こんにちは。
今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格A20000帯で発売された1DDモデルのBQRYZ Autnmnについてレビューをまとめたいと思います。
国内amazonのHiFiGo(@HiFiGoAudio)で取り扱いがありますが、現在(2022/1/29)は本国発送となっております。
HiFiGoのサイトでも取扱があります。
BQEYZ Autumn 13mm dynamic driver IEMshifigo.com
HiFiGoの販売サイトトップはこちら。
HiFiGoでの買い物の仕方を詳しく解説している方のサイトがありますので、そちらを参照ください。
- 1. BQEYZ Autumnについて
- 2. BQEYZ Autumn実機レビュー
- 3. BQEYZ Autumn音質レビュー
- 3.1. 再生環境の更新
- 3.2. BQEYZ Autumnの音質
- 3.2.1. NORMALフィルタの場合
- 3.2.2. TREBLEフィルタの場合
- 3.2.3. BASSフィルタの場合
- 3.2.4. 音質調整フィルタのまとめ
- 3.2.5. BQEYZ Spring1との比較とAutumnの音質のまとめ
- 4. BQEYZ Autumnの総評
- あとがき
1. BQEYZ Autumnについて
BQEYZ Autumnは20,000円を少し超える中価格帯中華イヤホンの1DDモデルとして昨年冬前に発売開始しています。
BQEYZといえば以前同社のSpring1やSummerをレビューしていますが、それらは1万円半ばの販売価格で、積層ピエゾとバランスドアーマチュアとダイナミックドライバという3種のドライバを搭載した多ドラハイブリッドモデルでした。特にSpring1では7層ピエゾドライバによる繊細でなめらかな中高音を奏でるモデルは手持ちのイヤホンの中でお気に入りの一つです。
このBQEYZの四季に擬えたシリーズは春(Spring1及び2)、夏(Summer)と続き、昨年の秋の終わり11月にAutumn(秋)が登場しました。Autumnはそれらよりも少し価格が上がりましたが、その分新たな魅力を加えています。
それは「音質調整フィルタ」です。詳しくは後述するとして、先ずはAutumnの特徴を確認していきます。
BQEYZ Autumn(以降Autumn)はこれまでの四季シリーズの1BA+1Piez+1DD多ドラハイブリッドモデルから一転、1DDシングルダイナミックドライバモデルとなりました。販売価格は前述の通り中価格A10000帯から、中価格A20000帯となり、スペックが下がって価格が上がった様な印象を受けるかもしれませんが、全くそんなことはありません。
先ずAutumnでは採用したダイナミックドライバは直径13mmとイヤホンとしてはかなりの大口径です。Spring1でもダイナミックドライバには13mmサイズを使用していましたが、Autumnではデュアルキャビティを採用しシンプルな1DDでも従来の多ドラよりも全音域で繋がりの良い音を表現できるようにしています。
次にAutumnで新採用された音質調整フィルタですが、よくあるステムノズル部のフィルタ交換式ではなく、シェルのベント(空気の通り穴)を交換するタイプです。これによりシェル内部の空気の流れ、つまり音響を調整します。
音質調整フィルタは3種あり本体取り付け済みの「NORMAL」、低域重視の「BASS」、高域重視の「TREBLE」です。実際に聴いてみると標準である「NORMAL」フィルタでは非常にバランスの良い鳴り方をし、正直これで十分だよねという印象を受けます。一聴した音質傾向はSpring1でも中高音の解像感の高いフラットなモニター寄りの音でしたが、このAutumnでもその延長線上にあると感じられ、Spring2やSummerがドンシャリ寄りのリスニングサウンドと比べると、それらとは趣が異なる様子。四季シリーズの原点回帰とも感じられる音質傾向はこの音質調整フィルタによって基本的な傾向を変えずにユーザーの好みに応じて味付けができる遊び心のあるシステムと云えるのかもしれません。
さて、BQEYZ Autumnのスペックですが先述の通り1DDシングルダイナミックモデルです。これまでの四季シリーズ、Spring1やSummerでは1BA+1DD+1Piezの多ドラハイブリッドモデルであり、超高音~高音域用のバランスドアーマチュアドライバ(BA)や高音~中高音域用のピエゾドライバ(Piez)を搭載せずに1基のダイナミックドライバ(DD)が高音、中音、低音の全ての音域を担いますのでドライバの性能が肝となります。勿論Autumnに採用されているドライバは低価格帯とは違い質の高いドライバを採用していて価格帯に見合う高品質ドライバを採用しています。
