みぃねこの備忘録

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KiwiEars CADENZA レビュー

こんにちは。

今回もいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、低価格U5000帯で発売された1DDモデルのKiwiEars CADENZAについてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのLinsoul Audio(@Luke32344614)で取り扱いがあります。

 

 

AliExpressでも取扱があります。

 

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Kiwi Ears Cadenzawww.linsoul.com

 

 

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1. KiwiEars CADENZAについて 

KiwiEarsというブランドをご存じでしょうか。

類を見ないオーディオ性能を求め、KiwiEarsでは技術革新と洗練されたチューニングにより最高の製品を目指しています。それはミュージシャンやスタジオエンジニアの使用を想定し、彼らの楽曲製作に伴う音質のあらゆるニュアンスを表現できる最高のインイヤーモニターを製造するために妥協せず常に探求しています。ありきたりで凡庸な製品造りに留まらず、専任のエンジニアによってチームが編成され各ユニットをハンドメイドにより造り上げています。そのイヤホンは装着していることを忘れてしまうほど、楽曲作りに集中できるようお手伝いします。私たちKiwiEarsは、これまでに聴いたことのないような音楽体験をお届けします(以上メーカーHP引用)。

自社の技術に自信と誇りを感じられる自己紹介は、興味を引く、今注目のブランドです。

KiwiEarsはまだラインナップが少ないですが、現在はラインナップトップにOrchestraがあり、エントリーに今回のCADENZAがあります。Orchestraは8BAモデルであり約500ドルで販売されており、CADENZAは約35ドルと販売価格の幅が大きくなっています。他メーカーでも旗艦モデルの音が良いのは当たり前ですが、実はエントリーモデルがそのメーカーの実力を知るのに丁度良かったりします。例えるならfinalのE3000とA8000です。トップモデルはメーカーの威信をかけた技術の結晶だったりプライドの塊で一切の妥協を許しませんが、その分価格も上昇しますし音楽を楽しく聴くためというよりは如何に原音に忠実に再生するか等の解像感が重視されています。一方、エントリーモデルは純粋に音楽を楽しむために良い音と感じさせる工夫が詰まっており、限られたコストの中でメーカーが腕を振るう所となります。それ故にエントリーモデルを安易に上位モデルのドライバを変更したり、付属品をチープなものに変更したりするメーカーにはあまり期待できません。

つまり、このCADENZAが注目されている理由の一つに某メーカーの旗艦モデルにも採用されている素材のダイナミックドライバが搭載(メーカー説明)されているという事もありますが、上位モデルとは全く別のアプローチで高音質を目指している姿が窺えますので、期待値が上がったのだと考えます。

さて、CADENZAで採用されたベリリウムですが、非常に加工が難しい素材としても有名ですが、何よりもその音の良さが思いつきます。特に応答性の高いエッジの効いたシャープな音は解像感が高く、ライバルメーカーが他の素材での代用で迎え撃つも唯一無二という評価となっています。

CADENZAが本当にベリリウムなのか?真偽はわかりませんが、一聴して堅さのある特徴的なサウンドは、その音の傾向を感じさせます。最早ベリリウムかどうかなんて些細なことに思えてしまうくらい普通に良い音がします。新進メーカーとなりますが、KiwiEarsには今後も注目していきたいメーカーと云えそうです。そして今回KiwiEars CADENZAを入手し、U5000帯のお勧めモデルとの比較を含めてまとめていきます。

 

それではKiwiEars CADENZAのスペックを詳しく見ていきます。と、その前にCADENZAは先述の通りシングルダイナミック(1DD)モデルです。低価格帯では1BA+1DDハイブリッドモデル等のデュアルドライバモデルが多く発売されています。最近では超高音~高音域をバランスドアーマチュアドライバ(BA)に代わり低電力EST(ESM)やピエゾを採用したモデルが増えています。低価格帯では徹底したコスト削減と高音質化という相反する課題を達成するために安価なダイナミックドライバ(DD)では広いレンジをカバーできず、DDは中低音域に特化させ不足する高音域をBA等で補うことで高音質化を狙っています。そのためCADENZAは1DDモデルのためにそれらとの違いに注目です。

CADENZAは10mm径ベリリウム振動膜(ダイヤフラム)ダイナミックドライバを採用しています。ベリリウムは硬度が高いため加工が難しく、それ故高価な素材となりますが、最近では硬度の高い素材にベリリウムコーティングのダイアフラム層も登場しており、ピュアベリリウムに近い特性を得られるそうです。前述の通り、CADENZAのベリリウムダイナミックドライバの真偽は不明ですが、ピュアかコートか?よりも、その出音に注目していきます。

ベリリウムダイヤフラムを使ったDDは音の輪郭がくっきりとした解像感の高い音ですが、代用でポピュラーなのはダイヤモンド・ライク・コート(DLC)ダイヤフラムです。DLCを使ったDDも解像感が高くキレの良い音を聴かせてくれますので、解像感の高いシャープな音を好まれる方には好評のドライバとなります。流石にどちらもピュアベリリウムダイヤフラム採用のfinal A8000には解像感でも敵わない印象ですが、それでも硬質でシャープな応答性の高い音は十分に良い音と云えます。

次にシェル本体はオール樹脂製です。医療グレードの樹脂素材を3Dプリント技術により人間工学を重視したフィット感の高い造形を達成しています。

音質を突き詰めればシェルの材質による音への影響は無視できません。樹脂製シェルは強すぎる不快な高音域の響きを吸収しやすくなります。一方、金属製シェルは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなります。ベリリウムという硬質な音がするダイヤフラムをコントロールする為に敢えて樹脂シェルを採用したのかもしれません。

一般的には響きの美しさは樹脂シェルよりも金属シェルが一枚上手ですが、良い事だけではなく、反響が強くなることで不自然な残響音となる場合があります。勿論シェル内部構造や空間も重要ですし音導管の有無なども含めたチューニングが難しいのは言うまでもありません。

そして最も大事なことですが、ドライバの特性を活かした出音のチューニングが重要です。低価格帯はもとより、中価格帯のモデルでもやや不自然さを感じる場合があります。一聴した限りCADENZAはベリリウムダイナミックドライバと樹脂シェルによって高音域は上手くコントロールされ不自然さは感じられずKiwiEarsのチューニング技術の高さを感じられます。

最後に付属ケーブルです。4芯高品質銅線の撚線を採用し中低域に厚みを持たせベリリウムダイナミックドライバの中高音とバランスを整えたサウンドを実現しています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしているところもありますが、KiwiEarsでは出音のバランスを整え妥協しない音造りを目指しています。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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KiwiEars CADENZAの納期としては現在(2022/12/10)国内amazonでも本国発送扱いですので当日発送、翌日配達とはいきません。AliExpressでオーダーした場合でも感染症の影響は回復傾向であり国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定してきました。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. KiwiEars CADENZA実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは濃紺を基調としたスリーブタイプ。スリーブ表面にはイヤホンカラーイラストとメーカー名が大きな文字で印字されています。

 

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スリーブを外すと内箱が。こちらは黒を基調とし、中央にメーカーロゴが表示されています。

 

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内箱の上蓋を開けると黒地の内装にイヤホンが収められています。


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内装の外すと下側には付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が白色と黒色と黒色赤軸タイプの計3セット。他にはケーブルです。低価格U5,000帯として必要十分の付属品となります。

 

次に本体を見ていきます。

 

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幻想的なデザインのフェイスプレートに対し、シェルの造形はオーソドックスなものでシェルの角は丸みがあり装着感は良好です。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの低価格帯として心配されるような荒さもなく綺麗な仕上りでシェルの合わせ面を感じさせません。

カラーバリエーションはフェイスプレートが4色展開。緑、青、紫、赤色です。今回は紫を選択しました。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質銅線を使用した4芯撚線を採用しています。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。プラグや分岐部、イヤホン側コネクタ部にはガンメタカラーがシックな色合で黒色被覆とマッチしています。イヤホン側コネクタは2ピン仕様の極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルは多少被覆に引っ掛かりを感じますが、タッチノイズは抑えられています。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にしなやかで取り回しも良く普段使いでも気になることはないと思います。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からTiNHiFi C2、KiwiEars CADENZA

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CADENZAとC2との外観の比較として、サイズ感はCADENZAが幅が狭く厚みがありC2が幅が大きく厚みがない。造形はCADENZAがオーソドックスで丸みがありC2が角張ったもの。どちらも比較的コンパクトなシェルと云えます。

ステムノズルの長さと太さ、角度と長さはCADENZAとC2はほぼ同じ。太さはCADENZAが太めでC2は一般的なサイズです。

前述の通りどちらも比較的コンパクトですが、CADENZAはオーソドックスな造形ですので、耳への収まりが良く装着感は悪くありません。C2も角張っているもののそのコンパクトさから良好です。

イヤホンとケーブルを接続するコネクタにはCADENZAはフラット2ピンタイプを採用し、C2が埋め込み2ピンCIEMコネクタ仕様。リケーブルの選択肢はCADENZAの方が多くなります。

シェルの材質は、CAEDNZAのオール樹脂に対し、C2のオール金属と対象的。

重量はオール樹脂のCADENZAが軽量でオール金属のC2はそれよりも重め。と云っても数グラム程度の違いです。そのため、CADENZAは耳への装着時にはその装着感の良さからも重量を感じない程。C2でもはそれほど重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくCADENZAは太めと云えますのでイヤピ選びは重要です。

ステムノズル部には全てに金属フィルターがありC2の穴が大きめの(中華イヤホンでは一般的)タイプです。CADENZAは穴が小さく音質へ多少影響のあるタイプと云えそうです。

最後に二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りCADENZAはステムノズルが太めなものの、実際の装着感は悪くなく、寧ろ付属イヤーピースの形状からは耳奥に密着させ装着する想定の様子。付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは白色と黒色と黒赤軸の三種あり何れも一般的な形状の丸穴径、傘の裾野が弾丸タイプ。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒は音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音が厚めになるタイプに感じ、付属白の方が中高音がはっきりと聴こえる印象です。黒色赤軸はその中間のバランスタイプと云えそうです。軸はやや短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入し耳へ密着させることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属イヤーピースでは私はフィッティングに問題なく、白色タイプが一番印象が良かったので、それを耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回も付属のシリコンイヤピで上手くフィットできず他社製を使用しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. KiwiEars CADENZA音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通り付属イヤーピース 白色Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「全体的に硬質な音。シャープで鮮明な解像感の高い音は華やかに鳴りますが、ごちゃつかない分離の良い音。やや中高音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き低音は締まり、解像感の高い良い音という印象です。

 

音場

普通。曲によってやや広め。前後はやや奥行があり、左右もやや広さを感じられ、立体感を感じられますが、空間の広さはそれ程感じません。

 

高音域

煌びやかで響きが良く上までの伸びやかさも感じられます。存在感は十分で華やかに鳴りますが、常に前に出るような主張の強い目立つ感じの無い弁えた音。刺さったり尖りは感じません。

 

中音域

空間に響く華やかさがあります。音が真ん中に集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じ難く立体感のある音。音の立ち上がりは良く解像感は高いですが、輪郭はやや甘さがあります。ボーカルはクリアでやや近め。僅かにドライからニュートラルです。

 

低音域

量感は十分で響きや広がりもありますが、ボワっとするようなだらしなさはありません。音階や強弱といった低音域の解像感はそこそこ高いですが、やや硬さのある低音はアクセント寄りの鳴り方です。ベースラインは追いやすいですが、酔いしれる程ではありません。重低音は沈み込みは深く、強さもあります。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りのドンシャリ。低音が想像よりもしっかりとしているので中低音寄りという印象を持ちますが、実際には高音域は鮮明にしっかりと鳴らし、中音域を華やかに彩らせる高中音域を聴かせる音です。

 

高音の煌びやかで響きの良い華やかさは前に出るような主張ではありませんが、堅さのある金属音や響きが必要なだけ鳴る印象です。超高音までの伸びはそこまでなく天井はそこまで高さを感じませんが、なめらかに鳴ります。不快に感じる刺さりや尖りとは無縁で、小さな音でも耳に届けてくれます。他の音を邪魔せずに瑞々しく鳴り、低価格帯のデュアルドライバモデルで採用されているBAの様な強めの音で強調したシャリ付く演出感のある不自然な鳴り方ではありません。全体のバランスでみれば僅かに誇張された音にも感じますが、嫌味の無い自然な出音を意識している音を感じられます。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルが近く楽器の音はボーカルの周りから少し離れやや後ろ辺りに位置し奥行を感じやすく、硬質に響き華やかさがありますが、その音は分離が良く見通しの良い音です。

ボーカルは近めの位置からクリアで聴きやすく、周りの音や高音や低音にも埋もれません。声色は想像よりもと自然な印象で息遣いを感じられるなど不自然さを感じ難く、女性ボーカルのバラードなどでもしっとりとした艶のある声も楽しめます。

低音の量感は十分で響きや広がりがありますが、音階や強弱の描写はやや甘く、強弱がメイン。それでも低音が強調された強めの音というよりは適度な解像感を感じる低音が高音中音を支えています。恐らく中低音域がやや弱く雰囲気の良さを感じられるベースラインの質が今一つの印象がある為かもしれません。

重低音は沈み込みは深く強さを感じられますが、低価格帯のデュアルドライバモデルの様なただ強く鳴らす音ではなく、あくまでも自然に低音域が高音や中音域を邪魔せずに下支えする心地良く鳴らす低音は音楽を聴く楽しさを思い出させてくれます。

 

箱出し一聴した際には堅い音が解像感を演出している印象でしたが、鳴らし込みし聴き込んでいくと堅さの中にある音の鮮明さにやや甘さというか丸さがあることに気が付きます。それは決してウィークポイントではなくて、硬質な音のつまらなさをメーカーが認識していて、適度なニュアンスを加える事で音楽的な楽しさを再現しているのだと考えられます。勿論スタジオエンジニアが使うのであれば丸い音に聞こえるかもしれませんが、音楽を楽しむ私たちにとってCADENZAのバランスの方が好ましいと云えそうです。

次に比較対象は同じ低価格帯のTiNHiFi C2です。C2も1DDモデルですが、こちらはダイヤフラムにLCP+PUの複合素材を採用しています。LCPのキレの良い音とPUの豊かな特性を活かした音作りはハイレベルでデュアルドライバであることのデメリットの方が目立ってしまいます。その位完成度は高く、お勧めできるモデルとなりますが、今回のCADENZAもベリリウムダイナミックドライバの話題が先行していますが、従来のベリリウムダイナミックドライバの搭載モデルとは異なり音楽的な鳴り方で楽しめるモデルとなっています。C2もこれまでのTiNHiFiとは異なり音楽的なチューニングでしたが、CADENZAとの比較をすれば、解像感はCADENZAの方が上。音楽的な楽しさもCADENZAが上と云えます。しかし、C2はこれまでのTiNHiFiの音を踏襲した高中音重視のなめらかさがあり、硬質なCADENZAに対し一歩リード、C2に軍配が挙がります。

どちらも解像感の高い音楽的に楽しめるイヤホンと云えますので、硬質さかなめらかさかの好みの違いで選択することになります。

折角なので少々価格帯が上がりますがIKKO OH2との比較も。OH2はそれらの機種と比べると解像感は一歩譲ります。それでも空気感というか音楽的な楽しさはOH2も負けていませんね。

