みぃねこの備忘録

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Trn VX Proレビュー ※KZ ZAS CCA CA16 比較含む

こんにちは。

今回は中華イヤホンの中から多ドラハイブリッドモデルのレビュー編として中価格帯で発売されたTrn VX Proについてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのTRN Promo Discount Store(@TrnDiscount)から購入しています。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取扱があります。

 

 

 

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1. Trn VX Proについて 

Trn VX Proは中華イヤホンの中価格帯で今年9月に発売された片側9ドライバ、8BA+1DD構成の多ドラハイブリッドモデルの新商品です。中価格帯U10Kの多ドラハイブリッドモデルとしてはこれまでのKZ ZASやZAXの片側8ドライバ、7BA+1DD構成を超えるモデルとなり、いよいよここまで来たかぁと感慨深く、中華イヤホンの進化は留まることを知りませんね。

Trnは中華イヤホンの低、中価格帯の雄であり市場を牽引するメーカーのKZのライバルと云えるメーカーです。初めのころのTrnはKZの後発という事もあり、KZの後追いモデルを発売し、音質もKZ同様のドンシャリでしたが、昨年後半からはKZの後追いを止め、定着していた「KZの後追いメーカー」という評判を脱却すべく、自社のブランドを確立しようと「Trnの音」を製品に展開していると感じられます。それは明確に感じられる変化であり、VXやSTM、V90Sではドンシャリを抑えフラットに寄せた中高音重視の音づくりはKZのドンシャリとは一線を画す音と云えます。

 

前述の通り8BA+1DDの多ドラハイブリッドのVX Proが登場するまでKZ ZASとZAX、CCA CA16とCA16 Proが7BA+1DD構成と中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデルの中でスペックの上で最上位モデルでした。この秋CCA CA16 Proが登場しましたが、VX Proが登場した今、正直目新しさは無く、CA16 Proが届くのを待っている身としては、VX Proを一聴した際に「CA16 Pro要らんかったかも」という想いが頭を過りました。まあ、CA16は個人的に好きな音の傾向ですから、それが同社のCKXで代用可能だったとしてもやはり後継機のCA16 Proは抑えておく必要がありますので(言い聞かせている)。

そもそもVX Proがいけないのです。

VXが中高音の解像感に激振りしてアレだったのにVX Proはとても普通に良い音がしています。例えるなら国民的アニメ、未来の猫型ロボットが主人公をお世話する物語の主人公をTrnに置き換えた時に「Trnのくせに生意気だぞ~」とその物語に登場する音痴のガキ大将のように言いたくなる。そんな出来です。

 

Trn VX Proは中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデルの最上位のスペックを誇る片側9ドライバ、8BA+1DDモデルとなりますが、従来の搭載ドライバを増やすスペック競争の勝者というだけでなく、Trnの音が第二ステージに突入したことを窺わせる特異なところの無い音質は嬉しい誤算と云えそうです。

尤もVXよりも後に発売された同社の複数BAモデル、BA15も評判が良かったようですし、VX Proも偶然ではなく必然だったのかもしれません。まあ、BA15は発売当時2万円ですし、当たり前だよねと云われればそれまでです。

 

さて、VX Proは一聴してTrnの音と云えます。

KZの王道のドンシャリ程ではないフラット寄りの中高音重視の音は、CCAの大人しい音でもなく華やかでも過度の派手さはない音。そしてTrnの音では低音が疎かに感じる事が多かったのですが、真にフラットと云える丁度良い音がします。量感は多くはありませんが、VXのように物足りなさはありません。

個人的に中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデルのベストバイに成り得るのか?中価格帯U10K多ドラハイブリッドモデル、特にライバルとしてのKZ ZASとCCA CA16との違いを含めながら、レビューを纏めていきます。

 

