こんにちは。
今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、1BA+1DDハイブリッドモデルではなく、1ESM+1DD多ドラハイブリッドモデルのKZ ZESについてレビューをまとめたいと思います。
AliExpressのCCA Global Storeで購入しました。
国内amazonでもGK Official Storeで取扱があります。
1. KZ ZESについて
KZ ZESはKZ ZEXの後継として今年2月に発売されています。ZESは発売前に大手レビュアーにサンプルを配っており、評価も上々とプロモーションも抜かりなく正式発売しておりZEXの後継として期待値が高い商品です。私も直後早々の2月に注文しましたが、結局届かず返金。4月に別のセラーで最初の購入よりも少々割高でオーダーし直しています。そして残念なことにやっと届いたころにはネット上で物議を醸していて、その問題が尾を引きこれまでほっといた訳です。ここではそれには触れませんが、以前の別の商品のレビューで個人的な考えを記載しています。
KZは最早言うまでもない低価格中華イヤホンのトップランナー、リーディングカンパニーです。そのKZが低価格帯U5000に中華ESTドライバ改め、ESM(Electro Static Magnetic。以下中華EST省電力タイプをESMと表記)を搭載した1ESM+1DDハイブリッドモデル、ZEXの後継機ZESを発売しました。これまでにESM搭載機のレビューをしておりますが、初めにCCA NRA。次にKZ ZEX。そして、KZ ZEX Pro。未レビューなのは某動画系レビュアーがチューニングを監修したKZ x Crinacle CRNですが、冒頭の騒動の発端なので、ね(これ以上は触れませんし、話しません)。
あとはLafitear LF3 Plusの1ESM+1DDハイブリッドモデルと同社LF3 Proの1ESM+1BA+1DDトリプルドライバハイブリッドモデルがあり、ZESをほっといた間に入手しています。こちらも本来はZESやZEX、ZEX Proとの比較記事を考えていましたが、現在未定です。此方はこちらでイヤホン本体とケーブルのピンアサインが特殊という斜め上の製品でした…。ミスではなく、仕様とのことなのでしょうもないな、と。いつか気が向いたら書こうと思います。
さて、KZ ZESに採用したESMはZEXやNRA同様の6.8mm径の低電圧タイプ(メーカー発表)です。これはESTの静電技術を従来の磁気技術に活用した特殊技術と云え、少ない電力で駆動させることができるものの対応できる音域が狭くなっていて、その分安価に製造することができるようです。
一方、高級機で採用しているESTは駆動するのに高電力が必要ですが、その分広い音域を対応が可能となっています。これはドライバのコストに直結しており、低価格帯に採用され無い理由です。中華のビジネスは良いものが造りたいというよりも売れるものを造りたい。その為にはできることを最速でするのが当たり前。日本の様な根回しとかクソメンドクサイことはしない。個人的にそんな文化の違いに羨ましさも感じますし、それを否定するのは違うと思います。彼らはただ商売を上手にしたい、商売に一生懸命なんです。
閑話休題。
次に、ZEXやNRAとZESの違いを以下にまとめました。
- ZESは新型の12mm径デュアルマグネティック(二重磁気)ダイナミックドライバと、6.8mm径ESMドライバのハイブリッドモデル
- ZEXは従来の10mm径デュアルマグネティック(二重磁気)ダイナミックドライバと、6.8mm径ESMドライバのハイブリッドモデル
- NRAは新型の10mm径トリプルマグネティック(三重磁気)ダイナミックドライバ(DD)を採用し、6.8mm径ESMドライバのハイブリッドモデル
ZESでは上記の通り新型DDが採用。NRAは三重磁気ドライバが採用されていて、従来の二重磁気ドライバの正統進化版でタイトでそれよりもキレの良い音。ZEXは従来の二重磁気ドライバですが、元々キレの良い芯のある音ですので、NRAの三重磁気DDはコストの問題なのかそれ以降他モデルへの展開が無いです。
折角良いものがあるのに「そういうところだぞ」と思います。
次に、低価格中華イヤホンに採用されるドライバについてです。これまでの低価格帯中華イヤホンではポピュラーな1BA+1DDハイブリッドモデルが主流です。これは高音域をBA一基が担い、DD一基が中音から低音域を担います。音を繊細に高い解像感で表現するのにBAは最適であり、低価格帯の1DDモデルではコストの制約から質が高くなく全域を表現するには力不足。低音に寄せるか高音に寄せた音づくりになってしまいます。全域をバランスを取ったモデルもありますが、音が粗かったり、高音の上の方と低音の下の方がバッサリと切られていたりと音のバランスが悪いものが多くなっています。その結果、DDには中音から低音域を任せ、高音をBAで補強してきた訳です。
