みぃねこの備忘録

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KZ ZEX Proレビュー ※KZ ZEX、CCA NRAとの比較とUSB-DACでの比較含む

こんにちは。

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

年が明けて数週間が経ちました。新年1回目はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、1BA+1DDハイブリッドモデルではなく、1BA+1EST+1DD多ドラハイブリッドモデルのKZ ZEX Proについてレビューをまとめたいと思います。

昨年末にAliExpressのKZ Official Storeで購入しましたが、現在はコラボ仕様の取扱のみ。購入履歴もコラボ商品に置き換わっていました。

 

ja.aliexpress.com

 

純粋にKZ ZEX Proを入手したい場合は以下のセラーは取扱があるようです。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも本国発送ですが取扱がありますが、殆どのセラーでコラボ仕様に置き換わっているようです。

 

 

 

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1. KZ ZEX Proについて 

KZ ZEX ProはKZ ZEXの後継というよりは上位モデルと云えそうです。それはZEXが1EST+1DDハイブリッドモデルでしたが、それに1BAを追加したトリプルドライバー構成となり、1ESTの高音域~中高音域を補強するメーカーの意図が汲み取れます。

KZは最早言うまでもない低価格中華イヤホンのトップランナーです。そのKZに先駆けてKZ系ブランドのCCAが低価格帯U3000初のESTドライバを搭載した1EST+1DDハイブリッドモデル、NRAを発売し本ブログでもレビューしています。そしてNRAの後にKZ ZEXがNRA同様にESTドライバを搭載したモデルを発売しました。本ブログは中華イヤホンの低価格帯1DD、シングルダイナミックモデルや1BA+1DDハイブリッドモデルを中心にレビューを行っていますが、20年後半のKZ EDXから始まったU1000、シングルダイナミックモデルが昨年のトレンドモデルと云え、1BA+1DDハイブリッドモデルはそれまでの勢いに陰りを見せていました。そんな折、CCA NRAがBAの代わりにEST、静電ドライバを採用した1EST+1DDハイブリッドモデルを登場させ、低価格帯の話題の中心となりました。

EST、静電ドライバはこれまでに高級機に採用されておりましたが、NRAやZEXという低価格帯に採用されたのは驚きましたが、最近になり高級機のESTとは異なり省電力でも鳴らせるタイプのもの。純粋なESTとは異なる様です。それについては色々と思うことはありますが、中華ですから、…ね。解釈の相違と云えばそれまでですし、翻訳上の問題もあると思います。それでも実際に聴いた限りではBAとは異なる鳴り方で少なくても低価格帯のBAの尖った音ではない繊細でなめらかさを感じる音はESM(Electro Static Magnetic。以下EST省電力タイプをESMと表記)ドライバと云って問題ないのではと個人的に考えています。

そして、このレビューをまとめるにあたり無視できないのが、発売と同時に購入したKZ ZEX Proが届く頃には某動画系レビュアーがチューニングを監修したKZ x Crinacle CRNが発売された事。しかもベースとなったZEX Proとは音が違うと評判です。めっちゃ興味はありますし、いつか買うかもしれませんが、今は静観しておきます。だってちょっと割高に感じるんですもん。

 

KZ ZEX Proに採用したESMはNRA同様の6.8mm径の低電圧タイプ(メーカー資料)。これはESTの静電技術を従来の磁気技術に活用した特殊技術と云え、少ない電力で駆動させることができるものの、対応できる音域が狭くなっていて、その分安価に製造することができるようです。

一方、高級機で採用しているESTは駆動するのに高電力が必要ですが、その分広い音域を対応が可能となっています。これはドライバのコストに直結しており、低価格帯に採用され無い理由です。中華のビジネスは良いものが造りたいというよりも売れるものを造りたい。その為にはできることを最速でする。そんな文化の違いを感じますが、それを否定するものではなく当にビジネス大国と云えます。

 

次に、ZEX ProとZEXやNRAとの最大の違いですが、要約すると以下の通りです。

  • ZEX ProはZEXと同じ10mm径デュアルマグネティック(二重磁気)ダイナミックドライバにBAを1基追加したトリプルドライバ
  • ZEXは従来の10mm径デュアルマグネティック(二重磁気)ダイナミックドライバを採用
  • NRAは新型のトリプルマグネティック(三重磁気)ダイナミックドライバ(DD)を採用