Trn VX Proは前作のVX同様に比較的オーソドックスなシェルデザインが採用されていて、KZ ZASやCCA  CA16の方がカスタムIEMに近い造形です。シェルはオール金属製でKZ ZASやCCA  CA16のシェル本体が樹脂製でフェイスプレートとステムノズルが金属という構成とは異なります。肝心の耳への収まりはオーソドックスなシェルデザインにより良好で、KZ ZASやCCA  CA16の様なカスタムIEM風の造形は耳の形によって合う合わないがあるかもしれません。

 

Trn VX Proのスペックは先述の通り片側9ドライバ、8BA+1DDと同社の多ドラハイブリッドの旗艦モデルの構成であり、同価格帯多ドラハイブリッドモデルの中でも最上位のドライバ構成となります。搭載ドライバは低音域用のダイナミックドライバに新開発のカーボンナノチューブ(CNT)ダイヤフラムを採用した10mm径のデュアルマグネティックドライバを。BAは30095シングル4基が高音域を担当しステムノズル内に2基、シェル内部のダイナミックドライバ傍に2基を並列配置。50060シングル4基が中高音域を担当します。

前作のVXのスペックが片側7ドライバ、6BA+1DDのドライバ構成で低音域用ドライバは10mmデュアルマグネティックダイナミックドライバ。BAには30095シングル3基が高音域を担当しステムノズル部に2基とシェル内のダイナミックドライバ傍に1基を配置。50060シングル3基が中音域を担当しシェル内のダイナミックドライバ傍にこちらも2基と1基を分かれて配置。この1基は高音域用30095とセットで配置していました。

ドライバ構成だけで比較すれば同社V90の4BA+1DD構成に高音域30095と中音域50060をそれぞれ2基づつ追加し新型ダイナミックドライバに変更したようにみえます。

比較対象のKZ ZASのスペックは片側8ドライバ、7BA+1DDと昨年発売された同社ZAXやCCA CA16とドライバ数が同じ(構成は異なります)。搭載ドライバは中低音域用のダイナミックドライバにZAXと同様の10mm径ではありますが、それとは異なる二重磁気ダイナミックドライバを。BAは30019シングル1基が高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置。ZAXやCA16で採用された50024改良版、50024sデュアル(2BA)3基が中高音域を担当し、こちらもダイナミックドライバに並列に配置しており、これまでのKZやCCAで採用例の無い組合せとなります。特筆は、これまでKZでは頑なにステムノズル内に配置したBAが全てシェル内部に配置です。

次にCA16のスペックも片側8ドライバ、7BA+1DDとなります。搭載ドライバは低域用ドライバは7mm二重磁気ダイナミックドライバで、C12の10mmから小型化されています。BAは30095シングル3基が高音域を担当し配置がC12のステムノズル部からシェル内に。50024デュアル(2BA)2基が中音域を担当しこちらも高音域用BA同様にダイナミックドライバに並列に配置され、低音域を前述のDD1基が担います。

そのため、スペックからはVX Pro、ZAS、CA16の三機種がドライバ構成や配置が異なり比較対象として最適と考えています。

そして、前述の通りVX Proはステムノズル内に高音域用BAを2基配置、残りの高音域用BA2基を中音域用BAの4基と一緒にダイナミックドライバに並列に配置した、高、中、低音域の3way方式を採用しています。

これに対し、ZASではBAを新世代に変えるとともに、更に搭載位置もシェル内部のダイナミックドライバに並列配置し1BA+6BA+1DDとZSXとC12世代の3Way方式を踏襲しています。

また、CCA CA16ではZSXやC12の中音域に厚みを持たせていた1BA+4BA+1DDの3way方式を踏襲し高音域用のBAを追加した、高、中、低音域を3BA+4BA+DDの3way方式とスペック上、バランスの良いドライバ構成です。

多ドラハイブリッドや複数BAモデルで採用する3way方式では各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングのポイントを活用できるかが重要となります。このチューニングポイント、経験則を活かしたチューニング次第で「当り」か「外れ」という評価に繋がってくると云えますね。

 