イヤホン本体にはシェル本体に金属を採用、ステムノズルも金属製です。中価格帯に多くあるオール金属製です。これはSpring1も同様でSpring1では高音域の響きの美しさがありましたが、Autumnで踏襲されています。一方Summerではシェル本体が樹脂製ということもあり同じ音圧を狙えば樹脂シェルの高音域の減衰を考慮しBAの主張をやや多めにする必要があります。結果、Spring1よりもドンシャリに感じるバランスとなっていたと考える事ができます。まあ、ドンシャリが悪いわけではなく音楽をノリ良く聴きたいニーズに応える意味もあったと考えられますね。
そして大事なことですが、これまでレビューした中価格帯の多ドラハイブリッドイヤホンでは各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングは曲によってつながりにやや不自然さを感じる場合がありましたが、Autumnではシングルダイナミックドライバによりフルレンジで担います。一聴した限り、不自然さは感じず上から下まで綺麗に鳴らしてくれていますので、ドライバの質もそうですがBQEYZのチューニング技術の高さを感じられます。
次に付属ケーブルです。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としているところもありますが、Autumnでは妥協せずに高品質線材を採用しています。1芯あたり1本Φ0.05mmの細線を7本使用し撚線とし8芯線化。8芯の内、4芯づつ高純度銅線と銀メッキ銅線を採用したミックス線という高品質線材のケーブルとなっています。ちなみに私が購入したHiFiGoでは標準の3.5mmプラグ仕様に加え、2.5mmや4.4mmバランスプラグ仕様も同価格で選択できますので、手持ちの再生環境に合わせて最初からバランスプラグ仕様を購入できるのは有難いですね。
海外含めポタブルオーディオ界隈でのAutumnの評判は上々で、実際に一聴してもその素性の良さを感じられますし、Spring1の音の傾向が好きな私は期待感は高いです。そして、BQEYZの四季シリーズ第4弾として同社のラインナップとしてその音質にもしっかりと「らしさ」を魅せてくれるユーザー満足度の高い製品と云えるかもしれません。
※宜しければBQRYZ Spring1のレビューもご参考ください
※宜しければBQEYZ Summerのレビューもご参考ください
BQEYZ Autumnの納期として今回国内amazonから購入しましたが、中国本土からの発送という事もあり、prime扱いのようにはいきません。AliExpressでの購入と同様にオーダーから約2週間で届きました。昨今、AliExpressでの購入では感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきません。それでも徐々に回復傾向であり物流の安定化までもう少しというところですね。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。
そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。
2. BQEYZ Autumn実機レビュー
それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。
パッケージングはシックな黒色を基調とし側面の一部が橙色の比較的厚めの箱はスリーブタイプの化粧箱となっており表にはメーカー名と商品名が印字されています。裏にはイヤホンイラストとスペックが記載され高級感のある装いです。
外側のスリーブを外すと橙色の箱の中に黒地の内装カバーがあり、イヤホン本体が収められています。
内装カバーを外すと、黒地の台座に収められた付属品の一部が登場します。
更にその黒地の台座を取り外すと箱の底に残りの付属品が収納されています。
付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が計2セット。他にはケーブルとケーブルバンド、交換用フィルタ、フィルタ交換用の治具、清掃用ブラシ、イヤホンケースです。A20,000で販売している中価格帯として必要十分の豪華な付属品となります。
イヤホンケース内にはケーブルとケーブルバンド、清掃用ブラシが収納されています。
※交換用フィルタの収納プレート
※フィルタ交換用の治具
※清掃用ブラシも付属
それではいよいよ本体を見ていきます。
ビルドクオリティですが、中華イヤホンの中価格帯A20000として十分な仕上りです。金属同士の合わせ面も綺麗に揃っています。
カラーバリエーションはBenzo Blue(濃紺)とAsh Green(黒銀緑)の二色があり、その色彩は両方シックな色合いとなっています。そのため今回は珍しいAsh Greenを選択しています。