しかし、ここでも低価格帯のコスト制約がでてきます。このクラスで採用しているBAの質は残念ながら高いとは言えず、音に粗さがあり解像感を重視した結果、シャープさはあるが故に尖りがある荒さは痛し痒し。それをZEXやNRAではESMによって高音から中高音域を担わせる事で低価格帯の1BA+1DDハイブリッドモデルの次のヒットを狙っている。しかし、ESMだと超高音域は控えめという評価から、従来のBAでそこを補う足し算をしました。コスト的にはたかが知れた中華BAですが、そのお陰で生まれたZEX Proでは上手く合致した訳です。
そしてZESでは新型の12mm径デュアルマグネティックダイナミックドライバを採用しました。これはやはりZEXがコストの制約によって従来のDDを採用した結果、三重磁気ドライバのNRAの方が評判が良かったという裏返しと云えます。素直にこの対応の速さ、柔軟さが中華の強さだと思います。
とはいえ、もちろんドライバの種類や質だけでなくチューニングも重要です。
ZESでは高音から中高音域のESMと中音から低音域のDDの各音域のクロスオーバーは重要でメーカーの腕の見せ所です。中華のチューニング技術は数年前に比べ進化しており、実際U3KのKZ ZSN pro XやKBEAR LARKは国内有名メーカーのU5K辺りとも良い勝負をすると思います。そこにNRAやZEX後継のZESがどのように巻き返すのか、期待が高まりましたが、…ケチが付いてしまい残念です。間違いなく出音は良いんですけど、ねぇ。
KZ ZESのスペックですが先述の通り中華イヤホンの低価格帯で多く採用されている1BA+1DD片側デュアルドライバのハイブリッド構成ではなく、同じ片側デュアルドライバですが、高音域のBAをESMドライバに変更したハイブリッド構成とし高音域用に高音から中高音域のESMを一基採用。中音から低音域用のダイナミックドライバ(DD)を一基搭載しています。
ダイナミックドライバはZEXの直径10mmの二重磁気ドライバから変更し、先述の通り新型12mm径二重磁気ドライバを採用。ESMはZEX同様の6.8mm径低電圧タイプを採用。ZEX同様にシェル内にDDとESMを同軸配置しています。
イヤホン本体は金属製ステムノズルとシェルの外側には金属製フェイスプレート及び金属製シェルカバーが採用されたハイブリッド構成です。ZEXやNRAではステムノズルとシェル一体型の樹脂製のため、高音域の響きという面ではZESは有利と云え、この辺りの違いにも注目です。
※宜しければ過去記事もご参考ください
KZ ZESの納期として今回AliExpressで購入し中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのようにはいきません。今回はオーダーから3週間で届きました。
昨今、感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきませんが、それも徐々に回復傾向であり最近はシンガポール経由ではなく台湾経由等で動き始めていますので、物流の安定化までもう少しというところですね。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。
そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。さらに現在は円安が進み価格のメリットがほぼ無い状態。それでも国内で発売前の商品を入手できる魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。
2. KZ ZES実機レビュー
それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。
パッケージングはいつものKZの白を基調としたシンプルなデザインの小箱ですが、従来よりもコンパクトなスリーブタイプの化粧箱です。
箱の表にはイヤホンイラストが。裏にはスペックが記載されています。
スリーブを外すとプラ製の白地の内装の台座にイヤホンが収納され、台座の下側のカバーを開けると箱の底に付属品が収納されています。
従来の小箱から変更となった化粧箱はパッケージングが合理的になっています。
付属品はシリコンイヤーピースがKZに付属する溝有黒色弾丸形状の軸短白色タイプのS、M、Lの3種が計1セット。そのイヤピMサイズが本体取付け済。他にはケーブルです。U5K、実売3,500円前後の低価格帯として必要最低限の付属品となります。
ビルドクオリティですが、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせない、近年のレベルアップを感じられます。カラーバリエーションはシルバーのみ。