※宜しければ過去記事もご参考ください

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Trn VX Proの納期は今回AliExpressで購入したため、流石の国内amazonのようにはいきません。まだAliExpress同様に中国本土からの発送は中国からの航空便減便による輸送への影響が大きく、それなりに時間が掛かる覚悟は必要です。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くの少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

  

2. Trn VX Pro実機レビュー

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは中価格帯U10Kでは手抜き感が少なく、パッケージ表面にイヤホンイラストがプリントされているスリーブタイプの化粧箱です。

ちなみに箱潰れはAliExpress購入の証です(細かいことを気にしてはいけません)。

 

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スリーブを外すと黒地の内装の台座にイヤホンが収納され、箱の下側にはイヤホンケースが鎮座しています。内装を取り外すと箱の底にはイヤーピース等の付属品が収納された小箱が。イヤホンケースにはケーブルが入っています。

 

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付属品はTrn系に付属する赤軸黒傘シリコンイヤーピース、S、M、L、3種各1セットと最近のTrnに付属する白軸白傘シリコンイヤーピース、S、M、L3種各1セットとフォームタイプM?サイズ1セットが付属します。その内、赤軸黒色シリコンイヤピMサイズがイヤホン本体取付け済みで、他にはケーブル、ケーブルバンド、6.35mmステレオプラグ変換です。U10Kの中価格帯としては必要十分の付属品です。従来とは力の入り方が違います。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホン、特にTrnで心配されるような各所の仕上りに問題はありませんでした。綺麗に仕上げられていると思います。

カラーバリエーションは銀色と青(紺)色の2種で、今回は青色にしました。


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付属ケーブルはTrn系に付属する黒色の編込みタイプのアップグレード版で、白(銀)色の編込みタイプの4芯銀メッキ銅線が採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプでロゴ入り。イヤホン側はKZ-Cタイプ(2ピン)、もちろんKZ極性(上がプラス)です。最近の中華イヤホンはKZ-Cタイプが多く採用されていますのでリケーブルの際には注意が必要です。私は気にせず2ピン仕様を使っています。

この付属ケーブルはシュア掛け用にチューブで癖付けがあり耳への装着性、使用感はそれほど悪くはありませんし、全体的にやや絡まり易いいもののしなやかなものとなります。また、U10Kの中価格帯に付属するケーブルとしては必要十分で、そのまま使用できますし綺麗な色合いのケーブルはイヤホン本体にマッチしていると思います。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

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付属の一つに6.35mmステレオプラグ変換プラグがあります。これは付属ケーブルが3.5mmステレオミニプラグのため、据え置きヘッドホンアンプ等で使用する際に3.5mmを6.35mmプラグに変換するアダプタです。個人的には付属させるほどの必要はないと思うのですが、メーカーの配慮なのか据え置きヘッドホンアンプでの使用を想定しているのかは真意不明です。そもそも据え置きヘッドホンアンプを持っている方は既に持っていると思います。

 

※画像左からCCA CA16、Trn VX Pro、KZ ZAS

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VX ProはZASやCA16同様にやや大柄なシェルです。まあ片側に8ドライバや9ドライバが搭載されていることを考えると妥当な気がします。その中ではVX Proは小柄でオーソドックスな造形です。

前項で触れた通りVX Proのシェルはオール金属製。ZASのステムノズルとフェイスプレートが金属でシェル本体が樹脂製に対し、CA16はステムノズルのみ金属です。

三機種共にフェイスプレートはラウンドタイプ。手の平に乗せると重量は流石にVX Proがやや重さを感じますが、耳への装着時にはあまり重さが気になりません。

次にステムノズルはVX Proはステムノズル内にBAを配置している為、やや太め。ZASやCA16はステムノズルは細め。長さと角度は三機種共ほぼ同じ。VX Proはステムノズルの太さに影響するイヤーピースの圧迫感はやや感じ、人によってはイヤーピースの選択がシビアになってしまうかもしれません。逆に云えばイヤーピース選択をしっかりできれば問題なく使えそうです。尤も耳の小さな女性や子供を除き、殆どの方で不満を感じることはないのではと思います。