付属ケーブルは先述の通り高品質線材を使用したそれぞれ4芯の銀メッキ銅線と高純度銅線の8芯ミックスタイプを採用しています。プレイヤー側コネクタはI字タイプでBQEYZロゴ付、イヤホン側は2ピン仕様の極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に引っ掛かりが無く、タッチノイズも殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり線材品質の高さと取り回しの良さを感じられます。今回4.4mmプラグを選択しましたのでバランス接続に対応しており、積極的にリケーブルする必要がありません。
参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。
※画像左からNFAUDIO NM2+、BQEYZ Autumn、BQEYZ Spring1
AutumnとSpring1の外観の比較として、サイズ感はほぼ同じで比較的小ぶり。どちらも厚みはややあり、造形もほぼ同じですが、耳甲介艇の突起がAutumnには僅かにありますし、ステムノズルの長さと角度がAutumnの方が短く寝ています。NM2+との比較ではオーソドックスな造形のNM2+も比較的コンパクトで厚みがありますが、それよりもAutumnの方が小さく厚みがあります。ステムノズルはノズルとしてはNM2+が長いものの、装着結果として同じ長さで角度もほぼ同じであり、比較的にどちらもオーソドックスな造形は耳への収まりが良く装着感が悪くありません。
イヤホンとケーブルを接続するコネクタには全て2ピン仕様ですが、NM2+はQDCタイプが採用されています。
三機種共にシェルの材質は、オール金属製で先述の通り金属が採用されており、素材は明らかになっておりませんが手触りから一般的なアルミニウム合金と推察します。
三機種共に重量はほぼ同じですが、AutumnとSpring1の方がやや重め。と云っても数グラム程度。同価格帯他社製と比較しても軽量の部類で、耳への装着時にはその装着感からは殆ど重さを感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすく三機種共にやや太めと云えますのでイヤピ選びは重要です。
また、ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり異物混入による故障を防ぐことができますし、Autumnには清掃用のブラシが付属していますので助かります。
シェル本体の形状からはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。
なお、先述の通りAutumnを含む三機種はステムノズルが比較的太めなものの、実際の装着感は悪くなく、寧ろ付属イヤーピースの形状からは耳に密着させ装着する想定の様子。付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。
※付属黒イヤーピース。傘は一般的な弾丸形状のシリコンタイプ
※付属グレーイヤーピース。付属黒より開口部が大きく、背が低め。傘は一般的な弾丸形状ですが黒よりもやや小さめのシリコンタイプ
※付属黒とグレーでは同じサイズでも開口部と背の高さ、傘の広がりも小さめ
付属のシリコンイヤーピースは二種あり一般的な形状で通常の丸径、傘の裾野が弾丸タイプ。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。
付属黒は音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプに感じ、付属グレーの方が中高音がはっきりと聴こえる印象です。両方共に軸は短めとなりますので耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入し耳へ密着させることを想定している様です。付属イヤピで装着感に問題ない場合は良いですが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。
残念ながら付属イヤーピースでは私はフィッティングが上手くいかず、抜け気味となり低音が逃げて音が軽くなる為、手持ちのSedna EarFit(軸の長いノーマルタイプ)MSサイズで耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。
低、中価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできず他社製を使用しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。
このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)
3. BQEYZ Autumn音質レビュー
それではいよいよ音質についてまとめていきます。
3.1. 再生環境の更新
2022年を迎えレビュー時の再生環境を変更することにしました。
昨年後半はDAPにZX507を使用していましたが、今回からandroidスマホをDAPのNW-ZX507と同じSony Xperia 5 IIにUSB-DACとして、Shanling UP5を使用し検証してみることにしました。再生アプリはUSB Audio Player PRO(以下UAPP)を使用します。