 

※以前のレビューも参考ください

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まとめるとKiwiEars CADENZAの出音はドンシャリと云えますが、堅さのある音は解像感の高さと音楽的な楽しさを感じられます。特にボーカル曲との相性も良く響きの良さは音楽を楽しめます。低音の出音が強めに聴こえるために低音重視と誤解されるかもしれませんが、実はCADENZAの高音域の鮮明なリスニングサウンドは全体の出音のバランスの良い、音楽を楽しく聴く事ができる音色のイヤホンと云えます。

一方でモニター用途としては硬質な音でありながら楽しいドンシャリバランスと云えるため高中音域以外は不向き。そして高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方はもの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   CADENZA ≧ C2  

中音   C2 ≧ CADENZA

低音   CADENZA ≧ C2

ボーカル CADENZA ≧ C2

 

 

4. KiwiEars CADENZAの総評

KiwiEars CADENZAは同社のエントリーモデルでありながら決して上位の廉価版ではなくベリリウムダイナミックドライバを採用する等、高音質を実現したモデルと云え、今後の同社のラインナップに期待できそうです。CADENZAのサウンドベリリウム由来の硬質でシャープさを持ちながら音楽的に楽しく聴く事ができます。付属品のイヤホンからの買い替えやちょっと良いイヤホンが欲しいというニーズに応えてくれるモデルと云えます。

 

最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年12月10日)は国内amazonやAliExpress等で発売されておりますが、国内amazonでは未だ本国発送ということはありますが昨今の円安のため、国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。またAliExpressでも本国発送のため、納期が掛かりますしその入手性とトラブル時には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、ちょっと良い低価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

CADENZA

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (硬質な音)

※☆0.51.0

 

C2

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (なめらかな音)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、低価格U5K帯中華1DDイヤホンの商品のレビューとなりました。低価格帯1DDでも同価格帯多ドラハイブリッドモデルに引けを取らないレベルの高さを感じさせられました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

TiNHiFi C2 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、低価格U5000帯で発売された1DDモデルのTiNHiFi C2についてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのLinsoul Audio(@Luke32344614)で取り扱いがあります。

 

 

AliExpressでも取扱があります。

 

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1. TiNHiFi C2について 

TiNHiFiとは中国のオーディオメーカーであり、ブランド名となります。ブランド初期はTiN Audioというブランド名でしたが、数年前に現在のTiNHiFiというブランド名に変わりました。初期のTiN Audioブランドの頃に発売したT2は、高音特化で見通しの良いクリアな高音が特徴的な音質傾向は人を選ぶと話題になりました。その後のT2 ProやT3でも同様の音質傾向は「そういう音質のブランド」として確立していくのだと思っていました。しかし、2年ほど前に発売したT2 plusでは一変。非常に音楽的なバランスの良い万人に受ける音質は多くの中華イヤホンファンからも支持され、T2 plusは今でも根強いファンがいる程です。もっと云えば、5000円で買える製品の中でお勧めを聴かれたらお勧めするものの一つになると個人的に考えています。

それは、TiNHiFiの製品はこれまでに複数レビューをしてきましたが、そのどれもが高音質と云え特に先述のT2シリーズ、T2 plusやその後に登場したT2 Evo等は価格に対する音質の良さは本当の意味でコストパフォーマンスが高い製品と云えると思います。

そのTiNHiFiからT2シリーズとは異なるモデルとして新たにCシリーズが登場し、C2やC3を新発売しました。C2がT2同様に金属シェルを採用し、C3は最新T3シリーズの樹脂シェルを採用しているなどの共通点があります(初期のT3は金属シェルでしたが最新は樹脂シェルです)。単にバリエーションモデルなのかTシリーズ自体が終息方向なのかはわかりませんが、今後Tシリーズの様にT2、T3、T5と展開されるのであれば次はC5が登場するのかもと邪推してしまいます。

さて、今回はTiNHiFiの最新Cシリーズ、C2を早速入手しましたので、同クラスのT2 Evoとの比較を含めながら記事をまとめます。

 

TiNHiFi C2のスペックですが、先述の通りシンプルなシングルダイナミックドライバ(1DD)モデルです。全音域を10mm径の1DDが担うため、よくある低価格帯の1BA+1DDデュアルドライバハイブリッドモデルが超高音~高音域をバランスドアーマチュアドライバ(BA)で高音域の音圧不足を補っており、デュアルドライバの様にはいきません。しかし、このC2で新規採用したダイナミックドライバには複合素材のダイヤフラム(振動膜)に加え、強力な磁気コイルを使用することで十分な音圧を得る事ができています。その振動膜には今年のトレンドの一つである液晶ポリマー(LCP)層とポリウレタン(PU)層を二重複合構築した物を採用しています。この振動膜は、一つの素材の振動膜を使用したダイナミックドライバのような音の均一性を保ちながら、複数ドライバを搭載したモデルのような快活な音色が特徴です。そして、強力な磁気コイルとデュアルキャビティによりレスポンスの良さと力強い音を実現することで、デュアルドライバと遜色のないポテンシャルを持つダイナミックドライバとなります。

以前も触れていますが、最新のトレンドとなったLCP振動膜採用のダイナミックドライバはキレの良い解像感の高い音が特徴です。しかし、やや低音域が軽くなる印象があります。それをPUとの二重複合層とすることで、しっかりとした低音を得る事ができています。

次にシェル本体はオール金属製です。数年前のRev〇Nextブランドを思い出させる造形は個人的にはカッコいいと思っていますが、デザインの良し悪しは個人の嗜好によるものなので一先ず置いておきます。シェルの素材は航空グレード6063を採用しCNC切削加工による精度の高さで機能美を感じられるシェルデザインとなっています。まあ最近ではあまり見ない角が立っている造形のために装着感は個人差が大きそうです。

音質チューニングを突き詰めればシェルの材質による音への影響は無視できません。金属製シェルは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなります。響きの美しさは金属が一枚上手ですが、良い事だけではなく、反響が強くなることで不自然な残響音となる場合があります。一方樹脂製シェルでは高音域の響きが吸収されてしまう傾向があり、金属シェルと同じ音圧をにするために高音域の減衰を考慮しやや強めに鳴らす必要があります。加えて、音導管の有無も重要でこのバランスを含めたチューニングは難しく、TiNHiFiの技術力の証明となりそうです。

最後に付属ケーブルです。これまた当時のRev〇Nextを思い出してしまいましたが、多少ゴム感のある被膜は少々残念な気持ちになりました。とはいえ並列フラットケーブルは当時のそれよりも十分に使える品質となっており、0.78mmの金メッキ2ピンを採用し、取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、埋め込み2ピン仕様という事もあり、CIEMコネクタ仕様のケーブルをお持ちの方はリケーブルされた方が良いかもしれません。私はそのまま使いますけど。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

TiNHiFi C2の納期としては現在(2022/12/9)国内amazonで本国発送扱いです。流石にPrime扱いではありませんので当日発送、翌日配達で直ぐに届きませんが、国内amazonを介することで安心感があります。AliExpressでオーダーした場合でも感染症の影響は回復傾向であり国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定しており、10日前後で届きました。ほぼ平時に戻った印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. TiNHiFi C2実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは白を基調とした小箱タイプ。表面にはメーカーロゴとC2の持つメカっぽさのイメージとして〇ンダムを連想する様なモビルスーツ(端的には人形ロボット)が大きく描かれています。

 

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上蓋を開けるとグレーの内装にイヤホンが収められています。

内装の下側には付属品の入った小箱が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セット。他にはケーブルとケーブルバンドです。低価格U5000帯として最低限必要なものが揃った付属品となります。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は数年前にレビューしたRev〇Next QT3sに似ている。というかほぼ同じでフェイスプレートのデザインが異なるもの。当時は高級イヤホンに似たイヤホンとしても話題になりました。C2の造形はシェルの角が立っている為に装着感は個人差がありそうです。個人的には問題ありませんので気にならない程度なんですが、気になる方は一定数いらっしゃると思います。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの低価格U5000帯としては非常に精密な仕上りでシェルの合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションはガンメタのみ。落ち着いたな色調ですので外使いでも悪目立ちはしません。

 

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付属ケーブルは先述の通り当時のRev〇Next QTシリーズ付属と同様に多少の癖のある被覆のため、少々残念な印象です。最近の低価格帯に付属するケーブルの品質の高さもあり一層そのように感じてしまうのかもしれません。並列フラットケーブルタイプの線材を採用し、プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はCIEM2ピン仕様の極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルは前述の通り被覆に引っ掛かりが少々あり、タッチノイズもやや感じますが、肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にやや堅さを感じるものの比較的しなやかなさもありますので取り回しはそれほど悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からTiNHiFi T2 Evo、TiNHiFi C2、KiwiEars CADENZA

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C2とT2 Evo、CADENZAの外観の比較として、サイズ感はCADENZAが一番大きく厚みがあります。一番小さいのはT2 Evo。その中間がC2です。T2 Evoがコンパクト過ぎるためにC2が大きいと誤解されそうですが、横は一般的なものよりも小さく厚みも普通です。造形はC2が最近の物に比べると角が立っていることが分かります。

ステムノズルの長さと太さ、角度はC2とCADENZAがほぼ同じ。T2 Evo短く太さはほぼ同じ。一番太いのはCADENZAです。

C2はこの中ではそのコンパクトさが目立ちませんが、一般的なサイズ感のCADENZAと比較しても十分にコンパクトでオーソドックスな造形と云えます。何よりも意外と耳への収まりが良く装着感は悪くありません。

イヤホンとケーブルを接続するコネクタにはC2は埋め込み式2ピンでリケーブルの際はコネクタ部の長さに注意が必要です。T2 Evoはmmcx。CADENZAはフラット2ピンコネクタ仕様です。

シェルの材質は、C2とT2 Evoはオール金属製。CADENZAが樹脂製です。

重量はオール金属C2とT2 Evoにやや重量を感じます。CADENZAはこの中では比較的軽量です。とはいえ、C2は思ったよりも耳への装着感が良く、それほど重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくCADENZAが太めと云えますのでイヤピ選びは重要です。

ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり穴が大きめのタイプです。音質への影響のあるタイプと云うよりは異物混入による故障を防ぐタイプの様です。

三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りC2はステムノズルがやや太めなものの、実際の装着感は悪くなく、付属イヤーピースで耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着する想定の様子。付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは黒色の一般的な形状の丸穴径、傘の裾野が弾丸タイプ。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属イヤピは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプの印象です。軸はやや短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入し耳へ密着させることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属イヤーピースで私はフィッティングが上手くいきましたしし、低音が逃げる事もありませんでしたので、そのまま付属を使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. TiNHiFi C2音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属イヤーピース Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「高音に華やかさがあり、中音は解像感の高い音。低音はしっかりと鳴る音。やや中高音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き低音は締まり、小気味良い音という印象です。

 

音場

普通からやや広め。前後はやや奥行があり、左右もやや広さを感じられ、立体感を感じられますが、空間の広さはそれ程感じません。

 

高音域

煌びやかで響きが良く上までの伸びやかさも感じられます。存在感があり華やかに鳴りますが、騒がしさを感じるような常に前に出る、出しゃばった感じはありません。最近の中華イヤホンの傾向と同じ様に刺さりや尖りは感じませんし、解像感の良い音。少し気になるのはハイハットの音がややクシャっと潰れた金属音として感じる事があります。

 

中音域

華やかさがある鳴り方ですが、音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じ難く立体感のある鳴り方。音の立ち上がりは良く解像感も良好です。ボーカルはクリアで自然な位置。ドライ気味ですが息遣いを感じられます。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりも感じられますが、諄さもなく音階や強弱といった低音域の解像感はまずまず。ベースラインは追いやすいですが、ボーカルよりも後ろに構えていてしつこさはありません。重低音は沈み込みはそれ程深さを感じませんが、強さがありますので過不足ありません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りのドンシャリ。高音域をしっかりはっきりと鳴らす明るめの音。低音も適度で過不足のない鳴り方は出音のバランスが良い音。

 

特徴として高音の煌びやかさと響きの良さは華やかに聴かせてくれます。それでも前に出るような主張ではなく、少し演出感を感じられますが、不快な鳴り方ではなく心地よい音。超高音までの伸びやかさもありなめらか。不快に感じる刺さりや尖りは感じません。小さな音でも感じ取れる繊細さは解像感の高い音。一方で描写は甘さを感じられる部分もありますが、低価格帯として質の高い音を聴かせてくれます。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルの自然な位置に対し楽器の音はその周りから少し離れやや後ろ辺りに位置し奥行を感じられます。高音同様に華やかさがありますが、その音は整っていて見通しも良い。

ボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすく、周りの音や高音や低音にも埋もれません。声色はドライ気味なものの息遣いを感じられ不自然さは抑えられています。その分女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しみたい場合には分の悪さを感じるかもしれません。

低音の量感は適度ですが、響きや広がりを感じられますがボワつく事のない締まった音。音階や強弱を感じ取れます。それは低音が強調された強めの音というよりは解像感と雰囲気の良さを感じる事ができるバランスで整えられている音。タイトまでは云いませんが締まりのある音階や音の強弱を誇張せずに描写してくれます。そのため雰囲気の良い曲との相性は感じられますが、全然ダメという事ではありません。

重低音は沈み込みはそれ程深さを感じませんが、強さを感じられる音。低価格帯でよくあるただ強く鳴らす音ではありません。適度な低音域は高音や中音域をマスクせずにクリアな高中音域聴かせてくれます。

 

同社のT2 Evoと比較した場合、C2の方が高中音域のなめらかさを感じます。超高音域のの伸びはT2 Evoに軍配が挙がりますが、その差は僅か。低音域はC2の方がしっかりと鳴らします。そのため低音域とのバランスを考慮すればC2が総合力では上という印象です。同社のラインアップではT2 Plusがはっきりとしたドンシャリでしたが、このC2もその流れを汲む系譜と云えそうです。

C2とT2 EvoはC2のドンシャリに対し、弱ドンシャリからフラット寄りと異なる音質傾向となりますが、やはりオールドファンからはTiNHiFiらしい音はT2 Proの音であり、高中音域のクリア感、見通しの良さは類を見ないモデルです。それでもC2はTiNHiFiらしさも感じさせるチューニングで万人に受ける音として一定の人気が出そうな予感です。それは何と言ってもU5000でこの音を聴かせてくれますから。

 

まとめるとTiNHiFi C2のドンシャリは明るさのあるやや高音域をはっきりと鳴らしながらも同社の特徴である高中音域のクリアさとなめらかさを踏襲した出音が音楽を聴く事を楽しませてくれます。同社では珍しい低音がしっかりと鳴る出音はバランスが良く、高音質と云えると思います。

一方で従来のTiNHiFiの音が好きな方には聴いていて楽しいドンシャリバランスと云えるため評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   T2 Evo ≧ C2  

中音   C2 ≧ T2 Evo

低音   C2 ≧ T2 Evo

ボーカル C2 ≧ T2 Evo

 

 

