みぃねこの備忘録

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Trn Kirinレビュー ※TiNHiFi P1 との比較含む

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格帯で発売された1PD、平面駆動モデルのTrn Kirinについてレビューをまとめたいと思います。

今回は国内amazonのHiFiGo(@HiFiGoAudio)から購入しました。

 

 

 

HiFiGoからの直接購入も可能です。

 

HiFiGoのサイトはコチラ

TRN Kirin Superior Class 14.5mm Planar Magnetic Driver In-Ear IEMShifigo.com

 

 

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1. Trn Kirinについて 

中華イヤホンと云えばこれまでKZが低価格帯のトップランナーとして君臨してきましたが、そのライバルとしてTrnが競い合い低価格帯を盛り上げてきました。そのTrnは数年前からKZ後追いの多ドラモデル開発競争、スペック番長モデルの販売からは一歩引き、現在は音質の良さで勝負しています。というのもこの2年以内に発売したモデルで高価格帯では片側15BAのBA15、中価格帯の片側9ドライバ8BA+1DD多ドラハイブリッドのVX Pro、低価格帯の片側2ドライバ1BA+1DDハイブリッドのTAや片側1DDのMT1等、音質評価の高いモデルが挙げられ、その他のモデルも音質評価は決して悪くないモデルのイヤホンを多数市場に投入し、従来からの音圧で勝負するKZとは一線を画す商品展開で成果を上げ、中華イヤホンファンの間では音質の良いTrnを定着させつつあります。KZとの差は何か?それは何といってもその音質です。ライバルの背中を追いかけていたのは今は昔。あちらは先述の通り派手な高音と低音のドンシャリモデルを中心に展開していますが、Trnは数年前からはその方向を止め、中高音の解像感を重視した高音質のモデルを発売しています。誤解の無いように補足すると、決してドンシャリは音質が良くないという意味ではなく、リスニングに適したイヤホンは多かれ少なかれドンシャリです。高音と低音が特に強調された落差の大きいU字カーブの強ドンシャリのものもあれば、緩やかなU字カーブの弱ドンシャリもあります。中華イヤホンで評判の良いメーカーは所謂ハーマンターゲットカーブを採用又はそれに近い特性を持っており、ハーマンターゲットカーブは緩やかなU字カーブと云えます。厳密には低音と高音を大きく持ち上げずに中音との大きな差を無くし、且つ低音や高音に尖ったピークを造らない、フラット寄りの特性となっています(色々な権利に触れると面倒ですので、記事には載せられません。どんな特性か気になる方は検索してみてください)。

Trnはこの緩やかなU字カーブをベースにし、低音域よりもやや高音域を重視した解像感の高いモデルを近年継続して発売しており、中華イヤホンファンの好評を得ています。これは同社のU5000帯やA5000-U10000帯は勿論、ハイクラスA20000帯のBA15でも踏襲されており、最早「Trnの音」と形容すべきと個人的に考えています。

この様に近年Trnは音質を重視したモデルの開発と販売に力を入れ、KZとは一線を画す高音質モデルのラインナップを普遍的に進めており、中華イヤホンの低価格帯に留まらずに同社が次世代ビジネスモデルへと転換していると考えられます。そして結果としてそれは成功であったと云えます。

 

さて、Trn Kirinは中華イヤホンの中価格A10000帯で今年5月に新発売されたモデルです。Kirinの注目すべきポイントは先ずは何と言っても平面駆動ドライバを搭載していることです。平面駆動のドライバは高価であり高価格帯では採用例は決して多くないものの、これまでにも発売されています。それが中価格A10000帯で採用されたことが先ず凄い事と云えます。

