こんにちは。
今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A20000帯で発売された1PDモデルのHidizs MP145についてレビューをまとめたいと思います。
国内amazonで取り扱いがあります。
AliExpressでも取扱があります。
HIDIZS直販サイトはコチラ↓
Hidizs MP145 Ultra-large Planar Magnetic HiFi In-ear Monitorswww.hidizs.net
1. Hidizs MP145 について
Hidizsは数多ある中華オーディオメーカーの中でも本格的なポータブルオーディオメーカーです。HidizsはAP80 Pro X等の小型のDAPが最も有名ですが、実はイヤホンにも評判の良いものが多くリリースされています。HidizsのイヤホンラインナップはフラッグシップモデルのMS5がA60000帯の4BA+1DDモデルとなり価格帯は頭一つ抜けております。同社の小型DAPと組合せて使用することを考慮するとMD4やMS3等がボリュームゾーンと云え、狙い目のモデルとなります。そのMD4は4BAモデル。MS3は2BA+1DDモデルとなり、同社のイヤホンとDAPで揃えても約5万円で高音質で音楽を聴く事ができる環境を構築する事ができます。もっと云えば、HidizsのAP80 Pro Xは他社の小型DAP群と比べてもスペックが充実しており、デュアルDACチップとFPGAチップによる高音質化に加え、音楽ファイルフォーマットはFLACはもちろんのこと、ネイティブDSD64/128/256とMQA 8Xデコードに対応した高音質対応のモデルです。また、最近主流のTWSイヤホンとBluetooth接続が可能。BluetoothコーデックはLDACに対応していますので、手軽に無線接続で高音質を楽しむ事ができます。そういう意味では、スマホ以外に音楽再生機として小型DAPを検討している方には有力な選択肢と云えそうです。
そんなサブ機・入門機におすすめしたい小型DAP、Hidizs AP80 Pro Xと組合せたい同社のイヤホンラインナップに今回MP145が追加され早速入手しました。昨年クラウドファンディングで先行販売されていましたので既に入手している方も多いかもしれません。
MP145は大型の平面磁気ドライバを1基搭載したシングルドライバモデルです。シェルの素材に航空グレードアルミニウム合金を採用し、フェイスプレートデザインには鯨の尾鰭がモチーフされている印象的なモデルとなっています。
また、MP145にはシェル素材にチタンを採用したTitanium Editionもありますが、チタンは高価なことと加工が難しい素材ということもあり限定199本、通常モデルの倍の価格となっており現在(2024/1/6)は直販サイトで入手可能です。
HIDIZS MP145のスペックですが、先述の通り平面磁気ドライバを1基搭載したシングルプレーナードライバ(PD)モデルです。
PDは14.5mm径と大型ドライバを採用。磁気回路はシンメトリーになるように正確に組付けられ、7+7個のN52H磁石を配置しています。この磁気回路設計により、高周波歪みが低減され効率が向上し、磁気間の最大磁束が約1テスラになります。
その結果、クリアで明瞭な深みのあるサウンドは音楽を生々しく魅惑的に感じる事ができるとHidizsは説明しています。
メーカー発表のf特は厳正にテストされており、H-2019のターゲットカーブを正確にトレースしています。これは後述するMP145の全ての音質調整フィルタで確保されています。あくまでも音質調整フィルタは「味付け」としていて音質チューニングがしっかりとしていることへの裏付けとも云えます。
さらに、頭部伝達関数(HRTF)に基づき、バランスの取れたレスポンスの細部を慎重に調整することで、MP145の音場に奥行きをもたらすことに成功しています。その結果、ボーカルと演奏の定位感を正確に感じられ、ライブ会場にいるような感覚を得られるようにしています。
MP145 IEMの内部スペースは、14.5mmの大型PDユニットを搭載できるように設計されており、魅力的なオーディオパフォーマンスを得るために十分な音響空間を確保しています。さらに、クジラの尾鰭の形をしたフェイスプレート部には、2つの目立たず隠れた通気口があります。これらの通気口は、イヤホンキャビティ内の空気の流れを最適化し、音のクリアさと音圧バランスを調整しています。深みがあり没入感のある低音と上まで伸びる高音が特徴的です。
MP145には、Hidizsの革新的な空気圧式サウンドチューニングフィルター交換技術を採用しています。これは3種のフィルタがそれぞれ高域強調のシルバー、バランスのピンクゴールド、低域強調のレッドという音質調整が可能です。
加えて、付属イヤーピースがボーカル強調、バランス型、低音強調という音質調整の一端を担っており異なる9種のサウンドスタイルを提供可能としています。この最先端のテクノロジーにより、MP145は9つのサウンドスタイルの組合せによりユーザーに多様な選択肢を提示することで、幅広い音楽ジャンルとユーザーの好みに対応できるとしています。
最後に付属ケーブルです。
MP145は、99.9999%の6N高純度単結晶無酸素銅銀メッキ線材を4芯編込み線としたケーブルを採用しています。この付属ケーブルは、低抵抗でより大きな電流を通すことが可能です。さらに銀メッキ層が単結晶銅線の表面の導電率を高め、信号損失を最小限に抑えています。その結果、中高域の解像度が向上し、驚くほどクリアなボーカルを聴かせてくれます。