4. TiNHiFi C2の総評

TiNHiFi C2は同社のエントリークラス歴代モデルとして、普通のイヤホンです。これはめちゃくちゃ褒めてます。だってT2シリーズの初期はそりゃあもうマニア向けでしたから。高音特化モデルとして今でも通用すると思います。でもね、振り切りすぎちゃって一般層には受けないんです。海外では特に。国内だけです。それ故にこのC2が普通に良い。そのサウンドはクリアでなめらかさのある高中音域にしっかりとした低音域がバランスの良いドンシャリサウンドがやや高音域をはっきりと鳴らし音楽を楽しく聴く事ができます。普通にちょっと良いイヤホンが欲しい。予算5,000円以内でというニーズにハマるモデルと云えます。

 

最後に、今回は低価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年12月8日)は国内amazonやAliExpress等で発売されておりますが、どちらでも本国発送対応が多いことと昨今の円安のため、国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。AliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

C2

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

T2 EVO

以下、付属ケーブル、イヤピAET07 M-使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

T3

以下、付属ケーブル、イヤピAET07 M使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★☆ 
音場★★★☆
分離★★★☆
お勧め度★★★★☆ 

※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、低価格U5K帯中華1DDイヤホンの商品のレビューとなりました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

CCA HM20 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格A5000帯で発売された7BA+1DDハイブリッドモデルのCCA HM20についてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのDUDO Audio Storeから購入しました。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取り扱いがあります。

 

 

 

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1. CCA HM20について 

CCA HM20は中価格A5000-U10000帯中華イヤホンの多ドラハイブリッドモデルとして今年10月に新発売されました。

KZ系兄弟ブランドのCCAですが、初期はKZとは趣向を変えた音質傾向のイヤホンを発売してきましたが、最近発売したモデルではそれ程異なる音ではなく寧ろほぼ同じ?という傾向でブランド毎に音を聴き比べる楽しみが減っていました。例えばZASとCA16 ProやPLA13とPR1 Balanced Editionがその一例です。ZASとCA16は全然違う傾向でしたので、なんだかなぁという気持ちです。

そのCCAが今年秋、一年振りに多ドラハイブリッド旗艦モデルとして片側8ドライバ、7BA+1DDハイブリッドモデル、HM20を発売しました。数年前のドライバを沢山積むスペック競争時代とは異なり、搭載ドライバ数は頭打ち感があります。そもそもそんなにドライバは積む必要がないという事を自分たちで証明している皮肉な結果です。そして、昨今はハーマンターゲット近似特性の純粋に高音質を目指したモデルが多数登場。今年のトレンドの一つと云える「ハーマンターゲット」は流行に敏感、というよりも売れるものに敏感というビジネスライクなお国柄を感じさせます。

とはいえ、一年振りの。というよりも約1年間という製品リリーススパンに則った今年最後のKZ系ブランドの目玉として非常に楽しみな商品となります。

 

それではCCA HM20のスペックを詳しく見ていきます。先述の通り片側8ドライバの多ドラハイブリッドモデルは7つのバランスドアーマチュアドライバ(BA)と、一つのダイナミックドライバ(DD)という異なる二種のドライバによる構成です。同価格帯多ドラハイブリッドモデルの中では上位に位置しますが、最上位はTrn VX Proの片側9ドライバ、8BA+1DDハイブリッドモデルとなり、それに次ぐHM20となります。また、ZASやZAX、CA16やCA16 Proもそれに並びます。

HM20の搭載ドライバですが、高音域用BAドライバには30019sシングルを一基採用。中高音域用BAドライバには50024sデュアル(2BA) 三基を採用し、全てのBAはDDと並列にシェル内部に配置しています。次に低音域用のダイナミックドライバには第三世代となる「XUN-7」ドライバを初採用。従来のKZ系定番の10mm径二重磁気ダイナミックドライバからは小径となる新型7mm径二重磁気ダイナミックドライバはダブルキャビティ採用と5ミクロンの超薄膜ダイヤフラム(振動膜)という、真に新世代のダイナミックドライバの名に恥じない新型ダイナミックドライバを採用し、中音~低音域を担当しています。何と云っても新型第三世代ダイナミックドライバ、XUN-7に期待が高まります。

比較対象のCCA CA16 Proは片側8ドライバ、7BA+1DDのドライバ構成数と同じですが、低音域用ドライバは10mm径二重磁気ダイナミックドライバです。BAは30019が一基で高音域を担当し、シェル内のダイナミックドライバ傍に並列配置。50024sデュアル(2BA)が三基で中高音域を担当し、シェル内のダイナミックドライバ傍にこちらも並列配置しています。

もう一つの比較対象のKZ ZASのスペックは、こちらも片側8ドライバ、7BA+1DDとドライバ構成数は同じ。搭載ドライバは中低音域用のダイナミックドライバに10mm径二重磁気ダイナミックドライバを。BAは30019シングルの一基が高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置。50024sデュアル(2BA)三基が中高音域を担当し、こちらもダイナミックドライバに並列に配置しています。

HM20をはじめ、全て高音域用BA一基とし、シェル内のDD傍に並列配置しています。ただしNM20では従来のKZ系と異なり各BAにつながる音導管を採用しています。これまでにもKZ系ではASシリーズで音導管の役割とドライバの位置決めを兼用する音導カバーをシェル内部に配置したモデルがありましたが、今回は一般的な音導管を採用し、高音域1BAと中音域デュアル3BA(6BA)と低音域1DDの3way方式という高音と中音域のBAの数が大きく異なるドライバ構成&配置です。

尤も、便宜上伝わりやすくするために3Wayと説明していますが、実際には高音域用BAは超高音~高音域を担当し、中音域用BAは高音域~中高音域を担当しており、純粋な中音域とは云えません。実際の中音域はDDがカバーし、それが中音~低音域の広範囲を担っています。その為、DDのポテンシャルがイヤホンの絶対性能を決めていると云っても過言ではないと云えます。出音をどんな音色にするかはチューニング次第ですが、解像感や分離といった絶対評価は「ドライバの質=コスト」という現実には抗えない「価格なりの音」という評価が存在する理由と考察しています。

最後にHN20のシェル本体は樹脂と金属のマテリアルハイブリッド構造が採用されています。ステムノズル一体型シェル本体は樹脂製で、シェル本体カバーと金属製フェイスプレートを接合した金属と樹脂によるハイブリッド構造となります。片側に8ドライバが詰まっていることを想像させないコンパクトなシェルはZASやCS16 Proが比較的大柄だったこともあり非常に小さく感じます。また、一般的にシェルやステムノズルの材質により音質への影響があり、金属製シェルでは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなり、響きの美しさは金属が一枚上手です。樹脂製では金属音等の高い音が吸収されてしまい、やや強めに鳴らす事でバランスをとる場合もあります。そのため、樹脂製でも金属製でも良い事だけではなく、メリット/デメリットの関係が存在します。HM20では音導管を採用することで意図した音を安定して耳に届ける事ができるようになっています。

以上の通り、スペックからはHM20はそれらの系譜と云えるモデルであることを窺わせます。CA16 ProやZASは従来のKZ系ブランドのモデルの中でも音質が良く、好評でしたが、その理由の一つとして、これまでKZでは頑なにステムノズル内に配置したBAが全てシェル内部に配置されたことを挙げます。もちろんステムノズル内に配置することは悪手ではなく、KZの様に無調整で配置してはいけないよね?ということだと考察しています。そして、ドライバ構成を比較すればHM20はそれらと異なる新型ダイナミックドライバと音導管の採用により、評判の良かったZASやCA16 Proと出音にどのような違いを魅せてくれるのか?気になって夜しか眠れません。

 

※宜しければ過去のレビューもご参考ください

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CCA HM20の納期として今回AliExpressで購入しました。中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのprime扱いのようにはいきませんが、オーダーから約一週間で届きました。近年はAliExpressでの購入では感染症の影響で中国からの輸送に時間が掛かっていましたが、現在はかなり回復し国内で大手輸送会社に委託される輸送の場合はかなり安定してきました。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月以上。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。最近はHiFiGoの利用も多いのですが、こちらは何故かAliExpressよりも到着が早い事が多いのがその理由です。

どちらも海外ネットショッピングであり心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、私は活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での取扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. CCA HM20実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングはCCAの白を基調としたシンプルなスリーブタイプの化粧箱で、従来のサイズのタイプ。表にはイヤホンイラストが。裏面にはスペック等が印刷されています。

 

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スリーブを外すと白地の内装にイヤホンが収められ、その内装を開けると付属品が収められています。

 

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付属品は最近のKZに付属する溝有白色シリコンイヤーピースタイプではなく、従来の溝有黒色シリコンタイプのS、M、Lの3種1セット。他にはケーブルです。中価格A5,000帯としては物足りない、イヤホンとして使うための最低限の付属品となります。

このあたりは良くも悪くもKZ系ブランドCCAです。

次に本体を見ていきます。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホンの中価格A5,000帯として十分に綺麗な仕上りです。樹脂シェルと金属フェイスプレートの合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは黒色のみ。

そして注目するのはKZ系ではASシリーズで音導管に代わる内装カバーが採用されていましたが、このHM20では遂に音導管が採用されていてBAに繋がる配管が確認できます。

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続いて付属ケーブルを見てみます。

 

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付属ケーブルは最近のKZ系に付属する4芯銀メッキOFC線、並列ケーブルの白(銀)色タイプです。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はKZ-C、2ピン仕様。極性はもちろんKZ極性の上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に多少引っ掛かりがありますが、タッチノイズは殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。

とはいえ、まあKZ系の付属品ですしリケーブルやイヤーピース交換前提と云われればそれまでです。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

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続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からKZ ZAS、CCA HM20、CCA CA16 Pro

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HM20とZAS、CA16 Proとの外観の比較として、先述の通りサイズ感はZASやCA16 Proが比較的大柄のシェルとなっており、HM20が一般的なものと比較しても小柄ということもあり、そのコンパクトさを感じられます。

シェルの材質も先述の通り、ステムノズル一体型のシェル本体が樹脂製でフェイスプレートが金属製のハイブリッド、マルチマテリアル仕様となります。一方ZASやCA16 Proはそれに加えステムノズルが金属です。

そのため重量やはりZASやCA16 Proの方が比較的重量を感じますが、三機種共に耳への装着時には良好な装着感によって極端に重さを感じる事はないと思います。

ステムノズルの太さと長さ及び角度はHM20が一般的な太さでやや太め。ZASやCA16 Proは細め。三機種共に同じでやや起きている。HM20がやや長めですが一般的な長さでZASとCA16 Proが短めです。ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがありHM20が一番目が真にフィルターという感じ。ZASやCA16 Proも細かく細目ですが、それには及びません。HM20は音質への影響のあるタイプと云えますが、他は異物混入による故障を防ぐタイプと云えそうです。

装着方法は三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りHM20はステムノズルが太めのため、イヤーピースは装着感への影響を考慮し普段より小さめ、または傘の形状を考慮して社外品を選択する等、耳への装着感を重視し選択してください。

付属品だけでイヤホンとして使えないかと云えば、決してそんなこともないですけど。イヤーピースは普段使っているメーカーの物へ交換推奨です。

最後に付属イヤーピースを見てみます。


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イヤーピースは従来のKZ系に付属する溝有黒色シリコンイヤーピースタイプが付属します。個人的にこのKZの溝有黒色イヤーピースでは傘がカサつきを感じ、堅めなこともありフィット感がイマイチです。最近のKZ系に付属する溝有白色イヤーピースでは適度なコシと傘表面にしっとり感があり遮音性も十分に感じるので、何故それを付属しないのか?在庫処分もほどほどにして欲しいです。

音質的には従来の溝有黒色イヤピよりも白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプで、比較的開口部が大きく高音がダイレクトに届くタイプのためHM20に合うと思うんですよね。黒色は低音過多になるので新型ドライバの良さがスポイルされるような気がします。

この付属溝有黒色イヤピで私は耳が痛くなるため、手持ちのKBEAR 07 M-を耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

中華イヤホンでは付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じる事が多くあります。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. CCA HM20音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云え、エントリークラスの代表となります。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云え、モニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能です。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはKBEAR 07 M-サイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「明るく派手目に鳴る。高音がやや強めに鳴り、低音は抑え気味。量感よりもタイトにキレのある鳴り方」です。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き低音はほど良く締まり整い全体のバランスが良くなりました。

 

音場

普通からやや広め。奥行はそれほど感じられませんが、横方向に空間を感じられます。そのためやや平面的な印象です。

 

高音域

煌びやかで響きも良く伸びやかさを感じられますが、やや強調感を感じられます。存在感があり華やかに鳴りますが、尖りは感じず刺さりは抑えられています。解像感の高さを感じますが、強調された感じを受けるため、自然な感じではありません。超高音域の伸びも強調された他の高音にかき消されそれほど程感じません。

 

中音域

横に広さを感じるものの縦の奥行はそれほどでも無く空間に特に広さを感じませんが、華やかさのある鳴り方は嫌な感じはありません。前後の奥行を感じ難く音数が多くなると音が重なり団子感をやや感じますが、音のゴチャつき抑えられています。そのため解像感は悪くありませんが、特別良いとも言えない感じ。やや良好という印象です。ボーカルはクリアで自然な位置からやや近い位置で聴かせてくれ、ドライ傾向ですが不自然さを感じるような声色ではありません。

 

低音域

量感は多くなく響きや広がりを抑えた音。ドゥォ~ンと響き広がる様な低音ではありませんが、必要な量を必要なだけ鳴る低音です。量感で誤魔化す音ではなく芯のある締まった音ですが、音の強弱や輪郭を正確に表すような解像感はほどほど。ベースラインは十分追えますし、中音をマスクする様な前面に出るような強さではありません。重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、十分な強さがあります。

 

出音のバランス

一言で云えば高音域にやや強調感のある中高音寄りの弱ドンシャリ。従来のKZテイストを抑えたCCAのイメージの出音はバランスが良く普通に良い音。

 

高音の煌びやかで響きのある音は明るく華やかさがありますが、それでもただ強く鋭い尖った音が前に出てくる音ではなく、ちょっと強めに鳴る音。多少強調されたくらいが丁度良い高音域を造ってくれますが、静かな自室での長時間リスニングアはきつくなるかもしれません。超高音までの伸びはそれ程感じませんが、高音域全体でわざとらしく強く鳴ることもなく、不快に感じる尖りはありません。他の音域を邪魔することなく適度な強さは「丁度良い」と納得できます。過剰演出をしない高音は全体のバランスが丁度良い、不快感の無い高音です。

中音は凹みを殆ど感じず、空間は横の広さを感じる一方で奥行を感じ難く、音の分離はまずまず。縦方向の空間は感じ難くボーカルの周りにやや近い位置に重なる楽器の音が音数が多い楽曲ではごちゃつきを感じます。一方で音数の少ない楽曲では整理され見通しの良さを感じられます。解像感や分離も悪くないのに何故かごちゃごちゃする音は相性が出やすいのかもしれません。

ボーカルは自然な位置からやや近くでクリアで聴きやすい。高音や低音に埋もれる事はありませんが、声色はドライでナチュラルさは感じません。それでも息遣いやコーラスが聴き取りやすさのある明るい声は何故か聴き入ってしまいます。一方で女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声は相性を感じ、分が悪く感じるかもしれません。

