みぃねこの備忘録

いろいろなこと、主に趣味の備忘録として活用。アフィリエイトやってません。お気軽にリンクからどうぞ。

BQEYZ Autumnレビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格A20000帯で発売された1DDモデルのBQRYZ Autnmnについてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのHiFiGo(@HiFiGoAudio)で取り扱いがありますが、現在(2022/1/29)は本国発送となっております。

 

 

HiFiGoのサイトでも取扱があります。

 

BQEYZ Autumn 13mm dynamic driver IEMshifigo.com

 

HiFiGoの販売サイトトップはこちら

 

hifigo.com

 

HiFiGoでの買い物の仕方を詳しく解説している方のサイトがありますので、そちらを参照ください。

 

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1. BQEYZ Autumnについて 

BQEYZ Autumnは20,000円を少し超える中価格帯中華イヤホンの1DDモデルとして昨年冬前に発売開始しています。

BQEYZといえば以前同社のSpring1やSummerをレビューしていますが、それらは1万円半ばの販売価格で、積層ピエゾとバランスドアーマチュアとダイナミックドライバという3種のドライバを搭載した多ドラハイブリッドモデルでした。特にSpring1では7層ピエゾドライバによる繊細でなめらかな中高音を奏でるモデルは手持ちのイヤホンの中でお気に入りの一つです。

このBQEYZの四季に擬えたシリーズは春(Spring1及び2)、夏(Summer)と続き、昨年の秋の終わり11月にAutumn(秋)が登場しました。Autumnはそれらよりも少し価格が上がりましたが、その分新たな魅力を加えています。

それは「音質調整フィルタ」です。詳しくは後述するとして、先ずはAutumnの特徴を確認していきます。

 

BQEYZ Autumn(以降Autumn)はこれまでの四季シリーズの1BA+1Piez+1DD多ドラハイブリッドモデルから一転、1DDシングルダイナミックドライバモデルとなりました。販売価格は前述の通り中価格A10000帯から、中価格A20000帯となり、スペックが下がって価格が上がった様な印象を受けるかもしれませんが、全くそんなことはありません。

先ずAutumnでは採用したダイナミックドライバは直径13mmとイヤホンとしてはかなりの大口径です。Spring1でもダイナミックドライバには13mmサイズを使用していましたが、Autumnではデュアルキャビティを採用しシンプルな1DDでも従来の多ドラよりも全音域で繋がりの良い音を表現できるようにしています。

次にAutumnで新採用された音質調整フィルタですが、よくあるステムノズル部のフィルタ交換式ではなく、シェルのベント(空気の通り穴)を交換するタイプです。これによりシェル内部の空気の流れ、つまり音響を調整します。

音質調整フィルタは3種あり本体取り付け済みの「NORMAL」、低域重視の「BASS」、高域重視の「TREBLE」です。実際に聴いてみると標準である「NORMAL」フィルタでは非常にバランスの良い鳴り方をし、正直これで十分だよねという印象を受けます。一聴した音質傾向はSpring1でも中高音の解像感の高いフラットなモニター寄りの音でしたが、このAutumnでもその延長線上にあると感じられ、Spring2やSummerがドンシャリ寄りのリスニングサウンドと比べると、それらとは趣が異なる様子。四季シリーズの原点回帰とも感じられる音質傾向はこの音質調整フィルタによって基本的な傾向を変えずにユーザーの好みに応じて味付けができる遊び心のあるシステムと云えるのかもしれません。

 

さて、BQEYZ Autumnのスペックですが先述の通り1DDシングルダイナミックモデルです。これまでの四季シリーズ、Spring1やSummerでは1BA+1DD+1Piezの多ドラハイブリッドモデルであり、超高音~高音域用のバランスドアーマチュアドライバ(BA)や高音~中高音域用のピエゾドライバ(Piez)を搭載せずに1基のダイナミックドライバ(DD)が高音、中音、低音の全ての音域を担いますのでドライバの性能が肝となります。勿論Autumnに採用されているドライバは低価格帯とは違い質の高いドライバを採用していて価格帯に見合う高品質ドライバを採用しています。

イヤホン本体にはシェル本体に金属を採用、ステムノズルも金属製です。中価格帯に多くあるオール金属製です。これはSpring1も同様でSpring1では高音域の響きの美しさがありましたが、Autumnで踏襲されています。一方Summerではシェル本体が樹脂製ということもあり同じ音圧を狙えば樹脂シェルの高音域の減衰を考慮しBAの主張をやや多めにする必要があります。結果、Spring1よりもドンシャリに感じるバランスとなっていたと考える事ができます。まあ、ドンシャリが悪いわけではなく音楽をノリ良く聴きたいニーズに応える意味もあったと考えられますね。

そして大事なことですが、これまでレビューした中価格帯の多ドラハイブリッドイヤホンでは各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングは曲によってつながりにやや不自然さを感じる場合がありましたが、Autumnではシングルダイナミックドライバによりフルレンジで担います。一聴した限り、不自然さは感じず上から下まで綺麗に鳴らしてくれていますので、ドライバの質もそうですがBQEYZのチューニング技術の高さを感じられます。

次に付属ケーブルです。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としているところもありますが、Autumnでは妥協せずに高品質線材を採用しています。1芯あたり1本Φ0.05mmの細線を7本使用し撚線とし8芯線化。8芯の内、4芯づつ高純度銅線と銀メッキ銅線を採用したミックス線という高品質線材のケーブルとなっています。ちなみに私が購入したHiFiGoでは標準の3.5mmプラグ仕様に加え、2.5mmや4.4mmバランスプラグ仕様も同価格で選択できますので、手持ちの再生環境に合わせて最初からバランスプラグ仕様を購入できるのは有難いですね。

 

海外含めポタブルオーディオ界隈でのAutumnの評判は上々で、実際に一聴してもその素性の良さを感じられますし、Spring1の音の傾向が好きな私は期待感は高いです。そして、BQEYZの四季シリーズ第4弾として同社のラインナップとしてその音質にもしっかりと「らしさ」を魅せてくれるユーザー満足度の高い製品と云えるかもしれません。

 

※宜しければBQRYZ Spring1のレビューもご参考ください

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※宜しければBQEYZ Summerのレビューもご参考ください

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BQEYZ Autumnの納期として今回国内amazonから購入しましたが、中国本土からの発送という事もあり、prime扱いのようにはいきません。AliExpressでの購入と同様にオーダーから約2週間で届きました。昨今、AliExpressでの購入では感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきません。それでも徐々に回復傾向であり物流の安定化までもう少しというところですね。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. BQEYZ Autumn実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングはシックな黒色を基調とし側面の一部が橙色の比較的厚めの箱はスリーブタイプの化粧箱となっており表にはメーカー名と商品名が印字されています。裏にはイヤホンイラストとスペックが記載され高級感のある装いです。

 

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外側のスリーブを外すと橙色の箱の中に黒地の内装カバーがあり、イヤホン本体が収められています。

 

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内装カバーを外すと、黒地の台座に収められた付属品の一部が登場します。

更にその黒地の台座を取り外すと箱の底に残りの付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が計2セット。他にはケーブルとケーブルバンド、交換用フィルタ、フィルタ交換用の治具、清掃用ブラシ、イヤホンケースです。A20,000で販売している中価格帯として必要十分の豪華な付属品となります。

 

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イヤホンケース内にはケーブルとケーブルバンド、清掃用ブラシが収納されています。

 

※交換用フィルタの収納プレート

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※フィルタ交換用の治具
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※清掃用ブラシも付属

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それではいよいよ本体を見ていきます。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホンの中価格帯A20000として十分な仕上りです。金属同士の合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションはBenzo Blue(濃紺)とAsh Green(黒銀緑)の二色があり、その色彩は両方シックな色合いとなっています。そのため今回は珍しいAsh Greenを選択しています。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質線材を使用したそれぞれ4芯の銀メッキ銅線と高純度銅線の8芯ミックスタイプを採用しています。プレイヤー側コネクタはI字タイプでBQEYZロゴ付、イヤホン側は2ピン仕様の極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に引っ掛かりが無く、タッチノイズも殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり線材品質の高さと取り回しの良さを感じられます。今回4.4mmプラグを選択しましたのでバランス接続に対応しており、積極的にリケーブルする必要がありません。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からNFAUDIO NM2+、BQEYZ Autumn、BQEYZ Spring1

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AutumnとSpring1の外観の比較として、サイズ感はほぼ同じで比較的小ぶり。どちらも厚みはややあり、造形もほぼ同じですが、耳甲介艇の突起がAutumnには僅かにありますし、ステムノズルの長さと角度がAutumnの方が短く寝ています。NM2+との比較ではオーソドックスな造形のNM2+も比較的コンパクトで厚みがありますが、それよりもAutumnの方が小さく厚みがあります。ステムノズルはノズルとしてはNM2+が長いものの、装着結果として同じ長さで角度もほぼ同じであり、比較的にどちらもオーソドックスな造形は耳への収まりが良く装着感が悪くありません。

イヤホンとケーブルを接続するコネクタには全て2ピン仕様ですが、NM2+はQDCタイプが採用されています。

三機種共にシェルの材質は、オール金属製で先述の通り金属が採用されており、素材は明らかになっておりませんが手触りから一般的なアルミニウム合金と推察します。

三機種共に重量はほぼ同じですが、AutumnとSpring1の方がやや重め。と云っても数グラム程度。同価格帯他社製と比較しても軽量の部類で、耳への装着時にはその装着感からは殆ど重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすく三機種共にやや太めと云えますのでイヤピ選びは重要です。

また、ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり異物混入による故障を防ぐことができますし、Autumnには清掃用のブラシが付属していますので助かります。

シェル本体の形状からはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りAutumnを含む三機種はステムノズルが比較的太めなものの、実際の装着感は悪くなく、寧ろ付属イヤーピースの形状からは耳に密着させ装着する想定の様子。付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

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※付属黒イヤーピース。傘は一般的な弾丸形状のシリコンタイプ

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※付属グレーイヤーピース。付属黒より開口部が大きく、背が低め。傘は一般的な弾丸形状ですが黒よりもやや小さめのシリコンタイプ
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※付属黒とグレーでは同じサイズでも開口部と背の高さ、傘の広がりも小さめ
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付属のシリコンイヤーピースは二種あり一般的な形状で通常の丸径、傘の裾野が弾丸タイプ。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒は音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプに感じ、付属グレーの方が中高音がはっきりと聴こえる印象です。両方共に軸は短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入し耳へ密着させることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合は良いですが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

残念ながら付属イヤーピースでは私はフィッティングが上手くいかず、抜け気味となり低音が逃げて音が軽くなる為、手持ちのSedna EarFit(軸の長いノーマルタイプ)MSサイズで耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低、中価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできず他社製を使用しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. BQEYZ Autumn音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

3.1. 再生環境の更新

 

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2022年を迎えレビュー時の再生環境を変更することにしました。

昨年後半はDAPにZX507を使用していましたが、今回からandroidスマホDAPNW-ZX507と同じSony Xperia 5 IIにUSB-DACとして、Shanling UP5を使用し検証してみることにしました。再生アプリはUSB Audio Player PRO(以下UAPP)を使用します。

 

Shanling UP5はLDACに対応するBluetoothレシーバー機能とUSB-DAC機能を両立しており、音楽再生用のDAPが無くても今使っているスマホDAPと同じ様に使うことができるコンパクトで高機能のUSB-DACBluetoothレシーバーです。

UP5は前モデルのUP4ではUSB-DAC機能が16bit/48kHz止まりでしたが、32bit/384kHzに向上しMQAにも対応。USB-DACと云えば以前Shanling UA2のレビューをしていますが、UP5の良いところは音量調整用の物理ダイヤルがUP5本体に搭載されていてiPhoneandroidスマホで使用する場合に音量独立調整ができるので「爆音問題」を回避できる等、使い勝手が向上しています。UA2はiPhoneiPadApple Musicは捗りますが、androidスマホのSOC回避問題や爆音問題があり、実力を発揮しにくい難点があります。

 

※宜しければShanling UA2のレビューもご参考ください

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USB-DACとしてのShanling UP5はDACチップにESS ES9219Cをデュアル採用しなめらかで解像感の高い音を聴かせてくれます。悪く云うと淡々と鳴らす感じですが、20,000円を少し超える価格を考えると申し分なし。androidスマホにイヤホン直挿しで聴く音とは異なり高音質と云えます。

実はShanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3XとDACや出力等のスペックは同じです。試聴した限りでは音質もほぼ同じと云えると思います。

気になるZX507と比較したUP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

一方、ZX507は高音の主張を感じ、低音も量感を感じる鳴り方で多少の演出感を感じます。中音もやや真ん中に集まるもののボーカルが前に出て聴きやすく熱量を感じられ音楽に没頭し易くなっています。

簡単に違いを云えばグルーブ感を感じ音楽を楽しく聴く事ができるリスニング寄りのZX507に対し、UP5では音をそのままに淡々と鳴らしフラットに近いバランスでモニターライク寄りと云えます。どちらも良い音でありベクトルが違う音であるため、どちらが良い音と云うよりは好みで分かれる音と云えそうです。一聴しただけではZX507の方が派手に鳴りますので良い音という印象を持つかもしれません。

 

さて、Shanling UP5をローゲイン、デュアルDAC、EQオフ、チャージオフ、DACフィルタはデフォルトのLinear Phase Fastに設定しUSB-DACとして使っていきます。音質の基準を従来のZX507からShanling M3X相当に変更した事になります。

接続するandroidスマホは前述の通りXperia 5 IIです。スマホですので、もちろん手持ちの音楽ファイル再生だけでなく、YouTubeの動画や音楽配信サービス、Apple Musicの(ハイレゾロスレス再生にも対応(※1)しています。そして、元々スマホですので通信系は安定しておりBluetooth接続も安定しています。一方のandroid搭載DAPではエントリーからミドルクラスではSoCがSnapDragon660未満のものが多く、ハイエンドでも処理能力が低く機能不十分となるモデルもあります。まあ元々音楽Playerですから、ね。

※1:2022/01/29現在 android版Ver3.8.0(1174)で動作確認

 

※USB-DACの違いが気になる方は以前の記事の後半3.1.項をご覧ください。

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※低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。miineco106.hatenadiary.jp

 

※FiiO M5とShanling M0の比較もよろしければご参考ください。 

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3.2. BQEYZ Autumnの音質

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはSedna EarFit MSサイズ、付属ケーブルです。音質調整フィルタはNORMALです。

 

3.2.1. NORMALフィルタの場合

箱出しで聴いてみた第一印象は「高音も低音も不自然に強調されていない、フラット寄りのリスニングサウンド。」です。

箱出しではやや低音に膨らみと高音の荒さを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まり高音の解像感の高さを感じます。

音場はやや広めから広め。前後左右の空間の広さを感じられます。

高音は煌びやかで響きの良さを感じます。上の上までの伸びやかさもあ感じられ、適度な華やかさと存在感は十分でなめらかさもあり尖りは感じません。

低音は量感こそ控えめですが、芯が感じられ締りとキレは良好。ベースラインは追いやすい。重低音は沈み込みは深く、芯の強さもあります。

中音は高音同様に響きが良く華やかさがありますが、団子感やゴチャつきを感じません。ボーカルはクリアで自然な位置から曲によってやや近めで聴かせてくれクリアで聴きやすく、ドライ気味ですが瑞々しさを感じます。

一言で云えば中高音寄りのフラット寄りの僅かにドンシャリ

高音は煌びやかさは十分で響きのある華やかさは前に出るような主張もなく、自然な感じ。超高音は僅かに控えめな印象ですがレンジの広さを感じられ、伸びも自然でなめらか。不快に感じる尖りとは無縁で、小さな音でもしっかりと耳に届き埋もれることは無い他の音を邪魔しない爽やで清々しい音。決して最初だけ強調され前に出るようにシャンシャン鳴らすのではなく自然な強さで鳴り演出感はありません。全体のバランスを崩していない自然な音は1DDとして非常に質の高い高音を届けてくれます。

中音は凹みを殆ど感じず、楽器の音はボーカルの周りから少し離れやや後ろ辺りに位置し適度に華やかに鳴りますが、その音は統制され見通し良く鳴ります。分離の良さを感じられます。ボーカルは自然な位置から曲によってやや近めでクリアで聴きやすく、高音や低音に埋もれません。

ボーカルは僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ不自然さは無く、瑞々しさを感じられます。その分しっとりとした艶のある声を楽しみたい場合には相性というか分の悪さを感じるかもしれません。

低音は量感は控えめに抑えられています。そのため広がりや響きはそれ程感じません。響きというよりも芯のある締りの良い音はキレの良さと相まって小気味良さを感じます。音の強さ、音の強弱や音階の掴みやすさを重視した解像感の高い音を感じられますが、雰囲気の良さとは対極かもしれません。中高音寄りのフラット寄りのイヤホンとしては適度な低音と云えるのかもしれません。

重低音は沈み込みは深く、芯のある強さを感じられ小気味良く感じられます。低音域は高音中音をリズミカルに下支えするキレの良さは高音中音の煌びやかで響きの良い音をマスクすることなく感じられると思います。

 

3.2.2. TREBLEフィルタの場合

次に、音質調整フィルタをTREBLEに交換してみます。

一聴して中高音の見通しが良くなり中低音域が控えめに感じます。

NORMALフィルタよりも「Aqua Timez/千の夜をこえて」のイントロから中高音の空気感に違いを感じ唄いだしのギターが前に出てくる感じと生々しさがUPした印象です。その分重低音はさらに控えめに感じますが、これはこれでモニターっぽくて悪い印象はありません。

中高音重視の方には合いそうな印象を受けました。

 

3.2.3. BASSフィルタの場合

次に、音質調整フィルタをBASSに交換してみます。

こちらはNORMALに比べてボーカルがやや前にでてくる印象です。

曲は同じ「Aqua Timez/千の夜をこえて」ですが、TREBLEでは前に出てくるギターがNORMALと同じあたりに下がりますが、中低音域の空気感が濃くなる印象です。特に重低音の沈み込みの深さはズドゥォーンと深く強く響きます。これらがNORMALやTREBLEでは感じなかった雰囲気の良さを感じられ、生音というかライブを聴いている感覚に近い生々しさを感じられます。一方で実際に中低音がしっかりと鳴る印象が強くなりますので、TREBLEを聴いた後では中高音が薄くマスクされたように感じられるかもしれません。

雰囲気の良い鳴り方は音楽を楽しく聴く目的に合っていると思います。

 

3.2.4. 音質調整フィルタのまとめ

正直な感想としてフィルタ交換で印象が結構変わるのには感心しました。SW付やステムノズル部のフィルタ交換タイプもありますが、SW付はそもそも変化が少なかったり、ステムノズルフィルタ交換では音のバランスを崩すものも多く、イヤピでも調整する必要があったりと個人的に懐疑的でした。

とはいえ、音質調整フィルタをあれこれ交換し聴いてみて最後にNORMALフィルタの戻した際に「やっぱりコレだな」と一人で納得したというオチはありますが、実際に高音や低音の強さのバランスと中音域の統制された鳴り方はAutumnの最大の特徴、良さだと思いますしメーカーがNORMALフィルタをAutumnのリファレンス又はベストバランスとして世に送り出した訳ですので自然な感想なのかもしれません。

 

3.2.5. BQEYZ Spring1との比較とAutumnの音質のまとめ

Autumnは同社のSpring1の音質傾向に近くフラット寄りのバランスで中高音の解像感の高いモニターライクな傾向と感じています。

それでも1DDのAutumnと多ドラハイブリッドのSpring1では中高音域で音のつながりの良さはAutumnに軍配が挙がります。解像感ではSpring1にやや分がありそうですが、かなりレベルの高いところでのお話であり、何方も解像感は高いと云えます。そういう意味では中音域が一番違いがあり、多ドラの各ドライバが重なる音域ではどうしてもごちゃつきだったり重なりが感じられてしまいます。Spring1ではかなり統制されていると感じますが、Autumnではすっきりと整理されていて不自然さはありません。

1DDだけでも高品質のダイナミックドライバを使用し、しっかりとチューニングすることで、高音質を実現したAutumnは多ドラハイブリッド凌ぐ解像感と自然な音場感の良いモデルと云えます。

 

まとめるとBQEYZ Autumnは中高音重視の爽やかで清々しさのあるリスニングサウンドは高音と低音は自然な鳴り方としながら解像感は高く、全音域をフラットな音とすることで音楽を分析的に聴くことも可能なイヤホンとなります。尤も、高音中音は華やかで見通しが良く、低音の芯のある音はモニターライクでありながらも、リスニングで心地良く音楽を楽しめると云えそうです。

一方でリスニング用途としての聴いていて楽しいドンシャリバランスとは言い難く高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方には、フィルタ交換をしてももの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   Summer ≧ Spring1 ≧ Autumn (音の強さ) 

中音   Autumn ≧ Spring1 ≧ Summer (音の統制)

