたが、T3 plusでは一転、樹脂シェルが採用され、このC3でも樹脂シェルが採用されています。フェイスプレートにはカーボン調のデザインが施され、樹脂シェルの軽い装着感が特徴です。

音質チューニングを突き詰めればシェルの材質による音への影響は無視できません。金属製シェルは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなります。響きの美しさは金属が一枚上手ですが、良い事だけではなく、反響が強くなることで不自然な残響音となる場合があります。一方樹脂製シェルでは高音域の響きが吸収されてしまう傾向があり、金属シェルと同じ音圧を得るためには高音域の減衰を考慮しやや強めに鳴らす必要があります。加えて、音導管の有無も重要でこのバランスを含めたチューニングは難しく、TiNHiFiの技術力の証明となりそうです。

最後に付属ケーブルです。高品質銀メッキ銅線は1本が極細線を束ね1芯とし4芯撚線ケーブルです。イヤホン側接続コネクタ部には0.78mmの金メッキ2ピンを採用した中価格帯中華イヤホンとして質の高いケーブルです。更に、4芯撚線ケーブルはしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、C3ではバランス接続を試したい方以外はリケーブルする必要を感じません。

 

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※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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TiNHiFi C3の納期としては現在(2022/12/24)国内amazonでPrime扱いですので当日発送、翌日配達で直ぐに届きます。私の場合は本国発送でしたが、AliExpressでオーダーした場合と同様に感染症の影響は回復傾向であり国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定しており、10日前後で届きました。ほぼ平時に戻った印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. TiNHiFi C3実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは白を基調とした小箱タイプ。表面にはメーカーロゴと商品名のみというシンプルなもの。

 

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上蓋を開けるとグレーの内装にイヤホンが収められています。

内装の下側には付属品の入った小箱が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セット。他にはケーブルとケーブルバンドです。中価格A5000帯として必要最低限なものが揃った付属品となります。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は丸みを帯びたカスタムIEM風のもの。シェルは比較的コンパクトですが、厚みがあり耳甲介艇の突起のある造形となります。この突起は個人差がありそうですが、樹脂シェルの軽さも相まって装着感は良好と云えます。フェイスプレートにはカーボンデザインが施され、その中央にメーカーロゴがある比較的シンプルなデザインは普段使いに重宝しそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格A5000帯として綺麗な仕上りでありシェルの合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは黒のみです。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質4芯銀メッキ銅線を撚線としたもの。価格帯的にはかなりケーブルにコストを掛けたものと云えます。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様の極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルはしなやかでタッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くない。シュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にしなやかで取り回しは悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からTiNHiFi C2、TiNHiFi C3、KiwiEars CADENZA

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C3とC2、CADENZAの外観の比較として、サイズ感はC3がCADENZAよりも僅かに大きくC2が一番コンパクト。シェルの厚みはCADENZAの方がやや厚みがあります。C2がコンパクトなためにC3が大きいと誤解されそうですが、一般的には十分コンパクトな部類になると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはこの中ではC2が長くC3とCADENZAがほぼ同じ。角度は三機種がほぼ同じ。太さはC2がこの中では細くなりますが、一般的にはやや太めの部類。CADENZAが一番太く、それらの中間がC3です。

C3はこの中ではそのコンパクトさが目立ちませんが、一般的なサイズ感のCADENZAと比較しても決して大きいという事はありませんし、オーソドックスな造形と云えます。何よりも意外と耳への収まりが良く装着感は良好です。

イヤホンとケーブルを接続するコネクタにはC3とCADENZAはフラット2ピン。C2は埋め込み式2ピンでリケーブルの際はコネクタ部の長さに注意が必要です。

シェルの材質は、C3とCADENZAはオール樹脂製。C2はオール金属製となります。

重量はオール金属C2にやや重量を感じます。C3とCADENZAはこの中では比較的軽量です。とはいえ、C2は思ったよりも耳への装着感が良く、それほど重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくC3とCADENZAは太めと云えますのでイヤピ選びは重要です。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。C3はメッシュフィルタなので他の機種よりも音質への影響のあるタイプと云え、他は異物混入による故障を防ぐタイプの様です。