Shanling UP5はLDACに対応するBluetoothレシーバー機能とUSB-DAC機能を両立しており、音楽再生用のDAPが無くても今使っているスマホをDAPと同じ様に使うことができるコンパクトで高機能のUSB-DAC&Bluetoothレシーバーです。
UP5は前モデルのUP4ではUSB-DAC機能が16bit/48kHz止まりでしたが、32bit/384kHzに向上しMQAにも対応。USB-DACと云えば以前Shanling UA2のレビューをしていますが、UP5の良いところは音量調整用の物理ダイヤルがUP5本体に搭載されていてiPhoneやandroidスマホで使用する場合に音量独立調整ができるので「爆音問題」を回避できる等、使い勝手が向上しています。UA2はiPhoneやiPadでApple Musicは捗りますが、androidスマホのSOC回避問題や爆音問題があり、実力を発揮しにくい難点があります。
※宜しければShanling UA2のレビューもご参考ください
USB-DACとしてのShanling UP5はDACチップにESS ES9219Cをデュアル採用しなめらかで解像感の高い音を聴かせてくれます。悪く云うと淡々と鳴らす感じですが、20,000円を少し超える価格を考えると申し分なし。androidスマホにイヤホン直挿しで聴く音とは異なり高音質と云えます。
実はShanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3XとDACや出力等のスペックは同じです。試聴した限りでは音質もほぼ同じと云えると思います。
気になるZX507と比較したUP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。
一方、ZX507は高音の主張を感じ、低音も量感を感じる鳴り方で多少の演出感を感じます。中音もやや真ん中に集まるもののボーカルが前に出て聴きやすく熱量を感じられ音楽に没頭し易くなっています。
簡単に違いを云えばグルーブ感を感じ音楽を楽しく聴く事ができるリスニング寄りのZX507に対し、UP5では音をそのままに淡々と鳴らしフラットに近いバランスでモニターライク寄りと云えます。どちらも良い音でありベクトルが違う音であるため、どちらが良い音と云うよりは好みで分かれる音と云えそうです。一聴しただけではZX507の方が派手に鳴りますので良い音という印象を持つかもしれません。
さて、Shanling UP5をローゲイン、デュアルDAC、EQオフ、チャージオフ、DACフィルタはデフォルトのLinear Phase Fastに設定しUSB-DACとして使っていきます。音質の基準を従来のZX507からShanling M3X相当に変更した事になります。
接続するandroidスマホは前述の通りXperia 5 IIです。スマホですので、もちろん手持ちの音楽ファイル再生だけでなく、YouTubeの動画や音楽配信サービス、Apple Musicの(ハイレゾ)ロスレス再生にも対応(※1)しています。そして、元々スマホですので通信系は安定しておりBluetooth接続も安定しています。一方のandroid搭載DAPではエントリーからミドルクラスではSoCがSnapDragon660未満のものが多く、ハイエンドでも処理能力が低く機能不十分となるモデルもあります。まあ元々音楽Playerですから、ね。
※1:2022/01/29現在 android版Ver3.8.0(1174)で動作確認
※USB-DACの違いが気になる方は以前の記事の後半3.1.項をご覧ください。
※低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。miineco106.hatenadiary.jp
※FiiO M5とShanling M0の比較もよろしければご参考ください。
3.2. BQEYZ Autumnの音質
それでは実際に聴いてみます。
ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りイヤピはSedna EarFit MSサイズ、付属ケーブルです。音質調整フィルタはNORMALです。
3.2.1. NORMALフィルタの場合
箱出しで聴いてみた第一印象は「高音も低音も不自然に強調されていない、フラット寄りのリスニングサウンド。」です。
箱出しではやや低音に膨らみと高音の荒さを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まり高音の解像感の高さを感じます。
音場はやや広めから広め。前後左右の空間の広さを感じられます。
高音は煌びやかで響きの良さを感じます。上の上までの伸びやかさもあ感じられ、適度な華やかさと存在感は十分でなめらかさもあり尖りは感じません。