ZEX Proでは先述の通りZEXに1BAが追加されたトリプルドライバ。NRAは三重磁気ドライバが採用されていて、従来の二重磁気ドライバの正統進化版でタイトでそれよりもキレの良い音。

尤も、従来の二重磁気ドライバでもキレの良い芯のある音ですので、三重磁気はコストが高く「ビジネス」として二重磁気で十分というメーカー判断なのでしょう。

個人的には「そういうところだぞ」と思う次第です。

 

低価格帯中華イヤホンでポピュラーな1BA+1DDハイブリッドモデルでは高音域をBA一基が担い、DD一基が中音から低音域を担います。音を繊細に高い解像感で表現するのにBAは最適であり、低価格帯の1DDモデルではコストの制約から質が高くなく全域を表現するには力不足。低音に寄せるか高音に寄せた音づくりになってしまいます。全域をバランスを取ったモデルもありますが、音が粗かったり、高音の上の方と低音の下の方がバッサリと切られていたりと音のバランスが悪いものが多くなっています。その結果、現在のDDには中音から低音域を任せ、高音をBAで補強してきた訳です。しかし、ここでも低価格帯のコスト制約がでてきます。このクラスで採用しているBAの質は残念ながら高いとは言えず、音に粗さがあり解像感を重視した結果、シャープさはあるが故に尖りがある荒さは痛し痒し。それをZEXやNRAではESMによって高音から中高音域を担わせる事で低価格帯の1BA+1DDハイブリッドモデルの次のステージを狙った訳です。

ところが、中華イヤホンの凄さはここからです。ESMだと超高音域は控えめじゃね?となれば、従来のBAでそこを補えば良いんじゃね?という真偽は分りませんが、所謂足し算で弱点に手を入れてきました。コスト的にはたかが知れた中華BAです。うまく合致したという事なのでしょう。

もちろんドライバの種類や質だけでなくチューニングも重要です。超高音域のBAと高音から中高音域のESMと中音から低音域のDDの各音域のクロスオーバーは重要でメーカーの腕の見せ所です。中華のチューニング技術は数年前に比べ進化しており、実際U3KのKZ ZSN pro XやKBEAR LARKは国内有名メーカーのU5K辺りとも良い勝負をすると思います。そこにNRAやZEXでも置き換えは十分と感じるところに1BAを追加したZEX Proがどう食い込んでくるのか、期待が高まります。

 

KZ ZEX Proのスペックですが先述の通り中華イヤホンの低価格帯で多く採用されている1BA+1DD片側デュアルドライバのハイブリッド構成からトリプルドライバ構成とし高音域用に超高音域のバランスドアーマチュアドライバ(BA)一基と、高音から中高音域のESMを一基採用。中音から低音域用のダイナミックドライバ(DD)を一基搭載した片側トリプルドライバ構成の多ドラハイブリッドモデルです。

ダイナミックドライバはZEXと同じKZ系の直径10mmの二重磁気ドライバを採用。ESMも6.8mm径低電圧タイプを採用。加えて、BAに定番の30095を採用しステムノズル内ではなく、シェル内に横向きに搭載しています。

イヤホン本体には金属製ステムノズルと樹脂製シェル本体に金属製フェイスプレートが採用されています。ZEXやNRAではステムノズルとシェル一体型の樹脂製のため、高音域の響きという面ではZEX Proは有利と云え、この辺りの違いにも注目です。

 

※宜しければKZ ZEXのレビューもご参考ください

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KZ ZEXの納期として今回AliExpressで購入し中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのようにはいきません。今回はオーダーから3週間で届きました。

昨今、感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきませんが、それも徐々に回復傾向であり最近はシンガポール経由ではなく台湾経由等で動き始めていますので、物流の安定化までもう少しというところですね。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. KZ ZEX Pro実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングはいつものKZの白を基調としたシンプルな小箱でスリーブタイプの化粧箱です。
箱の表にはイヤホンイラストが。裏にはスペックが記載されています。

 