三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りC3はステムノズルがやや太めなものの、実際の装着感は悪くなく、付属イヤーピースで耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着する想定の様子。付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースはC2と同じ黒色の一般的な形状の丸穴径、傘の裾野が弾丸タイプ。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属イヤピは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプの印象です。軸はやや短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入し耳へ密着させることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属イヤーピースで私はフィッティングが上手くいきましたしし、低音が逃げる事もありませんでしたので、そのまま付属を使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. TiNHiFi C3音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属イヤーピース Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中低音に厚みのある全体的に華やかな音。高音はやや抑えられ低音はしっかりと鳴る音。やや中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まり、バランスの良い音という印象です。

 

音場

普通からやや広め。前後はやや奥行があり、左右にやや広さを感じられ、立体感を感じられますが、空間の広さはそれ程感じません。

 

高音域

煌びやかさはありますが響きは抑え気味。上までの伸びやかさはそれ程感じらませんが、十分な存在感があります。華やかに鳴りますが、騒がしさを感じるような常に前に出る、行き過ぎた感じはない適度なもの。最近の中華イヤホンの傾向と同じ様に刺さりや尖りは感じません。解像感も良好ですが、鮮明さはそれ程感じない。

 

中音域

華やかさがある鳴り方ですが、音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じ難く立体感のある鳴り方。音の立ち上がりは良く解像感も良好です。ボーカルはクリアで僅かに近い位置。声音は自然でニュートラルな印象です。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりも感じられますが、諄さもなく音階や強弱といった低音域の解像感は良好。ベースラインは追いやすく、ボーカルよりも前に出るような不自然さはありません。重低音は沈み込みは深く、強さがありますので過不足はありません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りの弱ドンシャリ。高音域はやや暗めながらも必要な量をしっかりと鳴らす音。低音は適度で過不足のない鳴り方は出音のバランスが良い音。今年のトレンドの一つ、ハーマンターゲット近似の音。

 

高音の煌びやかさは十分に感じられますが、響きは抑え気味。そのため華やかさはありますがしつこさは感じない。どちらかと云えばやや暗めに聴かせてくれます。それでも必要な時に必要な量を鳴らし不足を感じる事はありませんが、中華イヤホンの明るい高音域に慣れた方には不足に感じられるかもしれません。演出感の少ない不快なシャリつきもない綺麗な鳴り方は耳心地の良い音。超高音までの伸びやかさはなめらかさはありますが、中低音域の音圧にやや隠れ気味。そのため不快に感じる刺さりや尖りは感じません。小さな音でも感じ取れるものの鮮明さはそれ程感じませんので解像感や描写はやや丸みを感じられますが、それが全体とのバランスを整えています。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルが僅かに近い位置に対し楽器の音はその周りから少し離れやや後ろ辺りに位置し奥行を感じられます。厚みのある華やかさがありますが、その音は整って聴こえ解像感は良好です。

ボーカルは僅かに近い位置からクリアで聴きやすく、周りの音や高音や低音にも埋もれません。声色は自然で息遣いを感じられ艶を感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は適度で響きや広がりを感じられます。一方で締まりのある音は、音階や強弱を感じ取れる、解像感と雰囲気の良さを感じられるバランスを整えた音。締まりのある音は音階や音の強弱を誇張せずに描写してくれます。そのため雰囲気の良い曲でも低音がだらしなく鳴るようなことはありません。

重低音は沈み込みは深く、強さを感じられる音。低価格帯でよくあるただ強く鳴らす音ではありません。適度な低音域は中音域に厚みを持たせてくれます。

 

同社のC2と比較した場合、C2の方が高中音域の主張を感じます。超高音域の伸びも同様です。一方、低音域はC3の方がしっかりと鳴らし、中音域に厚みがあります。そのため全体とのバランスを考慮すればC2が寒色傾向でC3が暖色傾向という印象です。同社のラインアップではC2がT2 Plusの系譜と云え、C3はT3 plusの流れを汲む系譜と云えそうです。

