こんにちは。
今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格A5000帯で発売された7BA+1DDハイブリッドモデルのCCA HM20についてレビューをまとめたいと思います。
今回はAliExpressのDUDO Audio Storeから購入しました。
国内amazonでも取り扱いがあります。
1. CCA HM20について
CCA HM20は中価格A5000-U10000帯中華イヤホンの多ドラハイブリッドモデルとして今年10月に新発売されました。
KZ系兄弟ブランドのCCAですが、初期はKZとは趣向を変えた音質傾向のイヤホンを発売してきましたが、最近発売したモデルではそれ程異なる音ではなく寧ろほぼ同じ?という傾向でブランド毎に音を聴き比べる楽しみが減っていました。例えばZASとCA16 ProやPLA13とPR1 Balanced Editionがその一例です。ZASとCA16は全然違う傾向でしたので、なんだかなぁという気持ちです。
そのCCAが今年秋、一年振りに多ドラハイブリッド旗艦モデルとして片側8ドライバ、7BA+1DDハイブリッドモデル、HM20を発売しました。数年前のドライバを沢山積むスペック競争時代とは異なり、搭載ドライバ数は頭打ち感があります。そもそもそんなにドライバは積む必要がないという事を自分たちで証明している皮肉な結果です。そして、昨今はハーマンターゲット近似特性の純粋に高音質を目指したモデルが多数登場。今年のトレンドの一つと云える「ハーマンターゲット」は流行に敏感、というよりも売れるものに敏感というビジネスライクなお国柄を感じさせます。
とはいえ、一年振りの。というよりも約1年間という製品リリーススパンに則った今年最後のKZ系ブランドの目玉として非常に楽しみな商品となります。
それではCCA HM20のスペックを詳しく見ていきます。先述の通り片側8ドライバの多ドラハイブリッドモデルは7つのバランスドアーマチュアドライバ(BA)と、一つのダイナミックドライバ(DD)という異なる二種のドライバによる構成です。同価格帯多ドラハイブリッドモデルの中では上位に位置しますが、最上位はTrn VX Proの片側9ドライバ、8BA+1DDハイブリッドモデルとなり、それに次ぐHM20となります。また、ZASやZAX、CA16やCA16 Proもそれに並びます。
HM20の搭載ドライバですが、高音域用BAドライバには30019sシングルを一基採用。中高音域用BAドライバには50024sデュアル(2BA) 三基を採用し、全てのBAはDDと並列にシェル内部に配置しています。次に低音域用のダイナミックドライバには第三世代となる「XUN-7」ドライバを初採用。従来のKZ系定番の10mm径二重磁気ダイナミックドライバからは小径となる新型7mm径二重磁気ダイナミックドライバはダブルキャビティ採用と5ミクロンの超薄膜ダイヤフラム(振動膜)という、真に新世代のダイナミックドライバの名に恥じない新型ダイナミックドライバを採用し、中音~低音域を担当しています。何と云っても新型第三世代ダイナミックドライバ、XUN-7に期待が高まります。
比較対象のCCA CA16 Proは片側8ドライバ、7BA+1DDのドライバ構成数と同じですが、低音域用ドライバは10mm径二重磁気ダイナミックドライバです。BAは30019が一基で高音域を担当し、シェル内のダイナミックドライバ傍に並列配置。50024sデュアル(2BA)が三基で中高音域を担当し、シェル内のダイナミックドライバ傍にこちらも並列配置しています。
もう一つの比較対象のKZ ZASのスペックは、こちらも片側8ドライバ、7BA+1DDとドライバ構成数は同じ。搭載ドライバは中低音域用のダイナミックドライバに10mm径二重磁気ダイナミックドライバを。BAは30019シングルの一基が高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置。50024sデュアル(2BA)三基が中高音域を担当し、こちらもダイナミックドライバに並列に配置しています。
HM20をはじめ、全て高音域用BA一基とし、シェル内のDD傍に並列配置しています。ただしNM20では従来のKZ系と異なり各BAにつながる音導管を採用しています。これまでにもKZ系ではASシリーズで音導管の役割とドライバの位置決めを兼用する音導カバーをシェル内部に配置したモデルがありましたが、今回は一般的な音導管を採用し、高音域1BAと中音域デュアル3BA(6BA)と低音域1DDの3way方式という高音と中音域のBAの数が大きく異なるドライバ構成&配置です。
尤も、便宜上伝わりやすくするために3Wayと説明していますが、実際には高音域用BAは超高音~高音域を担当し、中音域用BAは高音域~中高音域を担当しており、純粋な中音域とは云えません。実際の中音域はDDがカバーし、それが中音~低音域の広範囲を担っています。その為、DDのポテンシャルがイヤホンの絶対性能を決めていると云っても過言ではないと云えます。出音をどんな音色にするかはチューニング次第ですが、解像感や分離といった絶対評価は「ドライバの質=コスト」という現実には抗えない「価格なりの音」という評価が存在する理由と考察しています。
