みぃねこの備忘録

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KZ ZS10 pro X レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格A5000帯で発売された4BA+1DDハイブリッドモデルのKZ ZS10 pro Xについてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのKZ Earphones Franchised Storeから購入しました。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取り扱いがあります。

 

 

 

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1. KZ ZS10 pro Xについて 

KZ ZS10 pro Xは中価格A5000帯中華イヤホンの多ドラハイブリッドモデルとして今年8月に新発売されました。

KZといえば低価格U5000帯のドンシャリモデルを発売し、これまでは市場のトップランナーとして君臨してきましたが、最近はかつてのライバルTrnの音質に対する評価が高まり、低価格帯といえども「音質」は重要であると同時に実直さがビジネスにおいて最も重要と云える結果となっています。

実際、KZのドンシャリは代名詞でもあり商品価値としてのそれを否定するものではありませんが、最近のTrnが発売するイヤホンはどれも一般的に「普通に音が良い」モデルとなっており、評判も良いです。実際価格帯は上がってしまいますが、以前レビューした多ドラハイブリッドのVX Proや平面磁気駆動ドライバのKirinは中価格A10000帯のモデルとして評価も高く高音質のモデルです。そして先日レビューしたA5000帯の4BA+1DD多ドラハイブリッドモデル ST5もTrnの音を踏襲し、数年前の同価格帯多ドラハイブリッドモデルと比較しても音質が良いと認めざるを得ず、もう私たちのKZの時代が終わってしまったのかもと、中華イヤホンファンの一人として寂しく思っておりました。

さて、KZは近年のスペック競争の渦中、同価格帯では兎に角ドライバを沢山搭載し、音をリッチにすることで高音質化を図ってきました。それはこの価格で片側に8ドライバ搭載!?という我々ユーザーのミーハーな部分を逆手に取っており、販売戦略は決して間違いではなかったと思います。しかし、イヤホンという商品は音を聴く道具です。Trnはスペック競争も音質にも妥協せずにイヤホンという商品に向き合い自社の音を確立させ、結果としてスペックでも音質でもKZがTrnに後塵を拝する結果は皮肉なものです。

そのKZが三年振りに中価格A5000帯の4BA+1DD多ドラハイブリッドモデルを新発売しました。近年のスペック競争から一歩引いた、価格とスペックの丁度良いモデルです。そして実はあのZS10シリーズの最新モデル、ZS10 pro Xです。

4年ほど前にZS10が登場した際、当時5,000円で4BA+1DDハイブリッドが買えると界隈で大きな話題になりました。実際の音質はそれぞれのBAの音が鳴っており、まとまりのない粗削りな音でしたが、それは今だからこそ云える話。当時としてはそれまでのKZのドンシャリとは異なる解像感を重視した音は本当に衝撃を受けました。そして1年後に登場した後継機ZS10 Proではバランスの良いドンシャリはまとまりのある音に進化し、我々を驚かせ魅了しました。今想えば、これがその後の多ドラスペック競争の始原だったと云えます。4BA+1DDハイブリッドモデルと云えば当時高級機のスペックで数万円の販売価格が当たり前でした。それが僅か5,000円で購入できて、更に音もリッチで楽しく音楽が聴く事ができる。それで十分で、それが本質という事を忘れ、見失い、気が付かずにいました。これが迷走という事でしょうか。良い音を造るために必要な要素に占める割合にはドライバの数はそれほど重要ではないという事に気が付くまで回り道をしてしまい時間が掛かってしまいました。

少し脱線しますが、ZS10 Proの最新Verは搭載しているBAが異なっているそうです。もちろん私は初期のVerしか試していませんので真偽はわかりません。また、昨年レビューしたGK GS10が初期Verの音(に近い?)という噂もあります。私の印象ではGS10の方が音の統制が取れていたように感じましたし、何よりも価格が安い。3,000円台で4BA+1DDハイブリッドモデルの音が楽しめますから。

閑話休題

このままでは終われないKZが3年の時を経て、敢えてZS10シリーズ最新作 ZS10 pro Xを投入し巻き返しを図る。それにはどの様な意図があり、市場を動かそうとしているのか?

逆襲のKZが楽しみですし、期待が高まります。

 

それではKZ ZS10 pro Xのスペックを詳しく見ていきます。先述の通り片側5ドライバの多ドラハイブリッドモデルは4つのバランスドアーマチュアドライバ(BA)と、一つのダイナミックドライバ(DD)という異なる二種のドライバによる構成です。同価格帯多ドラハイブリッドモデルの中では現在は物足りなさを感じてしまうドライバ構成ですが、先述の通りそれは過剰なスペック競争の名残りがそう思わせるのでしょうね。

これまでZS10シリーズでは一貫して同じドライバ数ですが、採用しているドライバは変化し、二代目のZS10 Proではステムノズル内に高音域用のBAを1基配置するなどの初代のシェル内にBAを含む全てのドライバを配置していたものとは違いがありました。三代目となる最新型のZS10 pro Xでは採用するドライバを一新。最新世代への進化を遂げています。