低音   Summer ≧ Autumn ≧ Spring1 (音の強さ)

ボーカル Autumn ≧ Spring1 ≧ Summer (なめらかさ)

※音圧バランスや音色の参考程度に

 

 

4. BQEYZ Autumnの総評

BQEYZ AutumnはBQEYZの四季シリーズ第四弾(春が2種あります)として最初期モデルSpring1のサウンドを踏襲しブラッシュアップした解像感の高い音を聴かせてくれるモデルと云えます。

響きの良い澄んだ高音域は音数の多い楽曲でも破綻することなく、中音域は音が整理され響きも良くなめらか。締まりの良いタイトな低音域はリズミカルに高音中音域を支え、解像感の高い音を耳に届けてくれる爽やかで清々しい音色はモニターライクな音を好まれる方にも好評を得そうな音質にまとめられていると思います。

そしてしっかりと音色の変化を感じられる音質調整フィルタはAutumnの魅力を高めてくれ、BQEYZの音づくりの真面目さに好感を持ちますし、同価格帯ではバランス型の優等生モデルとしてお勧めできます。一方で特徴を求め一芸に秀でるモデルとはなりませんので注意が必要です。例えば高音特化ならばNFAUDIO NM2+も同価格帯にあり選択肢と成り得るからです。

そういう意味では中華イヤホンは中々試聴をする機会がありません。国内代理店がある商品はeイヤホン等で視聴できる場合がありますので機会があれば是非試聴をしていただければ幸いです。

 

最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年1月29日)は国内amazonやAliExpressで発売されておりますが、国内amazonでも本国発送だったりとその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

Autumn

以下、付属ケーブル、NORMALフィルタ イヤピ Sedna EarFit MSDAC UP5使用
高音★★★★★ 
中音★★★★★ 
低音★★★★☆ (BASSフィルタ★5)
音場★★★★★ 
分離★★★★☆ 
お勧め度★★★★★ 

※☆0.51.0

 

Spring1

以下、付属ケーブル、イヤピ リファレンスタイプMDAC UP5使用
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★☆ (多ドラの豊潤な中高音好き★5)

※☆0.51.0

 

OH1S

以下、付属ケーブル、付属シリコンイヤピ MDAC UP5使用
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A20K帯中華1DDイヤホンの商品のレビューとなりました。同価格帯の多ドラハイブリッドモデルとは一味違う1DDの良さ感じさせられました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

KZ ZEX Proレビュー ※KZ ZEX、CCA NRAとの比較とUSB-DACでの比較含む

こんにちは。

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

年が明けて数週間が経ちました。新年1回目はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、1BA+1DDハイブリッドモデルではなく、1BA+1EST+1DD多ドラハイブリッドモデルのKZ ZEX Proについてレビューをまとめたいと思います。

昨年末にAliExpressのKZ Official Storeで購入しましたが、現在はコラボ仕様の取扱のみ。購入履歴もコラボ商品に置き換わっていました。

 

ja.aliexpress.com

 

純粋にKZ ZEX Proを入手したい場合は以下のセラーは取扱があるようです。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも本国発送ですが取扱がありますが、殆どのセラーでコラボ仕様に置き換わっているようです。

 

 

 

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1. KZ ZEX Proについて 

KZ ZEX ProはKZ ZEXの後継というよりは上位モデルと云えそうです。それはZEXが1EST+1DDハイブリッドモデルでしたが、それに1BAを追加したトリプルドライバー構成となり、1ESTの高音域~中高音域を補強するメーカーの意図が汲み取れます。

KZは最早言うまでもない低価格中華イヤホンのトップランナーです。そのKZに先駆けてKZ系ブランドのCCAが低価格帯U3000初のESTドライバを搭載した1EST+1DDハイブリッドモデル、NRAを発売し本ブログでもレビューしています。そしてNRAの後にKZ ZEXがNRA同様にESTドライバを搭載したモデルを発売しました。本ブログは中華イヤホンの低価格帯1DD、シングルダイナミックモデルや1BA+1DDハイブリッドモデルを中心にレビューを行っていますが、20年後半のKZ EDXから始まったU1000、シングルダイナミックモデルが昨年のトレンドモデルと云え、1BA+1DDハイブリッドモデルはそれまでの勢いに陰りを見せていました。そんな折、CCA NRAがBAの代わりにEST、静電ドライバを採用した1EST+1DDハイブリッドモデルを登場させ、低価格帯の話題の中心となりました。

EST、静電ドライバはこれまでに高級機に採用されておりましたが、NRAやZEXという低価格帯に採用されたのは驚きましたが、最近になり高級機のESTとは異なり省電力でも鳴らせるタイプのもの。純粋なESTとは異なる様です。それについては色々と思うことはありますが、中華ですから、…ね。解釈の相違と云えばそれまでですし、翻訳上の問題もあると思います。それでも実際に聴いた限りではBAとは異なる鳴り方で少なくても低価格帯のBAの尖った音ではない繊細でなめらかさを感じる音はESM(Electro Static Magnetic。以下EST省電力タイプをESMと表記)ドライバと云って問題ないのではと個人的に考えています。

そして、このレビューをまとめるにあたり無視できないのが、発売と同時に購入したKZ ZEX Proが届く頃には某動画系レビュアーがチューニングを監修したKZ x Crinacle CRNが発売された事。しかもベースとなったZEX Proとは音が違うと評判です。めっちゃ興味はありますし、いつか買うかもしれませんが、今は静観しておきます。だってちょっと割高に感じるんですもん。

 

KZ ZEX Proに採用したESMはNRA同様の6.8mm径の低電圧タイプ(メーカー資料)。これはESTの静電技術を従来の磁気技術に活用した特殊技術と云え、少ない電力で駆動させることができるものの、対応できる音域が狭くなっていて、その分安価に製造することができるようです。

一方、高級機で採用しているESTは駆動するのに高電力が必要ですが、その分広い音域を対応が可能となっています。これはドライバのコストに直結しており、低価格帯に採用され無い理由です。中華のビジネスは良いものが造りたいというよりも売れるものを造りたい。その為にはできることを最速でする。そんな文化の違いを感じますが、それを否定するものではなく当にビジネス大国と云えます。

 

次に、ZEX ProとZEXやNRAとの最大の違いですが、要約すると以下の通りです。

  • ZEX ProはZEXと同じ10mm径デュアルマグネティック(二重磁気)ダイナミックドライバにBAを1基追加したトリプルドライバ
  • ZEXは従来の10mm径デュアルマグネティック(二重磁気)ダイナミックドライバを採用
  • NRAは新型のトリプルマグネティック(三重磁気)ダイナミックドライバ(DD)を採用

ZEX Proでは先述の通りZEXに1BAが追加されたトリプルドライバ。NRAは三重磁気ドライバが採用されていて、従来の二重磁気ドライバの正統進化版でタイトでそれよりもキレの良い音。

尤も、従来の二重磁気ドライバでもキレの良い芯のある音ですので、三重磁気はコストが高く「ビジネス」として二重磁気で十分というメーカー判断なのでしょう。

個人的には「そういうところだぞ」と思う次第です。

 

低価格帯中華イヤホンでポピュラーな1BA+1DDハイブリッドモデルでは高音域をBA一基が担い、DD一基が中音から低音域を担います。音を繊細に高い解像感で表現するのにBAは最適であり、低価格帯の1DDモデルではコストの制約から質が高くなく全域を表現するには力不足。低音に寄せるか高音に寄せた音づくりになってしまいます。全域をバランスを取ったモデルもありますが、音が粗かったり、高音の上の方と低音の下の方がバッサリと切られていたりと音のバランスが悪いものが多くなっています。その結果、現在のDDには中音から低音域を任せ、高音をBAで補強してきた訳です。しかし、ここでも低価格帯のコスト制約がでてきます。このクラスで採用しているBAの質は残念ながら高いとは言えず、音に粗さがあり解像感を重視した結果、シャープさはあるが故に尖りがある荒さは痛し痒し。それをZEXやNRAではESMによって高音から中高音域を担わせる事で低価格帯の1BA+1DDハイブリッドモデルの次のステージを狙った訳です。

ところが、中華イヤホンの凄さはここからです。ESMだと超高音域は控えめじゃね?となれば、従来のBAでそこを補えば良いんじゃね?という真偽は分りませんが、所謂足し算で弱点に手を入れてきました。コスト的にはたかが知れた中華BAです。うまく合致したという事なのでしょう。

もちろんドライバの種類や質だけでなくチューニングも重要です。超高音域のBAと高音から中高音域のESMと中音から低音域のDDの各音域のクロスオーバーは重要でメーカーの腕の見せ所です。中華のチューニング技術は数年前に比べ進化しており、実際U3KのKZ ZSN pro XやKBEAR LARKは国内有名メーカーのU5K辺りとも良い勝負をすると思います。そこにNRAやZEXでも置き換えは十分と感じるところに1BAを追加したZEX Proがどう食い込んでくるのか、期待が高まります。

 

KZ ZEX Proのスペックですが先述の通り中華イヤホンの低価格帯で多く採用されている1BA+1DD片側デュアルドライバのハイブリッド構成からトリプルドライバ構成とし高音域用に超高音域のバランスドアーマチュアドライバ(BA)一基と、高音から中高音域のESMを一基採用。中音から低音域用のダイナミックドライバ(DD)を一基搭載した片側トリプルドライバ構成の多ドラハイブリッドモデルです。

ダイナミックドライバはZEXと同じKZ系の直径10mmの二重磁気ドライバを採用。ESMも6.8mm径低電圧タイプを採用。加えて、BAに定番の30095を採用しステムノズル内ではなく、シェル内に横向きに搭載しています。

イヤホン本体には金属製ステムノズルと樹脂製シェル本体に金属製フェイスプレートが採用されています。ZEXやNRAではステムノズルとシェル一体型の樹脂製のため、高音域の響きという面ではZEX Proは有利と云え、この辺りの違いにも注目です。

 

※宜しければKZ ZEXのレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

KZ ZEXの納期として今回AliExpressで購入し中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのようにはいきません。今回はオーダーから3週間で届きました。

昨今、感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきませんが、それも徐々に回復傾向であり最近はシンガポール経由ではなく台湾経由等で動き始めていますので、物流の安定化までもう少しというところですね。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. KZ ZEX Pro実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングはいつものKZの白を基調としたシンプルな小箱でスリーブタイプの化粧箱です。
箱の表にはイヤホンイラストが。裏にはスペックが記載されています。

 

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スリーブを外すと白地の内装の台座にイヤホンが収納され、台座を取り外すと箱の底に付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースがKZに付属する溝有黒色弾丸形状の白色タイプのS、M、Lの3種が計1セット。そのイヤピMサイズが本体取付け済。他にはケーブルです。U3K、実売2,500円の低価格帯として必要最低限の付属品となります。

 

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次にビルドクオリティですが、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせない、近年のレベルアップを感じられます。カラーバリエーションはBlack、Rose Goldの二色展開。今回はRose Goldを選択しました。

 

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付属ケーブルは従来のKZで付属のものとは異なるZEXで付属するタイプの白色(シルバー?)の4芯銀メッキ銅線の2本並列タイプが採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプでイヤホン側はKZ-Cタイプ、2ピン仕様、KZ極性(上がプラス)です。この付属ケーブルは耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にやや絡まりやすいものの、しなやかなものとなり低価格帯に付属するケーブルの中でも高品質の印象。とはいえそのまま使用できますし白色ケーブルはやや派手さはありますが、シェル本体の色が今回Rose Goldの為、それと相まって綺麗な印象を持ちます。個人的にはケーブルの被膜は黒色の方が合わせやすくて好きですね。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からKZ ZAS、KZ ZEX Pro、KZ ZEX 

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KZ ZEX proとKZ ZASはシェルが似ていますが耳甲介艇に納まる凸部の高さはほぼ同じですがうねりZEX Proが大きく装着感に個人差がありそうです。実際シェルの合わせ面からも金型が異なることが分かります。KZ ZEXとCCA NRAはシェルが共通の様です。そのため外観の比較にはZEXの他にNRAではなくZASを用いました。サイズ感はZEXがややコンパクトでZEX ProはZAS同様に厚みがあり大柄に見えます。造形はZEX ProとZASがカスタムIEM風の造形でZEXはオーソドックス。ZEX Proの造形はZASで装着に苦労する方には耳への収まり、装着感は問題があるかもしれません。

三機種共にKZ-Cタイプのコネクタとなっています。

シェルの材質は、ZEX ProとZASがシェル本体のみが樹脂でステムノズルとフェイスプレートが金属に対し、ZEXはステムノズルとシェル本体が樹脂製でフェイスプレートのみが金属です。

重量は三機種共にほぼ同じで、耳への装着時には殆ど差が分からないレベルです。三機種共に耳への装着感は悪くありませんが、ステムノズルはZASが細く、ZEX ProとZASがやや短め、ZEXはステムノズルはZEX Proよりもやや太く長め。角度はZEX ProとZASがやや起きています。

また、ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり異物混入による故障を防ぐと同時に、何れも目が細かく音への変化が期待できます。

そして、シェル本体の形状からは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りZEX ProとZEXはステムノズルはKZ ZSN pro Xのようにステムノズル内にBAを収める機種よりも比較的細く、ZASは細いです。太いステムノズルの場合は装着感に影響があり、圧迫感を感じやすくなりますが、ZEX ProやZEXではその影響が感じ難いため、イヤーピースのサイズで比較的容易に調節できます。

 

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付属イヤーピースはKZ系に付属する溝有黒色弾丸形状の白色タイプです。個人的にこの付属イヤピは従来の黒色タイプよりも装着感が良く感じる事が多いです。これならばそのまま使うのもアリだと思っています。

付属イヤピは音質的にはKZ溝有黒色タイプよりも高音中音をクリアにして低音控えめにするタイプに感じますが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い、この付属イヤーピースで上手く合わせることができましたので、そのまま使用し耳奥に栓をするように装着しフィットしました。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じますが、今回は付属の白色タイプで問題ありませんでした。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. KZ ZEX Pro音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り、Sony NW-ZX507を基準としてレビューを行います。

ZX507については他の方のサイトでも詳しく解説していますので、簡単に。SONYのミドルクラスのサブスク対応android機です。エントリーモデルのNW-A100シリーズとの違いは4.4バランス接続にも対応しています。DACには独自開発のS-Master、フルデジタルアンプが採用されています。

音質傾向としては、高音域と低音域をしっかりと鳴らすやや派手な音ながらも、ボーカルを邪魔せずにそれを引き立てています。所謂ドンシャリ傾向と云えますが、過剰なほどではなくて若干の演出という感じ。そして中音はボーカルに対し相対的に控えめに感じられますが、その分ボーカルはクリアです。特徴としては低音に厚みがありますので音楽を雰囲気良く聴くことができるSONYの音といえます。

個人的には音楽を楽しく聴くという本来の目的を達成するために必要十分なDAPと考えており、昨年6月からは音楽配信サブスクリプションサービス、Apple Musicがロスレス対応しましたが、android搭載DAPとして勿論対応(※1※2)しています。そして、何よりもBluetooth接続は安定していてLDAC対応していますので、同社の左右独立型完全ワイヤレスイヤホン、WF-1000XM4との相性も良く、標準アプリで再生する場合にワイヤレスでもハイレゾ級(24bit/96kHz、最大990kbps)で音楽を楽しめますが、強いて云えば電池持ちが悪い位しか不満はないです。

※1:2021/07/19現在 android版Ver3.6.0ベータ版(1115)で動作確認

※2:2021/07/22現在 android版Ver3.6.0正式版(1118)が配信開始

 

 

 

低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。

 
miineco106.hatenadiary.jp

 

※FiiO M5とShanling M0の比較もよろしければご参考ください。 

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属溝有黒色Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「主張のある低音と澄んだ高音域のドンシャリ」です。

箱出しでは低音に主張を感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音が落ち着き締まったキレの良い音に。相対的に高音中音がクリアに感じます。

音場は広くも狭くもない普通。

高音は適度な煌びやかさと伸びやかさは華やかさがあり存在感がありますが、刺さりを感じるような鋭さ抑えられています。

低音は十分な量感があり芯が感じられ締りとキレは良好。ベースラインは追いやすく曲によって目立ちます。重低音は沈み込みは深く強さも有ります。

中音は華やかでありながらゴチャつきを感じません。ボーカルは自然な位置に感じますし、クリアに聴かせてくれ聴きやすい。

一言で云えば中高音寄りのややドンシャリ

高音は煌びやかで伸びも良く、音の消え入る様を感じられます。低価格帯のBAでよくある前に前にと出るような主張はなく、かと言って控えめという程ではなく、自然な演出感を抑えた鳴り方です。BAを追加した超高音は伸びも良く多少の演出感がありますが、綺麗に伸びる印象です。ベースとなったZEXと同様にBAのみの高音域で感じるような不快な尖りはなく、中音域やボーカルを邪魔しない音。不快なシャリつきを感じない統制され整った音は、ZEXやNRAと同様でありながらもそれを超える印象です。

中音はZEX同様に僅かに凹みを感じます。NRAでは僅かに凸に感じましたが、ZEX Proでも従来のKZのバランスです。楽器の音はボーカルの周りやや後ろ辺りに位置し華やかに鳴り小さな音の消える様を感じられる解像感と分離感はZEXやNRA同様に良好です。特筆すべきはその中高音の小さな音がZEX Proでは聴こえます。ZEXやNRAでは聴こえなかった音はZEX Proでは追加されたBAが超高音から高音カバーし、ESMが中高音寄に表現できていると云えそうです。

ボーカルはZEX同様にややドライ気味なものの息遣いを感じられ自然な感じ。バラードなどのしっとりとした雰囲気を楽しみたい場合には相性というか部の悪さは感じられるものの悪くありませんが、こちらはNRAの方に分がある印象です。

低音はZEX同様に十分な量感があり、NRAよりも多く、KZの強くキレの良い低音です。二重磁気ドライバはNRAの三重磁気ドライバよりも沈み込みの深さがあり広がりと響きを感じます。一方、NRAの三重磁気ドライバはそれよりも芯が強いタイトでキレの良さを感じまが、その分、重低音は強さはありますが、沈み込みは少し抑え気味の印象です。

まとめとして、ZEX ProはZEXの音を踏襲し正統進化したサウンドと云え、高音と低音に多少の演出を感じる部分はあるものの、どこかの音域に尖ったところを持たせずにバランス良くまとめた音という印象です。

個人的にはZEX ProもやっぱりKZサウンドという、ブレないKZに好感を持ちます。

 

※以前のCCA NRAのレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

ESMドライバを採用したCCA NRAやZEXのブラッシュアップ版と云えるZEX Proは高音はしっかりと上品に低音はノリ良く鳴らす、音楽を聴く事を楽しませてくれるKZサウンドは健在と云えます。従来のBAのみを使った高音とは違いBAとESMドライバが尖りがないのに解像感の高い音を聴かせてくれます。NRAやZEXでは聴こえなかった中高音がZEX ProのBA追加によるESMドライバとの守備範囲の変更が功を奏していて、中音は華やかで見通し良く、低音は勢いのある強さとキレのある音。中音域は僅かに凹みを感じますが、低価格帯では類を見ない分離と解像感は良好。ボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすい音質傾向は従来のKZサウンドを踏襲し正統進化した音と云え、従来の1BA+1DDハイブリッドモデルが成し得なかった音を実現したモデルと云えそうです。

それでもリスニング用途として小気味良い聴いていて楽しいバランスは中華イヤホンには高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方には、もの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

 

3.1. 再生環境による変化

唐突ですが再生環境による変化を確認してみました。

昨年後半はDAPにZX507を使用していましたが、ちょっと思うことがあってandroidスマホXiaomi Mi 11 Lite 5GにUSB-DACとして、Shanling UP5FiiO Q5Sを使用し検証してみることにしました。再生アプリはUSB Audio Player PRO(以下UAPP)を使用します。

 

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始めにShanling UP5です。

Shanling UP5はLDACに対応するBluetoothレシーバー機能とUSB-DAC機能を持ち、前モデルのUP4を愛用していて、PCオーディオの際に有線イヤホンをBluetoothレシーバー機能で愛用しておりましたが、後継モデルのUP5に漸く買替することができました。UP5は前モデルのUP4ではUSB-DAC機能が16bit/48kHz止まりでしたが、32bit/384kHzに向上しMQAにも対応しています。USB-DACと云えば以前Shanling UA2のレビューをしていますが、音量調整用の物理ダイヤルがUP5本体には搭載されていてiPhoneandroidスマホで使用する場合に音量独立調整ができるので使い勝手が向上しています。UA2はiPhoneiPadApple Musicは捗りますが、androidスマホのSOC回避問題があり、24/48止まりとなる場合があり一部の高級スマホを除き、実力を発揮しにくいというのがあり、UP4をUP5に買い替えた訳です。

 

※USB-DACのShanling UA2のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

さて、Shanling UP5をローゲイン、デュアルDAC、EQオフ、チャージオフ、DACフィルタはデフォルトのLinear Phase Fastに設定し使ってみます。