最後にHN20のシェル本体は樹脂と金属のマテリアルハイブリッド構造が採用されています。ステムノズル一体型シェル本体は樹脂製で、シェル本体カバーと金属製フェイスプレートを接合した金属と樹脂によるハイブリッド構造となります。片側に8ドライバが詰まっていることを想像させないコンパクトなシェルはZASやCS16 Proが比較的大柄だったこともあり非常に小さく感じます。また、一般的にシェルやステムノズルの材質により音質への影響があり、金属製シェルでは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなり、響きの美しさは金属が一枚上手です。樹脂製では金属音等の高い音が吸収されてしまい、やや強めに鳴らす事でバランスをとる場合もあります。そのため、樹脂製でも金属製でも良い事だけではなく、メリット/デメリットの関係が存在します。HM20では音導管を採用することで意図した音を安定して耳に届ける事ができるようになっています。
以上の通り、スペックからはHM20はそれらの系譜と云えるモデルであることを窺わせます。CA16 ProやZASは従来のKZ系ブランドのモデルの中でも音質が良く、好評でしたが、その理由の一つとして、これまでKZでは頑なにステムノズル内に配置したBAが全てシェル内部に配置されたことを挙げます。もちろんステムノズル内に配置することは悪手ではなく、KZの様に無調整で配置してはいけないよね?ということだと考察しています。そして、ドライバ構成を比較すればHM20はそれらと異なる新型ダイナミックドライバと音導管の採用により、評判の良かったZASやCA16 Proと出音にどのような違いを魅せてくれるのか?気になって夜しか眠れません。
※宜しければ過去のレビューもご参考ください
CCA HM20の納期として今回AliExpressで購入しました。中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのprime扱いのようにはいきませんが、オーダーから約一週間で届きました。近年はAliExpressでの購入では感染症の影響で中国からの輸送に時間が掛かっていましたが、現在はかなり回復し国内で大手輸送会社に委託される輸送の場合はかなり安定してきました。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月以上。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。
そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。最近はHiFiGoの利用も多いのですが、こちらは何故かAliExpressよりも到着が早い事が多いのがその理由です。
どちらも海外ネットショッピングであり心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、私は活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での取扱いを待って購入をお勧めします。
2. CCA HM20実機レビュー
それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。
パッケージングはCCAの白を基調としたシンプルなスリーブタイプの化粧箱で、従来のサイズのタイプ。表にはイヤホンイラストが。裏面にはスペック等が印刷されています。
スリーブを外すと白地の内装にイヤホンが収められ、その内装を開けると付属品が収められています。
付属品は最近のKZに付属する溝有白色シリコンイヤーピースタイプではなく、従来の溝有黒色シリコンタイプのS、M、Lの3種1セット。他にはケーブルです。中価格A5,000帯としては物足りない、イヤホンとして使うための最低限の付属品となります。
このあたりは良くも悪くもKZ系ブランドCCAです。
次に本体を見ていきます。
ビルドクオリティですが、中華イヤホンの中価格A5,000帯として十分に綺麗な仕上りです。樹脂シェルと金属フェイスプレートの合わせ面も綺麗に揃っています。
カラーバリエーションは黒色のみ。
そして注目するのはKZ系ではASシリーズで音導管に代わる内装カバーが採用されていましたが、このHM20では遂に音導管が採用されていてBAに繋がる配管が確認できます。
続いて付属ケーブルを見てみます。
付属ケーブルは最近のKZ系に付属する4芯銀メッキOFC線、並列ケーブルの白(銀)色タイプです。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はKZ-C、2ピン仕様。極性はもちろんKZ極性の上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に多少引っ掛かりがありますが、タッチノイズは殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。