低音は量感は抑えられていますが、全体のバランスで見れば十分な量感。高音中音をマスクする様な印象はありません。広がりや響きはそれほど感じられませんが、寧ろ締まった芯のある音は強さも十分で小気味良い印象。アップテンポのリズミカルな曲との相性は良く、音の強さ、強弱を感じながらノリの良い曲との相性は良いと思います。バラードなどでは低音のゆったりとした広がりは感じ難く、雰囲気が今一つに感じられるかもしれません。新型XUN-7ダイナミックドライバは従来の10mm二重磁気ドライバの傾向のままダイヤフラムの変更と小径とすることで低音を抑え、従来の「強く鳴らせば良いんでしょ?」という強ドンシャリからの脱却と低音の質感向上を目指した音という印象です。

重低音は沈み込みはそれほど深さを感じませんが、十分な強さです。

実は同社のZS10 pro Xでも新型DDが採用されましたが、こちらは10mm径でダイヤフラムを変更し二重磁気ではありませんでした。これも過度に低音を鳴らすのではなく芯がある強さのあるタイトな音が高音中音の煌びやかで響きの良い音を邪魔しない音でした。それが功を奏してZS10 pro Xの音色は従来のKZのドンシャリとは異なる、弱ドンシャリバランスの整った高音低音の統制された出音です。

HM20もその傾向でありますが解像感はHM20の方が上。ただし、音数が多い楽曲では互角。この辺りは低コストBAの限界を垣間見える結果と云えそうです。

 

さて、他機種との比較です。先ずZASとCA16 Proはほぼ同じ音質という印象ですのでZASとの比較します。

ZASは立体感のある鳴り方が特徴です。HM20ではその立体感は感じ難くい印象です。低音の質感はHM20の方が上。高音は強調感があるHM20に対し自然な強さのZASは同じ弱ドンシャリではありますが、出音の印象が異なります。正直嗜好による違いなので、何方が上という事ではありませんが、個人的にはZASの方が好きです。

そして中音域の良さで云えば同社のAS16 ProとHM20の中音域が同傾向と云えそうです。その二つで云えばBAの低音とDDの低音の違いがありますので、この二本を抑えておけば今後の選択の際のリファレンスにできるのではないでしょうか。

音楽を楽しく聴く事ができ、同じリスニングイヤホンというカテゴリでは音の完成度は高く、KZも音質を疎かにせずに本来のイヤホンとしての商品に向き合お始めたのかもしれません。

 

※以前のレビューもご参考ください

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まとめるとCCA HM20はこのクラスの多ドラハイブリッドモデルとして、1年ぶりの新製品として新型DDを採用する等、音質への拘りも感じさせるKZ系ブランドCCAの最新モデルは極端な強ドンシャリモデルから決別したバランスの良い出音は普通に良い音を聴かせてくれます。

また、HM20は従来のCCAのようなリスニング用途としての非常にバランスの良い、丁度良いドンシャリが、高音域の刺激的な強さや低音のドンの量が多いバランスを求め、演奏メインで聴きたい方はもの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

なお、KZ ZASやCA16 Proとは出音の傾向を変えています。それらが異端だったのかもしれませんが、従来のKZ系ブランドの延長線上にあるのはHM20と云えそうです。KZが仮にさらに上のクラスを目指す場合、従来の延長線上のままでは行き詰まるのではないかと少し心配してしまいますが、それは余計なお世話というもの。正直な感想として上のクラスの質感にはまだまだ敵いません。そもそもそれを目指していないし、従来のクラスでトップで十分というならば、先ずはTrnに追い付いてほしいかなと思います。

 

高音   AS16 Pro ≧ HM20 ≧ ZAS 

中音   ZAS ≧ AS16 Pro ≧ HM20

低音   ZAS ≧ HM20 ≧ AS16 Pro

ボーカル ZAS ≧ HM20 ≧ AS16 Pro

※出音や音色の参考程度に

 

 

4. CCA HM20の総評

CCA HM20は同社の多ドラハイブリッド旗艦モデルとして一年ぶりに発売しました。前作とドライバ構成数を変えずに、新型DDを採用する等の過去の過剰なスペック競争から一歩引いた意欲作です。その音質は従来のCCAとKZの棲み分けを彷彿させ、KZのドンシャリとは一線を画したバランスの良い出音は、普通に良い音です。また前作CA16 Proからは出音を変え従来の音に回帰したリスニングイヤホンという印象です。一方でKZ系には求める音は「強ドンシャリ」という方々には評価が分かれるかもしれません。

 

最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年12月3日)は国内amazonやAliExpress、HiFiGoで発売されておりますが、昨今の円安のため、国内amazonとの価格差がそれ程なく、国内amazonでの購入がお勧めです。AliExpressやHiFiGoでは本国発送のため、リスクが有り少々難があると云えます。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内amazonの取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressやHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

HM20

以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

ZAS
以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  
※☆0.5、★1.0

 

AS16 Pro

以下、付属ケーブル、イヤピ Sedna EarFit  Light Short MSDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A5000帯中華多ドラハイブリッドイヤホンの商品のレビューとなりました。同社の価格帯ラインナップの中でも高音質といえる仕上がりですが、ライバルの背中が見えた程度。今後も両社にはレベルの高い競争を楽しませて欲しいです。さて、日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

TRIPOWIN Rhombus レビュー

こんにちは。

今回もいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格A10000帯で発売された1BA+1DDモデルのTRIPOWIN Rhombusについてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのLinsoul Audio(@Luke32344614)で取り扱いがあります。

 

 

AliExpressでも取扱があります。

 

ja.aliexpress.com

 

Linsoul Audioの直販サイトはコチラ

Tripowin Rhombuswww.linsoul.com

 

 

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1. TRIPOWIN Rhombusについて 

TRIPOWINは、最新且つ最先端のドライバー技術を使用しながらも、手頃な価格で高音質を提供しています。それはドライバーの品質を妥協せず、これまでの製品開発の経験を活かした商品は国際的に評価を得ているメーカーとなります。

そのTRIPOWINから今回「Rhombus」が10,000円を少し超える中価格帯中華イヤホン1BA+1DDモデルとして発売されました。

TRIPOWINといえばこれまでに国内イヤホン専門店でも取扱のあったTC-01や最近では海外レビュワーとコラボしたTRIPOWIN HBB OlinaTRIPOWIN×HBB Mele等の音質に定評があるモデルがあります。音質に妥協していないが故に相応の価格となる商品が多くなりますが、それでも当該価格帯の商品として満足感の高いコストパフォーマンスの高いラインナップが魅力のブランドと云えそうです。

 

それではTRIPOWIN Rhombusのスペックを詳しく見ていきます。先述の通り1BA+1DDハイブリッドモデルです。1BA+1DDハイブリッドモデルの超高音~高音域のバランスドアーマチュアドライバ(BA)にはKnowles 33518を採用し超高音~高音域を担います。中音~低音域はTRIPOWINの最新10mm径 LCP / PUダイナミックドライバ(DD)を採用。振動膜に液晶ポリマー(LCP)ダイアフラム層を。サスペンションエッジとしてポリウレタン(PU)層を二重複合構築しています。この新しい振動膜の設計は、単一素材のダイナミックドライバのようなサウンドの均一性を実現しながら、マルチドライバを搭載したような音色と特性を実現。更に二重層複合ダイアフラムダイナミックドライバには、より応答性を高めるために、二重磁気銅コイルを組合わせています。それは、ヘッドホンで採用されている強力なN52マグネットシステムと組み合わせることで、Rhombusはスピーカーのようなダイナミクスと豊かな質感の音楽体験を生み出しています。

最近はLCPダイヤフラム(=振動膜)採用のドライバがキレの良い解像感の高い音で注目されており、それをPUとの二重複合層とすることで、LCPだけでは低音が弱くなりがちのところを補う意図が感じられます。実際に聴いてみれば鋭さの中に優しい繊細さを感じる高音に、キレのある解像感の高い中音域。量感が出すぎず適度に抑えながらも豊かさを感じられる情感のある低音が好印象です。

次にシェル本体はオール金属製です。航空宇宙グレードのアルミニウム素材を5軸CNC機械加工機を使用して切削加工され、高い加工精度により、全ての製品で安定した音響キャビティチューニングを実現しています。これはユニット間のチャネルのアンバランスを抑えるために重要な要素です。加えて、BAとDD個別の音導管(音響チャンバー)設計を用い、それをステムノズルの手前で合わせ不要な高調波共鳴を除去しています。フェイスプレートは、Rhombusという名の由来となった多面的なポリゴンデザインにより独創的なデザインとなっています。

音質を突き詰めればシェルの材質による音への影響は無視できません。金属製シェルは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなります。響きの美しさは金属が一枚上手ですが、良い事だけではなく、反響が強くなることで不自然な残響音となる場合があります。一方樹脂製シェルでは高音域の響きが吸収されてしまう傾向があり、金属シェルと同じ音圧をにするために高音域の減衰を考慮しやや強めに鳴らす必要があります。加えて、音導管の有無も重要でこのバランスが難しいのは言うまでもありません。

そして最も大事なことですが、異なる複数のドライバを搭載するハイブリッドモデルでは各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングが重要です。低価格帯はもとより、中価格帯のモデルでも曲によってつながりにやや不自然さを感じる場合があります。TRIPOWIN Rhombusはknowless 33518とLCP/PU複合ダイナミックドライバでは一聴した限りつながりに不自然さは感じられずTRIPOWINのチューニング技術の高さを感じられます。

最後に付属ケーブルです。複数の細線を柔らかく編んだ素材を使用した超高純度銀メッキ単結晶銅(OCC)撚線は26AWGを採用。更に素線を追加で組み込むことで、やや肉厚な触感と豊かなサウンドを実現しています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしているところもありますが、TRIPOWINでは妥協せずに高品質線材を採用しています。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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TRIPOWIN Rhombusの納期としては現在(2022/11/26)国内amazonでprime扱いですので当日発送、翌日配達で直ぐに届く安心感があります。AliExpressでオーダーした場合でも感染症の影響は回復傾向であり国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定してきました。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. TRIPOWIN Rhombus実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたシックスリーブタイプ。スリーブ表面にはメーカー名が大きな文字で印字されています。

 

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スリーブを外すと内箱が。こちらも黒を基調としています。

 

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内箱の上蓋を開けると黒地の内装にイヤホンが収められています。


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内装の下側には付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が白色と黒色タイプの計2セット。他にはケーブルとケーブルバンド、イヤホンポーチです。中価格A10,000帯として必要十分の付属品となります。

 

次に本体を見ていきます。

 

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特徴的なデザインのフェイスプレートに対し、シェルの造形はオーソドックスなものでシェルの角も丸みがあり装着感は良さそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格A10,000帯として綺麗な仕上りでシェルの合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは黒色のみ。光の反射でVioletにも見える綺麗な色調です。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質線材を使用した単結晶銅銀メッキ線を採用しています。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。分岐部にはTRIPOWINロゴ入りです。ケーブルスライダを備え、イヤホン側は2ピン仕様の極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に引っ掛かりは少なく、タッチノイズも殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にやや堅さを感じますが比較的しなやかなさはありますので取り回しは悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からTOPAZ、Rhombus、NK7 mkIII

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RhombusとTOPAZ、NK7との外観の比較として、サイズ感はRhombusは横に大きく厚みがない。TOPAZが横は小さく厚みがある。NK7は横が一番大きく僅かにRhombusはより厚い。造形はRhombusはとNK7がオーソドックスで似ていて、耳甲介艇の突起はTOPAZがあり、シェルが厚め。

ステムノズルの長さと太さ、角度はRhombusとNK7がほぼ同じ。TOPAZがやや短く太さはほぼ同じですがやや起きています。

Rhombusはこの中では比較的コンパクトでオーソドックスな造形ですが、三機種共に耳への収まりが良く装着感は悪くありませんし、Rhombusはその中では最も良好です。

イヤホンとケーブルを接続するコネクタにはNK7がTFZタイプを採用し、Rhombusはフラット2ピンコネクタ仕様。TOPAZはコネクタ部がやや奥まっており中華2ピン仕様のため、Rhombusはリケーブルの際はほぼ困ることはありません。

シェルの材質は、NK7とTOPAZは樹脂と金属のハイブリッドに対し、Rhombusはオール金属製です。

重量はオール金属のRhombusはやや重め。と云っても数グラム程度。TOPAZはやや大きめのシェルにより比較的重量はあります。とはいえ、Rhombusは耳への装着時にはその装着感の良さからはそれほど重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすく三機種共にやや太めと云えますのでイヤピ選びは重要です。

ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり穴が大きめのタイプです。音質への影響のあるタイプと云うよりは異物混入による故障を防ぐタイプの様です。

三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通り三機種全てステムノズルが比較的太めなものの、実際の装着感は悪くなく、寧ろ付属イヤーピースの形状からは耳に密着させ装着する想定の様子。付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

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最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは白色と黒色の二種あり何れも一般的な形状の丸穴径、傘の裾野が弾丸タイプ。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒は音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプに感じ、付属白の方が中高音がはっきりと聴こえる印象です。両方共に軸はやや短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入し耳へ密着させることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

残念ながら付属イヤーピースでは私はフィッティングが上手くいかず、抜け気味となり低音が逃げて音が軽くなる為、手持ちのSedna EarFit(軸の長いノーマルタイプ)MSサイズで耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回も付属のシリコンイヤピで上手くフィットできず他社製を使用しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. TRIPOWIN Rhombus音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはSedna EarFit MSサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「高音に華やかさがあり、中音は解像感の高い音。低音は雰囲気の良いしっかりと鳴る音。やや中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き低音は締まり、雰囲気の良い音という印象です。

 

音場

普通からやや広め。前後はやや奥行があり、左右もやや広さを感じられ、立体感を感じられますが、空間の広さはそれ程感じません。

 

高音域

煌びやかで響きが良く上の上までの伸びやかさも感じられます。存在感は十分で華やかに鳴りますが、常に前に出るような出しゃばった感じの無い弁えた音。刺さったり尖りは感じません。

 

中音域

高音同様に空間に響き華やかさがありますが、音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じません。音の立ち上がりは良く解像感も高いです。ボーカルはクリアでやや近め。僅かにドライ気味ですが息遣いを感じられ瑞々しさを感じます。

 

低音域

量感は十分で響くような広がりもありますが、冗長さはなく、音階や強弱といった低音域の解像感の高い雰囲気の良さは情感の感じられる鳴り方です。ベースラインは追いやすい。重低音は沈み込みは深さがあり、強さもあります。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りのドンシャリ。高音域もしっかりと鳴りますがただ主張する音ではなく、必要な音を必要なだけ誇張せずに自然に鳴らします。

 

高音の煌びやかで響きの良い華やかさは前に出るような主張ではなく、必要なだけ鳴る自然な印象。超高音までの伸びも良く自然でなめらか。不快に感じる刺さりや尖りとは無縁で、小さな音をしっかりと耳に届け他の音を邪魔しない瑞々しい音。低価格帯で採用されているようなBAでは強めの音で強調されシャリ付くような演出感のある不自然な鳴り方ではありません。全体のバランスでみれば僅かに誇張された音にも感じますが、質の高いBAの音を感じられます。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルが近く楽器の音はボーカルの周りから少し離れやや後ろ辺りに位置し奥行を感じやすく、適度に響き華やかさがありますが、その音は分離が良く統制され見通し良く鳴ります。