付属ケーブルは従来のKZ低価格帯に付属のものとは異なる中価格帯のZASで付属するタイプの白色(シルバー?)の4芯銀メッキ銅線の編込みタイプが採用されています。プレイヤー側コネクタはI字タイプでイヤホン側はKZ-Cタイプ、2ピン仕様、KZ極性(上がプラス)です。この付属ケーブルは耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に絡まりにくいしなやかなものとなり低価格帯に付属するケーブルの中で必要十分。リケーブルはバランス接続をしたい方以外はそのまま使用できますし白色ケーブルはやや派手さはありますが、シェル本体の色がシルバーの為、それと相まって綺麗な印象を持ちます。個人的にはケーブルの被膜は黒色の方が合わせやすくて好きですね。
参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。
※画像左からKZ ZEX、KZ ZES、CCA NRA
KZ ZEXとCCA NRAはシェルが共通の様です。ZESも恐らくベースは同じですがフェイスプレート等の見た目が異なり高級感があります。サイズ感は三機種共に同じです。ZEXがやや厚みがあるため大柄に見えます。これはフェイスプレートのデザインの影響です。造形は三機種共にオーソドックス。余程耳の小さな方以外は耳への収まり、装着感に大きな問題は無いと思います。
コネクタは三機種共にKZ-Cタイプとなっています。
シェルの材質は、ZEXとNRAがシェル本体と一体型ステムノズルが樹脂。フェイスプレートが金属に対し、ZESはシェル本体は樹脂ですが、外側を金属カバーで覆っています。加えてステムノズルとフェイスプレートが金属です。
重量は三機種共にほぼ同じで、ZESが僅かに重量がある印象。それでも耳への装着時には殆ど差が分からないレベルです。三機種共に耳への装着感は悪くありませんが、ステムノズルはZESがやや細く、ZEXとNRAがZESよりやや太め。ステムノズルの長さは三機種共にほぼ同じです。角度も三機種共にほぼ同じです。
また、ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり異物混入による故障を防ぐと同時に、何れも目が細かく音への変化をある程度期待できます。
そして、シェル本体の形状からは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。
なお、先述の通り三機種の中でZESがステムノズルがやや細め。一般的に太いステムノズルの場合は装着感に影響があり、圧迫感を感じやすくなりますが、ZESではその影響が感じ難いため、イヤーピースのサイズで比較的容易に調節できます。
付属イヤーピースはKZ系に付属する溝有黒色弾丸形状の軸短白色タイプです。個人的にこの付属イヤピは軸が短く特定のイヤホン以外に上手く合わせられないです。例えばDQ6Sでは問題なく使えましたが、ZESでは装着後抜けてしまう…。ZAS等に付属するペラフニャ傘の軸短イヤピよりはマシですけど。先ずは使ってみて装着感に問題無い場合はそのまま使うのもアリだと思っています。
この付属イヤピは音質的にはKZ溝有黒色タイプよりも高音中音をクリアにして低音控えめにするタイプに感じますが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。
残念ながら、この付属イヤーピースで上手く合わせることができませんでしたので、手持ちのTrn付属イヤーピース、白色タイプ Mサイズを使用し耳奥に栓をするように装着しフィットしました。
低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じますが、今回も付属のイヤーピース、溝有軸短白色タイプでは上手く合わせられませんでした。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。
このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)
3. KZ ZES音質レビュー
それではいよいよ音質についてまとめていきます。
今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホはSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。
UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。
昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。
Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。
低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。
※FiiO M5とShanling M0の比較もよろしければご参考ください。
それでは実際に聴いてみます。
ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りイヤピは付属溝有黒色Mサイズ、付属ケーブルです。
箱出しで聴いてみた第一印象は「主張のある低音と厚みのある中低音、クリアな高音域のドンシャリ」です。
箱出しでは低音に膨らみを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音が落ち着き締まったキレの良い音に。相対的に高音中音がクリアに感じます。
音場は広くも狭くもない普通からやや広め。
高音は適度な煌びやかさと伸びやかさは華やかさがあり存在感がありますが、刺さりを感じるような鋭さは抑えられています。
低音は十分な量感があり芯が感じられ締りとキレは良好。ベースラインは追いやすく曲によって目立ちます。重低音は沈み込みは深く強さも有ります。
中音は華やかでありながら分離良くゴチャつきを感じません。ボーカルは自然な位置に感じ、クリアに聴かせてくれ聴きやすい。
一言で云えば中低音寄りのややドンシャリ。
高音は解像感が良く煌びやかで伸びも良く、音の消え入る様を感じられます。これはESMの特徴が感じられます。低価格帯のBAでよくある前に前にと出るような主張による解像感の演出ではありません。あくまでも自然な強さで鳴り演出感を抑えています。超高音までの伸びはそれほどありませんが、寧ろ綺麗に伸びていて演出感の無い印象です。前作ZEXの高音域と同様に低価格帯BAの高音域で感じるような不快な尖りシャリつきはなく、中音域やボーカルを邪魔せずに統制され整った音です。ZEX Proの方がBAがある分、やや演出感のある印象です。
中音は殆ど凹みを感じまません。ZEXでは僅かに凹みを感じ、NRAでは僅かに凸に感じましたが、ZESでは従来のKZのドンシャリバランスを抑えている印象です。楽器の音はボーカルの周りやや後ろ辺りに位置し華やかに鳴り小さな音の消える様を感じられる解像感と分離感はZEXやNRA同様に良好です。特に12mmDDの特性なのか中低音、中音の下の方と低音の上の方に厚みがある鳴り方です。
ボーカルはZEXとは異なり僅かにドライからニュートラル。艶のある声色と息遣いを感じられる自然な感じ。バラードなどのしっとりとした雰囲気を楽しみたい場合にも相性の悪さは感じ難く悪くありませんが、ややNRAの方に分がある印象です。
低音はZEX同様に十分な量感があり、NRAよりも多く、KZの強くキレの良い低音です。新型12mm径二重磁気ドライバはNRAの三重磁気ドライバよりも沈み込みの深さがあり広がりと響きを感じます。特筆すべきは低音の解像感です。良くあるKZの「ドン」とか「ドォーン」という鳴り方ではなく、音の強弱や低音の波打つ小さく鳴る音と大きく鳴る音を掴みやすいです。一方、NRAの三重磁気ドライバはZESよりも堅い芯が強いタイトでキレの良さを感じます。その分、重低音は強さはあるものの、沈み込みは少し抑え気味で地響きするような印象はありません。
まとめとして、ZESはZEXの音を踏襲しブラッシュアップしたサウンドと云え、高音は自然に鳴り、中低音に音の厚みのあるが演出感の抑えた音。従来のKZサウンドの様にどこかの音域に尖ったところを持たせずにバランス良くまとめた音。高音域をBAに代わりESMとしたものの、ZEXでは結局KZサウンド止まりでしたが、中低音域を新型12mm径DDとすることで、ZESでは従来のKZのバランスというよりも流行りのハーマンターゲットに近づいた印象です。
また、ZESは中低音に厚みがあり、ZEX Proは中高音に音の厚みがあります。それらはそれぞれの良さがありますが、もしもZESにBAを足した「ZES Pro」を造ったら低価格帯は完成しちゃうような気がします。ZEX Proでも感じた従来の4BA+1DDから7BA+1DDのような多ドラハイブリッドに3つのドライバで並んでしまう可能性を持っていると感じます。
※以前のKZ ZEX Proのレビューもご参考ください
ESMドライバを採用したモデル、ZEXやCCA NRAのブラッシュアップ版と云えるZESのライバルはその音質傾向からはZEX Proと云えます。高音はしっかりと上品に。低音はノリ良く鳴らす、中音は音に厚みがあり音楽を聴く事を楽しませてくれるKZサウンドは抑え気味ですが十分楽しめます。そして従来のBAのみを使った高音とは違いESMドライバは尖りがなく自然に解像感の高い音を聴かせてくれ、ボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすい。従来のKZの1BA+1DDハイブリッドモデルの壁を越えて良い音を実現したモデルと云えそうです。