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スリーブを外すと白地の内装の台座にイヤホンが収納され、台座を取り外すと箱の底に付属品が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースがKZに付属する溝有黒色弾丸形状の白色タイプのS、M、Lの3種が計1セット。そのイヤピMサイズが本体取付け済。他にはケーブルです。U3K、実売2,500円の低価格帯として必要最低限の付属品となります。

 

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次にビルドクオリティですが、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせない、近年のレベルアップを感じられます。カラーバリエーションはBlack、Rose Goldの二色展開。今回はRose Goldを選択しました。

 

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付属ケーブルは従来のKZで付属のものとは異なるZEXで付属するタイプの白色(シルバー?)の4芯銀メッキ銅線の2本並列タイプが採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプでイヤホン側はKZ-Cタイプ、2ピン仕様、KZ極性(上がプラス)です。この付属ケーブルは耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的にやや絡まりやすいものの、しなやかなものとなり低価格帯に付属するケーブルの中でも高品質の印象。とはいえそのまま使用できますし白色ケーブルはやや派手さはありますが、シェル本体の色が今回Rose Goldの為、それと相まって綺麗な印象を持ちます。個人的にはケーブルの被膜は黒色の方が合わせやすくて好きですね。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

※画像左からKZ ZAS、KZ ZEX Pro、KZ ZEX 

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KZ ZEX proとKZ ZASはシェルが似ていますが耳甲介艇に納まる凸部の高さはほぼ同じですがうねりZEX Proが大きく装着感に個人差がありそうです。実際シェルの合わせ面からも金型が異なることが分かります。KZ ZEXとCCA NRAはシェルが共通の様です。そのため外観の比較にはZEXの他にNRAではなくZASを用いました。サイズ感はZEXがややコンパクトでZEX ProはZAS同様に厚みがあり大柄に見えます。造形はZEX ProとZASがカスタムIEM風の造形でZEXはオーソドックス。ZEX Proの造形はZASで装着に苦労する方には耳への収まり、装着感は問題があるかもしれません。

三機種共にKZ-Cタイプのコネクタとなっています。

シェルの材質は、ZEX ProとZASがシェル本体のみが樹脂でステムノズルとフェイスプレートが金属に対し、ZEXはステムノズルとシェル本体が樹脂製でフェイスプレートのみが金属です。

重量は三機種共にほぼ同じで、耳への装着時には殆ど差が分からないレベルです。三機種共に耳への装着感は悪くありませんが、ステムノズルはZASが細く、ZEX ProとZASがやや短め、ZEXはステムノズルはZEX Proよりもやや太く長め。角度はZEX ProとZASがやや起きています。

また、ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがあり異物混入による故障を防ぐと同時に、何れも目が細かく音への変化が期待できます。

そして、シェル本体の形状からは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りZEX ProとZEXはステムノズルはKZ ZSN pro Xのようにステムノズル内にBAを収める機種よりも比較的細く、ZASは細いです。太いステムノズルの場合は装着感に影響があり、圧迫感を感じやすくなりますが、ZEX ProやZEXではその影響が感じ難いため、イヤーピースのサイズで比較的容易に調節できます。

 

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付属イヤーピースはKZ系に付属する溝有黒色弾丸形状の白色タイプです。個人的にこの付属イヤピは従来の黒色タイプよりも装着感が良く感じる事が多いです。これならばそのまま使うのもアリだと思っています。

付属イヤピは音質的にはKZ溝有黒色タイプよりも高音中音をクリアにして低音控えめにするタイプに感じますが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い、この付属イヤーピースで上手く合わせることができましたので、そのまま使用し耳奥に栓をするように装着しフィットしました。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じますが、今回は付属の白色タイプで問題ありませんでした。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. KZ ZEX Pro音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り、Sony NW-ZX507を基準としてレビューを行います。

ZX507については他の方のサイトでも詳しく解説していますので、簡単に。SONYのミドルクラスのサブスク対応android機です。エントリーモデルのNW-A100シリーズとの違いは4.4バランス接続にも対応しています。DACには独自開発のS-Master、フルデジタルアンプが採用されています。

音質傾向としては、高音域と低音域をしっかりと鳴らすやや派手な音ながらも、ボーカルを邪魔せずにそれを引き立てています。所謂ドンシャリ傾向と云えますが、過剰なほどではなくて若干の演出という感じ。そして中音はボーカルに対し相対的に控えめに感じられますが、その分ボーカルはクリアです。特徴としては低音に厚みがありますので音楽を雰囲気良く聴くことができるSONYの音といえます。