次に同社は元々ケーブル屋という事もあり、新たな商品として最近力を入れているプレイヤー側の端子交換式ケーブルを採用しています。通常A10000帯のモデルやそれ以下の価格帯のモデルに標準的に付属するケーブルは3.5mmステレオミニプラグです。偶に、購入時に付属ケーブルをメーカーOPの2.5mmバランスプラグのケーブルや4.4mmバランスプラグのケーブルを選択できたりしますが、ほぼ3.5mmステレオミニプラグとなります。ミュージックプレイヤー(所謂DAP)側が世の標準として3.5mmステレオミニジャックな訳ですから、当然と云えば当然です。これをKirinでは付属ケーブルのプレイヤー側プラグ端子部をコネクタ化し、3.5mmと2.5mmバランスと4.4mmバランスのプラグに交換できる「プラグ交換システム(PCS)」を採用したケーブルが付属します。3.5mmステレオミニプラグしか使わないユーザーにとっては無用なコネクタ部、接点が増える事を嫌いますが、そういうユーザーは既に交換用のケーブルをお持ちでしょうからあくまでも一般ユーザー層にに近い戦略と云えますし、そもそもKirinに付属するPCSケーブルはその精度も悪くありませんので十分使えるケーブルと云えます。

そしてもう一つ。ノズル交換システムによる音質調整が可能となっています。ステムノズルは三種付属し、それぞれTransparency(Short Nozzle)、Reference(標準)、Atmospheric(Long Nozzle)と他社でよくあるノズル部のフィルタだけが異なるタイプとは異なり、フィルタの目の粗さに加えノズル長も変えることで積極的な音質変化を可能としています。各ノズルの特徴としては以下の通り。

  • Transparencyノズルはフィルタの穴少なめ(Atmosphericと共通)、ノズル長は一番短い。高音域の解像感を重視したやや高音を強めに聴かせる音。
  • Referenceノズルはフィルタの穴多め、ノズル長はTransparencyとAtmosphericの中間の長さ。高音と中音域の解像感の高い最新のTrnの音。
  • Atmosphericノズルはフィルタの穴少なめ(Transparencyと共通)、ノズル長は一番長い。ボーカル帯域と低音を重視し雰囲気良く聴かせる音。

実際にノズル交換した際には一聴して変化を感じやすくなっています。

最後にTrnが謳う「Kirinのシェル内部構造は大型の14.5mm平面磁気ドライバを単に収めただけでなく、超低歪みと正確な再現性、高解像度のサウンドを奏でる音響ハウジング設計を実現しました。その結果、様々なジャンルの音楽を上手く引き立て、クリアなサウンドを目指した」としており、一聴して素直に「なるほど」と納得してしまいました。

以上の様にTrn Kirinはこれらの特徴を持ち同社の現在の勢いや商品開発のプライドを感じさせる仕上がりとなっており、従来の主戦場U10000帯ではなく、A10000帯という本当に音が良くないと売れないし叩かれる激戦区に新たな刺客として送り出した意欲作と云えそうです。

 

Trn Kirinのスペックですが先述の通り中華イヤホンでは採用例の少ない平面駆動ドライバを1基搭載した片側シングルドライバ構成モデルです。

このドライバは直径14.5mmの超薄膜、ナノグレード振動膜を採用しており平面駆動ドライバのレスポンスの良さを最大限に引き出すことができます。

イヤホン本体にはマグネシウム合金の金属製シェルを採用し黒色のシェル本体とノズル部及びフェースプレートの金色の縁取りがアクセントとなるデザインが採用され他とは違う造形となっています。

 

※宜しければ平面駆動ドライバの搭載モデルの過去記事もご参考ください

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Trn Kirinの納期として今回国内amazonでのオーダーでしたが、国内amazon倉庫入荷前の為、本国発送でした。現在(2022/8/10)は国内amazon倉庫に在庫がありますので、当日発送、翌日配達で入手可能です(日本の一部の地域を除く)。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なくほぼ回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販です。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Trn Kirin実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングは黒を基調とし表には商品名が金色文字でアクセントをつけられた高級感のある箱はスリーブタイプの化粧箱です。
箱の表にはイヤホンイラストが。裏にはイヤホン分解図等が記載されています。

 

