こんにちは。
今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格帯で発売されている1PD、平面駆動モデルのLETSHUOER S12 Proについてレビューをまとめたいと思います。
国内amazonのLETSHUOER(@letshuoer)で取り扱いがあります。
AliExpressの公式ストアでも購入できます。
メーカー直販サイトはコチラ↓
- 1. LETSHUOER S12 Proについて
- 2. LETSHUOER S12 Pro実機レビュー
- 3. LETSHUOER S12 Pro音質レビュー
- 4. LETSHUOER S12 Proの総評
- あとがき
1. LETSHUOER S12 Proについて
LETSHUOERは中華イヤホンの中でも革新的なイヤホンを販売しているメーカーです。数年前には当時SHUOERブランドで他社に先駆けて静電ドライバー(EST)とダイナミックドライバ(DD)のハイブリッドモデル、TAPEが個性的なデザインだったことと合わせて記憶に新しいメーカーですが、今回平面磁気駆動ドライバを搭載したモデル、S12 Proを発売しました。
今年の中華イヤホンのトレンドの一つ、平面磁気駆動ドライバは通常のDDよりも音域の広さと解像感の高さが特徴です。勿論通常のDDであっても音域の広いものや解像感の高いモデルもありますが、それらは国内外の有名メーカーの商品が殆どです。某ミリンクスや某ベリリウム、某ウッド等の高価な振動膜を採用しています。それらは当然の様に販売価格も高くなり10万円以上の高級機となり、なかなか手を出し難い商品と云えます。
それを中華イヤホンでは様々な材質の振動膜を手を変え品を変え市場に投入しており、例えばカーボンナノチューブ(CNT)はその代表と云えますし、最近では液晶ポリマー(LCP)がトレンドです。この辺りの開発スピードと商品展開の速さは流石と云えます。
その挑戦的な中華イヤホンメーカーの中でも今注目したいのが、LETSHUOERです。LETSHUOERは兎に角音質に拘り、革新的で挑戦的なモデルを市場に投入してきましたが、今回同メーカーがオーディオマニアと音楽愛好家のために6周年記念デラックスエディションとしてS12を特別にアップグレードしたモデルと謳っているのが、このS12 Proとなります。
メーカーHPを引用すれば、S12 Proは、カスタム14.8mm大口径振動板平面駆動ドライバーを搭載しており、高いディテール再現性、力強い低音域、鮮明な中音域、スッキリとした高音域を実現。102db / mWの感度により従来よりも鳴らしやすさを改善。ポータブル機器やDAC/アンプ等と組み合わせでもその実力を感じられ使用しやすくしています。
また製品の特長として、S12 Proは銀メッキ単結晶銅線を採用。一芯あたり0.05mmの線材を98本束ねた4芯タイプの高品質のケーブルです。イヤホン側には広く普及している 2pin(0.78mm)コネクタを採用しリケーブルの選択肢は多くなります。更にプレイヤー側のプラグは2.5mm / 3.5mm / 4.4mm プラグの交換が可能で、付属の交換プラグを使うことで多くのデバイスで使用可能となります。
さて、S12 Proは中華イヤホンの中価格A20000帯で今年秋に新発売されたモデルです。ベースモデルのS12は評価が高く、海外レビュワーからも評価の高い人気のモデルでしたが、アップグレードモデルであるS12 Proの注目すべきポイントは先ずは何と言っても他社よりも大口径の平面磁気駆動ドライバを搭載していることです。同価格帯では14.2~14.5mm平面磁気駆動ドライバの採用が多く、その中でも最大級の14.8mmとなっています。
次に付属ケーブルのアップグレードです。ケーブルの線材には高級線材の銀メッキ単結晶銅を採用しただけでなく、プレイヤー側の端子交換式ケーブルを採用しています。これは付属ケーブルのプレイヤー側プラグ端子部をコネクタ化し分割可能とすることで、3.5mmと2.5mmバランスと4.4mmバランスのプラグに交換できる「プラグ交換システム(PCS)」となり、プレイヤー側に合わせたリケーブルが不要となります。従来はA20000帯のモデルでも標準的に付属するケーブルは3.5mmステレオミニプラグでしたが、昨今のミュージックプレイヤー(所謂DAP)側が標準として3.5mmステレオミニジャックに加え、4.4mmバランスジャックを採用している訳ですから、必然と云えますし、利便性が向上する今年のトレンドの一つと云えます。尤も3.5mmステレオミニプラグしか使わないユーザーにとっては無用なコネクタ部であり、接点が増える事を嫌いますが、そういうユーザーは既に交換用のケーブルをお持ちでしょうからあくまでも一般ユーザー層に向けたアピールポイントです。実際S12 Proに付属するPCSケーブルはそのコネクタ精度も悪くありませんし、何よりもイヤホン本来の性能を発揮するケーブルです。U10000とはクラスが違います。
以上の様にLETSHUOER S12 Proは同社の6周年記念デラックスエディションとしてベースモデルS12をアップグレードしながら、価格を据え置きとしたお買い得モデルと云えます。