C2の弱ドンシャリに対し、C3も弱ドンシャリと云えますが、音色が寒色と暖色傾向という違いがあります。特に中低音域の厚みはC3の聴きどころであり、最も「らしさ」を感じられますので、やはりオールドファンからはTiNHiFiらしい寒色傾向のC2の方が好きという方は多そうです。それでもC3の音質は過去のTiNHiFiの音を知らない方にとって厚みのある音は、適度な高音と中低音域に充実感のある音は高音質モデルという印象を持つと思います。C3はTiNHiFiのラインナップの中でも万人向けを重視したモデルとして好評を得る事ができそうです。

 

次にCADENZAとの比較では、CADENZAがやや中高音寄りのドンシャリです。以外にも低音がしっかりとした音は、高音域は鮮明にしっかりと鳴らし、中音域を華やかに彩らせた高中音域を聴かせる硬質な音です。そのためC3の高音域をやや暗めに鳴らし中低音域を厚めに充実感のある音とは真逆の音と云えると思います。

 

※過去レビューも参考ください

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まとめるとTiNHiFi C3の弱ドンシャリはやや高音域をやや暗めに鳴らしながらも中低音域を充実させた音造りが万人受けしやすい音。特に海外では人気の出やすい音造りが日本国内では新陳代謝の激しくライバルの多い価格帯でやや苦戦しそうな印象ですが、価格帯では間違いなく高音質という評価と云えます。

一方で従来のTiNHiFiの音が好きな方には聴いていて楽しいドンシャリバランスと云えるため評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   CADENZA ≧ C2 ≧ C3 

中音   C3 ≧ CADENZA ≧ C2

低音   C3 ≧ CADENZA ≧ C2

ボーカル C3 ≧ CADENZA ≧ C2

 

 

4. TiNHiFi C3の総評

TiNHiFi C3は同社のA5000帯モデルとして、従来の同社の音ではない普通に高音質のイヤホンです。T2シリーズの初期の高音域特化モデルというマニア向けから一変しています。C3の中低音域を充実させた音造りは一般層には受けが良いと思います。特に海外では高評価となりそうな音質傾向は日本国内のマニアには高音域中心の音が好まれる傾向があり、評価は分かれそうです。それ故にこのC3はが普通に高音質と云えますしバランスの良い音を聴かせてくれ音楽を楽しく聴く事ができます。

 

最後に、今回は中価格A5000-U10000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年12月24日)は国内amazonやAliExpress等で発売されております。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。AliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

C3

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

CADENZA

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (硬質な音)

※☆0.51.0

 

C2

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (なめらかな音)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A5K-U10K帯中華1DDイヤホンの商品のレビューとなりました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Celest Pandamon レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A5000-U10000帯で発売された1PD、平面駆動モデルのCelest Pandamonについてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのHiFiGoで取扱があります。

 

 

HiFiGoのサイトはコチラ

Kinera Celest Pandamon 10mm Square Planar Driver In-Ear Earphonehifigo.com

 

 

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1. Celest Pandamonについて 

CelestはKineraのサブブランドです。Celestと云えば、1BA+1PDハイブリッドモデルのGumiho(九尾)が記憶に新しいですが、そのGumihoで採用された平面磁気駆動(PD)はSquare Planar Driver(SPD)という他社とは異なったドライバだったことと、BAとSPDのデュアルドライバだったこと話題になりました。一般的なドライバは円形となりますが、このSPDは名前の通り四角形のドライバとなります。加えて、PDドライバモデルが6,000円台という安価な販売価格インパクトがありました。そして今回同社はこのSPDを改良した第二世代SPDを一基搭載したモデル、Pandamonを今年最後に登場させています。