とはいえ、まあKZ系の付属品ですしリケーブルやイヤーピース交換前提と云われればそれまでです。
参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。
続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。
※画像左からKZ ZAS、CCA HM20、CCA CA16 Pro
HM20とZAS、CA16 Proとの外観の比較として、先述の通りサイズ感はZASやCA16 Proが比較的大柄のシェルとなっており、HM20が一般的なものと比較しても小柄ということもあり、そのコンパクトさを感じられます。
シェルの材質も先述の通り、ステムノズル一体型のシェル本体が樹脂製でフェイスプレートが金属製のハイブリッド、マルチマテリアル仕様となります。一方ZASやCA16 Proはそれに加えステムノズルが金属です。
そのため重量やはりZASやCA16 Proの方が比較的重量を感じますが、三機種共に耳への装着時には良好な装着感によって極端に重さを感じる事はないと思います。
ステムノズルの太さと長さ及び角度はHM20が一般的な太さでやや太め。ZASやCA16 Proは細め。三機種共に同じでやや起きている。HM20がやや長めですが一般的な長さでZASとCA16 Proが短めです。ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがありHM20が一番目が真にフィルターという感じ。ZASやCA16 Proも細かく細目ですが、それには及びません。HM20は音質への影響のあるタイプと云えますが、他は異物混入による故障を防ぐタイプと云えそうです。
装着方法は三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。
なお、先述の通りHM20はステムノズルが太めのため、イヤーピースは装着感への影響を考慮し普段より小さめ、または傘の形状を考慮して社外品を選択する等、耳への装着感を重視し選択してください。
付属品だけでイヤホンとして使えないかと云えば、決してそんなこともないですけど。イヤーピースは普段使っているメーカーの物へ交換推奨です。
最後に付属イヤーピースを見てみます。
イヤーピースは従来のKZ系に付属する溝有黒色シリコンイヤーピースタイプが付属します。個人的にこのKZの溝有黒色イヤーピースでは傘がカサつきを感じ、堅めなこともありフィット感がイマイチです。最近のKZ系に付属する溝有白色イヤーピースでは適度なコシと傘表面にしっとり感があり遮音性も十分に感じるので、何故それを付属しないのか?在庫処分もほどほどにして欲しいです。
音質的には従来の溝有黒色イヤピよりも白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプで、比較的開口部が大きく高音がダイレクトに届くタイプのためHM20に合うと思うんですよね。黒色は低音過多になるので新型ドライバの良さがスポイルされるような気がします。
この付属溝有黒色イヤピで私は耳が痛くなるため、手持ちのKBEAR 07 M-を耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。
中華イヤホンでは付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じる事が多くあります。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。
このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)
3. CCA HM20音質レビュー
いよいよ音質についてまとめていきます。
今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホはSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云え、エントリークラスの代表となります。
UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云え、モニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能です。
Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。
より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。
USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。
Shanling UA2は以下を参考ください。
それでは実際に聴いてみます。
ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りイヤピはKBEAR 07 M-サイズ、付属ケーブルです。
箱出しで聴いてみた第一印象は「明るく派手目に鳴る。高音がやや強めに鳴り、低音は抑え気味。量感よりもタイトにキレのある鳴り方」です。
箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き低音はほど良く締まり整い全体のバランスが良くなりました。
音場
普通からやや広め。奥行はそれほど感じられませんが、横方向に空間を感じられます。そのためやや平面的な印象です。
高音域
煌びやかで響きも良く伸びやかさを感じられますが、やや強調感を感じられます。存在感があり華やかに鳴りますが、尖りは感じず刺さりは抑えられています。解像感の高さを感じますが、強調された感じを受けるため、自然な感じではありません。超高音域の伸びも強調された他の高音にかき消されそれほど程感じません。
中音域
横に広さを感じるものの縦の奥行はそれほどでも無く空間に特に広さを感じませんが、華やかさのある鳴り方は嫌な感じはありません。前後の奥行を感じ難く音数が多くなると音が重なり団子感をやや感じますが、音のゴチャつき抑えられています。そのため解像感は悪くありませんが、特別良いとも言えない感じ。やや良好という印象です。ボーカルはクリアで自然な位置からやや近い位置で聴かせてくれ、ドライ傾向ですが不自然さを感じるような声色ではありません。
低音域
量感は多くなく響きや広がりを抑えた音。ドゥォ~ンと響き広がる様な低音ではありませんが、必要な量を必要なだけ鳴る低音です。量感で誤魔化す音ではなく芯のある締まった音ですが、音の強弱や輪郭を正確に表すような解像感はほどほど。ベースラインは十分追えますし、中音をマスクする様な前面に出るような強さではありません。重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、十分な強さがあります。
出音のバランス
一言で云えば高音域にやや強調感のある中高音寄りの弱ドンシャリ。従来のKZテイストを抑えたCCAのイメージの出音はバランスが良く普通に良い音。
高音の煌びやかで響きのある音は明るく華やかさがありますが、それでもただ強く鋭い尖った音が前に出てくる音ではなく、ちょっと強めに鳴る音。多少強調されたくらいが丁度良い高音域を造ってくれますが、静かな自室での長時間リスニングアはきつくなるかもしれません。超高音までの伸びはそれ程感じませんが、高音域全体でわざとらしく強く鳴ることもなく、不快に感じる尖りはありません。他の音域を邪魔することなく適度な強さは「丁度良い」と納得できます。過剰演出をしない高音は全体のバランスが丁度良い、不快感の無い高音です。
中音は凹みを殆ど感じず、空間は横の広さを感じる一方で奥行を感じ難く、音の分離はまずまず。縦方向の空間は感じ難くボーカルの周りにやや近い位置に重なる楽器の音が音数が多い楽曲ではごちゃつきを感じます。一方で音数の少ない楽曲では整理され見通しの良さを感じられます。解像感や分離も悪くないのに何故かごちゃごちゃする音は相性が出やすいのかもしれません。
ボーカルは自然な位置からやや近くでクリアで聴きやすい。高音や低音に埋もれる事はありませんが、声色はドライでナチュラルさは感じません。それでも息遣いやコーラスが聴き取りやすさのある明るい声は何故か聴き入ってしまいます。一方で女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声は相性を感じ、分が悪く感じるかもしれません。
低音は量感は抑えられていますが、全体のバランスで見れば十分な量感。高音中音をマスクする様な印象はありません。広がりや響きはそれほど感じられませんが、寧ろ締まった芯のある音は強さも十分で小気味良い印象。アップテンポのリズミカルな曲との相性は良く、音の強さ、強弱を感じながらノリの良い曲との相性は良いと思います。バラードなどでは低音のゆったりとした広がりは感じ難く、雰囲気が今一つに感じられるかもしれません。新型XUN-7ダイナミックドライバは従来の10mm二重磁気ドライバの傾向のままダイヤフラムの変更と小径とすることで低音を抑え、従来の「強く鳴らせば良いんでしょ?」という強ドンシャリからの脱却と低音の質感向上を目指した音という印象です。
重低音は沈み込みはそれほど深さを感じませんが、十分な強さです。
実は同社のZS10 pro Xでも新型DDが採用されましたが、こちらは10mm径でダイヤフラムを変更し二重磁気ではありませんでした。これも過度に低音を鳴らすのではなく芯がある強さのあるタイトな音が高音中音の煌びやかで響きの良い音を邪魔しない音でした。それが功を奏してZS10 pro Xの音色は従来のKZのドンシャリとは異なる、弱ドンシャリバランスの整った高音低音の統制された出音です。
HM20もその傾向でありますが解像感はHM20の方が上。ただし、音数が多い楽曲では互角。この辺りは低コストBAの限界を垣間見える結果と云えそうです。
さて、他機種との比較です。先ずZASとCA16 Proはほぼ同じ音質という印象ですのでZASとの比較します。
ZASは立体感のある鳴り方が特徴です。HM20ではその立体感は感じ難くい印象です。低音の質感はHM20の方が上。高音は強調感があるHM20に対し自然な強さのZASは同じ弱ドンシャリではありますが、出音の印象が異なります。正直嗜好による違いなので、何方が上という事ではありませんが、個人的にはZASの方が好きです。