低音は量感こそ控えめですが、芯が感じられ締りとキレは良好。ベースラインは追いやすい。重低音は沈み込みは深く、芯の強さもあります。
中音は高音同様に響きが良く華やかさがありますが、団子感やゴチャつきを感じません。ボーカルはクリアで自然な位置から曲によってやや近めで聴かせてくれクリアで聴きやすく、ドライ気味ですが瑞々しさを感じます。
一言で云えば中高音寄りのフラット寄りの僅かにドンシャリ。
高音は煌びやかさは十分で響きのある華やかさは前に出るような主張もなく、自然な感じ。超高音は僅かに控えめな印象ですがレンジの広さを感じられ、伸びも自然でなめらか。不快に感じる尖りとは無縁で、小さな音でもしっかりと耳に届き埋もれることは無い他の音を邪魔しない爽やで清々しい音。決して最初だけ強調され前に出るようにシャンシャン鳴らすのではなく自然な強さで鳴り演出感はありません。全体のバランスを崩していない自然な音は1DDとして非常に質の高い高音を届けてくれます。
中音は凹みを殆ど感じず、楽器の音はボーカルの周りから少し離れやや後ろ辺りに位置し適度に華やかに鳴りますが、その音は統制され見通し良く鳴ります。分離の良さを感じられます。ボーカルは自然な位置から曲によってやや近めでクリアで聴きやすく、高音や低音に埋もれません。
ボーカルは僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ不自然さは無く、瑞々しさを感じられます。その分しっとりとした艶のある声を楽しみたい場合には相性というか分の悪さを感じるかもしれません。
低音は量感は控えめに抑えられています。そのため広がりや響きはそれ程感じません。響きというよりも芯のある締りの良い音はキレの良さと相まって小気味良さを感じます。音の強さ、音の強弱や音階の掴みやすさを重視した解像感の高い音を感じられますが、雰囲気の良さとは対極かもしれません。中高音寄りのフラット寄りのイヤホンとしては適度な低音と云えるのかもしれません。
重低音は沈み込みは深く、芯のある強さを感じられ小気味良く感じられます。低音域は高音中音をリズミカルに下支えするキレの良さは高音中音の煌びやかで響きの良い音をマスクすることなく感じられると思います。
3.2.2. TREBLEフィルタの場合
次に、音質調整フィルタをTREBLEに交換してみます。
一聴して中高音の見通しが良くなり中低音域が控えめに感じます。
NORMALフィルタよりも「Aqua Timez/千の夜をこえて」のイントロから中高音の空気感に違いを感じ唄いだしのギターが前に出てくる感じと生々しさがUPした印象です。その分重低音はさらに控えめに感じますが、これはこれでモニターっぽくて悪い印象はありません。
中高音重視の方には合いそうな印象を受けました。
3.2.3. BASSフィルタの場合
次に、音質調整フィルタをBASSに交換してみます。
こちらはNORMALに比べてボーカルがやや前にでてくる印象です。
曲は同じ「Aqua Timez/千の夜をこえて」ですが、TREBLEでは前に出てくるギターがNORMALと同じあたりに下がりますが、中低音域の空気感が濃くなる印象です。特に重低音の沈み込みの深さはズドゥォーンと深く強く響きます。これらがNORMALやTREBLEでは感じなかった雰囲気の良さを感じられ、生音というかライブを聴いている感覚に近い生々しさを感じられます。一方で実際に中低音がしっかりと鳴る印象が強くなりますので、TREBLEを聴いた後では中高音が薄くマスクされたように感じられるかもしれません。
雰囲気の良い鳴り方は音楽を楽しく聴く目的に合っていると思います。
3.2.4. 音質調整フィルタのまとめ
正直な感想としてフィルタ交換で印象が結構変わるのには感心しました。SW付やステムノズル部のフィルタ交換タイプもありますが、SW付はそもそも変化が少なかったり、ステムノズルフィルタ交換では音のバランスを崩すものも多く、イヤピでも調整する必要があったりと個人的に懐疑的でした。
とはいえ、音質調整フィルタをあれこれ交換し聴いてみて最後にNORMALフィルタの戻した際に「やっぱりコレだな」と一人で納得したというオチはありますが、実際に高音や低音の強さのバランスと中音域の統制された鳴り方はAutumnの最大の特徴、良さだと思いますしメーカーがNORMALフィルタをAutumnのリファレンス又はベストバランスとして世に送り出した訳ですので自然な感想なのかもしれません。
3.2.5. BQEYZ Spring1との比較とAutumnの音質のまとめ
Autumnは同社のSpring1の音質傾向に近くフラット寄りのバランスで中高音の解像感の高いモニターライクな傾向と感じています。
それでも1DDのAutumnと多ドラハイブリッドのSpring1では中高音域で音のつながりの良さはAutumnに軍配が挙がります。解像感ではSpring1にやや分がありそうですが、かなりレベルの高いところでのお話であり、何方も解像感は高いと云えます。そういう意味では中音域が一番違いがあり、多ドラの各ドライバが重なる音域ではどうしてもごちゃつきだったり重なりが感じられてしまいます。Spring1ではかなり統制されていると感じますが、Autumnではすっきりと整理されていて不自然さはありません。