2022年の中華イヤホンのトレンドは平面磁気駆動ドライバだったと云えます。昨年までは平面磁気駆動ドライバ搭載モデルは中価格A10000-U20000帯で発売されており、今年同価格帯でTrnがKirinを発売。その販売価格は10,000円台後半でしたが、そこにKZ系ブランドもCCA PLA13を皮切りにKZ PR1を二つのEditionモデルを発売し販売価格10,000円前後と従来の価格帯を大きく下回って登場させ、手を出しやすくなりました。

そこにCelestが更に安価なGumihoを発売し、前述の通り今回のPandamonの発売と攻勢をかけています。

 

※Pandamonのf特(メーカーHP抜粋)

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以前レビューしたKZ PR1同様にメーカー発表のf特を引用します。グラフからはやや高音域寄りにピークがあり、2kを少し超えたところに最大ピークがあります。そこからは高音域に掛けてやや右下がりに振れ幅も大きめに上下しています。音域全体でみるとf特は凹傾向ではありますが、中音域の凹みの少ない高音域寄りのフラット傾向であることがわかります。

 

※CCA PLA13のf特(メーカーHP抜粋)

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次に比較としてKZ系ブランドのCCA PLA13では高音域はPandamonと同様に2kと3kの間に高音域のピークがあり、そこからやや右下がりのグラフです。傾向は同じと云えますが、異なるのは振れ幅が小さめで上下幅も大きめということ。それは高音域になるほど顕著です。そして低音域に最大ピークがあり、高音域の最大ピークよりも高くなっています。音域全体を見ると中音域が凹むよくあるドンシャリサウンドのf特性となっています。

実際にPLA13を聴いてみると低音がしっかりと鳴るドンシャリサウンドなので、見たままという印象です。

 

※Trn Kirinのf特(メーカーHP抜粋)
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Pandamonのf特をみて思いつくのはTrn Kirinです。価格帯は一クラス上となりますが、Kirinのf特とPandamonのf特は全体的に同傾向の印象です。

実際に聴き比べてみると全体の印象は似ていますが、高音域の繊細さと低音域の質感は流石の中価格A15000-U20000帯モデルと云え、PLA13の方が華やかな高音域ですが、低音域も抑えられており、高音やや強めのフラット寄りのドンシャリです。実際の出音は低音域は抑えられたタイトな鳴り方。解像感の高い高音域はPLA13と比べ、華やかでありながらしつこさの無い繊細な音は耳障りが無く、一クラス上の音質を感じられます。

 

以前のレビューでも考察した通り、f特は出音の参考にはなりますがそれで音質が分る訳ではなく聴いてみて音質を評価することが一番だと個人的に考えています。そういう意味ではCelest Pandamonがどのような音を聴かせてくれるのか?楽しみです。

 

さて、Celest Pandamonのスペックですが今年の中華イヤホンのトレンドの一つ。流行りの平面磁気駆動ドライバを片側一基搭載したシングルドライバ構成のモデルです。

先述の通り、PandamonのドライバはCCA PLA13等の平面磁気駆動モデルで採用された直径14mm前後の円形ドライバとは異なり、10mm x 10mmの四角形のドライバを採用しています。PDの円形と四角形の優劣は分りませんが、同社のGumihoに採用されたSPDから第二世代SPDに進化したドライバが採用されています。

イヤホン本体にはステムノズル一体型の樹脂製シェルが採用されています。その名を冠するキャラクターがSUSフェイスプレートにデザインされ、造形も半球体と特徴的となっています。

 

※宜しければ平面駆動ドライバの搭載モデルの過去記事もご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

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Celest Pandamonの納期として今回HiFiGoでオーダー、1週間強で届きました。現在(2022/12/16)は国内amazonでも取扱がありますが、本国発送ですのでHiFiGoでのオーダーと同程度の納期となります。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なくほぼ回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販のリスクです。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Celest Pandamon実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングはイヤホンフェイスプレートが外から見える紺色を基調としたもの。箱の表には商品名キャラクターを印刷したスリーブタイプの化粧箱です。
箱の裏にはイヤホンスペック等が記載されています。

 

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スリーブを外すと内箱の白地の台座にイヤホンが収納されています。