また、これらにはステムノズル先端端面にメッシュフィルターが装備されていて、音質への影響はVX Proは丸穴が大きめで、ZASやCA16に比べるとあまり影響がなさそうです。

そして、シェル本体の形状や付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

 

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付属イヤーピースはTrn系に付属するいつもの赤軸黒傘タイプ(右)と最近のTrnに付属する白軸白傘タイプ(中)に加え、フォームタイプの三種です。個人的にいつもの赤軸黒傘イヤピは傘がやや硬めでコシがあり装着感は悪くないですし、白軸白傘イヤピは黒傘よりも僅かに硬めでしっとり感があるように感じます。

音質的には赤軸黒傘は低音に量感を与えてくれ中高音はマイルドにするバランス型。白軸白傘は中高音をはっきりさせて低音を強くタイトにする高音型。フォームタイプは高音を抑え低音の量感を増やしてくれる低音型という、選択肢が多く有難いですね。

とはいえ音質的には決して悪くはないのですが、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸いこの付属イヤーピースで装着感は良好で、特に赤軸黒傘イヤピが私は音質的にバランスが良く、耳の奥に栓をするように装着しフィットしました。

余談ですが、Sedna EarFit(shortではない)は軸が長めで傘がやや硬めなこともあり、最近一周回ってなかなかフィットしない場合に重用しています。

この様に低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Trn VX Pro音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り、Sony NW-ZX507を基準としてレビューを行います。

ZX507については他の方のサイトでも詳しく解説していますので、簡単に。SONYのミドルクラスのサブスク対応android機です。エントリーモデルのNW-A100シリーズとの違いは4.4バランス接続にも対応しています。DACには独自開発のS-Master、フルデジタルアンプが採用されています。

音質傾向としては、高音域と低音域をしっかりと鳴らすやや派手な音ながらも、ボーカルを邪魔せずにそれを引き立てています。所謂ドンシャリ傾向と云えますが、過剰なほどではなくて若干の演出という感じ。そして中音はボーカルに対し相対的に控えめに感じられますが、その分ボーカルはクリアです。特徴としては低音に厚みがありますので音楽を雰囲気良く聴くことができるSONYの音といえます。

個人的には音楽を楽しく聴くという本来の目的を達成するために必要十分なDAPと考えており、今年6月からは音楽配信サブスクリプションサービス、Apple Musicがロスレス対応しましたが、android搭載DAPとして勿論対応(※1※2)しています。そして、何よりもBluetooth接続は安定していてLDAC対応していますので、同社の左右独立型完全ワイヤレスイヤホン、WF-1000XM4との相性も良く、標準アプリで再生する場合にワイヤレスでもハイレゾ級(24bit/96kHz、最大990kbps)で音楽を楽しめますが、強いて云えば電池持ちが悪い位しか不満はないです。

※1:2021/07/19現在 android版Ver3.6.0ベータ版(1115)で動作確認

※2:2021/07/22現在 android版Ver3.6.0正式版(1118)が配信開始

 

 

 

低価格帯のイヤホンの場合でDAPの違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。


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それではZX507に直挿し4.4バランス接続で実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属赤軸黒傘 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「高音が強くシャリ付く最近のTrnの音。ただし前作VXよりも低音は鳴っている」でした。

箱だしではやや高音に鋭さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は高音がやや落ち着き、低音も締まりました。