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スリーブを外すと黒地の箱が登場し、まるで高級文房具の化粧箱のような凝った表面素地の内装箱です。


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蓋を開けると黒地の内装の台座にイヤホンが収納され、イヤホンケースも鎮座しています。

台座を取り外すと箱の底にケーブルが収納されています。


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イヤホンケースの中にはイヤーピース、変換プラグ、交換用ノズルが収納されています。

そして注目したいのはコレ。

 

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フェースプレートに保護フィルムが貼ってあります。中価格A10000帯ともなると国内メーカーではシェルに何らかの保護がされている場合もありますが、このクラスの中華イヤホンではあまり見かけません。Trnの力の入れ様が窺えます。

 

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付属品はシリコンイヤーピースが白色(半透明)タイプと黒色タイプのS、M、Lの3種が計2セットとフォームタイプが一組。更に白色の透過度違いのシリコンイヤピMサイズが本体取付け済。他にはケーブル、交換用プラグ、交換用ノズル、変換プラグ、イヤホンケースです。A10000帯として実用的で豪華。特別なこだわりがない限り他に用意する必要のない付属品となります。

次にイヤホン本体です。

 

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丸みをのある造形はビルドクオリティに問題を感じられず、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせません。低価格帯でよくあるシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションは黒色のみです。

次にケーブルです。

 

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付属ケーブルは8芯銀メッキ無酸素銅(OFC)線、白(銀?)色の編込みタイプが採用されています。プレイヤー側コネクタはI字タイプでプラグ交換システム(PCS)対応。別途紹介しますが、交換用プラグが三種付属します。イヤホン側はKZ-Cタイプ、2ピン仕様、KZ極性(上がプラス)です。この付属ケーブルは最近のTrnが提唱するプラグ交換システムに対応したTrn TNケーブルと同等の一部パーツ違い仕様の様です。耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。絡まり難くしなやかなものとなり中価格帯に付属するケーブルの中でも悪い印象はありません。殆ど全てのDAP等のプレーヤーにプラグ交換によって対応しますので、そのまま使用できますし白色ケーブルは被膜も綺麗な色味からは、シェル本体にマッチしています。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※プラグの取り付け向きを間違わない様に外側に▼/●マークとその内側に凹/凸があります
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交換用プラグは三種と変換プラグ1種。3.5mm/2.5mm/4.4mm交換用プラグと3.5mm-6.35mm変換プラグが付属していますので、殆どのDAP等で困ることはないと思いますし、各交換用プラグにはTrnロゴとメーカー名が印字されています。

また、交換用プラグとケーブルの接続コネクタ部は正しい向きでのみ勘合できるように勘合部に凸側と凹側を合わせる位置決めのキー構造が設けられており、誤ったコネクタ接続を防いでくれますので安心です。

 

更にKirinの特徴の一つにステムノズル交換システムがあります。3種のステムノズルが付属し、それぞれステムノズルの長さを変える事でステムノズル内の空間の大きさを変化させ音質変化をさせています。先述の通り、一番短いのがTransparency(高音域の解像度重視)。次に長いのがReference(Trnの最新の音。標準)。一番長いのがAtmospheric(ボーカルと低音域の雰囲気を重視)とすることで好みの音質に調整可能としています。デフォルトは本体取り付け済みのReferenceです。

 

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左から、Transparency、Reference、Atmosphericです。

他社の同様システムよりも音質の変化を感じる事ができます。他社ではフィルタによって特に高音域の強さを調整するものでしたが、Kirinではフィルタに加えステムノズルの長さを変える事でステムノズル内の空間による音響変化を利用し他社よりも変化が感じ易くなっています。これはイヤーピースを交換した場合の音質変化と同じで、イヤーピースの軸の長さや耳への挿入位置によって音質に影響を与えることを利用した音響技術の流用と云えます。

 

最後に、他機種との比較です。

 