また、1本あたりが太めの線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、MP145ではそんな心配はありません。そのためバランス接続を試したい方は初めから4.4mmバランスプラグモデルを選択してください。個人的に付属ケーブルの相性が良く、リケーブルする必要を感じません。
Hidizs MP145は、ドングルDACやDAPでの使用に最適となるように設計されています。もちろんHidizsブランドの製品と互換性があります。プラグハウジング等は銅メッキされており耐久性が高くなっていますので長く愛用したい方には安心ですね。
※宜しければ以前のレビューもご参考ください
MP145の納期としては現在(2024/1/6)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。AliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、7日前後で届くと思います。感染症が流行した以前よりも早くなった印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。
そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。
まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。
2. Hidizs MP145 実機レビュー
それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。
パッケージングは黒を基調としたスリーブタイプの中箱です。表面にはイヤホンイラストがあり、メーカー名やロゴ、製品名等がピンクゴールドの文字で記載があります。
パッケージ裏面にはスペックの記載があります。
スリーブを外すとプラスチックケースの中箱がでてきます。上蓋にはメーカー名とロゴが刻印されています。金型一体成形ですね。
上蓋を開けると黒を基調とした内装にイヤホンが収納されています。
その下側には付属品が収納された小箱が収められています。
イヤホン台座と小箱を取り出すと、箱底部にイヤーピースが収納されています。
小箱を開けると付属品が収納されたイヤホンポーチ等が収められています。
付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が3セット。他にはケーブルとケーブルバンド、イヤホンポーチ、交換用フィルタ3種(内、1種はイヤホン本体組付け済)です。中価格A20000帯として必要十分なものが揃った付属品となります。
Hidizsの刻印が入ったイヤホンポーチはソフトタイプですが、内部が起毛生地がありイヤホンを優しく包んでくれます。ただし、ポーチの外圧からは弱くなりますので完全に保護することを目的とするならば別途ハードケースタイプを用意する必要があります。
ステムノズル部の交換用フィルタが三種付属します。内、ピンクゴールドフィルタはイヤホン取付済み。高域強調のシルバー、バランスのピンクゴールド、低域強調のレッドにより音質調整が可能になっています。それぞれ外側の金属フィルタの内側に繊維フィルタがあり、その膜厚によって調整されています。
次に本体を見ていきます。
シェルの角を落とした丸みを帯びた造形は比較的オーソドックスなIEMの体です。シェルは一般的には大柄と云え、厚みもあるために結構大きく感じます。実際には耳へ収まる部分が上手く絞られており装着感は意外に良好です。航空グレードのアルミニウム合金素材をCNC切削加工されたオール金属製シェルは見た目よりも重量感が感じ難く、耳への装着時は装着感の良さから重さをそれ程感じません。
フェイスプレートには先述の通りクジラの尾鰭をモチーフしたデザインが施されており、印象的なフェイスプレートデザインとなりますが、想像していたよりも実物は派手でも奇抜でもないため普通のイヤホンと云えます。シェルカラーが単色で大人しいところがそういう印象を持たせているのかもしれません。
肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面も綺麗に仕上がっています。
カラーバリエーションはシルバー、ダークブルー、チタンゴールドの三色展開にそれぞれ3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランスプラグが選べます。加えて特別限定仕様のシェル素材がチタンのTitanium EDITIONがあります。今回は標準モデル、シルバーカラーの4.4mmバランスプラグを選択しています。
続いてケーブルです。
付属ケーブルは先述の通り高品質99.9999%の6N4芯高純度単結晶無酸素銅(OCC)銀メッキ線の編込みケーブルです。ケーブル被覆のカラーは白色。一芯あたりが太い線材を贅沢に採用しています。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性は上側がプラスです。この付属ケーブルは太めのためやや堅さがありますが、意外にしなやかさがあります。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは悪くありませんので、音質的にもそのまま使用できます。
参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。