DACチップにESS ES9219Cをデュアル採用したUP5は非常になめらかで解像感の高い音を聴かせてくれます。悪く云うと淡々と鳴らす感じですが、20,000円を少し超える価格を考えると申し分なし。androidスマホ単体で聴く音とは異なり高音質と云えます。尤も同社のエントリーハイDAPであるM3XDACや出力等のスペックは同じ。音質もほぼ同じと云えますので、ユーザーの使い方によってM3XかUP5を選択できるもの嬉しいですね。

UP5の肝心の音質傾向ですが、高音はZEX Proの特徴を活かす鳴り方で綺麗に聴こえます。低音もしっかりと鳴り不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。

ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、非常にレベルの高い音質と云えます。

気になるZX507との比較ではZX507の方が高音の主張があり、低音も量感を感じる鳴り方ですが、中音がやや真ん中に集まるもののボーカルが前に出て聴きやすく熱量を感じます。

簡単に違いを云えばグルーブ感を感じ音楽を楽しく聴く事ができるリスニング寄りのZX507に対し、UP5では音をそのままに淡々と鳴らしフラットに近いバランスでモニターライク寄りと云えます。どちらも良い音でありベクトルが違う音であるため、どちらが良い音と云うよりは好みで分かれる音と云えそうです。一聴しただけではZX507の方が派手に鳴りますので良い音という印象を持つかもしれませんね。

 

次にFiiO Q5Sの場合ですが、販売価格50,000円超という事もありShanling UP5よりも多機能、高性能です。機能はLDAC対応のBluetoothレシーバーとUSB-DAC機能を持ちますが、他にも光、同軸、ライン入力等に対応するポータブルDACアンプです。

DACチップにはAKM AK4493をデュアル採用しアンプ部をモジュール交換可能としています。標準装備のAM3Eモジュールに加えTHX AAA-78回路を採用したAM3Dモジュールに換装することで音の変化も楽しめます。

今回はAM3Dに換装し、ローゲイン、バスブーストオフで試してみます。

一聴して音場の広さをと音のクリアさ感じます。

高音はZEX Proの本来の音というか悪く云えば控えめに聴こえていたものが、しっかりと鳴りながらも主張しすぎないZEX Proの音のバランスを感じさせます。

中音はUP5よりもさらに広がり左右だけでなく前後の奥行も感じ、分離や解像感は聴いていて楽しくなります。

ボーカルはクリアでZEX Proのややドライ気味な音は変わりませんが、息遣いを感じられ生々しさがアップします。

低音はZEX Proの特徴であるキレの良い音はそのままに力強さが増し、心地よさを感じます。

ZX507と比較ではZX507もけして音が悪いというわけではありませんが、何方もモニターではなくリスニング寄りの音であり、同じ土俵であればQ5Sの方がより良い音と云えますね。

 

まとめると、androidスマホにUSB-DACを接続しUAPPで再生した場合、エントリーハイからミドルクラスDAPと遜色のない音質で楽しむには十分と云えそうです。

特にZX507との比較では中華USB-DACコスパが高く、Shanling UP5ではZX507のリスニングサウンドとは対極のモニターライクの音は分析的に聴きたい方のニーズにも応えられますし、レビューにも使えそうです。

一方FiiO Q5S with AM3DではZX507と同様にリスニングサウンドでありながらも広い音場で解像感と分離の良いサウンドを楽しめますし、DAPに拘らない楽しみ方もあることを考えさせられました。

 

高音   ZEX Pro ≧ ZEX ≧ NRA (出音の強さ) 

中音   NRA ≧ ZEX Pro ≧ ZEX (出音の強さ)

低音   ZEX Pro ≧ ZEX ≧ NRA (出音の強さ)

ボーカル NRA ≧ ZEX Pro ≧ ZEX (質感の順)

 

 

4. KZ ZEX Proの総評

KZ ZEX Proは従来のKZサウンドを踏襲し1BA+1DDハイブリッドモデルの成し得なかった音を実現したモデルとまとめました。これまでのKZの1BA+1DDハイブリッドモデルではごちゃつきを感じる中音域は改善され音が整理されています。何よりもESMドライバによる高音域は従来のBAを強く鳴らすことで解像感を演出する手法から一線を画した自然な解像感が魅力です。低音は敢えて従来の二重磁気ドライバとすることでKZサウンドを踏襲した拘りのモデルと云えます。

近年飽和気味の低価格帯1BA+1DDハイブリッドモデル群からの新たな一手としてESMを採用したモデルはCCA NRAに続き、KZ ZEX、KZ ZEX Proが矢継ぎ早に発売され、コラボモデルを発売する等、KZの力の入れようが窺えます。2022年はKZを追う各社の動きに期待ですね。

結論としては「新しいものが好き」な方や2021年のKZサウンドの完成形が気になる方にはお勧めできます。一方で低価格中華イヤホンの強ドンシャリを求め検討されている方には注意が必要な商品です。

 

最後に、今回はAliExpressで昨年末発売された低価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年1月15日)はAliExpressや国内amazonでもコラボモデルに置き換わり発売しています。標準モデルとしての本機はAliExpressでは2,000円台の価格で入手可能です。一方amazonでは3,000円台とAliExpressの方が安価に入手できますが、その入手性には現在も難があります。とはいえこれまでの低価格中華イヤホンの中でも安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでprimeでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、少しでも安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。(コラボモデルは気になってます)

 

ZEX Pro

以下、付属ケーブル、付属溝有白イヤピ M使用、DAP M11 Lite 5G+UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

NRA

以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAP M11 Lite 5G+UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

ZEX

以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAP M11 Lite 5G+UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★☆ (KZサウンド好きの方★5)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンでなく、1BA+1ESM+1DD多ドラハイブリッドモデルの新商品のレビューとなります。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Victor HA-FW1000Tレビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンではなく、日本の老舗ブランドVictorの左右独立型完全ワイヤレス(Ture Wireless Stereo。以下TWS)イヤホン、HA-FW1000Tのレビューをまとめたいと思います。

国内メーカーの商品なので国内大手イヤホン専門店や家電量販店の各店頭及び、WEBサイト並びにamazon等のECサイトでも購入可能です。

 

 

www.e-earphone.jp

 

以下、メーカーHP

www.victor.jp

 

 

 

 

1. Victor HA-FW1000Tについて 

Victorから旗艦モデルHA-FW10000(以下FW10000)と同様に「木」の振動板を採用した「Woodシリーズ」初の左右独立型完全ワイヤレスイヤホン(以下、TWS)のHA-FW1000Tが今年11月初旬に発売されました。Victorブランドでは昨年HA-FX100T(以下FX100T)が発売され「ニッパー君」の愛称で親しまれている犬が旗艦モデルFW10000と同様に描かれているだけでなく、付属するイヤーピースには同社のスパイラルドットを採用。更にイヤホン本体に加えケースもコンパクトで使いやすいだけでなく、その音質もVictorブランドの名に恥じないモデルと定評がありました。

一方、JVCブランドでもTWSは発売しており、FX100Tと同じ昨年11月にHA-A50Tが発売されましたが、こちらはアクティブノイズキャンセリング(以下ANC)機能を搭載しながらもFX100Tよりも安価で、よりカジュアルで実用的に使えるモデルとして発売当時話題になりました。

FX100Tはブランド戦略なのでしょうが発売当時16,000円と現在のTWS市場の中では「音質にも十分拘っています」というミドルクラスの価格帯でのデビューとなりましたが、A50Tは10,000円で買えて手軽に使えるカジュアル路線でありながら、ハイクラスには搭載されていたANC機能を搭載することで商品価値を高めていて、そのブランドの使い分けは老舗国内メーカーの巧さを感じさせられました。

そのVictorブランドからついにハイクラスのHA-FW1000Tが発表。同社ハイクラスモデルに採用されているWoodシリーズに名を連ね高音質の代名詞を手に入れると共に、ANCを搭載しハイクラスモデルであることを誇示し、更には高音質化技術K2テクノロジーを搭載し、真にブランドの最高を誇るTWSとして発売開始されました。

 

ここで先ず「Woodシリーズ」とは?

 

「ヘッドホンも、楽器でありたい」という想いから、「木が奏でる美しい響きと自然な音の広がり、楽器のように美しく自然な響きを再現したい。」という「原音探究」の思想のもと、自然素材である「木」への長き挑戦がはじまり、いくつもの試行錯誤を重ね、ついに業界で唯一となる、「木」の振動板を採用したヘッドホンが誕生した。

(HP抜粋)

 

という、同社の音を鳴らす機器への「こだわり」から生まれたオーディオとしての自然なサウンドを追求した一つの答えといえます。

同社のWoodシリーズは十数年の歴史があり、私もWoodシリーズの有線イヤホンHA-FX1100(以下FX1100)を愛用していたこともあり、それは豊かな低音に包まれ響きが良く倍音が美しく優美な音色からイヤホンであることを忘れてしまう唯一無二の音と云え、その音色に魅せられていました。その後、良い音の探求の結果、身分不相応と思いましたが、清水の舞台から飛び降りる気持ちで旗艦モデルのFW10000を手に入れFX1100とは異なる中高音の美麗な音に魅せられてしまいました。そして後に国内F社旗艦モデルのベリリウム振動板採用モデルも手に入れ所有しており、キレの良い音は鮮やかに彩り聴かせてくれます。しかし、FW10000の美麗な音は未だにFW10000にしか奏でられない音であり、これが一番好きな音です。そのため、FW10000は私の中で一番良い音としてリファレンスとしています。

 

そんなWoodシリーズ初のTWSモデル、FW1000Tの発表後「でもTWSだからなぁ」と少し迷っていたのですが、発売前のメディアレビューでは軒並み高評価。もちろんその性質から少々差し引いてみたとしても…です。特に某メディアレビューの「同社FW10000の音を目指した音」という煽りに完全にやられてしまいました。

FW1000Tの商品性として先述のWoodシリーズ、ANC搭載、K2テクノロジーの他に今やTWSの機能で無視できない「無線コーデック」にQualcomm aptX Adaptiveを採用しています。aptX AdaptiveはSonyの開発した無線コーデック、LDACと同様にこれまで主流だったaptXよりも伝送量が多く、その結果、従来よりも高音質で音楽を聴く事ができます。しかし、LDACが24bit/96kHz、最大990kbpsに対し、aptX Adaptiveは24bit/48kHz、最大420kbpsとスペック上やや劣りますが、実はFW1000TのaptX Adaptiveは従来のものと違い、それを進化させた24bit/96kHz、最大620kbpsに対応しています。これはLDACが接続品質と音質のバランスを考慮した時に実用性能660kbpsとなりますが、それと同等の性能をaptX Adaptiveでも対応できたことになります。尤もこれに対応するandroidスマホは少なく、現状は最新SoC「Snapdragon 888」、「Snapdragon 865G」、「Snapdragon 780G」等を搭載したスマホ端末各社のハイグレードで高価な機種となります。かくいう私のスマホは「Snapdragon 732G」のため、従来のaptX Adaptiveの24bit/48kHz、最大420kbpsですが…。

最後に、付属するイヤーピースに新型のスパイラルドットProが採用されています。各社のTWSでも専用のTWS対応イヤーピースが採用されていますが、FW1000Tでも同社のスパイラルドットシリーズの新モデルが、初登場、初採用されたことになります。余談ですが、スパイラルドットシリーズのスパイラルドット++をFW10000に愛用しており、新型イヤーピースにも興味があったというのが購入理由の一つです。

 

つまり、FW1000Tは、たとえTWSであってもVictorブランドの名に恥じないモデルとして、同社の旗艦モデルの音を目指した音づくりや、無線接続でも高音質で音楽を楽しめるように同社のK2技術を搭載し、且つ無線コーデックに進化したaptX Adaptiveに対応させることで無線接続でもハイレゾ音源をハイレゾ相当で楽しめる。更にTWSに求められるガジェット機能としてANCを搭載したレベルの高いワイヤレスイヤホンと云え、期待値が高くなってしまいますよね。

  
それではHA-FW1000Tのスペックを詳しく見ていきます。

 

■主要スペック(Victor商品ページ抜粋)

  HA-FW1000T 国内S社
低音域ドライバ

11mm

ウッドドームカーボンドライバ

6mm

ダイナミックドライバ

高音質化技術 K2テクノロジー DSEE Extreme
Bluetoothバージョン 5.2 Class 1 5.2 Class 1
コーデック

SBC、AAC、aptX、

aptX Adaptive

SBC、AAC、LDAC
ノイズキャンセル
ヒアスルー
360 Reality Audio -
アプリ対応 -
連続再生時間 イヤホン:
最大5.5時間(NCオン) / 最大9時間(NCオフ)
充電ケース:
最大18時間(計:最大27時間)
イヤホン:
最大8時間(NCオン) / 最大12時間(NCオフ)
充電ケース:
最大24時間(NCオン) / 最大36時間(NCオフ)
防水 イヤホン本体:IPX4 イヤホン本体:IPX4
満充電時間 イヤホン:約2.5時間
ケース:約2.5時間
イヤホン:1.5時間
ケース:約3時間
充電時間 10分充電で90分使用可能 5分充電で60分使用可能
イヤホン重量 イヤホン:7.5g
ケース:45g
イヤホン:7.3g
ケース:41g

 

参考に国内メーカーS社の今年発売されたLDAC対応TWSのスペックを併記してみました。

二つの機種はスペック上、搭載するドライバと無線コーデックが異なりますが、それ以外は非常に似ています。これはTWSに求められる音質以外の機能性、所謂ガジェット性能という有線イヤホンとは違う市場のニーズに対応していると云えます。

販売価格ではFW1000Tの39,600円(公式ストア)に対し、国内S社は33,000円(公式ストア)と安価になります。実売価格でもFW1000Tの36,000円に対し、国内S社は28,000円となり、発売開始時期が半年違うものの2割ほどの差があります。この価格帯では各社のTWSイクラスモデルが競合しており、それらは「高音質」だけでは売れず、ユーザーニーズのガジェット性能も高い商品性のある機種に人気が集まっています。

ただFW1000Tはそれらの中でも「高音質」を謳った商品であり、アプリ連携を含めガジェット性能は国内S社商品に軍配が挙がりそうです。私の様にどちらも所有している方はマニアに属するのでしょうし、用途に応じて使い分けることで補って…なんて考えないのが普通ですし、一つだけを選ぶと思いますので「何方が良いか?」は用途に応じてお勧めは変わってくると思います。

 

FW1000TはBluetoothバージョン5.2 Class1を採用し省電力と接続安定性が高く、androidスマホでaptX Adaptive音質優先(420kbps)で接続した場合に通信は安定していてリビングにスマホを置きイヤホンを装着したまま家事を行ったり壁を隔てた部屋間の移動でも途切れることはありませんでした。屋外での使用では流石に都内駅構内等で一瞬途切れることがありましたが、殆ど途切れることはありませんでした。余談ですが、国内S社のノイキャンTWSandroidスマホのLDACのベストエフォート接続(330-990kbps間で自動調整)では殆ど途切れることはなく、通信品質は安定しています。

FW1000TはiPhoneの場合、AAC接続となりますが、実は接続品質は一番安定している印象です。経験上最も優れている認識で、先述の条件では屋内は全く問題ないのものの、屋外では人混みや電車内で稀に、それも一瞬僅かに途切れる程度です。

また、連続再生時間はANCオン/オフや接続コーデックにより変化します。そのため公称よりはやや短めとなりますが、最新のTWSとして必要十分となります。尤もこれは使用環境、条件により変わりますので参考程度にお願いします。

次に待機時間や充電時間ですが実際に一月半以上使ってみた印象として充電時間はほぼスペック通りと感じましたが、私の環境では音楽再生がやや短く感じ、スペックの8割程度だと思います。とは云え、家で動画を観たり通勤往復でも十分ですし、会社についたら充電してしまえば実用上問題ないです。実際のところメーカー公称時間とユーザーの実行時間として、これは他のメーカーでも云えることですので有効使用時間として問題なく十分満足できると云えます。

 

※Xiaomi Redmi Note 10 Proのサウンドメニュー画面

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FW1000Tに限った話ではありませんが、初めて接続したTWSの音量が大きすぎる場合があります。その場合ですが、androidサウンドメニューから、本体の音量調節ボリュームとは別にBluetooth接続機器を「(Bluetoothマーク)メディア」の音量調整メニューから調整可能です。また、通常Bluetooth接続機器とスマホ本体の音量調整は連動しており機種によっては1メモリの調整幅で大きくなり過ぎたり、小さくなり過ぎたりと音量調整で困ることがあります。これに対応できるのが前述の「(Bluetoothマーク)メディア」の音量調整です。なお、iPhoneにも同様の機能がありますが、個人的に「自動調整をON」にして使っています。

 

FW1000Tの充電は付属のケーブルをケースのUSB タイプC端子を接続し市販のUSB-A充電器で行います。

イヤホン本体の充電残量の確認はケース本体のLEDの点灯により確認できますが、より分かり易いのはスマホ本体での確認です。

 

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iPhone等のiOSと接続した際に画面右上の充電残量の左にある接続ステータスでヘッドホンマークの隣に充電残量バーが表示されます。

 

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iPhoneウィジェットでも充電残量を確認できます。

次にandroidスマホです。

 

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androidスマホではBluetoothメニューの接続デバイス一覧に現在接続している機器が表示されますが、その中でバッテリー残量の確認ができます。

 

次にケースの充電状態はケース正面のLEDにより充電ステータスが分かります。

 

※充電中は4つあるLEDが一つづつ白色点滅します。白色4つ色点灯で充電完了。

 画像はあと一つで満充電の状態。 

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白色LEDが4つ点灯した満充電の状態
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※イヤホンの充電状態はイヤホンのLEDで表示します。

 左はLEDが点灯し充電中。右は消灯し充電完了。

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充電が完了しいよいよandroidスマホ及び、iPhoneとのペアリングです。基本的に取説通りで問題なくペアリングを行えます。

ここではandroidスマホを例にペアリング方法を説明します。

 

androidスマホのaptX Adaptiveでのペアリング方法(MIUI 12.5.8で検証済)

  • 最初にandroid OSの開発者向けオプションを有効にする。
  • Bluetooth接続をaptX Adaptive音質優先を選択する。
  • androidスマホBluetoothを有効にする。
  • FW1000Tのイヤホン左右をケースから取り出す。
  • androidスマホの設定-利用可能なデバイスに「FW1000T」が表示されますのでそれを選択するとペア設定完了です。
  • 2回目以降は接続機器リストに「FW1000T」が表示されるのでそれを選択する。
  • 接続リストの「FW1000T」が接続済みになれば完了です。

androidスマホの画面右上のBluetoothマークの両サイドに小さな点が付けば完了。iPhoneの場合は画面右上にヘッドホンマークが付きます。

※最初に開発者向けオプションでBluetoothオーディオコーデックをaptX Adaptiveを選択

 

※ペアリング済みの画面表示
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※最初に開発者向けオプションのBluetoothオーディオコーデックがaptX Adaptiveになっていることを確認

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基本的に一度ペアリングすると接続機器リストに表示されますので次回以降はFW1000Tをケースから取り出す(電源を入る)と自動的に接続します。

自動的に接続できない場合は前述のリストから選択してください。

 

上手くいかない場合、一度androidスマホ及び、iPhoneからFW1000Tの接続の登録を削除して再度初めから実施してみてください。ペアリングが完了している場合、2回目以降はandroidスマホ及び、iPhoneBluetoothをONにしてからFW1000Tをケースから取り出し(電源が入る)とペアリングモードになり自動的に接続します。上手く接続しない場合はandroidスマホ及び、iPhoneBluetooth設定画面から「FW1000T」を選択してください。

次にイヤホン本体の操作方法の説明です。

ここでもandroidスマホを例に操作方法を説明します。

 

■イヤホン本体の操作方法(初回ペアリング済で検証)