1DDだけでも高品質のダイナミックドライバを使用し、しっかりとチューニングすることで、高音質を実現したAutumnは多ドラハイブリッド凌ぐ解像感と自然な音場感の良いモデルと云えます。
まとめるとBQEYZ Autumnは中高音重視の爽やかで清々しさのあるリスニングサウンドは高音と低音は自然な鳴り方としながら解像感は高く、全音域をフラットな音とすることで音楽を分析的に聴くことも可能なイヤホンとなります。尤も、高音中音は華やかで見通しが良く、低音の芯のある音はモニターライクでありながらも、リスニングで心地良く音楽を楽しめると云えそうです。
一方でリスニング用途としての聴いていて楽しいドンシャリバランスとは言い難く高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方には、フィルタ交換をしてももの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。
高音 Summer ≧ Spring1 ≧ Autumn (音の強さ)
中音 Autumn ≧ Spring1 ≧ Summer (音の統制)
低音 Summer ≧ Autumn ≧ Spring1 (音の強さ)
ボーカル Autumn ≧ Spring1 ≧ Summer (なめらかさ)
※音圧バランスや音色の参考程度に
4. BQEYZ Autumnの総評
BQEYZ AutumnはBQEYZの四季シリーズ第四弾(春が2種あります)として最初期モデルSpring1のサウンドを踏襲しブラッシュアップした解像感の高い音を聴かせてくれるモデルと云えます。
響きの良い澄んだ高音域は音数の多い楽曲でも破綻することなく、中音域は音が整理され響きも良くなめらか。締まりの良いタイトな低音域はリズミカルに高音中音域を支え、解像感の高い音を耳に届けてくれる爽やかで清々しい音色はモニターライクな音を好まれる方にも好評を得そうな音質にまとめられていると思います。
そしてしっかりと音色の変化を感じられる音質調整フィルタはAutumnの魅力を高めてくれ、BQEYZの音づくりの真面目さに好感を持ちますし、同価格帯ではバランス型の優等生モデルとしてお勧めできます。一方で特徴を求め一芸に秀でるモデルとはなりませんので注意が必要です。例えば高音特化ならばNFAUDIO NM2+も同価格帯にあり選択肢と成り得るからです。
そういう意味では中華イヤホンは中々試聴をする機会がありません。国内代理店がある商品はeイヤホン等で視聴できる場合がありますので機会があれば是非試聴をしていただければ幸いです。
最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年1月29日)は国内amazonやAliExpressで発売されておりますが、国内amazonでも本国発送だったりとその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。
Autumn
以下、付属ケーブル、NORMALフィルタ イヤピ Sedna EarFit MS、DAC UP5使用
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★☆ (BASSフィルタ★5)
音場★★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
Spring1
以下、付属ケーブル、イヤピ リファレンスタイプM、DAC UP5使用
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★☆
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★☆ (多ドラの豊潤な中高音好き★5)
※☆0.5、★1.0
OH1S
以下、付属ケーブル、付属シリコンイヤピ M、DAC UP5使用
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★☆
音場★★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
あとがき
今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A20K帯中華1DDイヤホンの商品のレビューとなりました。同価格帯の多ドラハイブリッドモデルとは一味違う1DDの良さ感じさせられました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。
また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