LETSHUOER S12 Proのスペックですが先述の通り今年の中華イヤホンのトレンドの一つである平面磁気駆動ドライバを1基搭載した片側シングルドライバ構成モデルです。
このドライバは14.8mm径の超薄膜振動膜を採用。加えて強力な磁気回路との組み合わせにより平面磁気駆動ドライバのレスポンスの良さを最大限に引き出すことができています。
イヤホン本体にはベースモデルのS12同様にアルミニウム製を採用。耳にぴったりとフィットするように設計されており、 5軸CNC加工による滑らかな手触りの仕上がりで、丈夫でエッジレスのシェルは快適な装着感を得られます。
※宜しければ平面磁気駆動ドライバの搭載モデルの過去記事もご参考ください
LETSHUOER S12 Proの納期として国内amazonでのオーダーであれば、現在(2022/11/19)は国内amazon倉庫に在庫がありますので、当日発送、翌日配達で入手可能です(日本の一部の地域を除く)。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なくほぼ回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販です。
そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。
2. LETSHUOER S12 Pro実機レビュー
それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。
パッケージングは白を基調とし表には商品名とHi-Resロゴが記載されたスリーブタイプの化粧箱です。
箱の表にはイヤホンイラストが。裏にはイヤホンスペックが記載されています。
スリーブを外すと外箱同様に白地の箱が登場し、まるメーカー名が大きく印字されたデザインの内箱です。
蓋を開けると黒地の内装の台座にイヤホンが収納され、イヤーピースケースも収められています。このイヤーピースケースにはフォームタイプのイヤーピースとなっています。
台座を取り外すと箱の底にイヤホンケースが収納されています。
イヤホンケースの中にはケーブル、イヤーピース、変換プラグが収納されています。
付属品はシリコンイヤーピースが白色(半透明)タイプと黒色タイプのS、M、Lの3種が計2セットとフォームタイプのS、M、Lの三種が1セット。他にはケーブル、交換用プラグ、変換プラグ、イヤホンケースです。A20000帯として実用的であり、特別なこだわりがない限り他に用意する必要のない付属品となります。
次にイヤホン本体です。
過度が落とされ丸みをのある造形は厚さがありながらも比較的コンパクトです。ビルドクオリティに雑なところを感じません。低価格帯の中華イヤホンでよくあるようなシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。
カラーバリエーションは青色のみです。
次にケーブルです。
付属ケーブルは4芯銀メッキ単結晶銅(OCC)線、銀色とガンメタの被覆の撚線タイプが採用されています。先述の通り、一芯に極細線を98本使用した4芯線は比較的太めとなります。
プレイヤー側コネクタはI字タイプでプラグ交換システム(PCS)対応。3.5mm/4.4mm/2.5mmの交換用プラグが三種付属します。イヤホン側は一般的な2ピンタイプ、0.78ピン仕様、KZ等と同じ上がプラス極性です。この付属ケーブルは今年のトレンドの一つとして各社が採用しており、今後の中価格帯ではスタンダードになっていくのかもしれません。S12 Proに付属するケーブルは高品質ケーブルですので、余程拘りがない限り、そのまま使用することをお勧めします。
実際の使用感として、耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。太さがある分、やや硬さを感じますが、中価格帯に付属するケーブルの中でも悪い印象はありません。何よりも殆ど全てのDAP等のプレーヤーにプラグ交換によって対応しますので、他に何も用意する必要がないのが良いです。
参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。
※プラグの取り付け向きを間違わない様に内側にキー溝(凹/凸)仕様となっています
※左から2.5mm、3.5mm、4.4mmの交換用プラグ
※イヤホン本体の青(ディープブルー)色に合わせたコネクタやスプリッタ、プラグのカラーが統一感があり商品性を高めています
交換用プラグは3.5mm/2.5mm/4.4mm付属します。殆どのDAP等で困ることはないと思いますし、各交換用プラグにはメーカー名のLETSHUOERが印字されています。
また、交換用プラグとケーブルの接続コネクタ部は正しい向きでのみ勘合できるように勘合部内側に凸側と凹側を合わせる位置決めのキー構仕様が、誤ったコネクタ接続を防いでくれますので安心です。
最後に、他機種との比較です。
※画像左からKZ PR1 HiFi Edition、LETSHUOER S12 Pro、Trn Kirin