※画像左からTiNHiFi P1、Trn Kirin 

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Trn KirinとTiNHiFi P1の外観の比較として、圧倒的にP1がコンパクト。とはいえ、Kirinが大きい訳ではなくP1が小さく、Kirinは一般的なイヤホンと比較すればややコンパクトな部類です。どちらもオール金属製です。

Kirinのシェルの造形は一般的なカスタムIEM風の造形と異なり、オーソドックスなタイプでシェルはやや厚みがある造形です。これは先述の通りシェル内部の音響に拘ったTrnの答えであり、聴けば納得するレベルです。一方P1は当時未だ珍しく採用例の少ない平面駆動ドライバを別製品のシェルを流用し搭載したものです。そのため、重量はKirinは重さを感じますが、装着時にはその装着感の良さから殆ど気になりません。

ステムノズルはP1が長め。Kirinはノズル交換可能となりますが、標準タイプを用いた場合は一般的な長さと云えます。太さはKirinは標準的。P1は太めです。角度はどちらもほぼ同じでやや起きています。

また、ステムノズル部には全てに金属フィルターがあり異物混入による故障を防げます。Kirinのフィルターは実質二種。標準が一番丸穴が多いタイプで、それ以外は外周の丸穴が無いタイプとなり標準よりも穴が少ないです。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからは二機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りKirinはステムノズル交換システムを採用しており、長さが異なるため装着感に影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。


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付属イヤーピースはTrn VX Pro等の最近のTrnに付属する白色タイプと赤軸ではない新型の黒色タイプがメインで付属します。個人的に従来のTrn付属の赤軸黒傘イヤーピースでは傘のコシは良いのですが若干パサつきを感じました。この新型黒色イヤーピースでは適度なしっとり感があり遮音性も十分に感じます。加えて白色タイプは適度な傘の弾力がしっかりと耳へのホールド感を持たせてくれます。

音質的には従来のTrn付属赤軸黒色イヤピよりも白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプの様です。比較的開口部が大きく高音がダイレクトに届くタイプですね。

新型黒色タイプは装着感が改善し従来の赤軸黒色タイプの様に中低音域がしっかりと聴こえるタイプの様です。

また、イヤホン本体に初期装着されている別の白色イヤピとフォームタイプイヤピも付属しておりますので、極端に耳が大きいor小さいという事が無ければ殆どの方で困ることはなさそうです。

この付属イヤーピースの内、初期装着されている白色イヤピで私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Trn Kirin音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属白色(初期装着)Mサイズ、Referenceノズル、付属ケーブル4.4mmプラグです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「低音が抑え気味の最近のTrnの音を感じられ、高音中音はすっきりとして見通しが良くクリア。ボーカルは聴きやすい整った音」でした。あと、少し気になったのは音量がやや取りにくく普段よりもボリュームを上げる必要がありました。

箱だしでは高音にバラツキと低音の緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は高音は整い、低音が締まりタイトになりました。

 

音場

やや広めから広め。前後は奥行がありますが、特に左右の空間の広さを感じられます。

 

高音域

煌びやかで響きが良く上までの伸びやかさも感じられます。華やかに鳴り存在感もありますが、常に前に出るような主張はなく尖りも感じません。とにかく繊細な音。

 

中音域

高音の上に広がる空間に対し、中音は横に広く響きの良い、繊細にも華やかさにも対応する懐の深さがあります。よくある音が中心に集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じません。分離の良い音は立ち上がりも良く解像感の高さを感じます。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、ほぼニュートラルから僅かにドライ気味です。息遣いを感じられます。

 

低音域

量感は抑えられ、響くような広がりはありませんが、芯を感じられ締りとキレは良好。音の強弱や音階を掴みやすく、ベースラインも追いやすい。重低音の沈み込みはそれほど深さを感じませんが、芯の強さはある音。

 

出音のバランス

一言で云えば明るい中高音寄りの弱ドンシャリ。出音は高音と低音が強くないので全域のバランスはフラットに感じられます。

 