ボーカルは近めの位置からクリアで聴きやすく、周りの音や高音や低音にも埋もれません。声色は僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ不自然さの無い、瑞々しさを感じられます。その分女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しみたい場合には多少分の悪さを感じるかもしれません。

低音は量感は十分で響きや広がり、音階や強弱を情感豊かに描いてくれます。それでも低音が強調された強めの音というよりは適度な解像感の高い低音が雰囲気の良さを感じられる質の高い音です。音階や音の強弱の掴みやすさを重視した解像感の高い音は雰囲気の良い曲との相性は良好ですし、ベースラインが気持ちよく聴こえる様は音楽を聴いている実感を得られます。

重低音は沈み込みは深く強さを感じられますが、低価格帯の様なただ強く鳴らす下品な音ではない情感を感じられます。低音域が高音や中音域を邪魔せずに雰囲気の良く鳴らす音は音楽を聴く楽しさを再認識させてくれます。

 

箱出し一聴した時点でBQEYZ TOPAZの高音に近しい出音と感じました。TOPAZは1Piez+1DDハイブリッドですので、そのPiezの高音域に似たなめらかで繊細な音を感じられます。一方でTOPAZとの大きな違いはDDです。Rhombusはドンシャリに感じられる一因にその低音域の強さがあります。TOPAZの低音域も悪くないのですが、フラット寄りに感じられる部分はRhombusとの大きな違いと云えるでしょう。

両方共に同じような価格帯とりますので、より分析的に聴きたい場合はTOPAZでしょう。しかし、音楽的に聴きたい場合は圧倒的にRhombusをお勧めしたい。

勿論、高音域も全く同じというわけではなく違いを挙げれば、Rhombusの方が上の上までの伸びやかさがあり、TOPAZは高音と中音の間、中高音域のなめらかさがあり、両方の良いとこどりしたらSpring1では?と近しいところでNK7 mkIIIでしょうか。それでもSpring1とはやはり違いますし、NK7 mkIIIとも違います。

RhombusとTOPAZは、その高音域が非常に近しいものの全体の出音が異なった音。低価格帯にはない繊細な高音域と低音の質感は10,000円で手に入るRhombusの価値は高いと考えます。

 

まとめるとTRIPOWIN Rhombusのドンシャリは誤魔化しのない出音が音楽を純粋に楽しめます。低音の方が出音が多めに聴こえるために低音重視と誤解されるかもしれませんが、実はRhombusの高音域の清々しいリスニングサウンドは全体の出音をやや低音にインパクトを与えながらも解像感の高い上質な音であり、音楽を楽しく聴く事ができる音色のイヤホンと云えます。

一方でモニター用途としては聴いていて楽しいドンシャリバランスと云えるため低音域以外は不向き。そして高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方はもの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   Rhombus ≧ TOPAZ  

中音   TOPAZ ≧ Rhombus

低音   Rhombus ≧ TOPAZ

ボーカル Rhombus ≧ TOPAZ

 

 

4. TRIPOWIN Rhombusの総評

TRIPOWIN Rhombusは同社が海外で好評を得ていることを頷かせるモデルと云えそうです。そのサウンドは上質な高音域に雰囲気の良い低音域が情感を感じられ音楽を楽しく聴く事ができます。ちょっと良いイヤホンが欲しいという、約10,000円で良い音を聴きたいというニーズに応えてくれるモデルと云えます。

 

最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年11月26日)は国内amazonやAliExpress等で発売されておりますが、国内amazonでは国内amazon倉庫発送となったことと昨今の円安のため、国内amazonでの購入がお勧めです。しかも、現在(2022/11/26)はブラックフライデーセール真っ最中で、20%OFFで購入できるよです。AliExpressでは本国発送のため、納期が掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

Rhombus

以下、付属ケーブル、イヤピ Sedna EarFit MSDAC UP5使用
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

TOPAZ

以下、付属ケーブル、イヤピ Sedna EarFit MSDAC UP5使用
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A10K帯中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンの商品のレビューとなりました。あたりまえですが低価格帯の多ドラハイブリッドモデルとは異なりレベルの高さを感じさせられました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

LETSHUOER S12 Pro レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格帯で発売されている1PD、平面駆動モデルのLETSHUOER S12 Proについてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのLETSHUOER(@letshuoer)で取り扱いがあります。

 

 

AliExpressの公式ストアでも購入できます。

 

ja.aliexpress.com

 

メーカー直販サイトはコチラ

letshuoer.net

 

 

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1. LETSHUOER S12 Proについて 

LETSHUOERは中華イヤホンの中でも革新的なイヤホンを販売しているメーカーです。数年前には当時SHUOERブランドで他社に先駆けて静電ドライバー(EST)とダイナミックドライバ(DD)のハイブリッドモデル、TAPEが個性的なデザインだったことと合わせて記憶に新しいメーカーですが、今回平面磁気駆動ドライバを搭載したモデル、S12 Proを発売しました。

今年の中華イヤホンのトレンドの一つ、平面磁気駆動ドライバは通常のDDよりも音域の広さと解像感の高さが特徴です。勿論通常のDDであっても音域の広いものや解像感の高いモデルもありますが、それらは国内外の有名メーカーの商品が殆どです。某ミリンクスや某ベリリウム、某ウッド等の高価な振動膜を採用しています。それらは当然の様に販売価格も高くなり10万円以上の高級機となり、なかなか手を出し難い商品と云えます。

それを中華イヤホンでは様々な材質の振動膜を手を変え品を変え市場に投入しており、例えばカーボンナノチューブ(CNT)はその代表と云えますし、最近では液晶ポリマー(LCP)がトレンドです。この辺りの開発スピードと商品展開の速さは流石と云えます。

その挑戦的な中華イヤホンメーカーの中でも今注目したいのが、LETSHUOERです。LETSHUOERは兎に角音質に拘り、革新的で挑戦的なモデルを市場に投入してきましたが、今回同メーカーがオーディオマニアと音楽愛好家のために6周年記念デラックスエディションとしてS12を特別にアップグレードしたモデルと謳っているのが、このS12 Proとなります。

メーカーHPを引用すれば、S12 Proは、カスタム14.8mm大口径振動板平面駆動ドライバーを搭載しており、高いディテール再現性、力強い低音域、鮮明な中音域、スッキリとした高音域を実現。102db / mWの感度により従来よりも鳴らしやすさを改善。ポータブル機器やDAC/アンプ等と組み合わせでもその実力を感じられ使用しやすくしています。

また製品の特長として、S12 Proは銀メッキ単結晶銅線を採用。一芯あたり0.05mmの線材を98本束ねた4芯タイプの高品質のケーブルです。イヤホン側には広く普及している 2pin(0.78mm)コネクタを採用しリケーブルの選択肢は多くなります。更にプレイヤー側のプラグは2.5mm / 3.5mm / 4.4mm プラグの交換が可能で、付属の交換プラグを使うことで多くのデバイスで使用可能となります。

 

さて、S12 Proは中華イヤホンの中価格A20000帯で今年秋に新発売されたモデルです。ベースモデルのS12は評価が高く、海外レビュワーからも評価の高い人気のモデルでしたが、アップグレードモデルであるS12 Proの注目すべきポイントは先ずは何と言っても他社よりも大口径の平面磁気駆動ドライバを搭載していることです。同価格帯では14.2~14.5mm平面磁気駆動ドライバの採用が多く、その中でも最大級の14.8mmとなっています。

次に付属ケーブルのアップグレードです。ケーブルの線材には高級線材の銀メッキ単結晶銅を採用しただけでなく、プレイヤー側の端子交換式ケーブルを採用しています。これは付属ケーブルのプレイヤー側プラグ端子部をコネクタ化し分割可能とすることで、3.5mmと2.5mmバランスと4.4mmバランスのプラグに交換できる「プラグ交換システム(PCS)」となり、プレイヤー側に合わせたリケーブルが不要となります。従来はA20000帯のモデルでも標準的に付属するケーブルは3.5mmステレオミニプラグでしたが、昨今のミュージックプレイヤー(所謂DAP)側が標準として3.5mmステレオミニジャックに加え、4.4mmバランスジャックを採用している訳ですから、必然と云えますし、利便性が向上する今年のトレンドの一つと云えます。尤も3.5mmステレオミニプラグしか使わないユーザーにとっては無用なコネクタ部であり、接点が増える事を嫌いますが、そういうユーザーは既に交換用のケーブルをお持ちでしょうからあくまでも一般ユーザー層に向けたアピールポイントです。実際S12 Proに付属するPCSケーブルはそのコネクタ精度も悪くありませんし、何よりもイヤホン本来の性能を発揮するケーブルです。U10000とはクラスが違います。

以上の様にLETSHUOER S12 Proは同社の6周年記念デラックスエディションとしてベースモデルS12をアップグレードしながら、価格を据え置きとしたお買い得モデルと云えます。

 

LETSHUOER S12 Proのスペックですが先述の通り今年の中華イヤホンのトレンドの一つである平面磁気駆動ドライバを1基搭載した片側シングルドライバ構成モデルです。

このドライバは14.8mm径の超薄膜振動膜を採用。加えて強力な磁気回路との組み合わせにより平面磁気駆動ドライバのレスポンスの良さを最大限に引き出すことができています。

イヤホン本体にはベースモデルのS12同様にアルミニウム製を採用。耳にぴったりとフィットするように設計されており、 5軸CNC加工による滑らかな手触りの仕上がりで、丈夫でエッジレスのシェルは快適な装着感を得られます。

 

※宜しければ平面磁気駆動ドライバの搭載モデルの過去記事もご参考ください

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LETSHUOER S12 Proの納期として国内amazonでのオーダーであれば、現在(2022/11/19)は国内amazon倉庫に在庫がありますので、当日発送、翌日配達で入手可能です(日本の一部の地域を除く)。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なくほぼ回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販です。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. LETSHUOER S12 Pro実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングは白を基調とし表には商品名とHi-Resロゴが記載されたスリーブタイプの化粧箱です。
箱の表にはイヤホンイラストが。裏にはイヤホンスペックが記載されています。

 

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スリーブを外すと外箱同様に白地の箱が登場し、まるメーカー名が大きく印字されたデザインの内箱です。


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蓋を開けると黒地の内装の台座にイヤホンが収納され、イヤーピースケースも収められています。このイヤーピースケースにはフォームタイプのイヤーピースとなっています。

 

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台座を取り外すと箱の底にイヤホンケースが収納されています。

 

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イヤホンケースの中にはケーブル、イヤーピース、変換プラグが収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースが白色(半透明)タイプと黒色タイプのS、M、Lの3種が計2セットとフォームタイプのS、M、Lの三種が1セット。他にはケーブル、交換用プラグ、変換プラグ、イヤホンケースです。A20000帯として実用的であり、特別なこだわりがない限り他に用意する必要のない付属品となります。

次にイヤホン本体です。

 

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過度が落とされ丸みをのある造形は厚さがありながらも比較的コンパクトです。ビルドクオリティに雑なところを感じません。低価格帯の中華イヤホンでよくあるようなシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションは青色のみです。

次にケーブルです。

 

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付属ケーブルは4芯銀メッキ単結晶銅(OCC)線、銀色とガンメタの被覆の撚線タイプが採用されています。先述の通り、一芯に極細線を98本使用した4芯線は比較的太めとなります。

プレイヤー側コネクタはI字タイプでプラグ交換システム(PCS)対応。3.5mm/4.4mm/2.5mmの交換用プラグが三種付属します。イヤホン側は一般的な2ピンタイプ、0.78ピン仕様、KZ等と同じ上がプラス極性です。この付属ケーブルは今年のトレンドの一つとして各社が採用しており、今後の中価格帯ではスタンダードになっていくのかもしれません。S12 Proに付属するケーブルは高品質ケーブルですので、余程拘りがない限り、そのまま使用することをお勧めします。

実際の使用感として、耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。太さがある分、やや硬さを感じますが、中価格帯に付属するケーブルの中でも悪い印象はありません。何よりも殆ど全てのDAP等のプレーヤーにプラグ交換によって対応しますので、他に何も用意する必要がないのが良いです。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※プラグの取り付け向きを間違わない様に内側にキー溝(凹/凸)仕様となっています
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※左から2.5mm、3.5mm、4.4mmの交換用プラグ
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※イヤホン本体の青(ディープブルー)色に合わせたコネクタやスプリッタ、プラグのカラーが統一感があり商品性を高めています
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交換用プラグは3.5mm/2.5mm/4.4mm付属します。殆どのDAP等で困ることはないと思いますし、各交換用プラグにはメーカー名のLETSHUOERが印字されています。

また、交換用プラグとケーブルの接続コネクタ部は正しい向きでのみ勘合できるように勘合部内側に凸側と凹側を合わせる位置決めのキー構仕様が、誤ったコネクタ接続を防いでくれますので安心です。

最後に、他機種との比較です。

 

※画像左からKZ PR1 HiFi Edition、LETSHUOER S12 Pro、Trn Kirin 

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Trn KirinとKZ PR1 HiFi Editionとの外観の比較として、S12 Proが一番コンパクト。とはいえ、平面磁気駆動ドライバをシェル内に収める宿命なのかシェルの厚みは3機種共にあります。以前レビューした平面駆動のTiNHiFi P1は他機種流用のシェルであり、「とりあえず入れた」感がありましたが、最新の平面磁気駆動モデルは内部音響にも拘り必然的にシェルの大型化に繋がっています。S12 ProとKirinはオール金属製で、PR1は樹脂ベースとなります。

S12 Proのシェルの造形は一般的なカスタムIEM風の造形の角を徹底的に落とし丸みを帯びた造形。比較的オーソドックスなPR1とやや大柄で同じく丸みのあるKirinとはタイプが異なります。そのため、重量はKirinが一番重さを感じ、次点でS12 Proですが、S12 Proの造形による装着感の良さから装着時には殆ど気になりません。

ステムノズルはS12 Proが一番短め。Kirinはノズル交換可能となり、標準タイプを用いた場合は一般的な長さと云えます。太さもS12 Proが一番細め。他は標準的からやや太め。角度は三機種共にほぼ同じでやや起きています。

また、ステムノズル部には全てに金属フィルターがあり異物混入による故障を防げます。S12 Proのフィルターは比較的粗目タイプ。高音域の減衰が殆ど無いタイプです。音質的に影響があるのはKirinのタイプです。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りS12 Proはステムノズルは細目でやや短め。装着感はイヤーピースによる影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。


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付属イヤーピースは合計3種。シリコンタイプの白傘黒軸の白色タイプと黒傘黒軸の黒色タイプの二種と、フォームタイプ一種です。全てS、M、Lの3サイズ1セットです。

黒色タイプは個人的に傘のコシは良いのですが若干パサつきを感じました。白色タイプは適度な傘の弾力としっとりとした柔らかさがあり耳へのホールド感を持たせてくれます。音質的には黒色イヤピが中低音が厚めになり、白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプの様です。