音場はやや広めから広め。

高音はやや鋭さがあるものの煌びやかさ華やかさが十分で、刺さるギリギリに抑えているものの高音成分多めの曲では尖りを感じることがあります。

低音の量感は抑えめ。量感は少ないものの強さがあり、キレや締まりは良好、ベースラインは追いやすいです。

重低音は沈み込みの深さはそれ程感じませんが、適度な強さで鳴らします。

中音は高音同様に華やかさがあります。ボーカルと音の重なりをあまり感じずに横に広く鳴る印象です。

そのボーカルはクリアでドライ寄りですが、自然な位置に感じます。

一言で云えば中高音寄りの弱ドンシャリから高音強めのフラット寄りのバランス。

高音域は常に前に出るような主張があり、中低音域もそれほど主張をすることが無いため、一番鳴っている印象を受けます。高音をはっきりと強めに鳴らすことで解像感を演出するTrnの音という印象です。中音域よりもやや前に出るような主張は演出感を感じますが、適度な響きは「すぅ~…」っと最後が切れる鳴り方なので今一歩。それでもこの価格帯の中華イヤホンの中では好印象の部類で、高音成分多めが好きな方には「刺さる」調整だと感じます。

中音は高音よりも華やかさは一段落ち付きますが、横の広さを感じる鳴り方で空間を意識でき、音の大小を感じられ解像感は良好です。一方、ボーカルは音数が多い曲では埋もれることはありませんが、曲によっては多少近い音がありごちゃつきを感じる事もあります。音数が少ない曲ではその周りに位置し、やや後ろでしっかりと鳴ります。この辺りは高音同様に音のシャワーを浴びるような感じなので、もう少し整ってくれればという想いがあります。

ボーカルは自然な位置でクリア。聴きやすさを感じます。声質がドライに聴こえるため、女性ボーカルのバラードでは相性を感じるかもしれません。

低音は控えめな量感ですが、強さがあり芯がある音。締まった音はタイトに小気味良く鳴ります。

重低音は「ドンッ」と鳴る強さはありますが、KZでよくある「ズドンッ」とまでは鳴りませんし、沈み込みはそれ程深さを感じません。それでもVXに比べると高音中音との強さのバランスが改善しているため、フラット寄りに聴こえる音に悪い印象はありません。

VX Proは元々高音が強めではありますが、高音と中音の間の中高音域に極端に凹みを感じないため、高音成分多めに感じやすく、中・高音域をやや演出した表現にしている印象です。

前作VXでは高音と中音が兎に角聴こえ、音がくっきりはっきりしていて、更に低音が控えめだったので、演出過多の音は万人向けとは言えず、人を選ぶというか好みの差が大きく出るイヤホンでしたが、VX Proではこれを改善しており、バランスが良くなりました。高音はやや前に出るような主張がありますが、過度なアクセントに感じることもありますが、このぐらいの演出も全体のバランスを考えるとこれはこれで良いという心地良さを感じます。低音もVXよりも鳴り、全体を覆うような鳴り方ではありませんが、芯のある音がキレが良く鳴り、高音や中音域をマスクすることもありません。中音域は華やかですがごちゃつきを抑え、分離も良好。繰り返しになりますが、高音、中音、低音域はやや高音を強調しているものの、フラットよりの印象を受けますし、決して地味な音ではなく寧ろ華やかに鳴る、KZの代名詞のドンシャリとは違います。

とはいえそれでも高音は喧しいという程でもなく、シャリシャリさせながら音数や量感でお茶を濁した感はありますが。ここだけ聞くとバランスがおかしい音に感じるかもしれませんが、絶妙な音数や量感で良い意味で誤魔化したTrnの音、多少の演出感のある音色は心地よく聴きやすくまとめたバランスだと思います。

 

※以前のTrn VXのレビューもご参考ください

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※以前のCCA CKXのレビューもご参考ください

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比較対象のKZ ZASと最も異なるのは中音域で特に華やかさを感じる音は一方でごちゃつきを感じる事があります。VX Proでもそれは抑えられていましたが、ZASのそれは分離の良さが前提としてあって整理された音。寧ろKZ ZAXに近い音の印象です。KZ ZSXもどちらかと云えばZAX寄りで、音場の広さがそれよりも見通し良く広がりとシャープさのある楽しい音でした。VX ProはZAXと同様に全域でまとまった音ですが、高音がやや強め、ZASの中音域はそれを上回っていて傾向としては異なると感じます。

