こんにちは。
今回もいつもの1BA+1DD中華イヤホンレビュー編として低価格帯で発売されたKZ ZSN
pro Xについてレビューをまとめたいと思います。
AliExpressのWooeasy Earphones Store(@hulang9078)から購入しています。
国内amazonでもHiFiHear Audio(@Qianqian_HRcase)等で取扱があります。
1. KZ ZSN pro Xについて
ZSN pro XはKZ社の1BA+1DDハイブリッドの最新モデルです。このところ本来の低価格1BA+1DDハイブリッドモデルをレビューしており面目躍如といったところですが、このKZ ZSN Pro Xは8月中旬に入手していました。そのため前回レビューしたTrn STMの方が少しだけ後発のため低価格帯としては「最新」とは云えませんが、先日レビューしたZST X同様にKZ社の新たな「X」シリーズモデルとして最新と云えますね。
KZ社は以前ZST Xのレビューでも触れた通り中華イヤホンファンには説明不要なトップブランドです。これまでに数多の低価格帯1BA+1DDハイブリッドモデルを発売し、このブログでも紹介させていただきました。
KZ社の代名詞は「高音低音が元気で派手なドンシャリ」と云えますが、一昨年の終わり頃に発売したZSNから少し趣向が変わってきています。ZSNの高音域を控えめにし中音域を中心とした音はそれまでのKZの音とは一線を画す音質傾向であり、多くの中華イヤホンファンを驚かせました。まあ、そのあとに出たZSN proは元のKZの音に戻ってしまいましたけど。それでもZSNの登場前の音とは異なり、ただただ高音と低音が強調された派手で元気な音ではない非常にまとまったバランスの良い音にシフトしていたのは事実であり、KZの新しい展開に期待が高まりました。
そしてついにこのZSN pro Xでは以前レビューしたZST X同様に「X」という新しいシリーズとしての展開を期待させ、それを裏切らないモデルあることはZST Xで証明されつつあるといっても過言ではないかもしれません。
実際に聴いてみたZSN pro XはKZ社の最新型として同価格帯の他ブランドKBEAR KS2やTrn STM等の低価格中華イヤホン1BA+1DDハイブリッドモデルとして頭一つ抜けています。
これまでレビューしてきて最初に主文を書くのは初めてですね。今これを執筆してるのは勿論他モデル含め散々聴き込んだ後です。
もう一度言います。販売価格が3,000円以下の低価格帯U5Kの激戦区に真打登場です。
さて、ZSN proはZSNほどのインパクトがない(失礼)モデルでしたが、バランスの良い音は完成度が高く今でも演奏中心で聴くのに適したモデルです。先述の通り、それまでの高音がシャリつき低音がドンドン来るKZとは違う聴きやすい音は中音域もクリアで同価格帯の国内有名メーカー製品と比べても勝るところはあっても劣ることはないモデルと云えます。
それもその筈。国内有名メーカー製品はその価格帯では1DDモデルのラインナップが殆どで、重低音が売り文句という物ばかり。勿論嗜好の違いですから重低音好きには堪らない訳ですが、その場合高音域がもの足りない。又は、高音も結構あるが中音域がこもっている…というような訳です。個人的には唯一Final E1000が音の嗜好の違いの中でも良い音としてお勧めできる商品です。
そんな不遇のZSN proの正統後継機として、先述の通り「Xシリーズ」として発売されたKZ ZSN pro Xに期待し即オーダーしたものの入手順を無視して最後に回した理由は、主文をブログの最初に持ってくるというセオリーを無視したことからも、ご理解いただけたのではないでしょうか。
というわけで今年6つ目の低価格1BA+1DDハイブリッドモデルを、先代のZSN proや同Xシリーズ、ZST Xとの違いを交えながら、KZ ZSN pro Xのレビューを纏めていきたいと思います。
ZSN pro Xのスペックですが先述の通り中華イヤホンの低価格帯で多く採用されている高音域用のバランスドアーマチュアドライバ(BA)を1基と中・低音域用のダイナミックドライバ(DD)を1基搭載した片側デュアルドライバ構成のハイブリッドモデルです。2つのドライバはダイナミックドライバにZSN Pro等で搭載した直径10mmの二重磁気駆動ドライバを改良、採用し中・低音域用に。BAはKZお馴染みの30095を高音域用として搭載しています。
イヤホン本体はZSN Proのシェル本体が樹脂製。フェイスプレートとステムノズルが金属製と同様。ZST Xのオール樹脂製とは異なり、ドライバのハイブリッド構成と共にシェル素材のハイブリッド構成という低価格帯のスタンダードです。
以前ステムノズルの素材が金属製と樹脂製との違いによって音質傾向への影響をこれまでレビューした経験から、それが高音域に現れると感じていますが、多くの低価格1BA+1DDハイブリッドイヤホンでは高音域を担当するBAドライバがステムノズルの中に配置されており、音道管を使用していない為、高音域の伸びや響きに影響があると経験則で捉えています。
とはいえ最も大切なのはこれまでレビューした低価格中華1BA+1DDイヤホン同様に各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングが重要となります。このチューニング次第で「当り」か「外れ」という評価に繋がってくるといえますね。
ZSN pro Xの納期としては今回AliExpressで購入し中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのようにはいきません。今回7月下旬にプレオーダーし発送まで3日待ち。スタンダードシッピングを選択していますので発送されてからは21日で届きました。昨今、感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきませんが、それも徐々に回復傾向であり最近はシンガポール経由も再開し動き始めていますので、もう少しというところですね。平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。
そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。
2. KZ ZSN pro X実機レビュー
それでは、早速KZ ZSN pro Xの実機レビューを以下、まとめていきます。
パッケージングはKZ社のシンプルな白地のデザインのスリーブタイプの化粧箱です。
箱の表にはイヤホンイラストが。裏にはスペックが記載されています。
スリーブを外すと白地の内装の台座にイヤホンが収納されています。またイヤホンが収納された台座を取り出すと箱の下側にイヤーピースやケーブルなどの付属品が入っています。
付属品はKZイヤホンに付属する溝有シリコンイヤーピースがS、M、Lの3種各1セットと、ZSN proで付属した溝無シリコン黒色イヤピMサイズが本体取付け済み、他にはケーブルです。U5Kの低価格帯としては必要十分の付属品となります。またケーブルは後述しますが、先代ZSN proに付属したものからKZアップグレードケーブル相当に変更されています。
次にビルドクオリティですが、数年前に発売したZST(Pro)と比べるとレベルアップを感じられ、ZSN pro同様に綺麗に仕上がっています。カラーバリエーションは黒色と金色があるようですが、今回はZSN proにはなかったpro Xのみの金色を選択しています。
付属ケーブルは先述の通り先代ZSN proの従来の4芯銅線からKZアップグレードケーブル相当の銀(白)色の編込みタイプで4芯銀メッキ銅線の線材が採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプで、イヤホン側はKZタイプC、2ピン仕様、KZ極性(上がプラス)です。この付属ケーブルは耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に絡まりにくくしなやかなものとなり低価格帯に付属するケーブルの中でも質感が高くそのまま使用できますし銀(白)色ケーブルはやや派手なところもありますが、シェルの金色と相まって普段使いでは少々目立ちますね。
参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。
※画像左からZST X、ZSN pro X、ZSN pro
ZSN pro XとZSN Pro、ZST Xの外観の比較として、サイズは同じ。シェルの造形も同様です。ベースがZSTなのでしょうから不思議はありません。
ZSN Pro XとZSN Proはステムノズルとフェイスプレートが金属製でフェイスプレートのデザインも同じ。こうなるとZST Xのオール樹脂製が一番軽量ですね。それでも耳への装着時には殆ど気にならないレベルの差でしかなく、3機種共に耳への装着感は悪くありません。ステムノズルの太さは3機種共にやや太め。その中ではZST Xが細めとなり、角度は3機種とも同じとなります。
そのため耳への装着時には3機種共に装着感は良好ですね。
また、ZST Xのステムノズルはシェル本体と一体型で樹脂製となりますが、金属製のZSN Pro XやZSN pro全てにメッシュフィルターがあり異物混入を防いでくれますので安心ですね。
そして、シェル本体の形状は3機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。
なお、先述の通りZSN pro Xはステムノズルは比較的太めです。太いステムノズルは装着感に影響があり、付属のKZ溝無黒イヤーピースを使用し耳の奥の方で栓をするように装着する形がみぃねこはしっくりきました。低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のイヤピを使用しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。
このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)
3. KZ ZSN pro X音質レビュー
それではいよいよ音質についてまとめていきます。
今回の再生環境はSHANLING Q1、直挿しアンバランス接続です。
これまで低価格帯はShanling M0をメインに基準としてレビューを行ってきましたが、前回同様にQ1にて行います。以前Shanling M0とFiiO M5の比較や、M0とiPhone6sの比較を行っており、それぞれの違いもありますが、今後は新型のSHANLING Q1で比較しますので、ご容赦ください。
M0とQ1はDACやアンプ等の主要のスペックには変わりがありませんが、聴き比べるとQ1はM0よりも低音が豊かに感じます。どちらもバッテリー駆動なのでM0よりもQ1の方が容量が増え電源供給に余裕があるからなのかもしれませんね。
低価格帯のイヤホンの場合でそれらの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。
※FiiO M5とShanling M0の比較もよろしければご参考ください。
それでは実際に聴いてみます。
ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳をとじて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りイヤピはZSN Pro付属品 溝無黒Mサイズ、付属ケーブルを使用しています。
箱出しで聴いてみた第一印象は「KZらしい所謂ドンシャリだが、ボーカルが聴きやすく、どこかの音域を極端に強調していないクリアで聴きやすい音。」です。(もちろんスマホ付属品とは大違いです)
箱だしでは低音の主張が強く膨らみも感じたので先に鳴らし込み。