高音は煌びやかで響きも良い華やかに鳴りますが、只々派手に鳴る様な主張ではなく、強弱や小さな音を繊細に鳴らす印象。超高音までの伸びも良く自然でなめらか。強い音でも不快に感じる尖りはなく、小さな音はしっかりと耳に届けてくれるます。統制の取れていないBAの高音が最初の一音だけを強調しシャリつく荒さのある鳴り方ではない、繊細で解像感の高い音。高音を強調して解像感の高さを演出していない繊細な音は質の高い高音です。

中音は凹みを感じずに縦横の空間の広さがあり、楽器の音はボーカルの周りでやや後ろ辺りの離れた位置に感じ華やかさがありますが、その音は統制されていて音を闇雲に鳴らすのではなく、音の強弱と大小を鳴らし分けていて見通しが良くクリアです。そして高音同様に音の消え入る様を掴みやすく、解像感が高く分離の良さを感じます。

ボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすく、高音や低音の音に埋もれませんし空間の広さから中音に重なることもアありません。声色は自然なニュートラルから僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ生々しさを感じられます。女性ボーカルのしっとりとした艶のある声も楽しめます。

低音は量感は抑えられ広がりや響きはそれ程感じません。響きよりも芯のある締りの良い音はキレも良く小気味良い鳴り方です。量感で誤魔化していない低音はその音階や強弱を掴みやすく解像感の高い音を感じられますが、雰囲気の良い曲との相性は悪いかもしれません。中高音寄りの弱ドンシャリの出音はフラットよりのイヤホンという印象で、低音を抑えた適度な低音は高音中音を邪魔しません。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、芯のある強さを感じられ小気味良く鳴ります。繊細に鳴る高音中音域を下支えするキレの良い低音は無駄に存在感を示しません。

 

Kirinは箱出し一聴した時点で普通に良い音という印象でしたが、聴きこむことでそのポテンシャルの高さを感じられ非常に良い音という認識ができました。特筆すべきは中音域の広い空間で左右や奥行きのある音は繊細で描写が確かです。これは搭載しているドライバの素性の良さとポテンシャルの高さでしょうか。これだけでもKirinを聴く価値はありますが、全音域を特出させずに鳴らすバランスは中価格帯のイヤホンとしてレベルが高い音質と云えます。

一方で刺激的な高音や脳に響く低音を感じたい方にはつまらない音に感じるかもしれません。

 

次に同価格帯の比較対象としてTiNHiFi P1との比較です。

P1は数年前に当時殆ど採用例の無い平面駆動ドライバを搭載した同社の試験的なモデルと云えます。その後、後継機のP1 Plusや上位機種のP2が登場し音の完成度は高く、当時も尖った音質のP1は現在の試金石だったと云えます。実際にこの数年で平面駆動搭載機も増え、どれも解像感の高い音に変わりはなく、出音の味付けによる違いといった評価です。そういう意味ではやはりP1との比較が相応しいと考えます。

P1の音質はやはり平面駆動ドライバの特徴でもある分離の良い解像感の高い音であり、左右に広い音場とごちゃつきのない中音域は聴き応えがあります。それでもKirinと比べるとやや不自然さを感じるのは冒頭の試金石ということに繋がります。高音は適度に響き、低音も控えめ。バランスとしては中音域を中心に聴かせる音色と云えます。当時はこの中音域のレベルの高さに驚きましたが、イヤホンのバランスとしては少し歪なところがあり面白いイヤホンという評価。その時は「これが中価格帯の平面駆動ドライバのイヤホンね」という印象でした。それを3年弱の時を経て、Kirinが覆してくれました。

KirinもP1も平面駆動ドライバの特徴を体感できますが、普通に良い音がするイヤホンといえるのはやはりKirinです。両機とも近しい出音と感じましたが、聴きこんでいくうちに全音域をバランス良く聴かせてくれるのはKirinと云えます。出音や音色といったバランスがKirinはごく普通の音質の良いイヤホンで感じたそれと同じ。過度に強調するところが無く自然に鳴らすレベルの高い音と感じます。