ここにもイヤホン名キャラクターが居ます。


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内箱の内装を外すと箱の底に付属品が収納されています。

 

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付属品は2種のシリコンイヤーピースS、M、Lが2セット。ケーブル、ケーブルバンド、クリーニングブラシ、イヤホンポーチ、ブックチャーム(栞)です。中価格A5000-U10000帯として十分な付属品となります。

 

※クリーニングブラシ

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※イヤホンポーチ
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※ブックチャーム(栞)

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次にイヤホン本体を見ていきます。

 

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先述の通りシェルは半球体です。SUSフェイスプレートのキャラが注目されてしまいますが、イヤホンの造形の方が寧ろ特徴的です。シェル自体は樹脂製で比較的厚みはそれ程ありません。ビルドクオリティには問題を感じられず、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせません。低価格帯でよくあるシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションは黒色のみ。

 

次にケーブルをみていきます。

 

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付属ケーブルは4芯OFC線、撚線のグレーカラーです。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性はKZと同じ極性の上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に多少引っ掛かりがありますが、タッチノイズは殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からKZ PR1 HiFi Edition、Celest Pandamon、KZ PR1 Balanced Editoin

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Pandamonは小ぶりの半球体シェルが特徴的。KZ PR1 Balanced EditionとHiFi Editionは基本的に同じシェルです。そのため、一般的なサイズ感のPR1が大きく見えてしまいます。Pandamonのシェルはやや薄め。PR1は一般的なイヤホンと比べるとシェルの厚みがあります。Pandamonはフェイスプレートが金属プレートを樹脂シェルに被せるタイプでPR1と同じ。そのコンパクトさからもPandamonは軽量となりまが、装着時にはその装着感の良さから殆ど気になりません。

ステムノズルの長さや太さと角度はPandamonは太くやや短め。角度はやや起きています。

また、ステムノズル部には三機種全てにフィルターがあり異物混入による故障を防げます。Pandamonの金属フィルタはオレンジの輪切り状というか車のスポークホイールといった感じの特徴的なものです。音質に影響があるタイプではなさそうです。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、装着感はステムノズルの長さや太さに影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。

 

最後に付属イヤーピースです。

 

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付属イヤーピースは音質の好みで使い分け可能な2種のタイプです。黒傘赤軸はバランスタイプ。黒傘黒軸は軸短め傘低めの開口部が大きいもの。こちらはボーカル等の中音域をしっかりとさせるにタイプです。

音質的には好みにもよると思いますが、赤軸タイプのバランスが個人的にはしっくりきました。この赤軸イヤーピースを私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Celest Pandamon音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属赤軸 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「低音がしっかりと鳴り、高音域は華やかで明るく派手に鳴らす。平面駆動らしい高音と中音域に解像感を感じられる音」でした。注意点としては音量がやや取りにくく普段よりもややボリュームを上げる必要があります。

箱だしでは高音域にやや荒さと膨らむ低音は緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音は締まった音になり高音域も荒さが落ち着きました。

 

音場

普通からやや広め。前後の奥行を感じられ、左右の空間に広さも感じられます。

 

高音域

煌びやかで明るい鳴り方は、必要十分な華やかさを感じるような鳴り方です。必要以上にキンキンと鳴ることもなく、適度な煌びやかさは響きも良く、キレの良い音。超高音域までの伸びはそれ程ありませんが、不快な高音域の刺さりや尖りを感じない整った音は存在感も十分です。悪く云えば音圧は乏しく、描写がやや甘く丸い大人しい音。良く云えば高音域に過不足のない解像感が高いシャープな音。ドライバ一基のモデルとしてはしっかりと鳴る高音域は刺さりや尖りは感じない、不愉快に感じない上手く整えた印象です。繊細に鳴る音はやや線が細く聴こえますが、細やかな音を描写はしっかりとしています。

 