  • androidスマホBluetoothを有効にする。
  • FW1000Tをケースから取り出し自動的にペアリングモードに移行し接続開始。
  • androidスマホの画面右上にBluetoothマークの左右に点が付けば接続完了。
  • androidスマホでミュージックアプリを起動し聴きたい曲を選択し再生する。
  • イヤホン左側を1回タッチで再生停止。もう一度1回タッチすれば再生します。基本的に1回タッチ毎に再生/停止を繰り返します。
  • 再生停止中にイヤホン右側を2回タッチで次の曲へ進みます。
  • 再生停止中にイヤホン右側を3回タッチで前の曲に戻ります。
  • 再生中にイヤホン右側を2回タッチで次の曲に進みます。
  • 再生中にイヤホン右側を3回タッチで曲の頭に戻ります。
  • 再生中/停止中にイヤホン左側を2回タッチで音量Down。
  • 再生中/停止中にイヤホン左側を3回タッチで音量Up。
  • 再生中/停止中にイヤホン左側を4回タッチでANCオン。もう一度4回タッチするとANCオフ。4回タッチする毎にANC「オン」「オフ」を繰り返します。
  • 再生中/停止中にイヤホン右側を1回タッチでヒアスルーオン。もう一度タッチするとオフ。1回タッチ毎にヒアスルーが「オン」「オフ」を繰り返します。
  • androidスマホと接続中に、イヤホンを耳に装着した状態で、イヤホン右側をすばやく4回タッチすると、「K2」機能のオン/オフが切り替わります。※1
  • 着信中にイヤホン左側をすばやく1回タッチで通話開始。
  • 通話中にイヤホン左右の何方かを1秒タッチするとビープ音が鳴るので指を離すと通話終了。
  • 着信中にイヤホン左右の何方かを1秒タッチするとビープ音が鳴るので指を離すと着信拒否。
  • 通話中にイヤホン左側をすばやく1回タッチすると一時的にマイクをオフ。(再度すばやく1回タッチすると、元に戻ります)
  • 通話中にイヤホン左側をすばやく4回タッチするとマスクをした通話の際の籠りを抑えられます。(再度すばやく1回タッチすると、元に戻ります)
  • 着信及び、通話をしていない時にイヤホン左側を1秒タッチするとビープ音が鳴るので指を離すとスマホのアシスタント機能オン。(あらかじめスマホ側でアシスタント機能を有効にしておく必要があります)
  • 使い終わったらケースに戻しイヤホンの電源をオフにする。
  • androidスマホとの接続が解除される(androidスマホの画面の接続ステータスが消える)。
  • androidスマホBluetoothをオフにする。

※1:「K2」機能とは、伝送された圧縮音源をハイレゾ相当に復元する、Victor独自の高音質化機能です。

 

プレイヤーをandroidスマホとした場合の音楽再生にかかわる主な操作方法を抜粋し検証した方法をまとめてみました。基本的に他のandroid搭載DAPiPhoneでも操作方法は同じです。(接続する機種によって一部機能が対応していない場合があります)

最近のTWSは音楽再生等の機能操作を全てコントロールできますし、ハイクラTWSでは必須と云えます。少し前までのTWSでは音量調整ができない、曲送り、曲戻しができない等の機能操作制限があったり、タッチ操作の感度(反応)が悪いなんて機種もありましたが、FW1000Tはその点に心配はありません。

初めてTWS使う方でも自然に使えるレベルですが、注意点としては各社のTWSの操作方法が異なり統一されていないので、他にも所有している場合にFW1000Tはイヤホン左右に割り当てられた機能、タッチ回数が複雑なのでスマホに取説の操作方法を画像で持っておくか、Web取説をブックマークにしておくことをお勧めします。また、国内S社のTWSではアプリで操作方法を確認できますし、何よりも現在の設定を確認できますので、ガジェット性能としては一歩譲ると云えます。

 

さて、ここまでANCにはあまり触れていませんが、まあ…そういう事です。正直、国内S社TWSのANCが先代マークIIIの衝撃を与えたデビューから、マークIVと更に進化したのに対し、他社同様にQualcommのチップに頼っているANC性能と感じます。ANCの方式に工夫を感じますし、もちろん全く効いていない訳ではありません。ですがライバルが強すぎます。

それでも実際に再生中にノイキャンをオンオフ切り替えをしてみましたが、オンとオフに不自然さは少なく換気扇の音も結構消してくれますし、実用十分と云えます。でも、マークIVには敵いません。(←しつこい)

 

まとめるとFW1000Tの接続は簡単でスムース。イヤホン本体ですべての音楽再生機能操作も行え実用的です。そして、外音をシャットダウンするANCや外音を取り込めるヒアスルー機能もある優れモノですが、惜しいのは他社にはあるアプリ連携が無い事。個人的にはたいした問題ではないのですが、ガジェット性能としては他社に一歩譲ると云えます。

 

最後にイヤホンのリセット方法も説明しておきます。

何故にリセット?と思われるかもしれませんが、実はよく検索されている「ワード」だったりします。

 

1.1. イヤホンのリセット方法

  1. 左と右のイヤホンを充電ケースに入れます。充電状態になり、左と右のインジケーターが点灯します。
  2. 左のタッチセンサー部を、右のインジケーターが2回点滅するまで、約15秒間触れ続けてください。点滅後、充電状態になり、インジケーターが点灯します。点滅しない場合は、この手順2の最初からやり直してください。
  3. 右のタッチセンサー部を、右のインジケーターが2回点滅するまで、約15秒間触れ続けてください。点滅後、充電状態になり、インジケーターが点灯します。点滅しない場合は、この手順3の最初からやり直してください。充電ケースからイヤホンを取り出し、左と右のイヤホンが隣り合うように並べてください。
  4. 左と右のインジケーターが点灯し、電源が入ります。
  5. しばらくすると、左のインジケーターは速く点滅を繰り返します。右のインジケーターは2回点滅をゆっくり繰り返します。
  6. 出荷時の状態に戻ります。左のインジケーターが速い点滅になると、相手機器とペアリングができるようになります。

 

動作がおかしいなと思ったらスマホから登録を削除してイヤホン本体をリセットを先ずお試しください。

因みに、これは技術者目線の余談です。FW1000Tに限りませんが、初期化と同様に大切なのはTWSのバッテリー残量をあらかじめandroidスマホ画面で確認しておくことです。

  • TWSの充電が少なくなった際に直ぐに充電をする。
  • 充電が20%以下にならないように管理する。
  • 過放電は絶対にダメ!

これは過放電はバッテリー劣化を早め寿命を短くしてしまうからです。特にTWSに搭載されるバッテリーは容量が小さく、愛機は長く大切に使いたいものですから。

 

 

2. Victor HA-FW1000T実機について 

それでは、FW1000Tの実機レビューを以下、まとめていきます。

 

※Woodシリーズであることが目を引きます。

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表面にはニッパー君が。そしてVictor STUDIOによる音質チューニングを示す文字が誇らしげです。

※国内メーカーのリサイクルを意識したパッケージングに無駄はなし。

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無駄のないパッケージングは商品保護を最優先し化粧箱の無駄を徹底して排除しています。日本の優れた技術の一つと云っても過言ではありません。一方、外側を白で統一し内箱の中を黒箱としたシックな化粧箱の無駄のない収納方法は一見すると質素に見えますが、安易に緩衝材を樹脂や発泡材に頼らないレベルの高さを感じます。

次にパッケージの中身を。

 

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※充電用USBケーブルは卓上では必要十分の長さ
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※新型イヤーピース、スパイラルドットProが5サイズ付属。

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付属品はイヤーピースがS、MS、M、ML、Lの5種1セットでMサイズが本体取付け済み。他にはUSBタイプC-タイプA充電ケーブルです。必要十分の付属品ですね。

注目はJVC、Victorブランドのイヤーピース、スパイラルドットシリーズの新型が付属します。最近のTWSの付属品同様に軸が短く傘の方が長いタイプが付属。所謂TWSタイプですね。

取扱説明書は安心の日本語。個人的に家電さえもWEB取説がスタンダードになっている昨今では漏れなくWEB取説に対応。商品に付属する紙は最低限というところです。

それでは実際にイヤホンを見てみましょう。

先ずはケースから。

 

※ケースにニッパー君

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※イヤホンのタッチセンサー部にもニッパー君

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ビルドクオリティは文句のつけようがなく、最早粗探しのレベルなので自重します。この辺りは安心の国内企業です。カラーバリエーションは黒色のみです。

次にイヤホン本体です。

 

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イヤホン本体は比較的大柄となりますが、他社のTWS同様に耳へはイヤーピースで保持し収めるタイプとなりますので、イヤーピース合わせは重要になります。

シェル本体は樹脂製で軽量に仕上げています。ステムノズルにはメッシュフィルターがあり異物の混入による故障を防げます。

シェル本体の形状からは特に装着感は悪くありませんが、耳への装着は付属品イヤーピース頼りですが、付属の5サイズで上手く合わない事はないと思います。もしも合わない場合は普段使用しているメーカーのものでも問題なくケースに仕舞えると思います。

 

※左からL、ML、M、MS、S

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※左スパイラルドット++ Mサイズ、右付属スパイラルドットPro Mサイズ
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付属スパイラルドットProイヤーピースは同シリーズの新型TWSタイプと云えそうです。もちろんFW10000にも問題なく使用できますが、傘が従来よりも柔らかく個人的にこの付属のイヤピよりも従来のスパイラルドットの方がやや硬くコシがあるので、フィットしやすいです。しかしFW10000の様にシュア掛けでイヤーピースの負担を逃がせていることから、堅めのイヤピでは長時間は耳が痛くなるので付属のイヤピの方がお勧めですね。

もちろん付属のイヤピでも音質的には決して悪くはなく、寧ろバランスが良いのですが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸いなことに私はこの付属イヤーピースで耳の奥に浅めに栓をするように装着し、上手くフィットできました。

余談ですが、Sedna EarFit(shortではない)は軸が長めで傘がやや硬めなこともあり、最近一周回ってなかなかフィットしない場合に重用しています。

この様にイヤホンではイヤピが重要です。上手くフィットできないと装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

それではFW1000Tと他社製品との比較をしてみます。

先ずはケースから。

 

※上からSony WF-1000XM4、Victor HA-FW1000T、Sennheiser CX Plus Ture Wireless

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※左からSony WF-1000XM4、Victor HA-FW1000T、Sennheiser CX Plus Ture Wireless

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最近では大きなケースに見えるかもしれんせんが、寧ろSony WF-1000XM4が小さいといった方が正解だと思います。

次にイヤホン本体です。

 

※左からSony WF-1000XM4、Victor HA-FW1000T、Sennheiser CX Plus Ture Wireless

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Sennheiser CX Plus Ture Wirelessが一番コンパクトです。FW1000TがWF-1000XM4よりも僅かに大きいです。

三機種共に重量はほぼ変わらないですが、Sennheiser CX Plus Ture Wirelessやや軽い方です。ただし耳への装着時にはその重さの差を殆ど感じません。

次にステムノズルはSennheiser CX Plus Ture Wirelessが短くFW1000Tがやや長く太め。その為、ステムノズルの太さに影響するイヤーピースの圧迫感はやや感じ、付属のイヤーピースの柔らかい傘と相性は良いと云えます。イヤーピース選択をしっかりできれば問題なく使えそうです。尤も耳の小さな女性や子供を除き、殆どの方で不満を感じることはないのではと思います。

また、これらにはステムノズル先端端面にメッシュフィルターが装備されていてシェル内部への異物混入が防げますので、長期の使用にも耐えることができますね。

 

 

3. Victor HA-FW1000Tの音質について 

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

今回の再生環境はandroidスマホのXiaomi Redmi Note 10 Pro、Bluetooth コーデックaptX Adaptive接続です。

 

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実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love平井堅/瞳をとじて倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りイヤピは付属 Mサイズを使用しています。

箱出しで聴いてみた第一印象は「低音の響きが良く、高中音域は解像感のある整った音。ボーカルは暖かく自然で聴きやすい」でした。発売前のメディアレビューで「FW10000の音を目指した音」という煽りでしたが、実際に聴いてみるとそれとは違うというのが率直な感想です。中高音が美麗なFW10000と中低音寄りの音はやはり違います。しかし、音場の広さというかその感じ方は似ているという印象です。

一先ず鳴らし込みを兼ねて数日聴きこみました。鳴らし込み後は、低音の響きの良さはそのままにボワつきが収まり解像感のある音に。相対的に高音も聴こえやすくなりました。

音場は広めで立体感のある音。低価格帯の狭い空間に音圧を感じるドンシャリとは異なります。
低音は一聴して量感を感じますが音場の広さと響きの良さに加え、音の輪郭と強弱を感じ易く、解像感の高い音は音圧で誤魔化さない質の高さを感じます。ベースラインもしっかりと追え雰囲気のある音。重低音の沈み込みはそれほど深さがあませんが、TWSとしてはしっかりとした強さがあります。
高音は煌びやかさがあり華やかさがありますが、常に前に出るような主張の仕方ではなく柔らかさのあるしっとりとした鳴り方。それでも中低音に埋もれずに必要な時に必要なだけしっかりと主張しますが、尖りや刺さりは感じません。

中音は凹みを感じず、空間の広さを感じられ見通しの良さがあります。華やかに鳴りますが音がごちゃつかず整理された音は解像感が良好ですっきりと聴きやすい。

ボーカルは暖かく艶やかさがあり自然な位置からクリアに聴こえます。

一言で云えばやや中低音寄りのフラットに近いバランスです。

TWSではその性質からドンシャリ傾向が強い機種が多く販売されていますが、FW1000Tは普段有線イヤホンをその音質の良さから好んで使っている方にも納得いただける音と云えそうです。

FW1000Tの特徴として、やはり高中音域よりも低音域。所謂ドンシャリのドンが強いだけの音とは異なり広がりのある音は響きが良くドォ~ン~と鳴り、すぅ~っと小さく消えいる様を感じられます。これは同社の有線イヤホンFX1100よりも量感が控えめ。現行機種のFW1500と比べても少ないもののその傾向は同じと云えそうです。

一方、中音域は厚みがあって鮮やかさのある音。空間の広さが感じられ音の輪郭や強弱を掴みやすく解像感が良い音は演奏が映えます。

高音も十分な解像感がありますが中音域のそれとは違い僅かに控えめ。中音域よりもやや後ろに位置し、シンバルなどの音はシャァ~ン~と伸び、消え入る音の強弱も聴き分けることができます。

加えてFW1000Tの音場は同社の有線イヤホンと比べても遜色のない広さを感じ、立体的に感じられ他のTWSとは違うと云えます。

さて、音楽は低音域が上の音域を支えることで全体の風景を見渡すことができたり空間を想像しやすくしてくれます。それが高音域に曇りを感じたり中音域に籠りを感じる場合がありますが、FW1000Tでは低音域に厚みがあるのに高音域は見通し良く中音域もすっきりと鳴りますので、音楽的に非常に好ましい音と云えます。

尤もこれはaptX Adaptive接続でのお話。

iPhoneでも試しましたが、AAC接続とのコーデックの差でしょうか、少し平面的に聴こえ中高音の繊細さや低音の表現力は一段以上も下がります。それでも同じ曲を有線イヤホンとワイヤレスイヤホンで聴いたときに感じる音の薄さは抑えられています。これは例えば普段Apple Musicを(ハイレゾロスレスでは無く標準のロッシーでAirPodsシリーズを使って聴いていたお気に入りの音楽が、ただ単にFW1000Tに換えて聴いただけでも「こんな音鳴っていたの!?」という新たな世界への入口を見つけてしまうかもしれません。それ位FW1000Tのオーディオ機器としての再生能力、基本性能は高いです。

 

次に、今年発売されたSony(前半ぼかした意味は?)のLDAC接続に対応した最新TWSWF-1000XM4をLDACの音質優先で接続し比較した場合、全体的な音の濃さは遜色ありませんが、レンジの広さではWF-1000XM4に分がある印象。しかし、そもそもWF-1000XM4はSonyの音。基本ドンシャリの音であって、音楽を楽しく聴くという目的に沿った音です。それは音質の良し悪しではなく、メーカーの音づくりと理解した上で、個人的な好みを強いて言えばFW1000Tの方が音楽的に聴かせてくれる音だと思います。

とは云え、WF-1000XM4はFW1000Tよりも強い低音としっかりと鳴る高音は決して雑に鳴らす訳ではなく、音楽をノリ良く聴くことができ、心地良く楽しませてくれる音は分かりやすく高音質と云えますので、TWSとしてどちらが高音質なのかは結局の個人の嗜好に委ねる部分であり、どちらも高音質と云えると思います。

まとめると、FW1000Tは低音≧中音≧高音のフラットに近いバランス。Sony WF-1000XM4は低音≧高音≧中音のドンシャリバランスとそれらの音質傾向はやはり違うと云えます。加えて接続コーデックの差は従来のAACやaptXよりもaptX Adaptiveは高音質。とりわけ音の濃さの違いとして感じられ、LDACやaptX Adaptiveが24bitに対応しているアドバンテージは大きく、従来のTWSよりも高音質で聴く事ができます。

 

 

4. Victor HA-FW1000Tの総評 

Victor HA-FW1000Tはスマホで音楽を楽しんでいる、特にandroidスマホユーザーがもっと良い音で聴きたいというニーズに応えられる有力な候補となる商品とまとめました。

尤も音質に振った分、ガジェット性能としては一歩他社に譲る部分もありますが、TWSでも音質に妥協したくないユーザーにとって。そして同社旗艦モデルのFW10000ユーザーがサブで手軽に使いたいときにお勧めできます。

 

※レビュー記念にFW10000とFW1000Tのツーショット

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最後に、今回は高価格帯30,000円以上の高機能で実力派TWSイヤホンの紹介となりました。現在(2021年12月25日)は36,000円でイヤホン専門店等、有名家電量販店通販サイトなどでも販売しています。TWSでも音質に妥協したくない。音質の良いTWSの購入を考えていて少しでも気になった方は安心確実なイヤホン専門店での視聴を是非よろしくお願いします。聴いたら買ってしまうと思いますけど、ね(笑)。

 

FW1000T

以下、イヤピ付属 Mサイズandroidスマホ、aptX Adaptive音質優先
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (aptX Adaptive環境の無い方★4)

※☆0.51.0

 

国内S社(またぼかした!?)

以下、イヤピSedna Earfit short MSサイズandroidスマホ、LDAC音質優先
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★☆
分離★★★☆
お勧め度★★★★☆ (ガジェット性能重視の方★5)

※☆0.51.0

 

4.1. Xperia 5 II で FW1000Tを使ってみた

2022年の早々にandroidスマホSony Xperia 5 IIに買い換えました。

理由は「Snapdragon 865G」搭載スマホならaptX Adaptiveの24bit/96kHz対応している筈なので、それを試したかったからです。結論から云うと、そのままでは24bit/48kHz止まりで、24bit/96kHz対応していませんでした。

結局ダメかと諦めるのはまだ早いです。今年の春ごろにSonyXperia 1 IIIと5IIIの「Snapdragon 888」搭載モデルのアップデートによるaptX Adaptive24bit/96kHz対応を発表し、次は1 IIと5 IIか?と噂されていました。そして待つこと数か月。いよいよ5 IIもandroid 12へのアップデートが開始しました。初めにキャリア版から展開し私のシムフリー版は先日(2022/7/21:Ver 58.2.A.7.55)漸く降ってきましたので早速更新。

今回のandroid12の更新に併せてaptX Adaptiveの24bit/96kHzに対応しました。

 

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ワイヤレス再生品質設定で24bit/96kHzが選択できるようになりました。


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接続後に開発者オプションでも24bit/96kHzが選択できるようになりました。

これでやっとFW1000Tが本気を出せます。

24bit/96kHzと従来の24bit/48kHzの違いとしては高音域がより広がり結果として音場が更に広がり立体感が増した印象です。また高音域がよりしっかりと響き伸びやかに感じられ、24bit/48kHzで接続していた時にやや低音寄りに感じたバランスから中音域寄りの中低音域に重心が移り高く感じられ、それにより従来よりもバランスが良くなった印象です。もし従来のバランスの方が好みの方は単純に24bit/96kHzではなく、24bit/48kHzで接続すれば良いので、音の好みに合わせて対応できると云えます。

やはりFW1000TはaptX Adaptive 24bit/96kHzで本領発揮すると云え、TWSイヤホン側で24bit/96kHz対応しているのであれば、メーカーの表現したかった音を聴くためにもそれを使わない手はないと思います。

 

 

あとがき

今回はTWSのハイクラスモデルのレビューしてみました。いよいよTWSでも良い音が身近になってきていると思います。しかし音質も良くガジェット性能の高いTWSはやはり高価です。だからこそ各メーカーのハイクラスモデルが期待値が高く注目されるのだと思います。

今後も気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

そして、本年最後のレビュー記事となります。今年もみぃねこの戯言にお付き合いいただきありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。
みぃねこ

 

※4.1.項追加・・・Xperia 5 IIでaptX Adaptiveの24bit/96kHz対応を確認

 

KBEAR 4948 Lightning-3.5mmアダプタ レビュー ※iPhoneでAppleMusicを良い音で聴く

こんにちは。

今回は中華イヤホンレビュー編をお休みし、ドングルタイプのUSB-DACアンプケーブルアダプターという商品の第三弾をまとめたいと思います。

国内amazonのWTSUN Audio(@bairon98766334)で販売しています。

 

 

AliExpressではWooeasy Earphones Store(@hulang9078)で販売しています。

 

ja.aliexpress.com

 

 

 

 

1. KBEAR 4948とは 

1.1. KBEARとは

KBEARは中華オーディオメーカーとして新興ブランドとなりますが、以前レビューした低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホン、LRAK等同価格帯の雄KZとは違う堅実な音質傾向で我々低価格ポータブルオーディオファンを魅了しています。国内ではamazonマーケットプレイス扱いとなりますが、WTSUN Audio等で取り扱いがあり国内倉庫に在庫化、prime扱いで購入でき万が一の不具合にも対応できるなど補償も安心です。