Trn KirinとKZ PR1 HiFi Editionとの外観の比較として、S12 Proが一番コンパクト。とはいえ、平面磁気駆動ドライバをシェル内に収める宿命なのかシェルの厚みは3機種共にあります。以前レビューした平面駆動のTiNHiFi P1は他機種流用のシェルであり、「とりあえず入れた」感がありましたが、最新の平面磁気駆動モデルは内部音響にも拘り必然的にシェルの大型化に繋がっています。S12 ProとKirinはオール金属製で、PR1は樹脂ベースとなります。
S12 Proのシェルの造形は一般的なカスタムIEM風の造形の角を徹底的に落とし丸みを帯びた造形。比較的オーソドックスなPR1とやや大柄で同じく丸みのあるKirinとはタイプが異なります。そのため、重量はKirinが一番重さを感じ、次点でS12 Proですが、S12 Proの造形による装着感の良さから装着時には殆ど気になりません。
ステムノズルはS12 Proが一番短め。Kirinはノズル交換可能となり、標準タイプを用いた場合は一般的な長さと云えます。太さもS12 Proが一番細め。他は標準的からやや太め。角度は三機種共にほぼ同じでやや起きています。
また、ステムノズル部には全てに金属フィルターがあり異物混入による故障を防げます。S12 Proのフィルターは比較的粗目タイプ。高音域の減衰が殆ど無いタイプです。音質的に影響があるのはKirinのタイプです。
そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。
なお、先述の通りS12 Proはステムノズルは細目でやや短め。装着感はイヤーピースによる影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。
付属イヤーピースは合計3種。シリコンタイプの白傘黒軸の白色タイプと黒傘黒軸の黒色タイプの二種と、フォームタイプ一種です。全てS、M、Lの3サイズ1セットです。
黒色タイプは個人的に傘のコシは良いのですが若干パサつきを感じました。白色タイプは適度な傘の弾力としっとりとした柔らかさがあり耳へのホールド感を持たせてくれます。音質的には黒色イヤピが中低音が厚めになり、白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプの様です。
このイヤホン本体に付属するシリコンイヤーピースとフォームタイプイヤピであれば、極端に耳が大きいor小さいという事が無ければ殆どの方で困ることはなさそうです。
この付属イヤーピースの白色Mサイズで私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。
低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は流石の中価格A20000帯です。付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。
このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)
3. LETSHUOER S12 Pro音質レビュー
それではいよいよ音質についてまとめていきます。
今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホはSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。
UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。
昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。
Shanling UP5をUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。
より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。
USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。
Shanling UA2は以下を参考ください。
それでは実際に聴いてみます。
ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りイヤピは付属白色タイプ Mサイズ、付属ケーブル4.4mmプラグです。
箱出しで聴いてみた第一印象は「低音がしっかりと感じられ、高音中音はすっきりとして見通しが良くクリア。音場の広さと立体感を感じる整った音」でした。あと、少し気になったのは音量がやや取りにくく普段よりもややボリュームを上げる必要がありました。
箱だしでは高音に荒さと低音の緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は高音は整い、低音が締まりました。
音場
広くて立体感のある鳴り方。前後は奥行があり、特に左右の空間の広さを感じられます。
高音域