ZS10 pro Xの搭載ドライバはこれまでのZS10シリーズから一新。高音域用BAドライバには30019sシングルを二基採用。従来の30019のアップデート版BAです。中高音域用BAドライバには50024sデュアル(2BA) 一基を採用。こちらも従来の50024のアップデート版です。次に低音域用のダイナミックドライバには従来のKZ定番の二重磁気ダイナミックドライバではなく、新型10mm径ダイナミックドライバを採用し、中音~低音域を担当しています。そして全てのBAはDDと並列にシェル内部に配置しています。

ZS10 Proとのスペックの違いは、片側5ドライバ、4BA+1DDの多ドラハイブリッドドライバ構成は同じ。高音域BAがZS10 Proでは30095シングル 二基とドライバの種類が異なり、更にステムノズル内に一基配置と異なります。中音域BAは50060シングル 二基とドライバの種類が異なり、シェル内に配置は同じ。低音域のDDは先述の通り10mm径の二重磁気ダイナミックドライバ 一基と数は同じですが種類は異なり、シェル内に配置は同じです。ドライバ構成だけで比較すれば初代ZS10と配置は同じですが、高音域用のBAと中音域用BAに加え、低音域用DDが代わっていますので、初代ZS10や二代目ZS10 Proとは出音が別物になっているという想像に難しくありません。そして、実際にそれは一聴して感じられました。いや、寧ろ従来のKZとは出音の印象は異なっています。

比較対象一つ目、Trn ST5のスペックは同じく片側5ドライバ、4BA+1DD多ドラハイブリッドモデルです。搭載ドライバは高音域用BAドライバには30095シングル 二基を採用。中音域用BAドライバは50060シングル 二基を採用し、中高音~中音域を担当。低音域用のダイナミックドライバに10mm径ベリリウムコート振動膜を採用し、中低音~低音域を担当。高音域用BAはステムノズル内に配置し、中音域用BAと低音域DDを全てシェル内部に配置しています。

比較対象二つ目、KBEAR Robinのスペックも同じく片側5ドライバ、4BA+1DD多ドラハイブリッドモデルです。搭載ドライバは中音から低音域用のダイナミックドライバに10mm径の二重磁気ドライバを。高音域BAにKBEAR-IF-Kシングル1基を採用、高音から中音域を担当しステムノズル部に配置。中音域用BAにKBEAR-HI-Bシングル3基を採用、中高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置しています。RobinではBAにカスタマイズモデルを採用。実質高音域用を1基と中高音域用3基とすることで、高音域と中高音域の聴こえ方を調整しています。

次にドライバの配置です。前述の通りZS10 pro Xは全てのドライバをシェル本体内に配置。中価格帯以下のモデルに多い音導管を使用しないタイプです。そして高音域用2BAと中高音域用2BAと低音域1DDの3way方式です。特別なことはなくオーソドックスな構成と配置となります。

これに対しST5も同様となります。ただしこちらは高音域用BAドライバ 二基をステムノズル内に配置し高音域をダイレクトに耳に届ける想定です。それ以外のドライバはシェル内に納め、高音域2BAと中音域2BAと低音域1DDのオーソドックスな3way方式とし、中価格帯以下のモデルに多い音導管を使用しないタイプです。個人的には音道管が正義とは云いませんが、それの有無やシェル等の素材を含めて音響チューニングの一つだと考えています。

変わり種なのはKBEAR Robinです。高音域用BA一基をステムノズル内に配置し、その他ドライバはシェル内に、音道管は無し。高音域1BAと中音域3BAと低音域1DDの3way方式という高音と中音域のBAの数が異なるドライバ構成&配置です。

尤も、便宜上伝わりやすくするために3Wayと説明していますが、実際には高音域用BAは超高音~高音域を担当し、中音域用BAは高音域~中高音域を担当している場合が多く、純粋な中音域とは云えません。肝心の中音域はDDがカバーしている場合が殆どで、それが中音~低音域の広範囲を担っています。その為、DDのポテンシャルがイヤホンの絶対性能を決めていると云っても過言ではないと云えます。出音をどんな音色にするかはチューニング次第ですが、解像感や分離といった絶対評価は「ドライバの質=コスト」という現実には抗えない「価格なりの音」という評価が存在する理由です。

 

最後にZS10 pro Xのシェル本体は樹脂と金属のマテリアルハイブリッド構造が採用されています。ステムノズル一体型シェル本体は樹脂製で、上側と下側のシェルカバーを接合した後に金属製フェイスプレートを被せています。これは、KBEAR Robinのようなシェル本体が樹脂製でステムノズルとフェイスプレートは金属を採用した一般的な中華イヤホンとは異なり、上側の樹脂製シェルカバーと下側の金属製フェイスプレートを接合した金属と樹脂によるハイブリッド構造とは厳密には異なり、オール樹脂製と云えるかもしれません。一方のTrn ST5ですが、オール金属製シェルはCNC切削による滑らかな曲線美を感じられる綺麗な造形です。一般的にシェルやステムノズルの材質により音質への影響があり、金属製シェルでは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなり、響きの美しさは金属が一枚上手です。樹脂製では金属音等の高い音が吸収されてしまい、やや強めに鳴らす事でバランスをとる場合もあります。そのため、樹脂製でも金属製でも良い事だけではなく、メリット/デメリットの関係が存在します。