Trnがこれを発売した事に価値がありますし、今後も期待値が高いと考えます。

 

次にノズル交換を試してみます。

 

Transparencyノズルの場合

一聴して高音が強調されていることに気が付きます。元々見通しが良いために高音域の鋭さが増し、くっきりハッキリした高音域に対し、中低音域が控えめに感じます。

バンドサウンド等では少々高音域が暴れるような印象もあり、派手なサウンドに変化します。Referenceノズルよりも中高音の空気感がクリアに感じ。その分重低音はさらに控えめに感じます。個人的にはちょっと高音が強すぎで、これなら他のイヤホンで良いかなという印象です。

 

Atmosphericノズルの場合

こちらはReferenceノズルに比べて高音域は抑え気味でボーカルがやや前にでてくる印象です。

Referenceノズルではボーカルは自然な位置でしたが、Atmosphericノズルではやや前に出てくる印象です。特に女性ボーカルは艶を感じられます。また、中低音域が濃くなり響きというか音が広がる印象です。ReferenceノズルやTransparencyノズルでは感じなかった雰囲気の良さが生まれています。一方で実際に中低音の濃さが、他のノズルよりも高音中音にマスクされたような感じを受けるかもしれません。

個人的には雰囲気の良い鳴り方は好きなのですが、Kirinの特徴を活かしきれないと感じました。

 

ノズル交換システムによる音質変化は他の機種よりも大きく感じられましたが、Kirinの特徴を活かすのはやはりReferenceノズルとまとめます。

一方でTransparencyノズルでは高音好きのリスニング用途として好評となるかもしれません。

 

Trnの音として同じ中価格A10000帯前半のVX Proでも完成度の高い音を聴かせてくれていますが、Kirinでは価格は少々上がるもののそれを上回る高音質で聴かせてくれます。

数年前のトニカクKZの後追いのTrnからの決別と、この価格帯でもTrnは良い音を聴かせるメーカーとして地位を確立しつつあると感じました。

 

※以前のTrn VX Proのレビューもご参考ください

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まとめるとTrn Kirinは平面駆動ドライバを採用し最新のTrnの音を実現し中価格A10000帯に留まらず同社のモデルの中でも最高音質と云えます。平面駆動ドライバを活かした音づくりと同社の目指す音づくりがうまく融合して高音質だけでも評価が高くなりますが、ノズル交換システムやプラグ交換によってユーザビリティの高い商品性も高く評価できます。

なお、Kirinはリスニング用途としての聴いていて楽しいドンシャリバランスが好きという方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   Kirin ≧ P1 (質感の順)

中音   Kirin ≧ P1 (整っている順)

低音   Kirin ≧ P1 (質感の順)

ボーカル Kirin ≧ P1 (質感の順)

 

 

4. Trn Kirinの総評

Trn Kirinは同社の得意とする複数BAや多ドラハイブリッドモデルとは異なるシングルダイナミックモデルです。ただしその一基のドライバには平面駆動ドライバを採用することでTrnの音に仕上げてきました。それは最近のTrnの中高音重視の音であり同社のモデルの中でも最高峰の音質と云え、国内メーカーでこの価格でこの音を超えるのは難しいのではないかと感じています。一方でKZの様な明るく派手な音とは異なりますので、嗜好によりその評価は分かれるかもしれません。とはいえ、15,000円程度で購入できる中華イヤホンの中でもお勧めできると考えます。

 

最後に、今回は今年6月に発売された中価格A10000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年8月10日)はHiFiGoで17,000円程で販売し、国内amazonでは17,000円程の価格と販売価格に殆ど差がありません。海外通販でもHiFiGoの発送は早く届くのも早い印象がありますが、一方AliExpressでオーダーした場合の入手性もかなり改善しています。とはいえこれまでの中華イヤホンの中では高価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

Kirin

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

P1
以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★★
お勧め度★★★★☆ (中音域重視★5)
※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