煌びやかで響きが良く上の上までの伸びやかさも感じられます。華やかに鳴り存在感もありますが、常に前に出るような主張はなく尖りも感じません。自然な強さで繊細に音を奏でてくれます。
中音域
高音の伸びやかさは広がる空間を感じられましたが、中音は兎に角横に広く奥行きのある空間に響きの良さが感じられます。華やかに鳴りながら小さな音を逃さずに繊細に鳴らしてくれる懐の深さがあります。よくある音が中心に集まる団子感や音が重なるゴチャつきを感じず分離の良い音は立ち上がりも良くレスポンスの良いキレの良さに加え、音の輪郭の描写の良さは解像感の高さを感じます。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、ほぼニュートラルから僅かにドライ気味です。息遣いを感じられ実感を得やすい。
低音域
量感は比較的抑えられていますが、響きは良く音が広がった後の余韻が感じられますが、いつまでもそこに居座ることのない収束の仕方はごまかしの無い音は解像感の高い音。全体として過不足を感じない適度な量感に芯を感じ締りとキレは良好。音の強弱や音階を掴みやすく、ベースラインも追いやすい。重低音の沈み込みも深く感じられ強さのある音。
出音のバランス
一言で云えば中高音寄りの弱ドンシャリ。出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音。
高音は煌びやかで響きも良く華やかに鳴りますが、誇張された華やかさではなく、単に派手に鳴る様な主張もありません。自然な音の強弱や小さな音をそのままの強さで鳴らし、小さな音はその消え入る様を繊細に鳴らします。超高音までの伸びも良く自然でなめらか。強い音でも不快に感じる尖りはなく、小さな音はしっかりと耳に届けてくれます。最初の一音だけを強調した尖りのある鳴り方ではない、大胆さと繊細さを兼ね備え音の輪郭を正確に描写する解像感の高い音は高音を強調して解像感の高さを演出する様な質の低い音ではなく、あくまでも自然に正確に繊細な音を聴かせてくれる質の高い音です。広い空間で遠くで小さく聴こえる音が、かき消されずに聴こえる様に驚きます。
中音は凹みを感じず縦横の空間が広く、楽器の音は奥行きを感じボーカルの周りに居る事を感じます。華やかに聴こえるのに騒々しさとは無縁の音。特に広さを感じる横の広さは遠くの小さな音もしっかりと聴こえます。その音は自然で音を闇雲に鳴らすのではなく、音の描写である音の強弱と大小に加え音の立ち上がりと消え入る様をという輪郭を掴みやすい解像感の高さと、音が重なりごちゃごちゃしない分離の良い音は圧巻。見通しが良くクリアな音はボーカルが映えます。
そのボーカルは自然な位置からクリアで聴きやすく、高音や低音の音に埋もれませんしその空間に確かに存在する実在感があります。声色は自然なニュートラルから僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ生々しさを感じられます。女性ボーカルのしっとりとした艶のある声も楽しめます。
低音は量感は抑えられ無暗に広がらない響きも感じられます。自然な響きは音の収束する様が掴みやすく、芯のある締った音は無駄に広がらずにキレも良い。量感で誤魔化していない低音はその音階や強弱の描写がしっかりと感じられる解像感の高い音を感じられ、雰囲気の良い曲との相性も悪くはありません。中高音寄りの弱ドンシャリの出音はフラットよりのイヤホンという印象で、必要以上に低音を強調せずにそれでも決して物足りなさの無い強さと芯のある上質な低音と云え高音中音を邪魔しません。
重低音は沈み込みは深く芯のある強さを感じられます。自然な強さで大胆にも繊細にも鳴る高音中音域を下支えする質の高い低音はある意味存在感を示します。
S12 Proは箱出し一聴した時点で「やだぁ、なにこれ、凄いんだけど」というこれは良い音だよねという印象でしたが、聴きこむことで何がそう感じさせたのかがはっきりと見えてきて、増々聴き惚れてしまいました。これまで聴いてきた平面磁気駆動ドライバモデルはそのポテンシャルを全てを引き出せていないのではと感じました。その位S12 Proのインパクトは強いものでした。
S12 Proで特筆すべきはやはり広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でます。中価格帯のイヤホンとしてレベルの違う高音質と云えます。これが平面磁気駆動ドライバの素性の良さとポテンシャルの高さでしょうか。
一方で刺激的な高音や脳に響く低音を感じたい方には凡庸な音に感じるかもしれません。
次に現在はやや下の価格帯となりますが、比較対象としてTrn Kirinとの比較です。
今年は兎に角平面磁気駆動(PD)モデルが多く発売されました。シンプルに平面磁気駆動のシングルドライバモデルから、ピエゾ(Piez)やBAとのハイブリッドモデル等、様々です。中価格U10000帯ではBAとやや小径のPDとのハイブリッドが主流ですが、A20000帯ではピエゾと14mm径以上のPDとのハイブリッドが音質の評価が高いようです。そういう意味ではやはり価格帯はやや下となりますが、Kirinは14.5mm径のPDをシングルで搭載したモデルとなりますので、比較に丁度良いと考えます。