ブランド名の由来は「KBEAR:Keep Believing your Ears」を略したもので、意訳すれば「あなたの感性を信じ続ける」というユーザーと共に成長する意思を汲み取れます。

これまでに発売した商品はそのブランド名に恥じない堅実な音質と高品質の商品は今後も迷ったらKBEARというオーディオブランドとして定着していくのではないでしょうか。

 

1.2. KBEAR 4948 Lightning-3.5mmアダプタで何ができるの?

KBEAR 4948 Lightning-3.5mmアダプタ(以下KBEAR4948)はこれまでに紹介したShanling UA2やikko Zerda ITM01と用途は同じく、スマホタブレットにイヤホンを直挿しして音楽を聴くときにその間に差し込むアダプターです。

それらとの一番の違いはiPhoneiPad Air2の様なLightning端子専用モデルということです。

そして、それを一体何に使うのかと云えば、iPhoneApple Musicやamazon music等の音楽配信サービス、サブスクリプションサービスで聴いている音楽をより高音質で楽しむことができます。

近年は音楽配信サービスの普及が進み、DAP(Digital Audio Player)に手持ちのCDから音楽ファイルを作成したりmora等から音楽ファイル購入したものをDAPに入れてポータブルオーディオを楽しむ方は私を含め少数派となりつつあります。そもそもCDや音源購入は好きなアーティストの曲に偏ってしまいます。もちろん私がDAPで楽しんでいることもあり、そういう楽しみ方を否定しませんが、巷で見かけた(聴いた)フレーズに興味を持ち、気になって聴きたいと思うことが結構あります。そんな時に便利なのが前述の音楽配信サブスクリプションサービスです。

その音楽配信サブスクリプションサービスは今年6月にApple Musicが「ロスレス」配信をスタートさせました。これには我々少数派のDAPユーザーもかなり反応し、僅か半年で今ではDAPApple Musicに対応しているのが当たり前の要求スペックとなっています。

一方、大多数のスマホ音楽配信サブスクリプションサービスを楽しんでいるユーザーからすれば「Apple Musicのロスレス配信って何?今まで通りで良いんだけど?」、「従来よりも料金が上がるのは嫌なんだけど?」という認識。それもその筈。多くの方々それを求めていないんですよね。そこにニーズは無いんです。でも実際には多くの方がApple Musicに興味を持ちました。それはこれまで音楽配信サブスクリプションサービスに対応してこなかった有名アーティストが解禁したからだと考えています。実際料金も据え置き、(ハイレゾロスレス設定をしなければ通信量も通信料も変わらない事が浸透した今、それを利用しないという選択はほぼないのかもしれません。

本題に戻せば今回はiPhoneで「Apple Musicをより良い音で楽しめる」だけと思われたかもしれません。いえ、それは違います。iPhoneも最新13でもイヤホンジャックがありません。付属のLightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタを使わなければ付属イヤホンすら使えません。若しくはAirPodsシリーズ等のワイヤレスイヤホンを別途購入するしかありませんし、そもそもiPhoneではワイヤレスイヤホンを使って(ハイレゾロスレスを聴くことができません。無線コーデックがAACの都合上、ロッシー(圧縮)相当です。そのため折角ロスレス配信に興味を持って、音が良いって本当?というニーズに応えるには付属のLightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ等を用いて有線イヤホンを使うしかありません。

つまり、KBEAR4948はiPhone音楽配信サブスクリプションサービス、Apple Musicを(ハイレゾロスレスの良い音で聴きたいというニーズに応える事ができる商品の一つとなります。

 

1.3. KBEAR4948の仕様

KBEAR 4948 Lightning-3.5mmアダプタの機能をメーカー多くを謳っておらず、製品ページ上でも以下の通りです。

 

  • ブランド:KBEAR
  • モデル:オーディオ変換アダプター
  • カラー:シルバー
  • タイプ:lightning to 3.5mm
  • DAC&アンプチップ:53a4
  • 内部材質:金メッキプラグ
  • 外部材質:アルミニウム合金
  • ケーブルの長さ:12 cm
  • クロストーク:<0.1 %
  • インピーダンス:6-100 Ω
  • 重さ:6 g
  • 互換性:Apple MFI認証

 

気になるDACとアンプに53a4というワンチップタイプを採用していることが明記されていますが、チップの詳細は良く分からず。

ケーブル部には線材を8芯とし、それぞれ4芯を単結晶銅線、4芯を純銀線の2種混合線材を編込みしたものを採用しています。

本体の素材にはアルミニウム合金を採用する等、細部にも拘りが見えます。

肝心のApple製品との互換性はMFI認証済み※という事もあり安心です。手持ちのiPhone8やSE2(何れもiOS14.8)では問題なく使用できました。

仕様上はApple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタと同等の性能を持っていると云えそうです。

 

iOS搭載ハードのすべてを保証するものではなく最近のiOS搭載iPhone及び、将来のiOSアップデートに対応となります

 

仕様を簡単に説明するとDACチップの仕様に依存するビット深度と再生周波数はApple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンアダプタと同様に24bit/48kHzまでの再生に対応しています。DACチップの仕様が不明なので確定的なことは云えませんが、amazon musicの端末の性能をチェックした結果から推定しています。

以下は実際の確認方法です。amazon musicはVer10.11.1です。

始めにCD音質(ロスレス)の音源で確認します。

 

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amazon musicで聴きたい音楽を選択した際に曲名の上に黄色い文字で「HD」や「ULTRA HD」と表示がありますので、そこをタップすると現在の音質が分かります。


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画面に表示される項目の一番上に「HD音質」とあります。amazon musicで云うところの「CD音質」です。Apple Musicでは「ロスレス」に該当します。これが「ULTRA HD音質」表示であればamazon musicApple Musicで云う所謂「ハイレゾロスレス)」です。

 

 楽曲の最大音質・・・ここが24bit/48kHz以上であればハイレゾ音源

 端末の性能・・・ここが当該端末の再生可能なファイルの音質の最大値

 再生中の音質・・・ここが実際に再生できている音質

 Codec・・・ここが音楽ファイルの種類


「端末の性能」が、24bit/48kHzなので、Apple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタと同性能と云えます。例えば楽曲の最大音質がハイレゾ音楽データ24bit/48kHzであれば端末の性能の数値と再生中の音質の数値が同じであれば、「ちゃんと」ハイレゾ音質で聴くことができています。

なお、そもそも先述の「ULTRA HD」表示ではない、「HD」表示される配信楽曲はCD音質(16bit/44.1kHz)となりますので、誤解の無いようにお願いします。

次にハイレゾ(ULTRA HD)音源で確認します。


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「ULTRA HD音質」表示され、3項目全てが「24bit/48kHz」表示です。つまりちゃんと音源通りにハイレゾとして再生できています。

次にサンプリングレートの高いハイレゾ音源を確認します。

 

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先のハイレゾ音源とは異なり「楽曲の最大音質」が24bit/192kHZであるにも関わらず、端末の性能と再生中の音質が24bit/48kHzです。つまり24bit/96kHzの音源を24bit/48kHzにダウンコンバートして再生しています。

 

以上の様にKBEAR4948では現在主流の音楽ファイルの殆どをそのまま再生が可能であり、iTunesで購入したiPhone等で再生可能なAAC-LC(圧縮した320kbps、16bit/44.1kHz)形式や、mora等で購入したAAC-LC形式、ロスレスFLACやALACの16bit/44.1kHz)やFLAC形式のハイレゾ音楽ファイル(24bit/48kHz迄。それを超える場合は24bit/48kHZにダウンコンバート)再生にも対応していますので、今ある音楽ファイル財産も十分に活用可能です。

残念ながらMQAの音楽ファイル再生には対応していませんが、MQAファイルを所有している方はDAPをお持ちでしょうから今回のケースでは除外とします。

尤も、iPhone等のiOSモバイル機器単体で手持ちのハイレゾファイルを再生したい場合は標準再生アプリApple Musicでは非対応(2021/10/22)でAAC-LCまでに留まります。もしもハイレゾ音楽ファイル(24bit/48kHz迄。それを超える場合は24bit/48kHzにダウンコンバート)を再生したい場合には別途NePLAYER等の音楽再生アプリを使い、KBEAR4948を接続することで対応可能になりますのでご注意ください。

 

 

2. KBEAR4948の実機レビュー

それでは実機レビューをしていきます。

 

2.1. KBEAR4948の実機&パッケージ

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よくある中華ケーブルのパッケージの中に缶ケースで保護されています。中華メーカーの安物感を感じますが、そもそも安価ですので。

 

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蓋を開けると黒地の内装に本体がしっかりと固定されていて輸送中の傷や破損を防ぐ配慮を感じられます。

他に付属品などはありません。

次に本体を見ていきます。

 

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入力側ケーブルはLightning端子を採用。反対側は3.5mmステレオミニジャックです。

 

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Apple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタとの比較ではApple純正は最小限の長さですが、KBEAR4948は両端子含め120mm程度とよくあるドングルタイプDACアンプケーブルアダプタ同様です。

 

※Lightning端子を採用。

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※出力側は3.5mmステレオミニジャックのフォンアウトのみ。
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KBEAR4948本体の材質はアルミニウム合金を採用し、手触りも良くクオリティの高さを感じます。

 

2.2. KBEAR4948とiPhone SE2の接続

それではiPhone SE2と接続してみます。iPhoneは未だにLightning端子です。iPadはAir4(第四世代)はUSB C端子に変わりProシリーズと同様になりました。早く統一してもらいたいものです。

 

始めにKBEAR4948本体のLightning端子をiPhone SE2のLightning端子に接続します。

次にイヤホンを接続します。今回は前回レビューしたikko Opal OH2を使用します。OH2は通常の3.5mmステレオミニプラグですので、KBEAR4948の3.5mmステレオミニジャックに接続してください。

 

※気になる方は以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

接続自体は難しいことは無く、順番を守っていれば問題なく認識されます。こういうときのストレスフリーというのは良いことです。amazon等で数多ある同様の商品ではそもそも認識しない。認識するけどコツが有る。そのコツを見つけるのに試行錯誤が必要等があったりしますので、KBEAR4948はその点は安心して購入できる商品と云えます。

 

2.2.1 Apple Musicの設定

先ずはApple Musicをロスレスで聴くためのiOSの設定をiPhoneを使って説明します。iPadとはメニューの開き方が違いますが、設定項目は同じなので迷うことはないと思います。 

以下、WiFi接続を前提とした説明となります。

 

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「設定」から「ミュージック」アプリを選択し開きます。

 

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 「オーディオ」項目の「オーディオの品質」を選択し開きます。

 

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ロスレスオーディオ」を「ON」にすると「WiFiストリーミング」と「ダウンロード」項目が追加表示されます。

追加された「WiFiストリーミング」を選択し開きます。

 

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「高音質」、「ロスレス」、「ハイレゾロスレス」の内、もちろん「ハイレゾロスレス」を選択しチェック(レ)を入れます。その後、前の画面に戻ります。

 

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WiFiストリーミング」項目が「ハイレゾロスレス」に変わりました。

 

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最後に同じ「オーディオ」項目の「音量の自動調整」をONにします。これをしないとiPhone側の音量がかなり大きくなりますので、ご注意ください。

 

以上で設定完了です。

 

次に、iPhone SE2のApple Musicアプリ(iOS14.8)を起動します。

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聴きたい音楽を選択し再生します。


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前述の「音量の自動調整」をONにしても普段聞く音量にするにはiPhoneは最小音量まで下げています。

 

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Apple Musicの場合の音質の確認方法は画面中央やや下に「ロスレス」表記がありますので、それをタップします。

 

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画面中央にポップアップが表示され、再生中の音質が確認できます。

ロスレス 16ビット/44.1kHz ALAC と表示されています。

次にハイレゾロスレス音源を確認します。

 

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画面中央やや下に「ハイレゾロスレス」表記がありますので、それをタップします。

 

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画面中央にポップアップが表示され、再生中の音質が確認できます。

ハイレゾロスレス 24ビット/96kHz ALAC と表示されています。こちらは所謂ハイレゾですね。

ただし、実際にはKBEAR4948の性能24bit/48kHzに制限され、24bit/48kHzにダウンコンバート再生していますので、誤解の無いようにお願いします。

 

因みにApple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタとの一番の違いは、「音量の大きさ」です。

 

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Apple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタの音量

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KBEAR4948とApple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタを同じ音量で聴こうとすると3段階程度の違いがあります。

 

KBEAR4948を使ってiPhone SE2でApple Musicをロスレスハイレゾ)で楽しむことができることを確認できました。

しかし、気になる点も。

Apple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタと音源を再生する性能は事実上、違いはないものの恐らくKBEAR4948の方がインピーダンスの高いイヤホンやポータブル用途のヘッドホンにも対応できるところが優位点と考えられます。

それは実際にiPhone本体側の音量設定値の差に表れていて、KBEARが幅広く対応できると云えます。

一方でiPhone付属イヤホンでは音量が高すぎると感じるのも事実です。使用するイヤホンに拘りがある方への製品であることは間違いありませんし、従来のロッシー音源よりは良い音で聴きたいというニーズに合致する商品であり、それとは違いを感じられると思います。

 

それでは次項ではいよいよKBEAR4948の音質を確認してみます。

 

 

3. KBEAR4948の音質レビュー

前項までにKBEAR4948とiPhone SE2との接続テストを行いました。

ここからは実際にKBEAR4948を使って音質がどのように変化するのかを試してみたいと思います。今回はiPhone SE2で試してみます。

先述の接続テスト通りApple Musicで聴いてみます。比較対象はApple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ。イヤホンはikko Opal OH2です。

KBEAR4948を経由し、聴いた印象は、中高音が華やかに鳴り、低音もしっかり鳴っています。OH2の爽やかな音色を十分堪能できます。一方で、音場はやや狭く感じられ、立体感は控えめ。中高音域がごちゃつきを感じられます。これについてはOH2のレビューはDAPで行っておりますので比較対象としてKBEAR4948に分の悪さを感じます。

次に、Apple純正Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ(以下Apple純正アダプタ)ではほぼ同様の鳴り方に感じますが、KBEAR4948の方がやや中高音がクリアで見通しの良さを感じます。Apple純正アダプタの方が更に中高音域がごちゃつき、重なりを感じる平面的な音の印象です。Apple純正アダプタとKBEAR4948の音質の一番の違いはApple純正アダプタよりも中高音域がエッジの聴いた音に聴こえ、Apple純正アダプタの方がややまるく柔らかい音の印象です。

加えて、前述した通り音量がApple純正アダプタの方がKBEAR4948よりも聴覚上同じ音量に調整した場合に3段階は上げられます。これは逆に云えば3段階は下げられる調整幅があるといえますので、耳に優しいと云えます。

また、使用したイヤホンのOH2は解像感の高いと中高音フォーカスのフラットよりの音質傾向ですが、Apple純正アダプタやKBEAR4948を通して聴いた場合にはリスニングサウンドとなりイヤホンの本来の良さは十分に引き出せていない印象です。

尤も、普段そこそこのDAPを使っているのでもちろんそれには及ばないものの、Apple純正アダプタよりも高音質と云えると思いますが、その違いは誰にでも感じられるほど大きくはなく、じっくりと聴き比べて僅かに感じる程度と付け加えておきます。

 

 

4. KBEAR4948の総評

KBEAR4948はドングルタイプのポータブルUSB-DACアンプであり、Apple純正アダプタと同等のスペックながら良い音を探求する方に低価格商品の中でも面白い存在と云えそうです。そしてiPhoneでも良い音で音楽配信サブスクリプションサービスで活用でき、それを手軽に楽しめことができるとまとめました。

最後に、今回はApple純正アダプタとの比較を中心にまとめてみました。正直Apple純正アダプタとの価格差からは値段なりの変化に留まりますが、付属Apple純正アダプタとが断線する等の際に、純正を買いなおすならば何か別なものをというニーズにお勧めします。

現在(2021年12月11日)は国内amazonやAliExpressでも販売されており、1,000円台半ばで購入可能です。安価な実売価格でありながら、その機能を含めクオリティはコストバリューに見合った内容となっておりますので、ドングルタイプのDACアンプを検討している方はじっくりと検討していただけますようお願いします。また、購入の際は保証の面からも安心確実な国内amazonで検討してみてくださいね。

 

 

あとがき  

あとがきとして、今回は中華製のドングルタイプUSB-DACアンプをiPhoneでサブスクに利用できるのか。それをどの様に使うのかを第三弾としてまとめてみました。これを読んでくださる方が何故このサイトにたどり着いたのか?を重視してまとめています。この記事は自己満足の域を出るものではありませんが、皆さんに少しでも参考になれば幸いです。

一方、日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみです。今後も低価格?を中心に、複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンや、中華DAC及びヘッドホンアンプにも挑戦していきたいと考えていて、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

ikko Opal OH2レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格U10000帯で発売された1DDモデルのikko Opal OH2についてレビューをまとめたいと思います。

AliExpressのikko Official Store(@ikko_Audio)等で取扱があります。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでは未だ取扱がありませんが、ikko Official Storeとikko Audioの国内代理店IC-CONNECT(@icconnect_news)及び、eイヤホンの扱いで12月24日以降の販売開始(2021/12/24現在)しました。の取り扱いに期待ですね。※2021/12/24修正

 

 

国内のイヤホン&ヘッドホン専門店であるeイヤホンでも取扱を開始しています。※2021/12/22追記

 

www.e-earphone.jp

 

 

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1. ikko Opal OH2について 

ikko Opal OH2は10,000円以下の中価格帯中華イヤホンの1DDモデルとして海外で今年夏頃に発売開始しています。国内では未発売ですが、手に取りやすい価格はikko Audioの音の良さを広めるためにも国内代理店様には何れ取扱いして欲しい商品だと個人的に願っています。国内でもeイヤホンや国内amazonでもいよいよ取扱が開始しました。※2021/12/22修正

ikko Audoといえば以前同社のGems OH1Sをレビューしましたが、今一番気に入っているイヤホンで、同社純正オプションのARC CTU-01にリケーブルし4.4mmバランス接続で愛用しています。

以前のレビューでも紹介しましたが、ikko Audioは中華ポータブルオーディオメーカーのなかでも「新しいコンセプト」、「革新的な構成」を実現するという製品コンセプトの下、魅力的な製品を発信している比較的新しいブランドです。

同社の代表作としてイヤホンではGems OH1S(以降OH1S)やOH10 Obsidian(以降OH10)等を。ポータブルDACアンプでは以前レビューしたドングルタイプのZerda ITM01等を手掛け、手に取りやすい価格ながらも良い音を楽しめる商品展開は音質が価格に相関するものの高価になればなるほど正比例とは言えない曲線を描くオーディオ系商品に一石を投じており、本当の意味でコストパフォーマンスの高い商品をユーザーに届けてくれるブランドと云えそうです。

 

ikko Opal OH2(以降OH2)は1DD、シングルダイナミックドライバモデルで販売価格がU10000帯、約9,000円です。上位のOH1SやOH10は1BA+1DDハイブリッドモデルとなりますが、価格が2倍弱のA20000帯です。中華イヤホンでは音質も妥協の無いボリュームゾーンと云え、中華イヤホンの低価格とは一味違ってきます。個人的に低価格帯U5000の1BA+1DDハイブリッドモデルを好んで購入し本ブログでレビューしておりますが、音の創り込みという意味では低価格帯とはやはり格の違いを感じます。

以前、レビューした同社OH1Sが伸びやかで澄んだ高音域は音数の多い楽曲でも破綻することなく、広さを感じる中音域は響きが良くなめらか。締まりの良いタイトな低音域はリズミカルに高音中音域を支え、解像感の高い音を耳に届けてくれる清々しいサウンド。同社OH10はOH1Sとは異なり中低音寄りにフォーカスしたモデルという印象で、個人的に好きな音で深く味わいのある低音に加え、ボーカルの艶やかさは本気で購入を検討したモデルでしたが、低価格帯との比較用にOH1Sが最適と考えた結果です。

そして今回OH2を入手しましたが低価格帯1DDモデルとの比較用というのは言うまでもありません。OH2は海外で発売から半年近く経ちましたが、その評判がOH1S同様に中高音フォーカス、弱ドンシャリからフラットというもの。個人的な好みの音がするという期待は一聴して確信に変わりました。勿論ドンシャリはそれはそれで良さがありますので、優劣ではなく嗜好の話であり、低価格帯1DDモデルが熱かった今年のトレンドモデルは来年も続くことを予想し、本命を入手するに相成りました。だって1,000円との比較に20,000円は流石に…ねぇ。

 

ikko Opal OH2のスペックですが先述の通り個人的に収集している低価格帯の中華イヤホン1BA+1DDハイブリッドモデルの他に、同1DDシングルダイナミックモデルがあります。1DDモデルでは1BA+1DDハイブリッドモデルの様に高音域用のバランスドアーマチュアドライバ(BA)を搭載していません。1基のダイナミックドライバ(DD)が高音、中音、低音の全ての音域を担いますのでドライバの性能が肝となります。勿論OH2に採用されたドライバは低価格帯とは違いドライバの質が高く、カーボンナノダイヤフラムドライバを採用。価格帯に見合う高品質ドライバーを採用しています。

イヤホン本体にはシェル本体に透過度の高いポリカーボネート樹脂とアルミニウム合金の金属を採用。ステムノズルはシェル一体型のため同じ金属製です。中価格帯に多くあるオール金属製ではなく金属と樹脂という二つの素材を組み合わせたハイブリッドシェル構造を採用しています。これはikkoの特許技術SVAS( Separating Vector Acoustics System )に準拠しており、上位機種のOH1Sでは正式にSVASとして採用しています。

余談ですがマツダプレマシー最終型はSKYACTIVシャーシと同等のシャーシ性能がありながらも公式にSKYACTIVシャーシ採用と謳われなかった事と同じでその技術の試金石だったのではと推察しますが、或いは単純に差別化、またはコストとの兼ね合いなのかもしれません。

実際マツダでは鼓動デザイン採用モデル以降をSKYACTIV技術と呼んでおり、従来製品との差別化を計っています。マーケティングとしては重要なことなのは理解していますが、このあたりの経営と販売部門の思惑と、開発と技術部門の拘りはどんな業界でもありますし、中々一枚岩にはならないですねぇ。技術者目線で言わせてもらえば折角生み出した技術を使っているのだからアピールするのは必然だと思いますので。だって苦労して生み出した技術を世に知らしめたいのは人間の性というものです。

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閑話休題

SVASとは何か?