次にCCA CA16と比較した場合、真逆の音と云えます。中低音寄りのその音は必要以上に高音に存在感を与えず、必要な時に必要な量を奏でます。都合の良い音扱いです。しかし、それがCA16の真骨頂でもあり、特に同じ傾向のブラッシュアップ版、CCA CKXではその高音に響きの良さ、余韻を与えています。つまりCA16よりもCKXは同じ中低音寄りながらも高音の伸びやかさと中音域の分離感を感じられるモデルと云えます。CA16は豊かな中低音が雰囲気の良さを醸し出す音であり、これはこれで良い音ではあるのですがやや高音が強いフラット寄りのVX Proとは全く違うと感じます。

もちろんそれぞれの良さはあるのであくまでも音の傾向として捉えてください。それが絶対評価ではなく、相対評価という評価軸の確定できない音質レビューの難しさとなります。

そのため今回の比較対象の中では三者三様の良さがあり、高音好きならVX Pro。バランスの良い整った音を聴きたいならKZ ZAS。中低音を雰囲気良く聴きたいならCCA CA16となります。個人的にはKZ ZASがややリードかなと。中低音寄りのボーカル重視ならばCA16でしょうし、高音成分多めを聴きたいならばこのVX Proとなります。

 

まとめとして、Trn VX Proは最近のTrnの音を正統進化した最新の最高の音質と云え、その傾向はやや高音強めのフラット寄りの中高音重視の音。これがTrnの音とメーカーが自信をもって世に出した意欲作と感じます。一方のKZはZASが従来のドンシャリとは異なる高音と低音を抑え中音域の解像感ある音で新たなステージに進んでいることを感じさせます。個人的にはZASの音は他のメーカに出して欲しかった。そうすれば同様の傾向の中で選択肢が増えることでもっと楽しめますので。

 

蛇足ですが、以前のレビューでも触れている通り中華イヤホンの単純にドライバ数を増やす足し算では未だ限界があります。残念ながらそれをBAオンリーの低~中価格帯複数ドライバ搭載モデルが証明しています。それでも次々と投入される中華の新モデルが我々を楽しませてくれており、今後も期待していきたいですね。

 

高音   VX Pro ≧ ZAS ≧ CA16 (単純な強さの順)

中音   ZAS ≧ VX Pro ≧ CA16 (整った音の順)

低音   CA16 ≧ ZAS ≧ VX Pro (単純な強さの順)

ボーカル CA16 ≧ ZAS ≧ VX Pro

音場   ZAS ≧ XV Pro ≧ CA16

 

 

4. Trn VX Proの総評

Trn VX Proは最近のTrnの音を正統進化した最新の最高の音質と云え、その傾向はやや高音強めのフラット寄りの中高音重視の音。一方KZもZASで新境地を開き、この価格帯での中華イヤホンの覇権争いはスペック至上主義から脱却し本来の音質を追求し始めた、そんな予感を抱き今後も楽しみです。

 

最後に、今回は国内amazonとAliExpressで発売された低価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2021年11月13日)はAliExpressやamazon(prime)で発売されており、AliExpressで9,000円台。一方amazonではprime扱いの10,000円を超える価格。今日現在(2021年11月13日)の11.11セール後の輸送の混乱を考慮すれば、amazonでの購入がお勧めです。一方AliExpressでは安価に入手できますが、その入手性には現在から年末まで特に難がある時期です。とはいえこれまでの中価格帯U10K中華イヤホンの中でも安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯U10Kの中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱い品を。新製品を少しでも早く入手したい又は、少しでも安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。 

 

VX Pro
以下、付属ケーブル、付属赤軸黒傘イヤピ M使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ (高音好きの方)
※☆0.5、★1.0

 

ZAS
以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  
※☆0.5、★1.0

 

CA16
以下、ケーブルHi8、イヤピAET07 M-使用、DAP ZX507バランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ 
※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

あとがきとして、今回はいつもの低価格中華イヤホン、1BA+1DDハイブリッドモデルではなく、多ドラハイブリッドモデルの新商品のレビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンや中華据え置き機器をご紹介していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