鳴らし込み後は低音が締まり落ち着きました。
音場は広くも狭くもない普通。
高音は煌びやかさがあり華やかさがあるが、刺さりは感じない。
低音は十分な量感があり芯が感じられ締りとキレがある。ベースラインは追いやすい。
重低音は沈み込みは深さがあり強さもある。
中音は華やかさがあるがゴチャつきは抑えられ分離良くすっきりしている。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、曲によってやや近く感じ聴きやすい。
一言で云えば中高音寄りのドンシャリ。
高音はしっかりとした低音域に埋もれない存在感のある煌びやかさと華やかさと伸びの良さがありますが尖りはありません。
中音は僅かに凹を感じますが、楽器の音、特にギターの音が他の楽器の音に埋もれずに聴く事ができます。ボーカルもクリアで聴きやすく高音低音に埋もれません。
中音域の音に華やかさがあり心地良く音数が多いハードな曲でも音の重なりは少なく、それでいてちゃんとボーカルの周りにいる印象です。
ボーカルはバラード等ではやや近く感じ、アップテンポの曲ではややドライですが楽しく聴けます。ドライの為しっとりとした雰囲気を楽しみたい場合に相性がありそうです。
低音は量感がしっかりしておりますが、支配的ではなく不足のない十分な量と芯のある音で締りとキレがあり強さがあります。重低音は強さはあり深く沈み込む低音を疎かにしていません。この低音がクリアな高音中音を適度な強さで支えることでKZらしさを損なう事なく且つバランスが破綻していない音を聴かせてくれている印象です。
これは以前レビューしたZSN proのドンシャリとは異なる音と云え、高音と低音だけではない中音域を疎かにせず寧ろ重視した聴きやすい音であり、従来のKZらしい低価格帯のポピュラーなドンシャリとは一味違う音と言う印象です。
※以前のKZ ZSN proのレビューもご参考ください
※以前のKZ ZST Xのレビューもご参考ください
勿論同じ低価格帯のKZ ZSNの中低音中心の音と異なるバランスですが、ZSNは高音域がもの足りなく、ZSN proは中音域が凹みもの足りない。それら二つの高音域と中音域の良いとこ取りした音の様に感じます。尤も厳密には異なる訳ですが、それらに近づけている、そんな印象を受けます。
そして同社ZST Xも中高音寄りの特にボーカルの良いKZらしからぬまとまった音質傾向でしたが、ZSN pro Xは全体のバランスが一枚上の印象で何でも対応できそうですね。
恐らくZSN pro Xは高音域と中音域の間を凹ませずにピークを持ってくることで従来のKZの強ドンシャリとは異なる中音域重視の聴きやすいドンシャリを狙ったのかも知れません。
これは多ドラハイブリッドや複数BA機ではポピュラーなチューニングですが、従来の1BA+1DDハイブリッド機ではあまり例を見ないですね。
まとめるとZSN pro Xは中・高音域は煌びやかさ華やかさがあり十分な存在感を示しますが尖りは無く、低音域は強さがあり締まりとキレのある存在感はけして出しゃばらず、中音域は凹みを感じさせずに音の華やかさ分離の良さとボーカルの聴きやすさを感じられる完成度の高さは先代ZSN proのネガティブを消したリスニング用途として完成度の高いKZ低価格帯史上最もお勧めできる低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンと云えそうです。
尤もこのリスニング用途としてのバランスの良さは中華イヤホンには高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求める演奏メインで聴きたい方には、少しもの足りないと感じ評価が分かれてしまいそうです。
高音 ZSN Pro X ≧ ZST X ≧ ZSN pro (量感はZSN proが一番)
中音 ZSN Pro X ≧ ZST X ≧ ZSN pro
低音 ZSN pro X ≧ ZST X ≧ ZSN Pro (量感はZSN Proが一番)
ボーカル ZST X ≧ ZSN pro X ≧ ZSN Pro
最後に、今回はAliExpressで先月発売された低価格帯中華イヤホンの紹介となりました。現在(2020年9月5日)はAliExpressやamazonで販売されており、一足先にAliExpressでは2,000円台前半で販売し、そのAliExpressではフォロワー割によって1,000円台後半の価格です。一方amazonではprime扱いの2,000円台後半と、AliExpressの方が安価に入手できますが、その入手性には特に現在難があります。とはいえこれまでの低価格中華イヤホンの中でも安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっていますので低価格中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、少しでも安い方が良い方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。
ZSN pro X
以下、付属ケーブル、付属溝無黒イヤピ M使用、DAP Q1
高音★★★★
中音★★★★
低音★★★★
音場★★★
分離★★★
お勧め度★★★★★ (低音好きの方★4)
※☆0.5、★1.0
あとがきとして、今回はいつもの中華低価格1BA+1DDハイブリッドイヤホンの新商品のレビューをまとめました。3回続けて中華低価格1BA+1DDハイブリッドイヤホンのレビューと本ブログの本領発揮してみました。初期のころ以来ですね。そしてこれで通算30個目、記念すべき30個目はやはりKZが〆てくれました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。
また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