以前のOH1Sレビュー時にも触れましたが、簡単に説明すると、シェル本体の金属の間に樹脂を挟み込み、金属と樹脂の異なる素材によって音響を調整する技術です。これの何が凄いのかと云えば、例えばよくあるオール金属シェルでは高音域の響きは良いもののやや整理、統制されずに勝手に鳴り響き不自然に感じる場合があります。それらを含めてチューニングしている訳ですが、中価格帯ではコストの制約もありますので、簡単なことではありません。OH1Sでは高音域の響きに不自然さを感じない音にしっかり統制されていましたし、OH2でもそれを感じられます。

そして大事なことですが、これまでレビューした低価格中華1BA+1DDイヤホンでは各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングに不自然さを感じたり、高音域BAを強く鳴らし、低音域DDの強さでドンシャリ傾向として誤魔化しているものも多いのですが、OH2はシングルダイナミックドライバによりフルレンジで鳴らし小細工が利かないが故にikko Audioのチューニング技術の高さを感じさせます。

次に付属ケーブルです。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としているところもありますが、ikko Audioはそんな妥協を許しません。

OH1Sでも採用された付属ケーブルは同社CTU-01をベースに開発した、1芯あたり0.127mmの細線を7本使用し4芯線化。その線材には銀メッキ単結晶銅を採用し同社のOH1やOH10付属のケーブルよりも解像感を向上させ見通しの良いサウンドに仕上げています。

加えて、実機レビューで後述しますが、付属イヤーピースもOH1Sと同様にステムノズルの楕円形に対応した同社オリジナル形状のシリコンイヤーピースとすることで、装着感と音質を両立させています。

 

さて、OH2の評判は良く、否応なしに期待感は高くなりますが、このOH2やOH1Sは同社の中でも所謂第二世代と云えそうです。その第二世代に投入されたikko Audioのコンセプトに違わぬ独自の技術や部品選定はその音質にもしっかりと拘りを魅せてくれる、ユーザー満足度の高い製品なのかもしれませんね。

 

※宜しければGems OH1Sのレビューもご参考ください

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スマホで使うドングルタイプUSB-DACアンプ、ITM01もご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

ikko Opal OH2の納期として今回AliExpressで購入し中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのようにはいきません。今回もオーダーから2週間強で届きました。昨今、感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきませんが、それも徐々に回復傾向であり最近はシンガポール経由ではなく台湾経由等で動き始めていますので、物流の安定化までもう少しというところですね。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. ikko Opal OH2実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングはikkoオリジナルの化粧箱です。白を基調とした大き目の箱はスリーブタイプの化粧箱となっており表にポップなガールのイラストがプリントされています。裏にはスペックが記載され、OH1Sとは対照的なパッケージの装いです。

 

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そしてOH2のパッケージには更なる遊び心があります。

化粧箱表面のガールがマグネットシートになっていて取り外すことができ、ペーパーホルダとして活用できますね。

 

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外側のスリーブを外すとポップさが前面に出てきます。

上箱を開けると、いよいよイヤホンの登場です。

 

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収納箱はシンプルな白箱です。白地の内装の台座にイヤホンが収納され、台座を取り外すと箱の底に付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が計2セット。フォームタイプのS、M、Lが1セット。他にはケーブルとケーブルとイヤホン本体分離器(mmcxコネクタリムーバー)、予備ノズルフィルタ、イヤホンケース、ピンです。U10,000のAliExpressでは9,000円前後で販売している中価格帯として必要十分の豪華な付属品となります。

 

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イヤホンケース内に某社のMMCX ASSISTと同様のケーブルとイヤホン本体を分離する器具(リムーバー)とノズルフィルタの予備が収納されています。

 

※先端のU字ピンはフィルタ清掃用でしょうか?

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※予備?フィルタも紛失時に役立ちます
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※同社のロゴをあしらったピンも付属。

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それでは本体を見ていきます。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホンの中価格帯U10000でもikkoには妥協の文字はありません。非常に綺麗に仕上がっていて金属と樹脂の合わせ面も綺麗に揃っています。そしてOH1S同様にステムノズル先端が楕円形となっています。

カラーバリエーションは白色と緑色と紫色と灰色と茶色の全五色があり、その色彩は明るめのポップな色合いとなっています。そのため今回はポップと云えばパープルという事で紫色を選択しています。

 

※ケーブルは小箱に収納されています

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※上位のOH1Sと同じ付属ケーブル

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付属ケーブルは先述の通りOH1Sと同じ茶色と黒色の撚線、4芯銀メッキ単結晶銅線タイプが採用されています。プレイヤー側コネクタはI字タイプでikkoロゴ付、イヤホン側はmmcx仕様です。この付属ケーブルは被膜に引っ掛かりが無く、タッチノイズも殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にややコシが有りますが、十分にしなやかなものとなり品質の高さ、ikko Audioのこだわりを感じられます。そのため最適化されたケーブルはそのまま使用できますしバランス接続を試したい方以外、無理にリケーブルはする必要がないと思います。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からikko Gems OH1S、ikko Opal OH2 

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OH2とOH1Sの外観の比較として、サイズ感はほぼ同じで小ぶり。厚みはOH1Sの方があります。造形もほぼ同じですが、樹脂の形とステムノズルまでのラインが異なります。とはいえオーソドックス造形は耳への収まりが良く装着感が良好です。

OH2とOH1Sはmmcxタイプのコネクタが採用されています。

シェルの材質は、先述の通り樹脂と金属の複合。金属と金属の間に樹脂を挟み込んでいますが、一見すると金属製に見えます。その位違和感なく組み合わされています。

重量はほぼ同じです。同価格帯他社製と比較しても軽量で、耳への装着時にはその装着感の良さから殆ど重さを感じないレベルです。耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくOH2もOH1Sもやや細目と云えますが、先述の通り楕円形。角度もほぼ同じでやや寝ています。

また、ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり異物混入による故障を防ぐことができますし、清掃には付属のピンが最適ですね。

シェル本体の形状からはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りOH2はOH1S同様にステムノズルが比較的細めですが、楕円形となります。実際の装着感にはほとんど影響が無く、寧ろikkoオリジナルシリコンイヤーピースの形状が装着感に影響があり、通常の丸型で弾丸形状の傘とは異なる故に最初こそ違和感がありますが、慣れると装着感も軽く耳穴への圧迫感も少ないです。一方社外品のイヤーピースは使用し難いですが、できない訳ではありません。とはいえ付属のシリコンタイプでフィットする事ができればこれほど装着感が良く感じられますし音質的にも必要十分だと思います。そのため付属シリコンイヤピで上手くフィットできなければ苦戦するかもしれません。

 

※楕円且つ、傘が裾広がりのシリコンタイプ

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※フォームタイプ。同社i-Planetイヤーピースです。f:id:miineco106:20211204170224j:image
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※サイズによって軸の色が変わります
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付属のシリコンイヤーピースはikko Audioオリジナルの楕円径タイプ。傘の裾野が広がるタイプで、通常の丸径、傘の裾野が弾丸のようなものとは異なります。OH1Sのレビュー時にも触れましたが、個人的に通常のタイプとの互換性がある一般的なものの方が選択肢が増えますし良いと思うのです。しかし、実際にはよく考えられた形状であることを使ってみて感じました。兎に角装着感が楽なんです。

音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプに感じますが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

一方フォームタイプも付属。同社のi-Planetイヤーピースです。傘の高さが低めでシリコンタイプで上手くいかないときにフィット感を改善してくれます。

幸いシリコンイヤーピース Mサイズで私は上手く合わせられ、耳の奥やや浅めに蓋をするように装着しフィットしています。

低、中価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じますが、今回は同じ付属のシリコンイヤピで十分と感じられそれを使用しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. ikko Opal OH2音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り、Sony NW-ZX507を基準としてレビューを行います。

ZX507については他の方のサイトでも詳しく解説していますので、SONYのまあまあの価格帯のサブスク対応android機です。従来のShanling Q1は3.5アンバランス接続のみですが、ZX507は4.4バランス接続にも対応しています。DACには独自開発のS-Master、フルデジタルアンプが採用されています。

Shanling Q1とZX507の音質の違いは音場がやや平面的に感じられるQ1に対し、ZX507は奥行きのある立体的な印象。具体的にはボーカルの位置に対し、高音や中音の演奏音がその周りやや離れた後ろ側に位置し自然な位置関係に感じられます。

次に、音質傾向ですが、音楽を正確に淡々と鳴らそうとするQ1に対し、ZX507は高音域と低音域をしっかりと鳴らすやや派手な音ながらも、ボーカルを邪魔せずにそれを引き立てています。所謂ドンシャリ傾向と云えますが、過剰なほどではなくて若干の演出という感じ。そして中音はボーカルに対し相対的に控えめに感じられますが、その分ボーカルはクリアです。特徴としては低音に厚みがありますので音楽を雰囲気良く聴くことができるSONYの音といえます。

個人的には音楽を楽しく聴くという本来の目的を達成するために必要十分なDAPと考えており、今年6月からは音楽配信サービス、Apple Musicがロスレス対応しましたが、android搭載DAPとして勿論対応(※1※2)しています。そして、何よりもBluetooth接続は安定していますので、強いて云えば電池持ちが悪い位しか不満はないです。

※1:2021/07/19現在 android版Ver3.6.0ベータ版(1115)で動作確認

※2:2021/07/22現在 android版Ver3.6.0正式版(1118)が配信開始

 

 

 

低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。

 
miineco106.hatenadiary.jp

 

※FiiO M5とShanling M0の比較もよろしければご参考ください。 

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「高音も低音も不自然に強調されていない、フラット寄りのリスニングサウンド。」です。

箱出しではやや低音に膨らみを感じましたが、鳴らし込み後は締まり解像感の高さを感じます。

音場はやや広め。前後左右の空間の広さを適度に感じられます。

高音は煌びやかで響きの良さを感じます。上の上までの伸びやかさはそこまで感じませが、適度な華やかさを感じられ存在感は十分。なめらかさがあり尖りは感じません。

低音は量感こそ控えめですが、芯が感じられ締りとキレは良好。ベースラインは追いやすい。重低音は沈み込みは深さをそれ程感じませんが、芯の強さがあります。

中音は高音同様に響きが良く華やかさがありますが、団子感やゴチャつきを感じません。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれクリアで聴きやすく、ドライ気味ですが瑞々しさを感じます。

一言で云えば中高音寄りのフラット寄り弱ドンシャリ

高音は煌びやかさは適度で響きのある華やかさは前に出るような主張もなく、自然な感じ。超高音まで鳴らすレンジの広さはありませんが、伸びも自然でなめらかな印象です。不快に感じる尖りとは無縁で、小さな音でも「ス~っ」と耳に届き埋もれることは無くボーカルを邪魔しない爽やかな音。これは低価格帯1DDモデルでよくある最初だけ聴こえて「スッ」と鳴る高音域とは違います。低価格帯では挙句、前に出るようにシャンシャン鳴らす傾向とは違い演出感はありません。全体のバランスを崩さない適度な音は1DDとして質の高い高音を届けてくれます。

中音は凹みを殆ど感じず、楽器の音はボーカルの周りやや後ろ辺りに位置し華やかに鳴りますが、その音は統制され見通し良く鳴ります。ボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすく、高音や低音に埋もれません。

ボーカルは僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ不自然さは無く、瑞々しさを感じられます。その分しっとりとした艶のある声を楽しみたい場合には相性というか分の悪さを感じるかもしれません。

低音は量感は控えめに抑えられています。そのため広がりや響きはそれ程感じません。響きというよりも芯のある締りの良い音はキレの良さと相まって小気味良さを感じます。音の強さ、音の強弱や音階の掴みやすさを重視し、解像感の高い音を感じられ、雰囲気の良さとは対極かもしれません。尤も中高音寄りのフラット寄りのイヤホンとしては適度な低音と云えるのかもしれません。そのため、普段低価格帯のイヤホンのドンシャリに慣れた方は高音も含め物足りないと感じると思います。

重低音は沈み込みはそれほど深さを感じませんが、芯のある強さを感じ小気味良さがあります。低音域は高音中音をリズミカルに下支えし高音中音の煌びやかで響きの良い音をマスクすることなく感じられると思います。


これは同社のOH1Sの音色に近くOH10とは傾向が異なると感じています。

OH1Sをフラットとすれば、OH2もフラットと云えます。OH1やOH10ではドンシャリ傾向が強く、特にOH10ではその低音域の豊かさ、OH1では高音域の煌めきが評価されていましたが、OH10のボーカルも中低音寄りの傾向から艶を感じられ、ボーカルホンとしてもファンの心を掴んでいます。そういう意味ではOH2はOH1Sと同様にフラット寄りなもののBAのないフルレンジ対応という事もありそれよりも高音域は控えめ、音場もやや狭めな印象です。とは云えやはりOH1Sの流れを汲む音色と云えます。OH2とOH1Sはikko Audioの第二世代ということを明確にし、第一世代との差別化を計ったモデルと云えます。

 

まとめるとikko Opal OH2は中高音重視の爽やかなリスニングサウンドは高音と低音は控えめとしながらもその解像感は高く、全音域をフラットな音とすることで音楽を分析的に聴くことも可能で誠実な音を鳴らしてくれるイヤホンとなります。尤も、高音中音は華やかで見通しが良く、低音の芯のある音はモニターライクでありながらも、リスニングで心地良く音楽を楽しめると云えそうです。

一方でリスニング用途としての聴いていて楽しいドンシャリバランスとは言い難く高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方には、もの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   OH1S ≧ OH10 ≧ OH2 

中音   OH1S ≧ OH2 ≧ OH10

低音   OH10 ≧ OH1S ≧ OH2

ボーカル OH10 ≧ OH1S ≧ OH2

※価格帯が異なりますので音圧バランスの参考程度に

 

 

4. ikko Opal OH2の総評

ikko Opal OH2はikko Audioの第二世代のサウンドに仕上げられた質の高い音を聴かせてくれるモデルと云えます。

響きの良い澄んだ高音域は音数の多い楽曲でも破綻することなく、中音域は響きが良くなめらか。締まりの良いタイトな低音域はリズミカルに高音中音域を支え、解像感の高い音を耳に届けてくれる爽やかなサウンドはモニターライクな音を好まれる方にも納得いただける音質にまとめられていると思います。

このOH2の音はOH1Sとの音の傾向を同じとしikko Audioの音づくりの拘りを感じさせ、ブランドコンセプトを徹底したモノづくりに好感を持ちます。もちろんOH1SとOH2では価格帯に違いもあり、上位がOH1Sであることに間違いは無くその差もはっきりと感じられます。しかしOH2では何と言ってもその価格でその音を聴くことができることが魅力となります。

そして最早比べる事が失礼かもしれませんが、低価格帯1DDモデルとはそのサウンドの質が異なり、上質で爽やかな音はikko Audioの音の魅力の一つと云えます。

そういう意味では中華イヤホンは中々試聴をする機会がありません。国内代理店がある商品はeイヤホン等で視聴できる場合がありますので機会があれば是非試聴をしていただきこの驚きを共有していただければ幸いです。

 

最後に、今回は国内では未だ取り扱いの無い中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2021年12月4日)はAliExpressで発売されておりますが、その入手性には現在も難があります。そして、国内でも12月24日からいよいよ販売開始となり真にクリスマスプレゼントにぴったり!?(2021/12/22)。実際、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。※2021/12/22修正

 

OH2

以下、付属ケーブル、付属シリコンイヤピ M使用、DAP ZX507
高音★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

OH1S

以下、付属ケーブル、付属シリコンイヤピ M使用、DAP ZX507
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格U10K中華1DDイヤホンの商品のレビューとなります。低価格1DDとは格の違いを見せつけられましたし日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

※2021/12/22追加&修正・・・国内での取り扱い開始

※2021/12/24修正・・・リンク修正

 

 

CCA CA16 Proレビュー ※KZ ZAS CCA CA16 比較含む

こんにちは。

今回は中華イヤホンの中から多ドラハイブリッドモデルのレビュー編として中価格帯で発売されたCCA CA16 Proについてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのSA Audio Storeから購入しています。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも本国発送ですが取扱があります。

 

 

 

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1. CCA CA16 Proについて 

CCA CA16 Proは中華イヤホンの中価格帯で今年10月に発売された片側8ドライバ、7BA+1DD構成の多ドラハイブリッドモデルの新商品です。中価格帯U10Kの多ドラハイブリッドモデルとしては前回Trn VX Proの片側9ドライバ、8BA+1DD構成が最上位のモデルとなりますが、KZを中心とする同価格帯中華イヤホンの競争はTrnがスペックでは一歩リード。今後KZ系の巻き返しに期待しているところです。

CCAは中華イヤホンの低、中価格帯の雄であり市場を牽引するメーカー、KZの兄弟ブランドと云えるメーカーです。KZを兄としたときにCCAは弟と云えそうですが、実は少し趣が異なります。KZは云わずと知れた元気で明快なドンシャリサウンドが代名詞であり、特に低価格帯の1BA+1DDハイブリッドモデルでは同価格帯のシングルダイナミックモデルよりも音域の幅が広く、高音と低音を強めに聴かせてくれます。一方CCAではKZよりも大人のサウンドで、高音と低音をやや抑え中音を明朗に聴かせてくれ、兄弟というよりも従兄弟の方が腑に落ちます。兄弟ってやっぱり似ているもので、どちらかの親が兄弟という血の繋がりのある従兄弟の方が似て非なるものと個人的に考えてしまいます。もちろんCCAとKZの全ての商品がそういう分け方ではなく、CCAでもC12やC10 Pro等は寧ろKZ寄りの傾向だったモデルですし、KZでもZASのようなモデルも存在します。そういうイメージというか、先入観はCCAの最初期に登場したC10がCCAのブランドとしてのイメージを植え付けているのかもしれません。本当にCCA C10は当時KZ ZS10とは違う当時洗練した音を聴かせてくれたものでした。今でも手放さずに所有しているのはあの頃の感動や衝撃を忘れないようにする想い出の逸品です。

 

CCAの音としては前述の通り、高音に主張させすぎずやや抑えながら中低音を重視した弱ドンシャリサウンドです。特に中音域を凹ませずに鳴らすことで全音域のバランスが良い音質が特徴と云えます。

これが今回7BA+1DDの多ドラハイブリッドと前作のCA16とドライバ構成は同じですが中身の違うCA16 Proが登場。先に登場したKZ ZASと同じドライバ構成を踏襲し、それこそ兄弟機だよね?と以前のKZ ZSX、CCA C12でもありましたが、聴き比べれば音場の広さの違いを感じる結果もあり、勝手な想像では前作CA16とは全然違う、そしてKZ ZASとも違うのではないか?という期待感がこのCA16 Proにはあります。

前作のCA16が中低音を豊かに雰囲気良く聴かせてくれるモデルでしたが、KZ ZASと同じ7BA+1DD構成とした上で一体どんな音を聴かせてくれるのか?CCAらしいアプローチなのか。はたまたKZ寄りのサウンドになるのか。楽しみで仕方がありません。

個人的に中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデルのベストバイに成り得るのか?中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデルの兄弟機(従兄弟)KZ ZASと前作CCA CA16との違いを含めながら、レビューを纏めていきます。

 