そして中音域の良さで云えば同社のAS16 ProとHM20の中音域が同傾向と云えそうです。その二つで云えばBAの低音とDDの低音の違いがありますので、この二本を抑えておけば今後の選択の際のリファレンスにできるのではないでしょうか。
音楽を楽しく聴く事ができ、同じリスニングイヤホンというカテゴリでは音の完成度は高く、KZも音質を疎かにせずに本来のイヤホンとしての商品に向き合お始めたのかもしれません。
※以前のレビューもご参考ください
まとめるとCCA HM20はこのクラスの多ドラハイブリッドモデルとして、1年ぶりの新製品として新型DDを採用する等、音質への拘りも感じさせるKZ系ブランドCCAの最新モデルは極端な強ドンシャリモデルから決別したバランスの良い出音は普通に良い音を聴かせてくれます。
また、HM20は従来のCCAのようなリスニング用途としての非常にバランスの良い、丁度良いドンシャリが、高音域の刺激的な強さや低音のドンの量が多いバランスを求め、演奏メインで聴きたい方はもの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。
なお、KZ ZASやCA16 Proとは出音の傾向を変えています。それらが異端だったのかもしれませんが、従来のKZ系ブランドの延長線上にあるのはHM20と云えそうです。KZが仮にさらに上のクラスを目指す場合、従来の延長線上のままでは行き詰まるのではないかと少し心配してしまいますが、それは余計なお世話というもの。正直な感想として上のクラスの質感にはまだまだ敵いません。そもそもそれを目指していないし、従来のクラスでトップで十分というならば、先ずはTrnに追い付いてほしいかなと思います。
高音 AS16 Pro ≧ HM20 ≧ ZAS
中音 ZAS ≧ AS16 Pro ≧ HM20
低音 ZAS ≧ HM20 ≧ AS16 Pro
ボーカル ZAS ≧ HM20 ≧ AS16 Pro
※出音や音色の参考程度に
4. CCA HM20の総評
CCA HM20は同社の多ドラハイブリッド旗艦モデルとして一年ぶりに発売しました。前作とドライバ構成数を変えずに、新型DDを採用する等の過去の過剰なスペック競争から一歩引いた意欲作です。その音質は従来のCCAとKZの棲み分けを彷彿させ、KZのドンシャリとは一線を画したバランスの良い出音は、普通に良い音です。また前作CA16 Proからは出音を変え従来の音に回帰したリスニングイヤホンという印象です。一方でKZ系には求める音は「強ドンシャリ」という方々には評価が分かれるかもしれません。
最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年12月3日)は国内amazonやAliExpress、HiFiGoで発売されておりますが、昨今の円安のため、国内amazonとの価格差がそれ程なく、国内amazonでの購入がお勧めです。AliExpressやHiFiGoでは本国発送のため、リスクが有り少々難があると云えます。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内amazonの取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressやHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。
HM20
以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-、DAC UP5
高音★★★★☆
中音★★★★☆
低音★★★★☆
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
ZAS
以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-、DAC UP5
高音★★★★☆
中音★★★★☆
低音★★★★☆
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
AS16 Pro
以下、付属ケーブル、イヤピ Sedna EarFit Light Short MS、DAC UP5
高音★★★★☆
中音★★★★☆
低音★★★★☆
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
あとがき
今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A5000帯中華多ドラハイブリッドイヤホンの商品のレビューとなりました。同社の価格帯ラインナップの中でも高音質といえる仕上がりですが、ライバルの背中が見えた程度。今後も両社にはレベルの高い競争を楽しませて欲しいです。さて、日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。
また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