個人的には音楽を楽しく聴くという本来の目的を達成するために必要十分なDAPと考えており、昨年6月からは音楽配信サブスクリプションサービス、Apple Musicがロスレス対応しましたが、android搭載DAPとして勿論対応(※1※2)しています。そして、何よりもBluetooth接続は安定していてLDAC対応していますので、同社の左右独立型完全ワイヤレスイヤホン、WF-1000XM4との相性も良く、標準アプリで再生する場合にワイヤレスでもハイレゾ級(24bit/96kHz、最大990kbps)で音楽を楽しめますが、強いて云えば電池持ちが悪い位しか不満はないです。

※1:2021/07/19現在 android版Ver3.6.0ベータ版(1115)で動作確認

※2:2021/07/22現在 android版Ver3.6.0正式版(1118)が配信開始

 

 

 

低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。

 
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※FiiO M5とShanling M0の比較もよろしければご参考ください。 

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属溝有黒色Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「主張のある低音と澄んだ高音域のドンシャリ」です。

箱出しでは低音に主張を感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音が落ち着き締まったキレの良い音に。相対的に高音中音がクリアに感じます。

音場は広くも狭くもない普通。

高音は適度な煌びやかさと伸びやかさは華やかさがあり存在感がありますが、刺さりを感じるような鋭さ抑えられています。

低音は十分な量感があり芯が感じられ締りとキレは良好。ベースラインは追いやすく曲によって目立ちます。重低音は沈み込みは深く強さも有ります。

中音は華やかでありながらゴチャつきを感じません。ボーカルは自然な位置に感じますし、クリアに聴かせてくれ聴きやすい。

一言で云えば中高音寄りのややドンシャリ

高音は煌びやかで伸びも良く、音の消え入る様を感じられます。低価格帯のBAでよくある前に前にと出るような主張はなく、かと言って控えめという程ではなく、自然な演出感を抑えた鳴り方です。BAを追加した超高音は伸びも良く多少の演出感がありますが、綺麗に伸びる印象です。ベースとなったZEXと同様にBAのみの高音域で感じるような不快な尖りはなく、中音域やボーカルを邪魔しない音。不快なシャリつきを感じない統制され整った音は、ZEXやNRAと同様でありながらもそれを超える印象です。

中音はZEX同様に僅かに凹みを感じます。NRAでは僅かに凸に感じましたが、ZEX Proでも従来のKZのバランスです。楽器の音はボーカルの周りやや後ろ辺りに位置し華やかに鳴り小さな音の消える様を感じられる解像感と分離感はZEXやNRA同様に良好です。特筆すべきはその中高音の小さな音がZEX Proでは聴こえます。ZEXやNRAでは聴こえなかった音はZEX Proでは追加されたBAが超高音から高音カバーし、ESMが中高音寄に表現できていると云えそうです。

ボーカルはZEX同様にややドライ気味なものの息遣いを感じられ自然な感じ。バラードなどのしっとりとした雰囲気を楽しみたい場合には相性というか部の悪さは感じられるものの悪くありませんが、こちらはNRAの方に分がある印象です。

低音はZEX同様に十分な量感があり、NRAよりも多く、KZの強くキレの良い低音です。二重磁気ドライバはNRAの三重磁気ドライバよりも沈み込みの深さがあり広がりと響きを感じます。一方、NRAの三重磁気ドライバはそれよりも芯が強いタイトでキレの良さを感じまが、その分、重低音は強さはありますが、沈み込みは少し抑え気味の印象です。

まとめとして、ZEX ProはZEXの音を踏襲し正統進化したサウンドと云え、高音と低音に多少の演出を感じる部分はあるものの、どこかの音域に尖ったところを持たせずにバランス良くまとめた音という印象です。

個人的にはZEX ProもやっぱりKZサウンドという、ブレないKZに好感を持ちます。

 