中音域

空間はそれ程広さを感じられませんが、狭くはない普通の音場。その空間に華やかに響く音は繊細さも持ち合わせており、平面磁気駆動ドライバの特徴でもある片側一基のドライバで複数ドライバのような音数の多さを再現しています。それでも複数ドライバでよくあるような音が重なり中心に集まる団子感や音がゴチャつく印象は少なく、整理された分離の良さ感じます。高音同様に解像感の高さを感じ、音の大小を適切にびょうしゃする繊細さもあります。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、ややドライ気味なものの息遣いを感じられます。

 

低音域

量感は適度に抑えられ、余韻を楽しむような広がりはそこまでありませんが、カチカチのタイトな面白みのない音ではありません。適度に強さのある芯を感じられる締まった音。全体的な印象として締りとキレは良好で音の強弱や音階を淡々と描写する。ベースラインは追えますが、前に出すぎる事はありません。重低音の沈み込みはそれほど深さを感じませんが、芯の強さを感じる音。

 

出音のバランス

一言で云えば華やかで明るい中高音寄りの弱ドンシャリ。出音はやや高音の主張が強く低音は適度に強さがあるので万人受けするバランスです。やや高音強調の弱ドンシャリバランスに感じられます。

 

高音の華やかさは嫌味の無い感じですが、低音もしっかりと鳴るバランスからはやや誇張された印象を受けますが、不自然さを感じない。例えば誇張された高音は煌びやかで響きも良く華やかに明るく鳴り解像感を高く感じてしまいますが、現実味の少ない金属の響きだけが耳に残る不自然さがあります。Pandamonの高音はそれに比べると地味な音に聞こえてしまうかもしれませんが、僅かに強調することで解像感と音楽性を両立させたちょっと賑やかな位の印象。小さな音を繊細に描写してくれますが輪郭はやや甘め。超高音までの伸びももう少しといったところ。強めの音でも尖りはなく、小さな音はかき消されずに耳に届きます。大袈裟に演出された音ではない、少しだけ解像感の高さを感じられる様に調整された音は、描写力よりも音楽性を重視した音です。

中音も高音域同様に華やかさがあります。凹みを感じ難く縦横の空間を感じられ、楽器の音はボーカルの周りやや後ろ辺りの離れた位置に感じられる立体感はありますが、曲によって平面的に感じられる事があります。中音域の音は統制されており、空間の見通しも良くクリアです。音の描写力は良好で解像感の高い分離の良い音を感じられます。

ボーカルは自然な位置から聴きやすく、高音や低音の音に埋もれません。中音に重なり、かき消されることはありません。声色はややドライ気味なものの息遣いを感じ、クリアに聴こえます。

低音は量感は適度に抑えられ、余韻を楽しむような広がりはあまり感じません。強さのある音は、芯がありダイナミックさもある締りの良い音はキレも良い鳴り方です。思ったよりも万能な低音域はアップテンポな曲から低音はバラードなどのしっとりとした雰囲気の良い曲との相性も悪くはありません。中高音寄りの弱ドンシャリの出音は決して低音を疎かにしていません。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、芯のある強さがあります。明るく華やかに鳴る高音中音域をキレの良い低音は音楽を聴く楽しさを感じられます。

 

PLA13との比較ではPandamonの音はPLA13に似ていて、高音域の華やかさをやや抑え、低音域もPLA13程の主張をしていない価格帯が上のクラスでよくあるバランスはPLA13とはf特が似ていても音質傾向が異なりました。Pandamonの方が高音域中心に低音域も適度に聴かせることでバランスの良い音づくりという印象です。そういう意味でPLA13はKZ系のドンシャリサウンドから抜け出せずにいる事が窺えます。一方、Pandamonは平面磁気駆動モデルのエントリーモデルとして、その販売価格からも最適と云えそうです。高音域の華やかさは適度に感じられ、平面駆動ドライバの特徴である複数ドライバの様な解像感の高いサウンドを感じられます。低音域は無暗に強く鳴らさずに高音中音域を邪魔せずに寧ろ質感は高い音。