一方、リスニング用途として小気味良い聴いていて楽しいドンシャリバランスは折角の中華イヤホンには高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求めてしまうもの。その方々は少々もの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。
高音 ZES ≧ ZEX ≧ NRA (出音の強さ)
中音 NRA ≧ ZES ≧ ZEX (出音の強さ)
低音 ZES ≧ ZEX ≧ NRA (質感の順)
ボーカル NRA ≧ ZES ≧ ZEX (質感の順)
4. KZ ZESの総評
KZ ZESは従来のKZサウンドから流行りのハーマンターゲットに近づいた音質傾向となり、これまでの同社の1BA+1DDハイブリッドモデルの壁を越えた音を実現したモデルとまとめました。ZEX同様にこれまでのKZの1BA+1DDハイブリッドモデルではごちゃつきを感じやすかった中音域は改善され音が整理され、ESMドライバによる高音域は従来のBAを強く鳴らすことで解像感を演出する手法から一線を画した自然な解像感が魅力です。そして低音は新型の二重磁気ドライバは従来よりも大口径とすることでKZサウンドと流行りの良い音を狙った拘りのモデルと云えます。
近年飽和気味の低価格帯1BA+1DDハイブリッドモデル群からの新たな一手としてESMを採用したモデルとしてCCA NRAに続き、KZ ZEX、KZ ZEX Proに続きZESが発売されています。コラボモデルの騒動以降、ESM搭載の新型の発売は鳴りを潜めていますが、出音は良いので、新型12mm二重磁気DDと10mm三重磁気DDを搭載した新作に期待したいですね。
まとめとしては「新しいものが好き」な方や「出音が重要」とされる方にはお勧めできます。一方で低価格中華イヤホンの強ドンシャリを求め検討されている方や「スペックで音楽を聴く」方には注意が必要な商品です。
最後に、今回はAliExpressで昨年末発売された低価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年7月2日)はAliExpressや国内amazonでも発売しています。AliExpressでは3,000円前後の価格で入手可能です。一方amazonでは3,000円台とAliExpressの方が安価に入手できますが、最近の円安やその入手性には現在も難があります。とはいえこれまでの低価格中華イヤホンの中でも安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでprimeでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、少しでも安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。
ZES
以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★
中音★★★★
低音★★★★
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
NRA
以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★
中音★★★★
低音★★★★
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★☆ (ボーカル重視の方★5)
※☆0.5、★1.0
ZEX
以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★
中音★★★★
低音★★★★
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★☆ (KZサウンド好きの方★5)
※☆0.5、★1.0
あとがき
今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンでなく、1ESM+1DDハイブリッドモデルのレビューとなります。これで前回と合わせて「訳アリシリーズ」の最終回です(漸くすっきりできました)。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンも扱っていきます。
また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