このイヤホン本体に付属するシリコンイヤーピースとフォームタイプイヤピであれば、極端に耳が大きいor小さいという事が無ければ殆どの方で困ることはなさそうです。

この付属イヤーピースの白色Mサイズで私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は流石の中価格A20000帯です。付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. LETSHUOER S12 Pro音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属白色タイプ Mサイズ、付属ケーブル4.4mmプラグです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「低音がしっかりと感じられ、高音中音はすっきりとして見通しが良くクリア。音場の広さと立体感を感じる整った音」でした。あと、少し気になったのは音量がやや取りにくく普段よりもややボリュームを上げる必要がありました。

箱だしでは高音に荒さと低音の緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は高音は整い、低音が締まりました。

 

音場

広くて立体感のある鳴り方。前後は奥行があり、特に左右の空間の広さを感じられます。

 

高音域

煌びやかで響きが良く上の上までの伸びやかさも感じられます。華やかに鳴り存在感もありますが、常に前に出るような主張はなく尖りも感じません。自然な強さで繊細に音を奏でてくれます。

 

中音域

高音の伸びやかさは広がる空間を感じられましたが、中音は兎に角横に広く奥行きのある空間に響きの良さが感じられます。華やかに鳴りながら小さな音を逃さずに繊細に鳴らしてくれる懐の深さがあります。よくある音が中心に集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じず分離の良い音は立ち上がりも良くレスポンスの良いキレの良さに加え、音の輪郭の描写の良さは解像感の高さを感じます。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、ほぼニュートラルから僅かにドライ気味です。息遣いを感じられ実感を得やすい。

 

低音域

量感は比較的抑えられていますが、響きは良く音が広がった後の余韻が感じられますが、いつまでもそこに居座ることのない収束の仕方はごまかしの無い音は解像感の高い音。全体として過不足を感じない適度な量感に芯を感じ締りとキレは良好。音の強弱や音階を掴みやすく、ベースラインも追いやすい。重低音の沈み込みも深く感じられ強さのある音。

 

出音のバランス

一言で云えば中高音寄りの弱ドンシャリ。出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音。

 

高音は煌びやかで響きも良く華やかに鳴りますが、誇張された華やかさではなく、単に派手に鳴る様な主張もありません。自然な音の強弱や小さな音をそのままの強さで鳴らし、小さな音はその消え入る様を繊細に鳴らします。超高音までの伸びも良く自然でなめらか。強い音でも不快に感じる尖りはなく、小さな音はしっかりと耳に届けてくれます。最初の一音だけを強調した尖りのある鳴り方ではない、大胆さと繊細さを兼ね備え音の輪郭を正確に描写する解像感の高い音は高音を強調して解像感の高さを演出する様な質の低い音ではなく、あくまでも自然に正確に繊細な音を聴かせてくれる質の高い音です。広い空間で遠くで小さく聴こえる音が、かき消されずに聴こえる様に驚きます。

中音は凹みを感じず縦横の空間が広く、楽器の音は奥行きを感じボーカルの周りに居る事を感じます。華やかに聴こえるのに騒々しさとは無縁の音。特に広さを感じる横の広さは遠くの小さな音もしっかりと聴こえます。その音は自然で音を闇雲に鳴らすのではなく、音の描写である音の強弱と大小に加え音の立ち上がりと消え入る様をという輪郭を掴みやすい解像感の高さと、音が重なりごちゃごちゃしない分離の良い音は圧巻。見通しが良くクリアな音はボーカルが映えます。

そのボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすく、高音や低音の音に埋もれませんしその空間に確かに存在する実在感があります。声色は自然なニュートラルから僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ生々しさを感じられます。女性ボーカルのしっとりとした艶のある声も楽しめます。

低音は量感は抑えられ無暗に広がらない響きも感じられます。自然な響きは音の収束する様が掴みやすく、芯のある締った音は無駄に広がらずにキレも良い。量感で誤魔化していない低音はその音階や強弱の描写がしっかりと感じられる解像感の高い音を感じられ、雰囲気の良い曲との相性も悪くはありません。中高音寄りの弱ドンシャリの出音はフラットよりのイヤホンという印象で、必要以上に低音を強調せずにそれでも決して物足りなさの無い強さと芯のある上質な低音と云え高音中音を邪魔しません。

重低音は沈み込みは深く芯のある強さを感じられます。自然な強さで大胆にも繊細にも鳴る高音中音域を下支えする質の高い低音はある意味存在感を示します。

 

S12 Proは箱出し一聴した時点で「やだぁ、なにこれ、凄いんだけど」というこれは良い音だよねという印象でしたが、聴きこむことで何がそう感じさせたのかがはっきりと見えてきて、増々聴き惚れてしまいました。これまで聴いてきた平面磁気駆動ドライバモデルはそのポテンシャルを全てを引き出せていないのではと感じました。その位S12 Proのインパクトは強いものでした。

S12 Proで特筆すべきはやはり広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でます。中価格帯のイヤホンとしてレベルの違う高音質と云えます。これが平面磁気駆動ドライバの素性の良さとポテンシャルの高さでしょうか。

一方で刺激的な高音や脳に響く低音を感じたい方には凡庸な音に感じるかもしれません。

 

次に現在はやや下の価格帯となりますが、比較対象としてTrn Kirinとの比較です。

今年は兎に角平面磁気駆動(PD)モデルが多く発売されました。シンプルに平面磁気駆動のシングルドライバモデルから、ピエゾ(Piez)やBAとのハイブリッドモデル等、様々です。中価格U10000帯ではBAとやや小径のPDとのハイブリッドが主流ですが、A20000帯ではピエゾと14mm径以上のPDとのハイブリッドが音質の評価が高いようです。そういう意味ではやはり価格帯はやや下となりますが、Kirinは14.5mm径のPDをシングルで搭載したモデルとなりますので、比較に丁度良いと考えます。

Kirinの音質はPDの特徴を体感できる普通に良い音がするイヤホンです。両機とも近しい出音と感じましたが、その違いはやはり音場。空間の広さや立体感はS12 Proの圧勝。どちらも全音域をバランス良く聴かせてくれ、出音や音色といったバランスは普通の音質の良いイヤホンで感じたそれと同じです。どちらも過度に強調するところが無く自然に鳴らしながら、解像感の高い音を聴かせてくれます。

それでもどちらが音が良いかという意地悪な質問に敢えて答えるならば、S12 Proとなります。音質という評価を主観的ではなく数値で表す事はできませんが、音の解像感はS12 Proが一枚上手と云えます。

 

余談ですが、先日のAliExpress恒例11.11セールでセラーオリジナル旗艦モデルを型落ちとなりますが購入しました。販売価格が当時A30000のモデルはシングルダイナミックドライバモデルです。少なくてもそれよりも音が良いと云えます。それは音が硬く、高音も言われているほどそこまで伸びない音で正直がっかりしました。2万円でも買わないです。1万5千円でなら検討するぐらいの評価で個人的にはそれよりはacoustune HS1300SSの方が良い音がしていると思います。

ならばHS1300SSとS12 Proとどちらが?となりますが、これは難しい。

HS1300SSは空気感の良い音であり、S12 Proの解像感の高い音とは傾向が異なるからです。使い分けが可能な音と云えます。

 

※以前のKZ PR1 HiFi Editionのレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとLETSHUOER S12 Proは平面磁気駆動ドライバを採用し同社の6周年記念モデルとして高音質を実現し中価格A20000帯、現在AliExpressでは1万円台後半で購入できるモデルの中でもトップクラスの音質と云えます。平面磁気駆動ドライバのポテンシャルを引き出した音づくりと同社の革新性で実現した音づくりは海外での評判が良いという事に納得です。個人的にはプラグ交換システムによるユーザビリティの高い商品性を高く評価します。

 

高音   S12 Pro ≧ Kirin ≧ PR1 (質感の順)

中音   S12 Pro ≧ Kirin ≧ PR1 (質感の順)

低音   S12 Pro ≧ Kirin ≧ PR1 (質感の順)

ボーカル S12 Pro ≧ Kirin ≧ PR1 (質感の順)

 

 

4. LETSHUOER S12 Proの総評

LETSHUOER S12 Proは同社の革新性を実現したモデルと云え、今年のトレンドである平面磁気駆動ドライバ1基のシングルダイナミックモデルです。そのドライバのポテンシャルを最大限に活かした音は解像感の高い高音質モデルです。平面磁気駆動ドライバを採用したメーカーは増えてきましたが、この価格帯でトップクラスの音質であり、これを超えるのは難しいのではないかと感じています。勿論遜色ない音を鳴らす物はあると思いますし、最後は嗜好によるところが大きいと考えますが、個人的にはお勧めの1本となります。一方でKZの様に安価で販売しているものは明るく派手な音であり、やはり雑な部分を感じますので、これとは異なります。とはいえ、A10000とA20000の商品を比べる事がアレなので、参考程度にお願いします。

 

最後に、今回は今年秋に発売された中価格A20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年11月19日)はAliExpressで22,000円程で販売し、国内amazonでは23,000円程の価格と販売価格に殆ど差がありません。AliExpressでオーダーした場合の入手性もかなり改善しています。とはいえこれまでの中華イヤホンの中では高価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はAliExpressやHiFiGo等での購入も検討してみてくださいね。

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

PR1 HiFi Edition

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの中価格帯の中でも海外で評価の高い商品のレビューをまとめてみました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

KZ PR1 HiFi Edition レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A5000-U10000帯で発売された1PD、平面駆動モデルのKZ PR1 HiFi Editionについてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのDUDO Audio Storeから購入しました。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取扱があります。

 

 

 

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1. KZ PR1 HiFi Editionについて 

今年も残すところ後2か月を切りました。ファッションにも毎年のトレンドがあるように今年の中華イヤホンのトレンドの一つは平面駆動ドライバだったと云えます。昨年は中華ESTドライバ改め、ESM(Electro Static Magnetic。以下中華EST省電力タイプをESMと表記)ドライバが登場し中華BAに代わるドライバとして期待が高まりましたが、ケチが付いてその後新製品は発売されていません。高音域を繊細に表現をしてくれるESMは中華BAよりも個人的には好みだったのですが、残念で仕方ありません。

平面駆動ドライバの搭載モデルは以前から他メーカーでも中価格A10000-U20000帯で発売されていました。今年Trn Kirinが販売価格17,000円で登場し、現在のTrnの勢いそのままに普通に良い音を聴かせてくれました。そこにKZ系ブランドのCCAが平面駆動ドライバを搭載したCCA PLA13を販売価格10,000円を下回り発売後、今回兄弟ブランドのKZから平面駆動ドライバ搭載のPR1を同価格帯で新発売してきました。

KZは価格のインパクトに加え、新製品のKZ PR1は異なる二つのバリエーションモデルとして登場。それぞれKZ PR1 Balanced EditionとKZ PR1 HiFi Editionと名付けられており、音質チューニングを変えて発売されました。

前回のレビューでは先ずPR1 Balanced Editionの方を記事にまとめましたが、今回はもう一つのバリエーションモデル、PR1 HiFi Editionをレビューしていきます。

 

※PR1(メーカーHP抜粋)

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前回のBalanced Editionのレビューでも触れましたが、メーカー発表のf特を引用します。グラフからは中音、高音域はほぼ同じですが、Balanced EditionよりもHiFi Editionの方が低音域が抑えられている様に窺えます。f特で音質の全てが分かる訳ではありませんが、大凡の傾向が分るという程度という理解に留めていただくとして、PR1の特徴は高音域にあります。1kを超えた辺りから2kと3kの間にピークがあり、やや下降した後に狭い振れ幅で上下も小さく10k手前まで維持し一旦下降。その10kのピークはやや抑えられ15k付近で再び上昇し2k-7kと同程度のピークになっていることが分かります。

実際のBalanced Editionの出音は前回のレビューの通り、平面駆動ドライバとしては低音がしっかりと鳴り、PLA13とほぼ同じ音という感想。細かく云えば高音域はPLA13と傾向は同じですが、PLA13の方が僅かに抑えている印象で、Balanced Editionの方が華やかさがあるように感じます。そしてHiFi EditionはPLA13やBalanced Editionのf特から明らかな違いとしてみてとれる低音域は流石に出音が全然違います。かなり抑えられた低音で「お前本当にKZか?」と疑う程です。一方でHiFi Editionの高音域はBalanced Editionのf特と測定誤差程度の違いはあれど同じです。実際の出音はHiFi Editonの方がより明るく華やかに聴こえます。

 

※KZ ZS10 pro X、4BA+1DDハイブリッドモデル(メーカーHP抜粋)

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比較用として同社の最新多ドラハイブリッドモデル、ZS10 pro Xの高音域BAではこの辺りはPR1の両Editionに比べグラフの振れ幅も広く、そして大きく上下していますが、PR1の両Editonは非常に振れ幅も狭く小さく上下しており安定した高音域を実現していることが分かります。

実際の出音は高音域の華やかさはBalanced Edition程ではありませんが、立体感を感じられ統制され整った音がします。個人的にはこちらの方が丁度良いと感じられます。低音は適度な量感。全域でバランスの良い音です。

 

※CCA PLA13、平面駆動モデル(メーカーHP抜粋)

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次に同じKZ系ブランドのCCA PLA13では高音域はPR1同様に2kと3kの間にピークがあり、そこからやや右下がりのグラフです。傾向は同じと云えますが、異なるのはPR1の様に10kはそれ程抑えられておらず、ピークからのやや右肩下がりの群の中に収まっています。これだけ見ればPLA13の方がPR1の両Editionよりも高音域が派手に鳴ることを騒動してしまいますが、実際には先述の通りPR1 Balanced Editionの方が華やかに感じ、PLA13の方が僅かに抑えられた大人の鳴り方という印象です。

そして低音域は最も異なります。PLA13よりもPR1 HiFi Editionのグラフカーブは4db程低く抑えられています。f特だけで出音は語れませんが、実際に聴き比べると一聴してPLA13の方がしっかりと鳴る低音です。

 

※Trnの平面駆動モデル(メーカーHP抜粋)
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折角なので価格帯は一クラス上となりますが、Trnの平面駆動モデルとf特を比べてみるとPLA13よりもPR1の高音域に近く、10kはPR1の両Editionよりも抑えられています。加えて低音域も抑えられていて、HiFi Editionがそれに近いことが分かります。こちらの実際の出音はやはり低音域は抑えられておりタイトな鳴り方。解像感の高い高音域はPLA13やPR1の両Editionと比べ、華やかさよりも繊細に鳴らす耳障りの無い音質は確実に一クラス上を感じられる音質です。

結局のところf特は出音の参考にはなりますがそれで全てが分る訳ではなく聴いてみて音質を評価することが一番だと個人的に考えています。そういう意味ではKZ PR1の二つのEditionは”間違いなく”二種類の音を楽しめるバリエーションモデルと云えそうです。

 

さて、KZ PR1 HiFi Editionのスペックですが中華イヤホンで最近流行りの平面駆動ドライバを1基搭載した片側シングルドライバ構成モデルです。

このドライバはCCA PLA13同様の直径13.2mmの振動膜にデュアルキャビティを採用しており平面駆動ドライバのレスポンスに加え芯の強さを引き出すことを狙ったものです。

イヤホン本体にはステムノズル一体型の樹脂製シェルカバー上下に金属製のフェイスプレートを被せており低価格帯のステムノズル側シェルカバーと金属製フェイスプレートを接合するものとは異なります。