次に他機種との造形の比較です。
※画像左からHidizs MP145、LETSHUOER S12 Pro
Hidizs MP145とLETSHUOER S12 Proの外観の比較として、サイズ感はMP145が大きい。MP145はシェルも厚みがありますし、S12 Proと比べると体積の大きさが分かります。まあS12 Proが比較的コンパクトですので、相手が悪いですね。
ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さは太さはMP145が長く太くなります。角度はどちらもやや起きています。
MP145はS12 Proと比べシェルが大きくなりますが、耳に収まる方は絞られた造形となっており思っていたよりも耳への収まりが良く装着感は良好です。
ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもフラット2ピンです。リケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。
シェルの材質は、どちらもオール金属製ですがMP145が大柄のためやや重量感はあります。それでもMP145の造形は工夫されており、耳への装着感が良いため、重さをそれほど感じません。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくMP145は太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。
ステムノズル部にはどちらもフィルタがあります。MP145には音導管の先、ステムノズル外側に金属フィルタがあり、その内側に繊維フィルタがあります(MP145では内側繊維フィルタの肉厚によって三種の音質調整を実現)。そのためどちらも異物混入による故障を防ぐ事ができますし、MP145では音質にも寄与しています。
二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。
なお、前述の通りMP145はステムノズルが太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。そのため付属イヤーピースで耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。
最後にイヤーピースを見てみます。
付属のHidizs Liquid Silicone イヤーピースは高透過性の液体シリコン製で、外耳道にぴったりとフィットするように人間工学に基づいて設計されています。高音に干渉することなく低音性能を向上させ、全体的なオーディオ品質を向上させる事ができるとメーカーは説明しています。
三種類のイヤーピースはそれぞれボーカル強調の白傘白軸短タイプ、バランス型の白傘黒軸タイプ、低音強調の黒傘黒軸長タイプのS、M、Lの3サイズセットです。
黒傘黒軸長タイプは低音強調という名の通り中低音域に厚みが出ます。白傘白軸短タイプはボーカル強調の名の通りボーカルが目立つようになりますが、高音と低音が細くなるために結果としてボーカルが目立つ印象です。白傘黒軸タイプはバランスの名の通り一番メーカーが想定している音質と云えます。実際中高音は過不足なく、低音も十分なバランス良く鳴ります。
また、他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的なイヤーピース形状は選択肢が増えますので安心です。
黒傘黒軸長タイプと白傘黒軸タイプのイヤピを耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。一方白傘白軸短タイプは傘が一番柔らかくコシが無いため、ワンサイズ大きくして耳に浅めに蓋をする装着としました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。
幸い私は付属イヤーピース、白傘黒軸タイプでフィッティングが上手くいきましたし音質的には一番バランスが良く感じたため、付属白傘黒軸(バランス型) Mサイズを使用しています。
一般的に中華イヤホンの低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。
このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)
3. Hidizs MP145 音質レビュー
いよいよ音質についてまとめていきます。
いつも通り再生環境はスマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホはSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。
UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。
以前はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えています。
Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。
より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。
Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。
USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。
Shanling UA2は以下を参考ください。
それでは実際に聴いてみます。
ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りフィルタはバランス(ピンクゴールド)、イヤピは付属白傘黒軸バランス型イヤーピース Mサイズ、付属ケーブルです。
箱出しで聴いてみた第一印象は「中低音に厚みがある音。高音は華やかで低音はしっかりと鳴るやや中低音寄りのドンシャリバランス」です。
箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は落ち着き、相対的に高音とのバランスが取れた音という印象です。
音場
やや広めから広めの印象。前後は奥行を感じ、左右は広さを感じられます。奥行きを感じられ立体感もあります。空間は広さもあり音の立体感を感じます。
高音域
華やかさのある印象を持ちます。過不足なく煌めき、音の消え入る様を描写し上までの伸びやかさを感じられます。響きや余韻の感じられる明るさのある存在感は明瞭に音を届けてくれます。華やかさはあるものの、無駄に騒がしいと感じるような常に前に出る音ではなく繊細さのある鳴り方は刺さりや尖りは感じません。解像感は良好ですが、解像感に全振りした刺々しさはなく、爽快に描写しています。
中音域
華やかさがありますが、真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音の分離が良く整理された鳴り方は距離感を正確に感じ易い。音の立ち上がりも良く解像感の良さを感じられ中音域を見渡せます。ボーカルはクリアで僅かに近い位置にあり、ニュートラルな声色の印象です。
低音域
量感は適度で響きや広がりも感じられますが、響き渡るような広がりではなく、適度に落ち着く制動の良さが感じられます。厚みがある低音は大きく強く鳴らすことで解像感を妨げる様な鳴らし方ではありません。そのため音階や強弱といった低音域の解像感は感じ易く、ベースラインも追いやすい。中低音域に厚みがあるため気難しいことを考えずに没入感を得やすい印象です。ボーカルよりも前に出るような不自然さはなく距離感は不自然さはありません。重低音は沈み込みはそこまで深さはありませんが十分な深さ、力強さがありますので不足を感じません。
出音のバランス
一言で云えばやや中低音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく爽快に鳴らしてくれますが中低音に厚みがあるため強さをそれ程感じません。低音は適度な量感で力強さがあり不足は感じません。出音のバランスが良い音と云えます。
高音は明るく華やかで上まで伸びる煌めきがあり、響きや余韻を感じられます。遠くの小さな音が消え入る様をしっかりと描写してくれますので寸止め感はありません。誇張を感じない高音域は自然な耳心地の良い音。超高音域まで伸びやかになめらかに鳴り、小さな音も逃さず描写してくれます。解像感は良好で爽やかに小さな音を鳴らし、鮮明に大きな音を響かせる。高音の出力バランスを僅かに抑えながら上手く調整し整えている印象です。
中音は僅かに凹みを感じます。楽器の音はボーカルの周りに位置し距離感を適切に感じられます。ボーカルを邪魔しないやや後方に位置する演奏は立体的な音場を表現しています。そして中音域の下の方に厚みがある音はボーカルを邪魔することを心配しますが、分離が良く距離感の間違っていない整った音は解像感も良好です。
ボーカルは僅かに近い位置からクリアに聴く事ができます。周りの音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。
低音の量感は適度で響きや広がりも感じられます。広がりはありますが地響きの様な響きというよりもブワッ~と広がりスーッと収まる様はここぞという一発の力強さも兼ね備えた音。音階や強弱の揺らぎの描写が良く、解像感と雰囲気の良さを両立しています。
重低音は沈み込みはそこまで深く沈みませんが、力強くズドゥーンと感じられる音。それは低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らすだけの低音とは異なります
他機種との比較としてLETSHUOER S12 Proと比較します。一言で云えばS12 Proの中高音寄りの弱ドンシャリとは異なる傾向です。S12 Proの出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音で、特長的だったのは広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でます。
MP145は中低音寄りの傾向となり異なるのですが、空間の広さや自然な音色はS12 Proよりも良い印象があります。一方、中高音域の空気感はやや分が悪い印象ですが、中低音の厚みがある鳴り方は雰囲気の良さで勝る印象。尤も、MP145では音質調整フィルタにより調整が可能となりますので、そもそもS12 Proの中高音寄りの音が好きな方には分が悪くなります。
まとめとしてMP145はS12 Proとは異なる音質であり、音場の広い解像感の高い中高音寄りの音が好きならS12 Pro。音場の広い解像感の高い中低音音寄りの音が好きならMP145という嗜好に依る選択ができそうです。どちらも音場の広い解像感の高い音ですし高音質と云えます。