CCA CA16 Proは前作のCA16同様に比較的カスタムIEMに近い造形のシェルデザインが採用されていて、KZ ZASも同じシェルを採用しています。そのシェル本体は樹脂製でKZ ZASもフェイスプレートとステムノズルが金属製。CCA CA16ではシェル本体とフェイスプレートが樹脂製でステムノズルが金属という構成とは異なります。肝心の耳への収まりはカスタムIEM風の造形、デザインによりやや大柄のシェルは耳の形によって合う合わないがあるかもしれません。

 

CCA CA16 Proのスペックは先述の通り片側8ドライバ、7BA+1DDと同社の多ドラハイブリッドの旗艦モデルの構成です。同価格帯多ドラハイブリッドモデルの中でも上位のドライバ構成となりますが、最近発売されたTrn VX Proが片側9ドライバ、8BA+1DDに一歩及ばず。CA16 Proの搭載ドライバは中低音域用のダイナミックドライバに10mm径のデュアルマグネティックドライバを。BAは30019シングル1基が高音域を担当しシェル内のダイナミックドライバ傍に並列配置。50024sデュアル(2BA)3基が中高音域を担当します。

前作のCA16のスペックから変化があり片側8ドライバ、7BA+1DDのドライバ構成と同じですが、低音域用ドライバは7mm径デュアルマグネティックから10mm径デュアルマグネティックダイナミックドライバに進化。BAは前作から変更され30095シングル3基から30019を1基となり高音域を担当し、シェル内のダイナミックドライバ傍に1基を並列配置。50024sデュアル(2BA)2基から3基に増え中高音域を担当し、シェル内のダイナミックドライバ傍にこちらも並列配置しています。

ドライバ構成だけで比較すればKZ ZASの7BA+1DD構成と同じ。前作CA16との比較では高音域BAは30095の3基から30019を1基と中高音域ばの50024sデュアル(2BA)を2→3基と高音と中高音のBA構成とデュアルマグネティックダイナミックドライバを7mm径→10mm径に変更し、評判の良かったZASに寄せたことが窺えます。

比較対象のKZ ZASのスペックをあらためて。片側8ドライバ、7BA+1DDと昨年発売された同社ZAXやCCA CA16とドライバ数が同じ(構成は異なります)。搭載ドライバは中低音域用のダイナミックドライバにZAXと同様の10mm径ではありますが、それとは異なるデュアルマグネティック(二重磁気)ダイナミックドライバを。BAは30019シングル1基が高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置。ZAXやCA16で採用された50024改良版、50024sデュアル(2BA)3基が中高音域を担当し、こちらもダイナミックドライバに並列に配置しており、これまでKZでは頑なにステムノズル内に配置したBAが全てシェル内部に配置です。

次にCA16のスペックも。片側8ドライバ、7BA+1DDとなり搭載ドライバは低域用ドライバは7mm径デュアルマグネティックダイナミックドライバで、C12の10mm径から小型化されていますが力強さはこちらが上。キレの良さは10mm径のタイプに軍配が挙がります。BAは30095シングル3基が高音域を担当し配置がC12のステムノズル部からシェル内に。50024デュアル(2BA)2基が中音域を担当しこちらも高音域用BA同様にダイナミックドライバに並列に配置され、低音域を前述のDD1基が担います。

そのため、スペックからはCA16 ProとZASが同じドライバ構成&配置でCA16がドライバ構成は異なりますが、配置が同じとなり比較対象として最適と考えています。Trn VX Proは、まあ…、その…。BAが1基多いですし価格帯もやや上ですので外しました。

次に、前述の通りCA16 Proは全てのドライバがシェル内に納まり高音域用BAを1基。新世代の中高音域用デュアルBA3基をダイナミックドライバに並列に配置した、1BA+6BA(3デュアルBA)+1DDの高、高中、中低音域の3way方式を採用しています。

これに対し、ZASもドライバ構成&配置を先立って採用し中高音域を新世代BAに。搭載位置もシェル内部のダイナミックドライバに全て並列配置し1BA+6BA(3デュアルBA)+1DDの高、高中、中低音域の3Way方式です。

また、CA16ではZSXやC12の中音域に厚みを持たせていた1BA+4BA+1DDの3way方式を踏襲し高音域用のBAを追加した、高、中、低音域を3BA+4BA+DDの3way方式とスペック上、バランスの良いドライバ構成となります。

どれを見てもスペック上、わくわくする構成ですね。

とはいえ、一般的に多ドラハイブリッドや複数BAモデルで採用する3way方式では各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングが重要となります。このチューニングポイント、経験則を活かしたチューニング次第で「当り」か「外れ」という評価に繋がってくると云えます。

 

※宜しければ過去記事もご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

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CCA CA16 Proの納期は今回AliExpressで購入したため、流石の国内amazonのようにはいきません。まだAliExpress同様に中国本土からの発送は中国からの航空便減便による輸送への影響が大きく、それなりに時間が掛かる覚悟は必要です。幸い11.11セール前にオーダーしており、その混乱には遭わずに済んだようです。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くの少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

  

2. CCA CA16 Pro実機レビュー

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたKZ系の豪華版ですが、中価格帯U10Kとしてみれば現在ではやや物足りない化粧箱です。

今回も箱潰れというか明らかに重量物に圧迫されて箱が破れているのはAliExpress購入の証です(中身が無事なら細かいことを気にしてはいけません)。

 

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上蓋を開けると黒地の内装の台座にイヤホンが収納され、台座の下側にはモデル名のプレートが。内装を取り外すと箱の底にはイヤーピース等の付属品が収納されています。

 

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付属品は最近のCCAやKZ系に付属する軸短白ノーマル傘シリコンイヤーピース、S、M、L、3種各1セットと軸短白かまぼこ傘シリコンイヤーピースが付属します。その内、軸短白かまぼこ傘シリコンイヤピMサイズがイヤホン本体取付け済みで、他にはケーブルです。U10Kの中価格帯としては少々寂しい付属品ですが、イヤホンにコスト全振りは個人的に嫌いではありません。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホンで心配されるような各所の仕上りに問題はありませんでした。綺麗に仕上げられていると思います。

カラーバリエーションはクリア色と黒色の2種で、今回はクリア色にしました。


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付属ケーブルは従来のCCAで付属するタイプではない白色(シルバー?)の4芯銀メッキ銅線の2本並列タイプが採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプでロゴ入り。イヤホン側はKZ-Cタイプ(2ピン)、もちろんKZ極性(上がプラス)です。最近の中華イヤホンはKZ-Cタイプが多く採用されていますのでリケーブルの際には注意が必要です。私は気にせず2ピン仕様を使っています。

この付属ケーブルはシュア掛け用にチューブで癖付けがあり耳への装着性、使用感はそれほど悪くはありませんし、全体的にやや絡まり易いもののしなやかなものとなります。また、U10Kの中価格帯に付属するケーブルとしては前作CA16の付属品よりも品質は向上しており必要十分。そのまま使用することもできますし綺麗な色合いのケーブルはイヤホン本体にマッチしていると思います。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からCCA CA16、CCA CA16 Pro、KZ ZAS

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CCA CA16 ProはZASやCA16と同じやや大柄なシェルです。片側に8ドライバが搭載されていることを考えると妥当な気がします。

前項で触れた通りCA16 Proのシェルはステムノズルとフェイスプレートが金属でシェル本体が樹脂製なのはZASと同様。CA16はステムノズルのみ金属製です。

三機種共にフェイスプレートはラウンドタイプ。重量はほぼ同じで耳への装着時には殆ど重さが気になりません。

次にステムノズルは三機種共に細め。長さと角度は三機種共にもちろん同じ。CA16 Proはステムノズルの太さに影響するイヤーピースの圧迫感は感じませんので、イヤーピース選択をしっかりできれば問題なく使えそうです。尤も耳の小さな女性や子供を除き、殆どの方で不満を感じることはないのではと思います。

また、これらにはステムノズル先端端面にメッシュフィルターが装備されていて、音質への影響は三機種共に同じ程度といえます。

そして、シェル本体の形状や付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

 

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※左ノーマル傘タイプ、右かまぼこ傘タイプ
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付属イヤーピースはKZ系のTWSに付属する軸短の白色タイプ、ノーマル形状(右)とかまぼこ形状(左)の二種です。個人的にこの付属のイヤピは傘にコシが無く、フニャフニャ、パサパサしていて装着感がイマイチに感じます。

音質的にはやや高音中音がクリアに聴こえるタイプに感じますが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

残念ながらこの付属イヤーピースでも私は上手く合わせられず、形状からは耳の奥に栓をするように装着も、大き目で浅めに装着もフィットしませんでした。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じますが、今回は特にこの付属タイプは合った試しがなく、手持ちのKBEAR 07 M-を使用しています。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

余談ですが、Sedna EarFit(shortではない)は軸が長めで傘がやや硬めなこともあり、最近一周回ってなかなかフィットしない場合に重用しています。

 

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3. CCA CA16 Pro音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り、Sony NW-ZX507を基準としてレビューを行います。

ZX507については他の方のサイトでも詳しく解説していますので、簡単に。SONYのミドルクラスのサブスク対応android機です。エントリーモデルのNW-A100シリーズとの違いは4.4バランス接続にも対応しています。DACには独自開発のS-Master、フルデジタルアンプが採用されています。

音質傾向としては、高音域と低音域をしっかりと鳴らすやや派手な音ながらも、ボーカルを邪魔せずにそれを引き立てています。所謂ドンシャリ傾向と云えますが、過剰なほどではなくて若干の演出という感じ。そして中音はボーカルに対し相対的に控えめに感じられますが、その分ボーカルはクリアです。特徴としては低音に厚みがありますので音楽を雰囲気良く聴くことができるSONYの音といえます。

個人的には音楽を楽しく聴くという本来の目的を達成するために必要十分なDAPと考えており、今年6月からは音楽配信サブスクリプションサービス、Apple Musicがロスレス対応しましたが、android搭載DAPとして勿論対応(※1※2)しています。そして、何よりもBluetooth接続は安定していてLDAC対応していますので、同社の左右独立型完全ワイヤレスイヤホン、WF-1000XM4との相性も良く、標準アプリで再生する場合にワイヤレスでもハイレゾ級(24bit/96kHz、最大990kbps)で音楽を楽しめますが、強いて云えば電池持ちが悪い位しか不満はないです。

※1:2021/07/19現在 android版Ver3.6.0ベータ版(1115)で動作確認

※2:2021/07/22現在 android版Ver3.6.0正式版(1118)が配信開始

 

 

 

低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。


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それではZX507に直挿し4.4バランス接続で実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはKBEAR 07 M-サイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「華やかな中高音にしっかりとした低音の中高音寄りのドンシャリバランス。」でした。

箱だしではやや低音に緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音が締まり落ち着きました。

音場はやや広め。曲によって広く感じます。

高音は煌びやかさ華やかさがあり響きの良さありますが、刺さるような尖りを感じることはありません。

低音の量感は十分で強さもあり、キレや締まりもあって、ベースラインは追いやすい。

重低音は沈み込みの深さを感じ十分な強さがある。

中音は華やかで彩の多さを感じますが、ボーカルの周り僅かに後ろに位置し邪魔することはありません。

そのボーカルはクリアで自然から僅かにドライ寄りで、位置は僅かに近く感じます。

一言で云えば中高音寄りのややドンシャリのバランス。

高音域の主張は適度で常に前に出るような感じではなく、必要な時に必要なだけ弁えながらもしっかりと鳴る。低音域が比較的しっかりと鳴りますが、高音中音域の華やかさを邪魔する印象はありませんし、中音域よりも前に出るような主張もありません。必要な時に存在感を示す、CCAの高音という印象です。

もっと云えば、高音は常にシャリつくような五月蠅さはなく欲しい時にしっかりと存在感を示し、伸びと響きのある音を感じられます。

中音は高音よりも華やかさを感じ、ボーカルが埋もれることなくその周り僅かに後ろで引き立たせてくれます。音数が多い曲でもボーカルは演奏と重なりを感じ難く分離感は良好でクリアに聴こえます。

そのボーカルは僅かに近く感じクリアに聴かせてくれますが、若干ドライ気味のために特に女性ボーカルのバラードでは相性を感じることがあるかもしれません。

低音は十分な量感があり強さがありますが、音の強弱、表現力の良さを感じます。KZ系の低音には強さというか芯が感じられるものが多く、このあたりは従来のKZ系の音となりますが、ただ量が多く強いだけの音ではありません。

CA16 Proは高音は常に前に出るような主張は無いものの曲に十分なアクセントを加えており心地良さを感じます。それでも中音域の華やかさ印象が強く、しっかりと鳴る低音域も併せて全体的に明るく鮮やかな印象を与えてくれます。特に高音は所謂喧しさがなく、シャリシャリする様な音数や量感でお茶を濁してはいませんので、一聴するとつまらない音に感じピラミッド型の印象となってしまいそうですが、音数や量感で誤魔化そうとしない誇張のない自然な音かもしれません。中高音域の華やかさのある音色は決して騒がしくなく聴きやすく上手くまとめていると思います。

 

前作CA16では中低音が豊かな雰囲気の良さがありましたので万人向けとは言えず、人を選ぶというか好みの差が大きく出るイヤホンでした。CA16 Proではこれを改善しており、バランスが良くなりました。特に中高音の鮮やかさは、過度なアクセントに感じることも無く、全体のバランスが整った音色が心地良さを感じます。低音もしっかりと鳴る強さとキレを兼ね備えながらも、全体を覆うような鳴り方ではなく、芯のある音は高音や中音域をマスクすることもありません。中音域は特に華やかさがありますがごちゃつきを抑え、分離も良好。高音、中音、低音域はバランスは良く鳴り従来のCCAの悪く云えば地味な音ではなく寧ろ明るく明瞭に鳴ります。それでも従来のKZの代名詞のドンシャリとまではいかない音色は心地よく聴きやすくまとめたバランスだと思います。

 

※以前のTrn VX Proのレビューもご参考ください

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比較対象のKZ ZASと一聴しただけでは殆ど差を感じなかったのが正直な感想です。強いて云えば異なるのは中音域で特にCA16 Proの方が華やかさを感じる音は一方でごちゃつきを感じる事があります。ZASの方がそれは抑えられていて整理された音の印象です。高音域も同様でCA16 Proの中高音域の方が強く聴こえるので高音域も僅かに前に出ている印象です。低音域はほぼ同じ。ZASの方が音場が広くCA16 Proよりも見通し良く広がりとシャープさのある整った音に感じます。ZASもCA16 Proも同様の音質傾向で全域でまとまった音ですが、寧ろCA16 Proの方が従来のKZの音という感想です。

次にCCA CA16と比較した場合、真逆の音と云えます。中低音寄りのその音は必要以上に高音に存在感を与えず、必要な時に必要な量を奏でます。都合の良い音扱いです。しかし、それがCA16の真骨頂でもあり、特に同じ傾向のブラッシュアップ版、CCA CKXではその高音に響きの良さ、余韻を与えられています。つまりCA16よりもCKXは同じ中低音寄りながらも高音の伸びやかさと中音域の分離感を感じられるモデルと云えます。くり返しになりますが、CA16は豊かな中低音が雰囲気の良さを醸し出す音であり、これはこれで良い音ではあるのですが、中高音の華やかで彩のある音色のCA16 Proとは全く違うと云えます。

もちろんそれぞれの良さはあるのであくまでも音の傾向として捉えてください。それが絶対評価ではなく、相対評価という評価軸の確定できない音質レビューの難しさとなります。

そのため今回の比較対象の中ではCA16 ProとZASが中高音寄りの華やかな音。CA16がそれとは異なる中低音寄りの雰囲気の良い音というそれぞれの良さがあり、中高音の華やかな音が好きならCCA CA16 Pro。中高音の見通しの良い整った音を聴きたいならKZ ZAS。中低音を雰囲気良く聴きたいならCCA CA16となります。個人的にはKZ ZASが僅かにリードかなと。中低音寄りのボーカル重視ならばCA16でしょうし、中高音成分多めを聴きたいならばこのCA16 Proとなります。

 

まとめとして、CCA CA16 Proは従来のCCAのイメージからは少し異なるKZの音に近い華やかさのある音。その傾向はやや中高音を鮮やかに彩りのある弱ドンシャリは従来のCCAの大人しい音を覆す新たな魅力を引き出しているように感じます。個人的にはCA16 ProとZASの音はメーカーが逆で出して欲しかった。そうすればユーザーにも分かりやすい傾向の中で選択し易くもっと楽しめたと思います。

 

蛇足ですが、以前のレビューでも触れている通り中華イヤホンの単純にドライバ数を増やす足し算では未だ限界があります。残念ながらそれをBAオンリーの低~中価格帯複数ドライバ搭載モデルが証明しています。それでも次々と投入される中華の新モデルが我々を楽しませてくれており、今後も期待していきたいですね。

 

高音   CA16 Pro ≧ ZAS ≧ CA16 (単純な強さの順)

中音   ZAS ≧ CA16 Pro ≧ CA16 (整った音の順)

低音   CA16 ≧ ZAS = CA16 Pro (単純な強さの順)

ボーカル CA16 ≧ ZAS = CA16 Pro

音場   ZAS ≧ CA16 Pro ≧ CA16

 

 

4. CCA CA16 Proの総評

CCA CA16 ProはこれまでのCCAの音のイメージから少し異なる華やかで鮮やかな音を鳴らし新境地を開き魅せてくれました。中高音寄りのCA16 Proは前作CA16とは真逆の傾向となり新しいCCAが垣間見れたそんな気がします。一方でこの価格帯の中華イヤホンの覇権争いはTrn VX Proが一歩リードしており、KZ系メーカーの逆襲に期待する。今後も楽しみが尽きません。

 

最後に、今回は国内amazonとAliExpressで発売された低価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2021年11月22日)はAliExpressやamazonで発売されており、AliExpressで7,000円台。一方amazonでは本国発送の9,000円を僅かに超える価格。今後(2021年11月25日~)のBFセール後の輸送の混乱を考慮してもAliExpressでの購入がお勧めです。一方AliExpressでは安価に入手できますが、その入手性には現在から年末まで特に難がある時期です。とはいえこれまでの中価格帯U10K中華イヤホンの中でも安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯U10Kの中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱い品を。新製品を少しでも早く入手したい又は、少しでも安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。 

 

CA16 Pro
以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ (華やかな音が好きな方)
※☆0.5、★1.0

 

ZAS
以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ (見通し良い音が好きな方)
※☆0.5、★1.0

 

CA16
以下、ケーブルHi8、イヤピAET07 M-使用、DAP ZX507バランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (雰囲気の良い音が好きな方)
※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

あとがきとして、今回はいつもの低価格中華イヤホン、1BA+1DDハイブリッドモデルではなく、多ドラハイブリッドモデルの新商品のレビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンや中華据え置き機器をご紹介していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Trn VX Proレビュー ※KZ ZAS CCA CA16 比較含む

こんにちは。

今回は中華イヤホンの中から多ドラハイブリッドモデルのレビュー編として中価格帯で発売されたTrn VX Proについてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのTRN Promo Discount Store(@TrnDiscount)から購入しています。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取扱があります。

 

 

 

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1. Trn VX Proについて 

Trn VX Proは中華イヤホンの中価格帯で今年9月に発売された片側9ドライバ、8BA+1DD構成の多ドラハイブリッドモデルの新商品です。中価格帯U10Kの多ドラハイブリッドモデルとしてはこれまでのKZ ZASやZAXの片側8ドライバ、7BA+1DD構成を超えるモデルとなり、いよいよここまで来たかぁと感慨深く、中華イヤホンの進化は留まることを知りませんね。

Trnは中華イヤホンの低、中価格帯の雄であり市場を牽引するメーカーのKZのライバルと云えるメーカーです。初めのころのTrnはKZの後発という事もあり、KZの後追いモデルを発売し、音質もKZ同様のドンシャリでしたが、昨年後半からはKZの後追いを止め、定着していた「KZの後追いメーカー」という評判を脱却すべく、自社のブランドを確立しようと「Trnの音」を製品に展開していると感じられます。それは明確に感じられる変化であり、VXやSTM、V90Sではドンシャリを抑えフラットに寄せた中高音重視の音づくりはKZのドンシャリとは一線を画す音と云えます。

 

前述の通り8BA+1DDの多ドラハイブリッドのVX Proが登場するまでKZ ZASとZAX、CCA CA16とCA16 Proが7BA+1DD構成と中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデルの中でスペックの上で最上位モデルでした。この秋CCA CA16 Proが登場しましたが、VX Proが登場した今、正直目新しさは無く、CA16 Proが届くのを待っている身としては、VX Proを一聴した際に「CA16 Pro要らんかったかも」という想いが頭を過りました。まあ、CA16は個人的に好きな音の傾向ですから、それが同社のCKXで代用可能だったとしてもやはり後継機のCA16 Proは抑えておく必要がありますので(言い聞かせている)。