 

※宜しければ平面駆動ドライバの搭載モデルの過去記事もご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

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KZ PR1 Balanced Editionの納期として今回AliExpressでオーダー、2週間強で届きました。現在(2022/11/5)は国内amazonでも取扱がありますが、本国発送ですのでAliExpressでのオーダーと同程度の納期となります。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なくほぼ回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販のリスクです。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. KZ PR1 HiFi Edition実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングは従来のシンプルな白を基調としたものから箱の表に商品写真を印刷したスリーブタイプの化粧箱です。
箱の裏にはイヤホンスペック等が記載されています。

 

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スリーブを外すと内箱の白地のプラ台座にイヤホンが収納されています。


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内箱の下側の蓋を開けると箱の底に付属品が収納されています。

 

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付属品は最近のKZ系に付属するシリコンイヤーピース、溝有白色タイプS、M、Lの3種が1セット。他にはケーブルです。中価格A5000-U10000帯としては物足りない付属品となります。

次にイヤホン本体です。

 

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シェルは何かの流用の様ですが、低価格帯のように樹脂と金属を嵌め合わせただけの構造ではなく、シェルの樹脂部は上下カバーを嵌め合わせた後に、金属フェイスプレートを被せたもの。その分それらよりもシェルに厚みがあります。ビルドクオリティには問題を感じられず、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせません。低価格帯でよくあるシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションは銀色のみとなり、Balanced Editionが黒。HiFi Editionが銀となり色違いで各Editionの識別が可能となります。

次にケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り最近のKZに付属する4芯銀メッキOFC線、並列フラットケーブルの白(銀)色タイプです。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はKZ-C、2ピン仕様。極性はもちろんKZ極性の上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に多少引っ掛かりがありますが、タッチノイズは殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からCCA PLA13、KZ PR1 Balanced Edition、KZ PR1 HiFi Editoin

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KZ PR1のBalanced EditionとHiFi Editionは基本的に同じ。CCA PLA13とはフェイスプレートのデザイン違いです。PR1の二種とPLA13はKZ ZSN pro X等と比べるとシェルの厚みがあり、ZS10 pro Xと同等程度です。Trn Kirinのオール金属製と異なり、樹脂と金属のハイブリッド素材となり重量は3機種共に同じ。軽量とまでは云いませんが装着時にはその装着感の良さから殆ど気になりません。

ステムノズルの長さや太さも三機種共に同じ。ZS10 pro Xを標準的とした場合に、それよりもやや短く、太さも僅かに細い。角度もやや寝ています。

また、ステムノズル部には三機種全てにフィルターがあり異物混入による故障を防ぐと同時に細目タイプで音質に影響があるタイプの様です。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、装着感はステムノズルの長さや太さに影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。

 

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付属イヤーピースは最近のKZに付属する従来のKZ黒色溝有の白色タイプ。個人的に従来のKZ黒色溝有はパサつくというかかさつくので、このKZ白色溝有イヤーピースの方が重宝しています。傘のコシもありしっとりとしていて遮音性も十分に感じますので低価格帯では十分使えます。Balanced Editionでは従来の黒色溝有イヤピが付属していました。

音質的には従来のKZ黒色溝有イヤピよりも白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプの様で、KZの強い低音には丁度良いタイプですね。

この付属イヤーピースで私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

※左HiFi Edition。右Balanced EditionのイヤピはKZ付属白色溝有を装着。

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3. KZ PR1 HiFi Edition音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属白色溝有 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「低音が抑えられた音。高音域に華やかで明るく派手に鳴らす。平面駆動らしい高音と中音域に解像感を感じられる音」でした。注意点としてはBalanced Edition同様に音量がやや取りにくく普段よりもボリュームを上げる必要があります。

箱だしでは高音域の騒がしさと量感の少ない低音に加え、緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音の量感はさほど変わりませんが、締まったタイトな音になり高音域も落ち着きました。

 

音場

やや広めから広め。前後の奥行を感じられ、特に左右の空間の広さを感じられます。

 

高音域

華やかで明るく華やかさがある派手な鳴り方は、ちょっと騒がしくない?と感じるような鳴り方です。煌びやかで響きが良く上までよく伸び、存在感があります。悪く云えば前に出たがる主張。良く云えば高音域を中心に解像感を感じさせシャープな音。とは言えしっかりと鳴るものの刺さりや尖りは感じ難く、不快感の無いように上手くまとめている印象です。繊細に鳴る音も線の細い聴こえない音ではなく細やかな音を描写してくれる解像感の高さを感じます。

 

中音域

空間の広さを感じられ高音域同様にその空間に華やかに響く音は繊細さも持ち合わせており、複数ドライバでよくあるような音が重なり中心に集まる団子感や音がゴチャつく渋滞の無い整理された分離の良さ感じます。高音同様に解像感の高さを感じ、小さな音の消え入る様を感じられる繊細さがあります。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、ややドライ気味なものの息遣いを感じられます。

 

低音域

量感は抑えられ、余韻を楽しむような広がりはありませんが、決して軽い音ではなく芯のある締まった音。全体的な印象として締りとキレは良好で音の強弱や音階を淡々と描写する。ベースラインは追えますが、支配的ではなく添えるだけ。重低音の沈み込みはそれほど深さを感じませんが、芯の強さを感じる音。

 

出音のバランス

一言で云えば派手な明るい中高音寄り重視の弱ドンシャリ。出音は高音の主張が強く低音がそれほど強くないので万人受けするバランスではない。やや高音強調のフラットバランス寄りに感じられます。

 

高音はかなり派手に感じられますが、低音が控えめなバランスから受ける印象によって脳が支配されている印象。実際には煌びやかで響きも良く華やかに明るく鳴りますが、耳を劈く様な刺さりをギリギリ攻めたように派手に鳴る訳ではなく、ちょっと騒がしいな位の印象。音の強弱や響き、小さな音も繊細に描写してくれます。超高音までの伸びも良くなめらか。強めの音も尖りはなく、小さな音はかき消されずに耳に届けてくれます。演出感のある鳴り方ではなく、あくまでも解像感の高さを感じられる音は、高音を強調し解像感が高いような演出した音ではなく、小さな音も繊細に鳴らす描写力を持ち合わせた音です。

中音も高音域同様に華やかさがありますが、ちょっと騒がしい。凹みを感じずに縦横の空間の広さを感じられ、楽器の音はボーカルの周りやや後ろ辺りの離れた位置に感じる立体感のある鳴り方ですが、その音は統制されています。空間の見通しは良くクリアで音の描写力は良好。解像感の高い分離の良い音を感じられます。

ボーカルは自然な位置から聴きやすく、高音や低音の音に埋もれません。中音に重なり、かき消されることはありません。声色はややドライ気味なものの息遣いを感じ、クリアに聴こえます。

低音は量感はかなり抑えられ、余韻を楽しむような広がりは感じません。軽い音ではありませんが、芯がある強くて締りの良いタイトな音はキレの良い小気味良い鳴り方です。従来のKZの二重磁気ダイナミックドライバの様な強いアタック感ではありませんし、量感で誤魔化していない低音はバラードなどのしっとりとした雰囲気の良い曲との相性は良くないかもしれません。中高音寄りの弱ドンシャリの出音はフラットバランス寄りという印象を受け、寧ろ高音域を楽しむために低音を抑えた音。高音中音を邪魔することはありません。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、芯のある強さがあり小気味良く鳴ります。明るく華やかに鳴る高音中音域をキレの良い低音が小気味良さを感じます。

 

PR1 HiFi Editionの音はBalanced EditionやPLA13とは異なる傾向です。箱出し一聴して感じられる違いは、f特にも表れていた違いの通り低音域は抑えられており、HiFi Editionでは高音域中心に聴かせることを主眼とした音づくりという印象です。加えてBalanced Editionよりも高音域が華やかさを感じられ、ちょっと騒がしい印象も受けますが、平面駆動ドライバの特徴である解像感の高いサウンドは不快な尖りはなく統制され、金属音の刺激的な部分を抑えながら明るく華やかな印象です。

HiFi Editionはちょっとネガティブな要素を持ち合わせていますが、Balanced Editionの普通に良い音という印象と比べた場合の話であり、音が破綻している訳ではありません。以前のKZの高音域のような主張の強い派手な音は、平面駆動ドライバの繊細な音を鳴らす事ができる特徴を活かせているのかと問われると疑問を持つというのが正直な感想です。

 

次に同様の平面駆動ドライバ搭載機との比較としてTrn Kirinとの比較です。販売価格帯が一クラス上となる為、参考程度となります。

先ず、同じ平面駆動ドライバと云ってもKirinは14.5mmとPR1の13.2mmとは異なります。先述の通りf特ではHiFi Editionの方は低音域等がKirinに近しいのですが、聴き比べると全体的に違う音と云えます。

一番の違いは高音域です。PR1 HiFi Editionでは高音域が明るく派手な音ですが、Kirinの高音は繊細な音を聴かせてくれます。一言で云えばKirinは品のある高音です。悪く云えば騒がしいHiFi Editionとは音の描写、解像感のレベルが違います。

低音もKirinもPR1 Balanced Edition程の量感はありません。量感だけならばHiFi Editonとほぼ同じ位ですが、低音の解像感がKirinの方に分があります。HiFi Editionの低音は同じ量感を抑えた傾向であっても音の強弱のみであり、Kirinの様に音階の表現力には敵いません。

また、Kirinの方が音場の広さ、特に奥行を感じやすい印象です。これはPR1 HiFi Editionの3.5mmアンバランスとKirinの4.4mmバランスという違いもあると思いますが、やはりKirinが一クラス上であることを実感します。

そのためKirinとHiFi Editionは近しいf特であっても、全く違う音という印象を受けます。

とはいえ聴き比べればの話であって、PR1 HiFi Editionだけ。または、Kirinだけを聴いている限りはどちらも同じ傾向の弱ドンシャリの繊細で高解像の音は、レベルの高い音と感じます。

PR1 HiFi Editionは、高音域に特徴のありながらも分離の良い繊細で解像感の高い音であり、同価格帯の多ドラハイブリッドモデルの様に相性の良い楽曲に左右されがちな音質評価と云えそうです。寧ろBalanced Editionの方は万能感のある高音質と云えそうです。

 

※以前のTrn Kirinのレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとPR1 HiFi EditionはBalanced Editionとは傾向の異なる音質であり、高音域が特徴的なバリエーションモデルと云えそうです。

また、今年のトレンドである平面駆動ドライバを採用し、KZブランドらしさで魅せてくれたモデルです。そして何よりもKZのアイデンティティー、他社と比較した場合の圧倒的コストパフォーマンスのが高さを証明してくれました。

なお、PR1 Balanced Editionはリスニング用途としてのバランスの良さがあり、HiFi Editionは低音よりも高音が欲しい方というような棲み分けられる音ですので、各々評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   HiFi Edition ≧ Balanced Edition ≧ PLA13 (出音の強さの順)

中音   HiFi Edition ≧ Balanced Edition ≧ PLA13 (出音の強さの順)

低音   PLA13 ≧ Balanced Edition ≧ HiFi Edition (出音の強さの順)

ボーカル Balanced Edition ≧ PLA13 ≧ HiFi Edition (質感の順)

 

 

4. KZ PR1 HiFi Editionの総評

KZ PR1の二つのEditionは同社の得意とする複数BAや多ドラハイブリッドモデルとは異なりシングルダイナミックの平面駆動ドライバモデルをライバルを大きく下回る販売価格で新発売するというコストパフォーマンスの高いモデルです。しかし相変わらず付属品が貧相で従来のワリキリを踏襲していますが、我々中華イヤホンファンもKZにそれは求めていないですし、個人的にはアリと思います。それでも平面駆動ドライバのモデルが9,000円程度で購入でき、音質も同価格帯の多ドラハイブリッドモデルを凌ぐ音質は、総評として高音質と云えますのでお勧めです。そして先述の通り、先に発売したKZ系ブランドCCA PLA13のブラッシュアップ版として完成度が上がっているBalanced Editonに対し、KZらしい明るく派手な高音域のHiFi Editonはユーザーの嗜好に応じて選択できますので、これからどちらかを購入する場合にはKZ PR1 HiFi Editionの方をお勧めします。その心は…。どちらもコスパの良いイヤホンですが、高音の派手さはイヤーピースで調整できますし、低音域のスッキリした音は化ける可能性が高く、潜在能力はHiFi Editionの方が高いと個人的に評価しています。

 

最後に、今回は今年9月に発売された中価格U5000-A10000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年11月5日)はAliExpressで11.11セール中。通常9,000円程で販売し、国内amazonでは11,000円程の価格で販売されています。海外通販でもHiFiGoの発送は早く届くのも早い印象がありますが、一方のAliExpressでオーダーした場合の入手性もかなり改善しています。とはいえこれまでの中華イヤホンの中では高価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

PR1 HiFi Edition

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

PR1 Balanced Edition

以下、付属ケーブル、KZ付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

PLA13

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル4.4mm、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

KZ PR1 Balanced Edition レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A5000-U10000帯で発売された1PD、平面駆動モデルのKZ PR1 Balanced Editionについてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのDUDO Audio Storeから購入しました。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取扱があります。

 

 

 

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1. KZ PR1 Balanced Editionについて 

今年の中華イヤホンのトレンドの一つは平面駆動ドライバです。平面駆動ドライバ搭載モデルは他メーカーでこれまでにも中価格A10000-U20000帯で発売されていましたが、販売価格は15,000円を超え20,000円前後のモデル展開となっています。そこにTrn Kirinが販売価格17,000円で攻勢をかけており、現在のTrnの勢いを感じていました。ところがKZ系ブランドのCCAが平面駆動ドライバを搭載したCCA PLA13を販売価格10,000円を下回り発売。いつも通り、今回兄弟ブランドのKZからも平面駆動ドライバ搭載のPR1を同価格帯で新発売してきました。あの平面駆動ドライバ搭載モデルを10,000円で試す事ができるインパクトは中華イヤホンファンに衝撃を与え、中華イヤホンの恐ろしさを改めて感じられる今年のハイライトと云えます。

価格のインパクトはさておき、KZ系ブランドの新モデル発売の際に先ずはCCAから発売し、その評判をフィードバックしてKZから後発する流れがありました。このKZ PR1もその流れを踏襲しておりますが、今回は少し趣が違います。それはKZ PR1は異なる二つのバリエーションモデルがあり、それを同時発売したことです。

二つのバリエーションモデルは、それぞれKZ PR1 Balanced EditionとKZ PR1 HiFi Editionと名付けられており、音質チューニングを変えて登場しました。

 

※PR1(メーカーHP抜粋)

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二種のバリエーションモデルを語る上でメーカー発表のf特を引用します。グラフからは中音、高音域はほぼ同じですが、Balanced EditionよりもHiFi Editionの方が低音域が抑えられている様に窺えます。f特で音質の全てが分かる訳ではありませんが、大凡の傾向が分るという理解に留めていただくとして、実は注目は高音域です。1kを超えた辺りから2kと3kの間にピークがあり、やや下降した後に10k手前まで維持し下降。10kはやや抑えられていることが分かります。

 

※KZの4BA+1DD最新モデル(メーカーHP抜粋)