※以前のCCA NRAのレビューもご参考ください

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ESMドライバを採用したCCA NRAやZEXのブラッシュアップ版と云えるZEX Proは高音はしっかりと上品に低音はノリ良く鳴らす、音楽を聴く事を楽しませてくれるKZサウンドは健在と云えます。従来のBAのみを使った高音とは違いBAとESMドライバが尖りがないのに解像感の高い音を聴かせてくれます。NRAやZEXでは聴こえなかった中高音がZEX ProのBA追加によるESMドライバとの守備範囲の変更が功を奏していて、中音は華やかで見通し良く、低音は勢いのある強さとキレのある音。中音域は僅かに凹みを感じますが、低価格帯では類を見ない分離と解像感は良好。ボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすい音質傾向は従来のKZサウンドを踏襲し正統進化した音と云え、従来の1BA+1DDハイブリッドモデルが成し得なかった音を実現したモデルと云えそうです。

それでもリスニング用途として小気味良い聴いていて楽しいバランスは中華イヤホンには高音域のシャリつく刺激的な強さや低音のドンの量が多い強ドンシャリを求め、演奏メインで聴きたい方には、もの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

 

3.1. 再生環境による変化

唐突ですが再生環境による変化を確認してみました。

昨年後半はDAPにZX507を使用していましたが、ちょっと思うことがあってandroidスマホXiaomi Mi 11 Lite 5GにUSB-DACとして、Shanling UP5FiiO Q5Sを使用し検証してみることにしました。再生アプリはUSB Audio Player PRO(以下UAPP)を使用します。

 

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始めにShanling UP5です。

Shanling UP5はLDACに対応するBluetoothレシーバー機能とUSB-DAC機能を持ち、前モデルのUP4を愛用していて、PCオーディオの際に有線イヤホンをBluetoothレシーバー機能で愛用しておりましたが、後継モデルのUP5に漸く買替することができました。UP5は前モデルのUP4ではUSB-DAC機能が16bit/48kHz止まりでしたが、32bit/384kHzに向上しMQAにも対応しています。USB-DACと云えば以前Shanling UA2のレビューをしていますが、音量調整用の物理ダイヤルがUP5本体には搭載されていてiPhoneandroidスマホで使用する場合に音量独立調整ができるので使い勝手が向上しています。UA2はiPhoneiPadApple Musicは捗りますが、androidスマホのSOC回避問題があり、24/48止まりとなる場合があり一部の高級スマホを除き、実力を発揮しにくいというのがあり、UP4をUP5に買い替えた訳です。

 

※USB-DACのShanling UA2のレビューもご参考ください

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さて、Shanling UP5をローゲイン、デュアルDAC、EQオフ、チャージオフ、DACフィルタはデフォルトのLinear Phase Fastに設定し使ってみます。

DACチップにESS ES9219Cをデュアル採用したUP5は非常になめらかで解像感の高い音を聴かせてくれます。悪く云うと淡々と鳴らす感じですが、20,000円を少し超える価格を考えると申し分なし。androidスマホ単体で聴く音とは異なり高音質と云えます。尤も同社のエントリーハイDAPであるM3XDACや出力等のスペックは同じ。音質もほぼ同じと云えますので、ユーザーの使い方によってM3XかUP5を選択できるもの嬉しいですね。

UP5の肝心の音質傾向ですが、高音はZEX Proの特徴を活かす鳴り方で綺麗に聴こえます。低音もしっかりと鳴り不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。

ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、非常にレベルの高い音質と云えます。

気になるZX507との比較ではZX507の方が高音の主張があり、低音も量感を感じる鳴り方ですが、中音がやや真ん中に集まるもののボーカルが前に出て聴きやすく熱量を感じます。

簡単に違いを云えばグルーブ感を感じ音楽を楽しく聴く事ができるリスニング寄りのZX507に対し、UP5では音をそのままに淡々と鳴らしフラットに近いバランスでモニターライク寄りと云えます。どちらも良い音でありベクトルが違う音であるため、どちらが良い音と云うよりは好みで分かれる音と云えそうです。一聴しただけではZX507の方が派手に鳴りますので良い音という印象を持つかもしれませんね。

 

次にFiiO Q5Sの場合ですが、販売価格50,000円超という事もありShanling UP5よりも多機能、高性能です。機能はLDAC対応のBluetoothレシーバーとUSB-DAC機能を持ちますが、他にも光、同軸、ライン入力等に対応するポータブルDACアンプです。