そもそもVX Proがいけないのです。

VXが中高音の解像感に激振りしてアレだったのにVX Proはとても普通に良い音がしています。例えるなら国民的アニメ、未来の猫型ロボットが主人公をお世話する物語の主人公をTrnに置き換えた時に「Trnのくせに生意気だぞ~」とその物語に登場する音痴のガキ大将のように言いたくなる。そんな出来です。

 

Trn VX Proは中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデルの最上位のスペックを誇る片側9ドライバ、8BA+1DDモデルとなりますが、従来の搭載ドライバを増やすスペック競争の勝者というだけでなく、Trnの音が第二ステージに突入したことを窺わせる特異なところの無い音質は嬉しい誤算と云えそうです。

尤もVXよりも後に発売された同社の複数BAモデル、BA15も評判が良かったようですし、VX Proも偶然ではなく必然だったのかもしれません。まあ、BA15は発売当時2万円ですし、当たり前だよねと云われればそれまでです。

 

さて、VX Proは一聴してTrnの音と云えます。

KZの王道のドンシャリ程ではないフラット寄りの中高音重視の音は、CCAの大人しい音でもなく華やかでも過度の派手さはない音。そしてTrnの音では低音が疎かに感じる事が多かったのですが、真にフラットと云える丁度良い音がします。量感は多くはありませんが、VXのように物足りなさはありません。

個人的に中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデルのベストバイに成り得るのか?中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデル、特にライバルとしてのKZ ZASとCCA CA16との違いを含めながら、レビューを纏めていきます。

 

Trn VX Proは前作のVX同様に比較的オーソドックスなシェルデザインが採用されていて、KZ ZASやCCA  CA16の方がカスタムIEMに近い造形です。シェルはオール金属製でKZ ZASやCCA  CA16のシェル本体が樹脂製でフェイスプレートとステムノズルが金属という構成とは異なります。肝心の耳への収まりはオーソドックスなシェルデザインにより良好で、KZ ZASやCCA  CA16の様なカスタムIEM風の造形は耳の形によって合う合わないがあるかもしれません。

 

Trn VX Proのスペックは先述の通り片側9ドライバ、8BA+1DDと同社の多ドラハイブリッドの旗艦モデルの構成であり、同価格帯多ドラハイブリッドモデルの中でも最上位のドライバ構成となります。搭載ドライバは低音域用のダイナミックドライバに新開発のカーボンナノチューブ(CNT)ダイヤフラムを採用した10mm径のデュアルマグネティックドライバを。BAは30095シングル4基が高音域を担当しステムノズル内に2基、シェル内部のダイナミックドライバ傍に2基を並列配置。50060シングル4基が中高音域を担当します。

前作のVXのスペックが片側7ドライバ、6BA+1DDのドライバ構成で低音域用ドライバは10mmデュアルマグネティックダイナミックドライバ。BAには30095シングル3基が高音域を担当しステムノズル部に2基とシェル内のダイナミックドライバ傍に1基を配置。50060シングル3基が中音域を担当しシェル内のダイナミックドライバ傍にこちらも2基と1基を分かれて配置。この1基は高音域用30095とセットで配置していました。

ドライバ構成だけで比較すれば同社V90の4BA+1DD構成に高音域30095と中音域50060をそれぞれ2基づつ追加し新型ダイナミックドライバに変更したようにみえます。

比較対象のKZ ZASのスペックは片側8ドライバ、7BA+1DDと昨年発売された同社ZAXやCCA CA16とドライバ数が同じ(構成は異なります)。搭載ドライバは中低音域用のダイナミックドライバにZAXと同様の10mm径ではありますが、それとは異なる二重磁気ダイナミックドライバを。BAは30019シングル1基が高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置。ZAXやCA16で採用された50024改良版、50024sデュアル(2BA)3基が中高音域を担当し、こちらもダイナミックドライバに並列に配置しており、これまでのKZやCCAで採用例の無い組合せとなります。特筆は、これまでKZでは頑なにステムノズル内に配置したBAが全てシェル内部に配置です。

次にCA16のスペックも片側8ドライバ、7BA+1DDとなります。搭載ドライバは低域用ドライバは7mm二重磁気ダイナミックドライバで、C12の10mmから小型化されています。BAは30095シングル3基が高音域を担当し配置がC12のステムノズル部からシェル内に。50024デュアル(2BA)2基が中音域を担当しこちらも高音域用BA同様にダイナミックドライバに並列に配置され、低音域を前述のDD1基が担います。

そのため、スペックからはVX Pro、ZAS、CA16の三機種がドライバ構成や配置が異なり比較対象として最適と考えています。

そして、前述の通りVX Proはステムノズル内に高音域用BAを2基配置、残りの高音域用BA2基を中音域用BAの4基と一緒にダイナミックドライバに並列に配置した、高、中、低音域の3way方式を採用しています。

これに対し、ZASではBAを新世代に変えるとともに、更に搭載位置もシェル内部のダイナミックドライバに並列配置し1BA+6BA+1DDとZSXとC12世代の3Way方式を踏襲しています。

また、CCA CA16ではZSXやC12の中音域に厚みを持たせていた1BA+4BA+1DDの3way方式を踏襲し高音域用のBAを追加した、高、中、低音域を3BA+4BA+DDの3way方式とスペック上、バランスの良いドライバ構成です。

多ドラハイブリッドや複数BAモデルで採用する3way方式では各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングのポイントを活用できるかが重要となります。このチューニングポイント、経験則を活かしたチューニング次第で「当り」か「外れ」という評価に繋がってくると云えますね。

 

※宜しければ過去記事もご参考ください

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Trn VX Proの納期は今回AliExpressで購入したため、流石の国内amazonのようにはいきません。まだAliExpress同様に中国本土からの発送は中国からの航空便減便による輸送への影響が大きく、それなりに時間が掛かる覚悟は必要です。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くの少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

  

2. Trn VX Pro実機レビュー

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは中価格帯U10Kでは手抜き感が少なく、パッケージ表面にイヤホンイラストがプリントされているスリーブタイプの化粧箱です。

ちなみに箱潰れはAliExpress購入の証です(細かいことを気にしてはいけません)。

 

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スリーブを外すと黒地の内装の台座にイヤホンが収納され、箱の下側にはイヤホンケースが鎮座しています。内装を取り外すと箱の底にはイヤーピース等の付属品が収納された小箱が。イヤホンケースにはケーブルが入っています。

 

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付属品はTrn系に付属する赤軸黒傘シリコンイヤーピース、S、M、L、3種各1セットと最近のTrnに付属する白軸白傘シリコンイヤーピース、S、M、L3種各1セットとフォームタイプM?サイズ1セットが付属します。その内、赤軸黒色シリコンイヤピMサイズがイヤホン本体取付け済みで、他にはケーブル、ケーブルバンド、6.35mmステレオプラグ変換です。U10Kの中価格帯としては必要十分の付属品です。従来とは力の入り方が違います。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホン、特にTrnで心配されるような各所の仕上りに問題はありませんでした。綺麗に仕上げられていると思います。

カラーバリエーションは銀色と青(紺)色の2種で、今回は青色にしました。


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付属ケーブルはTrn系に付属する黒色の編込みタイプのアップグレード版で、白(銀)色の編込みタイプの4芯銀メッキ銅線が採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプでロゴ入り。イヤホン側はKZ-Cタイプ(2ピン)、もちろんKZ極性(上がプラス)です。最近の中華イヤホンはKZ-Cタイプが多く採用されていますのでリケーブルの際には注意が必要です。私は気にせず2ピン仕様を使っています。

この付属ケーブルはシュア掛け用にチューブで癖付けがあり耳への装着性、使用感はそれほど悪くはありませんし、全体的にやや絡まり易いいもののしなやかなものとなります。また、U10Kの中価格帯に付属するケーブルとしては必要十分で、そのまま使用できますし綺麗な色合いのケーブルはイヤホン本体にマッチしていると思います。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

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付属の一つに6.35mmステレオプラグ変換プラグがあります。これは付属ケーブルが3.5mmステレオミニプラグのため、据え置きヘッドホンアンプ等で使用する際に3.5mmを6.35mmプラグに変換するアダプタです。個人的には付属させるほどの必要はないと思うのですが、メーカーの配慮なのか据え置きヘッドホンアンプでの使用を想定しているのかは真意不明です。そもそも据え置きヘッドホンアンプを持っている方は既に持っていると思います。

 

※画像左からCCA CA16、Trn VX Pro、KZ ZAS

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VX ProはZASやCA16同様にやや大柄なシェルです。まあ片側に8ドライバや9ドライバが搭載されていることを考えると妥当な気がします。その中ではVX Proは小柄でオーソドックスな造形です。

前項で触れた通りVX Proのシェルはオール金属製。ZASのステムノズルとフェイスプレートが金属でシェル本体が樹脂製に対し、CA16はステムノズルのみ金属です。

三機種共にフェイスプレートはラウンドタイプ。手の平に乗せると重量は流石にVX Proがやや重さを感じますが、耳への装着時にはあまり重さが気になりません。

次にステムノズルはVX Proはステムノズル内にBAを配置している為、やや太め。ZASやCA16はステムノズルは細め。長さと角度は三機種共ほぼ同じ。VX Proはステムノズルの太さに影響するイヤーピースの圧迫感はやや感じ、人によってはイヤーピースの選択がシビアになってしまうかもしれません。逆に云えばイヤーピース選択をしっかりできれば問題なく使えそうです。尤も耳の小さな女性や子供を除き、殆どの方で不満を感じることはないのではと思います。

また、これらにはステムノズル先端端面にメッシュフィルターが装備されていて、音質への影響はVX Proは丸穴が大きめで、ZASやCA16に比べるとあまり影響がなさそうです。

そして、シェル本体の形状や付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

 

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付属イヤーピースはTrn系に付属するいつもの赤軸黒傘タイプ(右)と最近のTrnに付属する白軸白傘タイプ(中)に加え、フォームタイプの三種です。個人的にいつもの赤軸黒傘イヤピは傘がやや硬めでコシがあり装着感は悪くないですし、白軸白傘イヤピは黒傘よりも僅かに硬めでしっとり感があるように感じます。

音質的には赤軸黒傘は低音に量感を与えてくれ中高音はマイルドにするバランス型。白軸白傘は中高音をはっきりさせて低音を強くタイトにする高音型。フォームタイプは高音を抑え低音の量感を増やしてくれる低音型という、選択肢が多く有難いですね。

とはいえ音質的には決して悪くはないのですが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸いこの付属イヤーピースで装着感は良好で、特に赤軸黒傘イヤピが私は音質的にバランスが良く、耳の奥に栓をするように装着しフィットしました。

余談ですが、Sedna EarFit(shortではない)は軸が長めで傘がやや硬めなこともあり、最近一周回ってなかなかフィットしない場合に重用しています。

この様に低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Trn VX Pro音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り、Sony NW-ZX507を基準としてレビューを行います。

ZX507については他の方のサイトでも詳しく解説していますので、簡単に。SONYのミドルクラスのサブスク対応android機です。エントリーモデルのNW-A100シリーズとの違いは4.4バランス接続にも対応しています。DACには独自開発のS-Master、フルデジタルアンプが採用されています。

音質傾向としては、高音域と低音域をしっかりと鳴らすやや派手な音ながらも、ボーカルを邪魔せずにそれを引き立てています。所謂ドンシャリ傾向と云えますが、過剰なほどではなくて若干の演出という感じ。そして中音はボーカルに対し相対的に控えめに感じられますが、その分ボーカルはクリアです。特徴としては低音に厚みがありますので音楽を雰囲気良く聴くことができるSONYの音といえます。

個人的には音楽を楽しく聴くという本来の目的を達成するために必要十分なDAPと考えており、今年6月からは音楽配信サブスクリプションサービス、Apple Musicがロスレス対応しましたが、android搭載DAPとして勿論対応(※1※2)しています。そして、何よりもBluetooth接続は安定していてLDAC対応していますので、同社の左右独立型完全ワイヤレスイヤホン、WF-1000XM4との相性も良く、標準アプリで再生する場合にワイヤレスでもハイレゾ級(24bit/96kHz、最大990kbps)で音楽を楽しめますが、強いて云えば電池持ちが悪い位しか不満はないです。

※1:2021/07/19現在 android版Ver3.6.0ベータ版(1115)で動作確認

※2:2021/07/22現在 android版Ver3.6.0正式版(1118)が配信開始

 

 

 

低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。


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それではZX507に直挿し4.4バランス接続で実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属赤軸黒傘 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「高音が強くシャリ付く最近のTrnの音。ただし前作VXよりも低音は鳴っている」でした。

箱だしではやや高音に鋭さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は高音がやや落ち着き、低音も締まりました。

音場はやや広めから広め。

高音はやや鋭さがあるものの煌びやかさ華やかさが十分で、刺さるギリギリに抑えているものの高音成分多めの曲では尖りを感じることがあります。

低音の量感は抑えめ。量感は少ないものの強さがあり、キレや締まりは良好、ベースラインは追いやすいです。

重低音は沈み込みの深さはそれ程感じませんが、適度な強さで鳴らします。

中音は高音同様に華やかさがあります。ボーカルと音の重なりをあまり感じずに横に広く鳴る印象です。

そのボーカルはクリアでドライ寄りですが、自然な位置に感じます。

一言で云えば中高音寄りの弱ドンシャリから高音強めのフラット寄りのバランス。

高音域は常に前に出るような主張があり、中低音域もそれほど主張をすることが無いため、一番鳴っている印象を受けます。高音をはっきりと強めに鳴らすことで解像感を演出するTrnの音という印象です。中音域よりもやや前に出るような主張は演出感を感じますが、適度な響きは「すぅ~…」っと最後が切れる鳴り方なので今一歩。それでもこの価格帯の中華イヤホンの中では好印象の部類で、高音成分多めが好きな方には「刺さる」調整だと感じます。

中音は高音よりも華やかさは一段落ち付きますが、横の広さを感じる鳴り方で空間を意識でき、音の大小を感じられ解像感は良好です。一方、ボーカルは音数が多い曲では埋もれることはありませんが、曲によっては多少近い音がありごちゃつきを感じる事もあります。音数が少ない曲ではその周りに位置し、やや後ろでしっかりと鳴ります。この辺りは高音同様に音のシャワーを浴びるような感じなので、もう少し整ってくれればという想いがあります。

ボーカルは自然な位置でクリア。聴きやすさを感じます。声質がドライに聴こえるため、女性ボーカルのバラードでは相性を感じるかもしれません。

低音は控えめな量感ですが、強さがあり芯がある音。締まった音はタイトに小気味良く鳴ります。

重低音は「ドンッ」と鳴る強さはありますが、KZでよくある「ズドンッ」とまでは鳴りませんし、沈み込みはそれ程深さを感じません。それでもVXに比べると高音中音との強さのバランスが改善しているため、フラット寄りに聴こえる音に悪い印象はありません。

VX Proは元々高音が強めではありますが、高音と中音の間の中高音域に極端に凹みを感じないため、高音成分多めに感じやすく、中・高音域をやや演出した表現にしている印象です。

前作VXでは高音と中音が兎に角聴こえ、音がくっきりはっきりしていて、更に低音が控えめだったので、演出過多の音は万人向けとは言えず、人を選ぶというか好みの差が大きく出るイヤホンでしたが、VX Proではこれを改善しており、バランスが良くなりました。高音はやや前に出るような主張がありますが、過度なアクセントに感じることもありますが、このぐらいの演出も全体のバランスを考えるとこれはこれで良いという心地良さを感じます。低音もVXよりも鳴り、全体を覆うような鳴り方ではありませんが、芯のある音がキレが良く鳴り、高音や中音域をマスクすることもありません。中音域は華やかですがごちゃつきを抑え、分離も良好。繰り返しになりますが、高音、中音、低音域はやや高音を強調しているものの、フラットよりの印象を受けますし、決して地味な音ではなく寧ろ華やかに鳴る、KZの代名詞のドンシャリとは違います。

とはいえそれでも高音は喧しいという程でもなく、シャリシャリさせながら音数や量感でお茶を濁した感はありますが。ここだけ聞くとバランスがおかしい音に感じるかもしれませんが、絶妙な音数や量感で良い意味で誤魔化したTrnの音、多少の演出感のある音色は心地よく聴きやすくまとめたバランスだと思います。

 

※以前のTrn VXのレビューもご参考ください

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※以前のCCA CKXのレビューもご参考ください

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比較対象のKZ ZASと最も異なるのは中音域で特に華やかさを感じる音は一方でごちゃつきを感じる事があります。VX Proでもそれは抑えられていましたが、ZASのそれは分離の良さが前提としてあって整理された音。寧ろKZ ZAXに近い音の印象です。KZ ZSXもどちらかと云えばZAX寄りで、音場の広さがそれよりも見通し良く広がりとシャープさのある楽しい音でした。VX ProはZAXと同様に全域でまとまった音ですが、高音がやや強め、ZASの中音域はそれを上回っていて傾向としては異なると感じます。

次にCCA CA16と比較した場合、真逆の音と云えます。中低音寄りのその音は必要以上に高音に存在感を与えず、必要な時に必要な量を奏でます。都合の良い音扱いです。しかし、それがCA16の真骨頂でもあり、特に同じ傾向のブラッシュアップ版、CCA CKXではその高音に響きの良さ、余韻を与えています。つまりCA16よりもCKXは同じ中低音寄りながらも高音の伸びやかさと中音域の分離感を感じられるモデルと云えます。CA16は豊かな中低音が雰囲気の良さを醸し出す音であり、これはこれで良い音ではあるのですがやや高音が強いフラット寄りのVX Proとは全く違うと感じます。

もちろんそれぞれの良さはあるのであくまでも音の傾向として捉えてください。それが絶対評価ではなく、相対評価という評価軸の確定できない音質レビューの難しさとなります。

そのため今回の比較対象の中では三者三様の良さがあり、高音好きならVX Pro。バランスの良い整った音を聴きたいならKZ ZAS。中低音を雰囲気良く聴きたいならCCA CA16となります。個人的にはKZ ZASがややリードかなと。中低音寄りのボーカル重視ならばCA16でしょうし、高音成分多めを聴きたいならばこのVX Proとなります。

 

まとめとして、Trn VX Proは最近のTrnの音を正統進化した最新の最高の音質と云え、その傾向はやや高音強めのフラット寄りの中高音重視の音。これがTrnの音とメーカーが自信をもって世に出した意欲作と感じます。一方のKZはZASが従来のドンシャリとは異なる高音と低音を抑え中音域の解像感ある音で新たなステージに進んでいることを感じさせます。個人的にはZASの音は他のメーカに出して欲しかった。そうすれば同様の傾向の中で選択肢が増えることでもっと楽しめますので。

 

蛇足ですが、以前のレビューでも触れている通り中華イヤホンの単純にドライバ数を増やす足し算では未だ限界があります。残念ながらそれをBAオンリーの低~中価格帯複数ドライバ搭載モデルが証明しています。それでも次々と投入される中華の新モデルが我々を楽しませてくれており、今後も期待していきたいですね。

 

高音   VX Pro ≧ ZAS ≧ CA16 (単純な強さの順)

中音   ZAS ≧ VX Pro ≧ CA16 (整った音の順)

低音   CA16 ≧ ZAS ≧ VX Pro (単純な強さの順)

ボーカル CA16 ≧ ZAS ≧ VX Pro

音場   ZAS ≧ XV Pro ≧ CA16

 

 

4. Trn VX Proの総評

Trn VX Proは最近のTrnの音を正統進化した最新の最高の音質と云え、その傾向はやや高音強めのフラット寄りの中高音重視の音。一方KZもZASで新境地を開き、この価格帯での中華イヤホンの覇権争いはスペック至上主義から脱却し本来の音質を追求し始めた、そんな予感を抱き今後も楽しみです。

 

最後に、今回は国内amazonとAliExpressで発売された低価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2021年11月13日)はAliExpressやamazon(prime)で発売されており、AliExpressで9,000円台。一方amazonではprime扱いの10,000円を超える価格。今日現在(2021年11月13日)の11.11セール後の輸送の混乱を考慮すれば、amazonでの購入がお勧めです。一方AliExpressでは安価に入手できますが、その入手性には現在から年末まで特に難がある時期です。とはいえこれまでの中価格帯U10K中華イヤホンの中でも安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯U10Kの中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱い品を。新製品を少しでも早く入手したい又は、少しでも安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。 

 

VX Pro
以下、付属ケーブル、付属赤軸黒傘イヤピ M使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ (高音好きの方)
※☆0.5、★1.0

 

ZAS
以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  
※☆0.5、★1.0

 

CA16
以下、ケーブルHi8、イヤピAET07 M-使用、DAP ZX507バランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ 
※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

あとがきとして、今回はいつもの低価格中華イヤホン、1BA+1DDハイブリッドモデルではなく、多ドラハイブリッドモデルの新商品のレビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンや中華据え置き機器をご紹介していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