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比較用として多ドラモデルの高音域BAではこの辺りはもっとグラフの振れ幅も広く、そして大きく上下していますが、PR1は非常に安定した高音域を実現しています。

 

※CCAの平面駆動モデル(メーカーHP抜粋)

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※Trnの平面駆動モデル(メーカーHP抜粋)
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次に同じKZ系ブランドのCCA PLA13ではPR1同様に2kと3kの間にピークがあり、そこからやや右下がりのグラフです。傾向は同じと云えますが、異なるのはPR1の様に10kはそれ程抑えられておらず、ピークからのやや右肩下がりの群の中に収まっています。そして低音域はPR1 balanced Editionと同じ。f特が似ていても同じ出音になるとは限りませんが、実際のPLA13の出音も従来の平面駆動モデルとは異なりしっかりとした低音が特徴的で、明るく派手目に鳴る高音域というKZらしい音質傾向です。

折角なので価格帯は一クラス上となりますが、Trnの平面駆動モデルとf特を比べてみるとPR1の高音域に近く、10kはPR1よりも抑えられています。加えて低音域も抑えられていることが分かります。こちらも実際の出音は低音域は抑えられておりタイトな鳴り方。解像感の高い高音域は耳障りの無い高音質モデルです。

結局のところf特は出音の参考にはなりますがそれで全てが分る訳ではなく聴いてみて音質を評価することが一番だと個人的に考えています。そういう意味ではKZ PR1は二種類のバリエーションモデルが発売され、兄弟ブランドのCCA PLA13と3種類の音質を楽しめる事になりますので、今回はBalanced EditionとHiFi Editionの両方を購入して比較してみたい欲求が勝ってしまいました。

そのため、今回は先ずBalanced Editionからレビューしていきますが、実際に届いたPR1 Balanced Editionを一聴した限り、CCA PLA13によく似た音という印象です。鳴らし込み後に聴きこんでどの様な印象を感じられるのか、中華イヤホンファンとしても楽しみです。

 

さて、KZ PR1 Balanced Editionのスペックですが中華イヤホンで最近流行りの平面駆動ドライバを1基搭載した片側シングルドライバ構成モデルです。

このドライバはCCA PLA13同様の直径13.2mmの振動膜にデュアルキャビティを採用しており平面駆動ドライバのレスポンスに加え芯の強さを引き出すことを狙ったものです。

イヤホン本体にはステムノズル一体型の樹脂製シェルカバー上下に金属製のフェイスプレートを被せており低価格帯のステムノズル側シェルカバーと金属製フェイスプレートを接合するものとは異なります。

 

※宜しければ平面駆動ドライバの搭載モデルの過去記事もご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

KZ PR1 Balanced Editionの納期として今回AliExpressでオーダー、2週間強で届きました。現在(2022/10/29)は国内amazonでも取扱がありますが、本国発送ですのでAliExpressでのオーダーと同程度の納期となります。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なくほぼ回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販のリスクです。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. KZ PR1 Balanced Edition実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングはいつものKZのシンプルな白を基調としたスリーブタイプの化粧箱です。
箱の裏にはイヤホンスペック等が記載されています。

 

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スリーブを外すと内箱の白地のプラ台座にイヤホンが収納されています。


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内箱の下側の蓋を開けると箱の底に付属品が収納されています。

 

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付属品は従来のKZ系に付属するシリコンイヤーピース、溝有黒色タイプS、M、Lの3種が1セット。他にはケーブルです。中価格A5000-U10000帯としては物足りない付属品となります。

次にイヤホン本体です。

 

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PLA13同様にシェルは何かの流用の様ですが、低価格帯のように樹脂と金属を嵌め合わせ接合しただけの構造ではなく、シェルの樹脂上下カバーを嵌め合わせた後に、金属フェイスプレートを被せたもの。その分それらよりもシェルに厚みがあります。ビルドクオリティには問題を感じられず、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせません。低価格帯でよくあるシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションは黒色のみです。

次にケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り最近のKZに付属する4芯銀メッキOFC線、並列フラットケーブルの白(銀)色タイプです。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はKZ-C、2ピン仕様。極性はもちろんKZ極性の上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に多少引っ掛かりがありますが、タッチノイズは殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

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続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からCCA PLA13、KZ PR1 Balanced Edition、KZ PR1 HiFi Editoin

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KZ PR1のBalanced EditionとHiFi Editionは基本的に同じ。CCA PLA13とはフェイスプレートのデザイン違いです。PR1の二種とPLA13はKZ ZSN pro X等と比べるとシェルの厚みがあり、ZS10 pro Xと同等程度です。Trn Kirinのオール金属製と異なり、樹脂と金属のハイブリッド素材となり重量は3機種共に同じ。軽量とまでは云いませんが装着時にはその装着感の良さから殆ど気になりません。

ステムノズルの長さや太さも三機種共に同じ。ZS10 pro Xを標準的とした場合に、それよりもやや短く、太さも僅かに細い。角度もやや寝ています。

また、ステムノズル部には三機種全てにフィルターがあり異物混入による故障を防ぐと同時に細目タイプで音質に影響があるタイプの様です。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、装着感はステムノズルの長さや太さに影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。


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付属イヤーピースは従来のKZに付属するKZ黒色溝有タイプ。個人的に従来のKZ黒色溝有はパサつくというかかさつくので、最近のKZに付属するKZ白色溝有イヤーピースに交換しています。こちらのタイプは傘のコシもありしっとりとしていて遮音性も十分に感じますので低価格帯では十分使えます。

音質的には従来のKZ黒色溝有イヤピは中低音に厚みが増すタイプ。白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプの様で、そういう意味でも白色溝有タイプの方がKZの強い低音には丁度良い印象です。

この付属イヤーピースで私は耳が痛くなり易く、耳から抜け落ち易くなるので前述の通り、最近のKZに付属する白色溝有タイプに交換し、耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. KZ PR1 Balanced Edition音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行っています。スマホにはSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音は脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはKZ付属白色溝有 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「PLA13に似た音。平面駆動らしい高音と中音域に解像感を感じられる音。一方で平面駆動らしくない低音がしっかりと鳴る音。それでもKZにしては比較的低音を抑え気味。高音中音はすっきりとして見通しが良くクリア。ボーカルは聴きやすい、全体的に整った音」でした。あと、気になったのはPLA13同様に音量がやや取りにくく普段よりもボリュームを上げる必要がありました。

箱だしでは低音の緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音が締まりタイトになりました。

 

音場

やや広めから広め。前後の奥行を感じられ、特に左右の空間の広さを感じられます。

 

高音域

煌びやかで響きが良く上までよく伸びる印象です。華やかで存在感のある鳴り方は、悪戯に前に出るような主張ではありませんが、比較的しっかりと鳴るものの刺さりや尖りは感じません。繊細に鳴る音は決して線の細い音ではなく細やかな音を届けてくれ解像感の高さを感じる音です。

 

中音域

高音同様に広さを感じられる空間を感じ、その空間に響く繊細な音は華やかさがありますが、複数ドライバ搭載機によくあるような音が中心に集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じず、分離の良い音です。高音同様に解像感の高さを感じられ、小さな音の消え入る様を感じられます。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、ほぼニュートラルから僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられます。

 

低音域

量感は抑えられ、広がりはそれ程ありませんが、軽い音ではなくしっかりと鳴り、芯のある強さを感じられます。全体的な印象として締りとキレは良好で音の強弱や音階を掴みやすく、ベースラインも追いやすい。重低音の沈み込みはそれほど深さを感じませんが、強さを感じる音。

 

出音のバランス

一言で云えば明るい中高音寄りの弱ドンシャリ。出音は高音と低音の主張がそれほど強くないので全域のバランスはフラット寄りに感じられます。

 

高音は煌びやかで響きも良く華やかに鳴りますが、刺さりをギリギリ攻めたような派手に鳴る様な様ではなく、音の強弱や響きを脚色なく繊細に鳴らしてくれます。超高音までの伸びも良く自然でなめらか。強めの音でも刺さりや尖りはなくあくまでも自然な強さ。小さな音は不自然にかき消されず、耳に届けてくれます。低価格帯の中華BAの高音の様に最初の一音だけを強調した演出感のある鳴り方ではなく、解像感の高さを感じる音。高音を単に強調した解像感の高さを演出するような音ではなく、繊細さも持ち合わせた音は質の高い高音です。

中音は凹みを感じずに縦横の空間の広さを感じられます。楽器の音はボーカルの周りやや後ろ辺りの離れた位置に感じ、華やかさのある鳴り方ですが、その音は統制されていて、音の強弱や大小を自然な強さで鳴らし、見通しが良くクリアです。そして高音同様に音の消え入る様を掴みやすく、解像感の高い分離の良い音を感じられます。

ボーカルは自然な位置から聴きやすく、高音や低音の音に埋もれません。中音に重なり、かき消されることはありません。声色は自然なニュートラルから僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ生々しさを感じられます。ボーカルはクリアに聴こえます。

低音は量感は抑えられ広がりはそれ程感じませんが、決して軽い音ではなくしっかりと鳴り、広がりよりも芯がある強くて締りの良い音はキレの良い小気味良い鳴り方です。従来のKZの二重磁気ダイナミックドライバの様な強いアタック感ではありませんし、量感で誤魔化していない低音はその音階や強弱を掴みやすく解像感の高い音を感じられます。そのためバラードなどのしっとりとした雰囲気の良い曲との相性はそれほど良くないかもしれません。中高音寄りの弱ドンシャリの出音はフラット寄りのイヤホンという印象を受け、低音をやや抑えた適度な強さの音は高音中音をマスクしていません。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、芯のある強さがあり小気味良く鳴ります。繊細に鳴る高音中音域を下支えするキレの良い低音は丁度良い塩梅であり、無駄に存在感を誇示する様な事はありません。

 

PR1 Balanced Editionの音はほぼPLA13と同じ音という印象です。箱出し一聴した時点で感じたそれは最後まで払拭できませんでした。特に低音域はHiFi Editionでは一聴した限り低音を抑えた傾向に対し、従来よりは抑えられているもののしっかりと鳴る印象は同じです。それでも強いて云えばPLA13よりも高音域が少しだけ整理されて整った印象を受け、金属音の刺激的な部分を抑えながら華やかさのある印象です。

Balanced Editionは普通に良い音という印象を受けますし、平面駆動ドライバの特徴的な繊細な音は特に高音域では解像感を感じられ、広い空間に左右や奥行きを感じられる音は描写がしっかりとしています。何処かの音域を極端に強調してはいないものの、やや高音域が強く感じられますが、全音域をバランス良く鳴らしてくれ、中価格帯のイヤホンとしてレベルが高い音質と云えます。従来のKZからは想像し難い、新しいKZ系ブランドの音と云えます。

一方で刺激的な高音や脳に響く低音を感じたい方にはつまらない音に感じるかもしれません。

 

次に同様の平面駆動ドライバ搭載機との比較としてTrn Kirinとの比較です。販売価格帯が一クラス上となる為、参考程度となります。

先ず、同じ平面駆動ドライバと云ってもKirinは14.5mmとPR1の13.2mmとは異なりますし、聴き比べると全体的に近しい音とは云えますが、やはり少し違います。

一番の違いは低音です。PR1 Balanced Editionの方が低音に強さがあり、強さを感じます。そのためどちらも弱ドンシャリですが、PR1 Balanced Editionの方がドンシャリ加減が強く感じます。加えて高音域もKirinの非常に繊細で整った音の方が、質の高い高音域を描写できています。

また、Kirinの方が音場の広さ、特に奥行を感じやすい印象です。これはPR1 Balanced Editionの3.5mmアンバランスとKirinの4.4mmバランスという違いもあると思いますが、やはり一クラス上であることを実感します。

とはいえ聴き比べればの話であって、PR1 Balanced Editionだけまたは、Kirinだけを聴いている限りはどちらも同じ傾向の弱ドンシャリの繊細で高解像の音は、過度に強調するところが無く自然に鳴らすレベルの高い音と感じます。少なくても同じ中価格A5000-U10000帯で発売されている多ドラハイブリッドモデルでは不自然に感じてしまう部分をPR1 Balanced Editionでは感じられず、分離の良い繊細で解像感の高い音は多ドラハイブリッドモデルの様に相性の良い楽曲に左右されがちな音質評価もそれらよりも万能感のある高音質と云えます。

 

※以前のKZ ZS10 pro Xのレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとPR1 Balanced EditionはCCA PLA13とほぼ同じ音質であり、高音域の不快なピークを抑えたブラッシュアップモデルと云えそうです。

また、今年のトレンドである平面駆動ドライバを採用し、KZブランドとしても音質に妥協していない姿をユーザーに提案できたモデルです。そして何よりもKZのアイデンティティー、他社と比較した場合の圧倒的コストパフォーマンスのが高さがあります。

なお、PR1 Balanced Editionはリスニング用途としての聴いていて楽しいドンシャリバランスが好きという方には評価が分かれてしまうかもしれませんし、既にPLA13を所有している方は改めて購入する必要はないと個人的に考えます。

 

高音   Kirin ≧ PLA13 ≧ PR1 Balanced Edition (質感の順)

中音   Kirin ≧ PR1 Balanced Edition ≧ PLA13 (整っている順)

低音   PLA13 ≧ PR1 Balanced Edition ≧ Kirin (出音の強さの順)

ボーカル Kirin ≧ PR1 Balanced Edition ≧ PLA13 (質感の順)

※高音の出音はPR1 Balanced Editionが一番強い

 

 

4. KZ PR1 Balanced Editionの総評

KZ PR1 Balanced Editionは同社の得意とする複数BAや多ドラハイブリッドモデルとは異なりシングルダイナミックの平面駆動ドライバモデルをライバルを大きく下回る販売価格で新発売しました。相変わらず付属品が貧相だったと従来のワリキリを踏襲していますが、我々中華イヤホンファンもKZにそれは求めていないですし、個人的にはアリと思います。それでも平面駆動ドライバのモデルが9,000円程度で購入でき、音質も同価格帯の多ドラハイブリッドモデルを凌ぐ万能感のある音質は、総評として高音質と云えますのでお勧めです。そして前述の通り、先に発売したKZ系ブランドCCA PLA13のブラッシュアップ版として完成度が上がっていますので、これからどちらかを購入する場合にはKZ PR1 Balanced Editionの方をお勧めします。…でも、次回HiFi Editionの記事を参考にしていただいてからの方が良いかも、と付け加えておきますね。

KZ PR1は二つのEditionを同時発売するという新たな展開をしてきました。今回は先ず、Balanced Editionのレビューをまとめましたが、この記事をまとめている時点でほぼHiFi Editionとの比較について「ネーム」が終わっていますので、少々お待ちいただければと思います。

 

最後に、今回は今年9月に発売された中価格U5000-A10000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年10月29日)はAliExpressで9,000円程で販売し、国内amazonでは11,000円程の価格で販売されています。海外通販でもHiFiGoの発送は早く届くのも早い印象がありますが、一方のAliExpressでオーダーした場合の入手性もかなり改善しています。とはいえこれまでの中華イヤホンの中では高価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

PR1 Balanced Edition

以下、付属ケーブル、KZ付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

PLA13

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル4.4mm、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

※2022/11/3 3項の表現を修正