次にMP145の音質調整フィルタによる変化を試してみます。
先ずシルバーの高域強調フィルタです。
空間の広さや解像感に大きな変化はありませんが、バランスフィルタに比べ高音域の主張がはっきりと出てきます。その分音場の立体感が薄れ僅かに平面的に感じられる印象もありますが、バランスフィルタでは高音域がもの足りないと感じる方にはシルバーフィルタの方が印象は良いと思います。中低音域もやや薄くなりますので、シルバーフィルタの方がMP145の実力を掴みやすいかもしれません。個人的にはシルバーフィルタとバランス型イヤーピースの組合せが好みです。
次にレッドの低域強調フィルタです。
こちらも空間の広さや解像感に大きな変化はありません。バランスフィルタと比べ中低音域の厚みのある音にも大きな変化は感じませんが、高音域がすっきりとして大人しい空間に変化します。大袈裟に云えばやや暗い音に感じます。シルバーの高域強調フィルタとレッドの低域強調フィルタの違いは感じ易く鳴りますが、間にバランスフィルタを挟み入れ替えてみるとほんの少しの味付けの違いとなりそうですが、しっかりと音質の変化を感じられます。
最後に現在はやや下の価格帯となりますが、比較対象としてTrn Kirinとの比較です。
中価格A10000-U20000帯の平面磁気ドライバ(PD)モデルの一つです。MP145と同じサイズ、14.5mm径のPDをシングルで搭載したモデルとなります。
Kirinの音質はPDの特徴を体感できる普通に良い音がするイヤホンです。整った出音は近しいと感じましたが、違いは音場。空間の広さや立体感はMP145が上。どちらも全音域をバランス良く聴かせてくれ、出音や音色は普通に音質の良いイヤホンです。過度に強調するところが無く自然に鳴らすところも同じ傾向ですが、中低音域の解像感や、全体的な解像感の高い音を聴かせてくれるのはMP145です。MP145の方は分離感が自然で高音域のレンジの広さと低音域の解像感の高さがあります。
※過去レビューも参考ください
まとめるとMP145は大径平面磁気ドライバと音響空間による広い空間表現と音場をの正確さを感じられ広いレンジと高い解像感の高音質イヤホンと云えます。中低音域寄りの弱ドンシャリは高音域は伸びの良さと自然な強さで爽快に鳴らしながら、中低音域を厚めに鳴らす音造りは万人が受け入れやすい音質です。同価格帯では納得の高音質と云えますし、フィルタ交換によりイヤホンの持つベースの音質傾向をそのままに味付けを変えられますので安心感があります。そして個人的には高域強調フィルタとバランス型イヤーピースの組合せが好きな音でした。
一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれませんが、A20000帯でそれを求めるのかぁ…と、思います。
高音 S12 Pro ≧ MP145 ≧ Kirin (質感の順)
中音 S12 Pro ≧ MP145 ≧ Kirin (質感の順)
低音 MP145 ≧ S12 Pro ≧ Kirin (質感の順)
ボーカル MP145 ≧ S12 Pro ≧ Kirin (質感の順)
※Kirinは価格帯が異なる為、参考程度に
4. Hidizs MP145 の総評
Hidizs MP145はHidizsブランドの確かな実力を示してくれる商品と云えます。価格帯でも間違いなく高音質と云えますし、納得の高い高音質のイヤホンとしてお勧めできます。また、同社の小型DAPとの組合せても納得の高音質を体験できると考えます。今回は同社の小型DAPではなくスマホにドングルDACとの組合せでレビューしましたが、HidizsのドングルDACも試してみたくなりました。個人的にはA20000帯では失敗したくないという想いが強く不安がありましたが、実際に聴いてみれば非常にバランスの良い音質は音楽を楽しく聴く事ができる良いイヤホンと評価できます。
最後に、今回は中価格A20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2024年1月6日)は国内amazonやAliExpress等で20,000円台で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。HiFiGoやAliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。
MP145
以下、付属ケーブル、付属白傘黒軸イヤピ M、バランスフィルタ、DAC UP5
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★★
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
S12 Pro
以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★★
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
Kirin
以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★☆
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
あとがき
今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。
また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