Kirinの音質はPDの特徴を体感できる普通に良い音がするイヤホンです。両機とも近しい出音と感じましたが、その違いはやはり音場。空間の広さや立体感はS12 Proの圧勝。どちらも全音域をバランス良く聴かせてくれ、出音や音色といったバランスは普通の音質の良いイヤホンで感じたそれと同じです。どちらも過度に強調するところが無く自然に鳴らしながら、解像感の高い音を聴かせてくれます。
それでもどちらが音が良いかという意地悪な質問に敢えて答えるならば、S12 Proとなります。音質という評価を主観的ではなく数値で表す事はできませんが、音の解像感はS12 Proが一枚上手と云えます。
余談ですが、先日のAliExpress恒例11.11セールでセラーオリジナル旗艦モデルを型落ちとなりますが購入しました。販売価格が当時A30000のモデルはシングルダイナミックドライバモデルです。少なくてもそれよりも音が良いと云えます。それは音が硬く、高音も言われているほどそこまで伸びない音で正直がっかりしました。2万円でも買わないです。1万5千円でなら検討するぐらいの評価で個人的にはそれよりはacoustune HS1300SSの方が良い音がしていると思います。
ならばHS1300SSとS12 Proとどちらが?となりますが、これは難しい。
HS1300SSは空気感の良い音であり、S12 Proの解像感の高い音とは傾向が異なるからです。使い分けが可能な音と云えます。
※以前のKZ PR1 HiFi Editionのレビューもご参考ください
まとめるとLETSHUOER S12 Proは平面磁気駆動ドライバを採用し同社の6周年記念モデルとして高音質を実現し中価格A20000帯、現在AliExpressでは1万円台後半で購入できるモデルの中でもトップクラスの音質と云えます。平面磁気駆動ドライバのポテンシャルを引き出した音づくりと同社の革新性で実現した音づくりは海外での評判が良いという事に納得です。個人的にはプラグ交換システムによるユーザビリティの高い商品性を高く評価します。
高音 S12 Pro ≧ Kirin ≧ PR1 (質感の順)
中音 S12 Pro ≧ Kirin ≧ PR1 (質感の順)
低音 S12 Pro ≧ Kirin ≧ PR1 (質感の順)
ボーカル S12 Pro ≧ Kirin ≧ PR1 (質感の順)
4. LETSHUOER S12 Proの総評
LETSHUOER S12 Proは同社の革新性を実現したモデルと云え、今年のトレンドである平面磁気駆動ドライバ1基のシングルダイナミックモデルです。そのドライバのポテンシャルを最大限に活かした音は解像感の高い高音質モデルです。平面磁気駆動ドライバを採用したメーカーは増えてきましたが、この価格帯でトップクラスの音質であり、これを超えるのは難しいのではないかと感じています。勿論遜色ない音を鳴らす物はあると思いますし、最後は嗜好によるところが大きいと考えますが、個人的にはお勧めの1本となります。一方でKZの様に安価で販売しているものは明るく派手な音であり、やはり雑な部分を感じますので、これとは異なります。とはいえ、A10000とA20000の商品を比べる事がアレなので、参考程度にお願いします。
最後に、今回は今年秋に発売された中価格A20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年11月19日)はAliExpressで22,000円程で販売し、国内amazonでは23,000円程の価格と販売価格に殆ど差がありません。AliExpressでオーダーした場合の入手性もかなり改善しています。とはいえこれまでの中華イヤホンの中では高価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はAliExpressやHiFiGo等での購入も検討してみてくださいね。
S12 Pro
以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★★
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
Kirin
以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★☆
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
PR1 HiFi Edition
以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★
中音★★★★★
低音★★★★☆
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
あとがき
今回はいつもの中華イヤホンの中価格帯の中でも海外で評価の高い商品のレビューをまとめてみました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。
また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