とはいえ、ネガティブな面もあります。高音域では繊細な音を意識してやや線が細くなる部分もあり、上まで伸びはそこまで感じません。SPD第一世代の音は分りませんが、メーカーではこの第二世代SPD全音域を満遍なく鳴らせるようにしているらしいので、GumihoがBAとのハイブリッドだった理由がそこにあるのかもしれません。

 

次に販売価格帯が一クラス上となりますが、Trn Kirinとの比較です。あくまでも販売価格帯が違いますので参考程度となります。

先ず、同じ平面磁気駆動ドライバと云ってもKirinは直径14.5mmとPandamonの一辺10mm角のSPDとは異なります。先述の通りf特でもPLA13よりもKirinの方が似ていて、聴き比べても似た傾向の音と云えます。これはf特というよりもどのような出音にしたいかというメーカーの意図が似ていたと推察します。

Pandamonは高音域が明るめの華やかな音ですが、Kirinの高音域は華やかさもありますがそれよりも繊細な音を聴かせてくれます。一言で違いを云えばKirinは品のある高音です。Pandamonも同価格帯の複数ドライバモデルと比べると悪くない。寧ろ良さがありますが、音の描写、解像感はKirinに軍配が挙がります。これは価格差におけるドライバの質の影響と云えます。

低音はKirinはよりタイトな鳴り方。量感はそれほどありません。低音だけならばPandamonも遜色のない音の質感です。それでも低音の解像感はKirinの方に分がありますし、ドライバのコストは絶対性能と比例するという事が分かります。Pandamonも低音は同じ量感を抑えながら雰囲気を良く聴かせてくれますが、音の強弱が中心であり、Kirinの様な音階の表現力は今一歩。

そのためPandamonとKirinは近しいf特で出音が似ていても、違う音という印象を受けます。

とはいえ上位モデルとの聴き比べの話であって、Pandamonを聴いている限りやや高音域寄りの弱ドンシャリは高音中音域の繊細で高解像の音は、レベルの高い音と感じますし、KZ PR1 HiFi Editionの偏った音よりもバランスが良い音と云えますし、PLA13やPR1 Balanced Editionのドンシャリサウンドとは違い真面目な音質を目指した音と云えます。

 

※以前のTrn Kirinのレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとPandamonは第二世代SPDを採用することで平面磁気駆動モデルのエントリー機として安価に平面磁気駆動ドライバを試してみたい方にお勧めできます。その音質傾向はやや高音域寄りの弱ドンシャリは高音中音域の繊細で高解像の音は、レベルの高い音と云えます。

Pandamonは今年のトレンドである平面磁気駆動ドライバを採用し、他社よりも安価な価格設定を独自のSPDにより実現してくれたモデルです。

なお、PLA13やPR1 Balanced Editionはリスニング用途としてのバランスの良さがあり、Pandamonはそれらよりも大人しい音質ですので評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   Kirin ≧ Pandamon ≧ PLA13 (質感の順)

中音   Kirin ≧ PLA13 ≧ Pandamon (質感の順)

低音   Kirin ≧ Pandamon ≧ PLA13 (質感の順)

ボーカル Kirin ≧ Pandamon ≧ PLA13 (質感の順)

 

 

4. Celest Pandamonの総評

Celest Pandamonはその奇抜なデザインとは裏腹に高音質を第二世代SPDにより低価格で実現しています。やや高音域寄りの弱ドンシャリは高音中音域の繊細で高解像の音は、レベルの高い音質であり、同価格帯の複数ドライバモデルを凌ぐ高音質を実現しています。今年のトレンドである平面磁気駆動ドライバを安価に試したい方にお勧めのモデルと云えます。

 

最後に、今回は今年12月に発売された中価格A5000-U10000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年12月16日)はHiFiGoで6,000円程度で販売し、国内amazonでは本国発送となっています。海外通販でもHiFiGoの発送は早く届くのも早い印象があります。これまでの中華イヤホンの中では手頃な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

Pandamon

以下、付属ケーブル、付属赤軸イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

PLA13

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル4.4mm、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