DACチップにはAKM AK4493をデュアル採用しアンプ部をモジュール交換可能としています。標準装備のAM3Eモジュールに加えTHX AAA-78回路を採用したAM3Dモジュールに換装することで音の変化も楽しめます。

今回はAM3Dに換装し、ローゲイン、バスブーストオフで試してみます。

一聴して音場の広さをと音のクリアさ感じます。

高音はZEX Proの本来の音というか悪く云えば控えめに聴こえていたものが、しっかりと鳴りながらも主張しすぎないZEX Proの音のバランスを感じさせます。

中音はUP5よりもさらに広がり左右だけでなく前後の奥行も感じ、分離や解像感は聴いていて楽しくなります。

ボーカルはクリアでZEX Proのややドライ気味な音は変わりませんが、息遣いを感じられ生々しさがアップします。

低音はZEX Proの特徴であるキレの良い音はそのままに力強さが増し、心地よさを感じます。

ZX507と比較ではZX507もけして音が悪いというわけではありませんが、何方もモニターではなくリスニング寄りの音であり、同じ土俵であればQ5Sの方がより良い音と云えますね。

 

まとめると、androidスマホにUSB-DACを接続しUAPPで再生した場合、エントリーハイからミドルクラスDAPと遜色のない音質で楽しむには十分と云えそうです。

特にZX507との比較では中華USB-DACコスパが高く、Shanling UP5ではZX507のリスニングサウンドとは対極のモニターライクの音は分析的に聴きたい方のニーズにも応えられますし、レビューにも使えそうです。

一方FiiO Q5S with AM3DではZX507と同様にリスニングサウンドでありながらも広い音場で解像感と分離の良いサウンドを楽しめますし、DAPに拘らない楽しみ方もあることを考えさせられました。

 

高音   ZEX Pro ≧ ZEX ≧ NRA (出音の強さ) 

中音   NRA ≧ ZEX Pro ≧ ZEX (出音の強さ)

低音   ZEX Pro ≧ ZEX ≧ NRA (出音の強さ)

ボーカル NRA ≧ ZEX Pro ≧ ZEX (質感の順)

 

 

4. KZ ZEX Proの総評

KZ ZEX Proは従来のKZサウンドを踏襲し1BA+1DDハイブリッドモデルの成し得なかった音を実現したモデルとまとめました。これまでのKZの1BA+1DDハイブリッドモデルではごちゃつきを感じる中音域は改善され音が整理されています。何よりもESMドライバによる高音域は従来のBAを強く鳴らすことで解像感を演出する手法から一線を画した自然な解像感が魅力です。低音は敢えて従来の二重磁気ドライバとすることでKZサウンドを踏襲した拘りのモデルと云えます。

近年飽和気味の低価格帯1BA+1DDハイブリッドモデル群からの新たな一手としてESMを採用したモデルはCCA NRAに続き、KZ ZEX、KZ ZEX Proが矢継ぎ早に発売され、コラボモデルを発売する等、KZの力の入れようが窺えます。2022年はKZを追う各社の動きに期待ですね。

結論としては「新しいものが好き」な方や2021年のKZサウンドの完成形が気になる方にはお勧めできます。一方で低価格中華イヤホンの強ドンシャリを求め検討されている方には注意が必要な商品です。

 

最後に、今回はAliExpressで昨年末発売された低価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年1月15日)はAliExpressや国内amazonでもコラボモデルに置き換わり発売しています。標準モデルとしての本機はAliExpressでは2,000円台の価格で入手可能です。一方amazonでは3,000円台とAliExpressの方が安価に入手できますが、その入手性には現在も難があります。とはいえこれまでの低価格中華イヤホンの中でも安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでprimeでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、少しでも安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。(コラボモデルは気になってます)

 

ZEX Pro

以下、付属ケーブル、付属溝有白イヤピ M使用、DAP M11 Lite 5G+UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

NRA

以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAP M11 Lite 5G+UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

ZEX

以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAP M11 Lite 5G+UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★☆ (KZサウンド好きの方★5)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンでなく、1BA+1ESM+1DD多ドラハイブリッドモデルの新商品のレビューとなります。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