 

※宜しければ過去のレビューもご参考ください

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KZ ZS10 pro Xの納期として今回AliExpressで購入しましたが、中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのprime扱いのようにはいきません。オーダーから二週間で届きました。昨今、AliExpressでの購入では感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきませんでしたが、現在はかなり回復し国内で大手輸送会社に委託される輸送の場合はかなり安定してきました。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月以上。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。最近はHiFiGoの利用が多いのですが、こちらは何故かAliExpressよりも到着が早い事が多いのがその理由です。

どちらも海外ネットショッピングであり心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、私は活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での取扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. KZ ZS10 pro X実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングはKZの白を基調としたスリーブタイプの化粧箱で、少しコンパクトになってタイプ。表にはイヤホンイラストが。裏面にはスペック等が印刷されています。

 

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スリーブを外すと白のプラ内装にイヤホンが収められ、その下側のカバーを開けると付属品が収められています。

 

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付属品は最近のKZに付属する溝有白色シリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種1セット。他にはケーブルです。中価格A5,000帯としては物足りない、イヤホンとして使うための最低限の付属品となります。

このあたりは良くも悪くもKZです。

次に本体を見ていきます。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホンの中価格A5,000帯として十分に綺麗な仕上りです。樹脂シェルと金属フェイスプレートの合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは黒色のみ。

続いて付属ケーブルを見てみます。

 

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付属ケーブルは先述の通り最近のKZに付属する4芯銀メッキOFC線、並列ケーブルの白(銀)色タイプです。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はKZ-C、2ピン仕様。極性はもちろんKZ極性の上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に多少引っ掛かりがありますが、タッチノイズは殆ど感じません。肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。

とはいえ、まあKZですしリケーブルやイヤーピース交換前提と云われればそれまでです。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からTrn ST5、KZ ZS10 pro X、KBEAR Robin

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ZS10 pro XとST5やRobinとの外観の比較として、サイズ感はST5がシェルの厚みがあるもののフェイスプレートの大きさ等はほぼ同じ。見た目ではST5がやや大きく三機種中では体積は大きいです。とはいえ三機種共に決して大きい部類ではなく一般的な多ドラのサイズ感は耳への収まり三機種共に問題なく装着感も良好です。

シェルの材質は、先述の通りシェル本体が樹脂製でステムノズルとフェイスプレートが金属製のハイブリッド、マルチマテリアル仕様となり、Robinも同様です。オール金属製のST5とは異なります。

そのため重量はST5が比較的重量を感じますが、三機種共に耳への装着時には良好な装着感によってそれほど差を感じないと思います。

ステムノズルの太さと長さ及び角度は三機種共にやや太めで角度もほぼ同じ。ST5が僅かに短めですが気になるほどではありません。ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがありZS10 pro Xが一番目が細かく細目。次点がRobin。ST5は中華イヤホンでよく見る丸穴のフィルタです。ZS10 pro XとRobinは音質への影響のあるタイプと云えますが、ST5は異物混入による故障を防ぐタイプと云えそうです。

装着方法は三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りZS10 pro Xはステムノズルが太めなため、イヤーピースは装着感への影響を考慮し普段より小さめ、または傘の形状を考慮して社外品を選択する等、耳への装着感を重視し選択してください。

付属品だけでイヤホンとして使えないかと云えば、決してそんなこともないですけど。イヤーピースは普段使っているメーカーの物へ交換推奨です。

最後に付属イヤーピースを見てみます。


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イヤーピースは最近のKZに付属する溝有白色シリコンイヤーピースタイプが付属します。個人的に従来のKZの溝有黒色イヤーピースでは傘がカサつきを感じフィット感がイマイチでした。この溝有白色イヤーピースでは適度なコシと傘表面にしっとり感があり遮音性も十分に感じます。

音質的には従来の溝有黒色イヤピよりも白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプの様です。比較的開口部が大きく高音がダイレクトに届くタイプです。

この付属溝有白色イヤピで私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

中華イヤホンでは付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じる事が多くあります。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. KZ ZS10 pro X音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云え、エントリークラスの代表となります。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云え、モニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能です。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属シリコン白色 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「KZらしい明るさのある派手目に鳴る。高音がやや強めに鳴り、低音は従来のKZより抑え気味。量感よりもタイトにキレのある鳴り方」です。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き低音は締まった音に。高音が落ち着いたことで全体のバランスが良くなりました。

 

音場

普通からやや広め。縦横の空間では奥行はそれほど感じられませんが、横方向に空間を感じられます。そのため平面的な印象です。

 

高音域

煌びやかで響きも良く伸びやかさも感じられますが、やや強調感を感じられます。存在感があり華やかに鳴りますが、尖りは感じず刺さりは抑えられています。小さな音も埋もれずに耳に届けてくれ解像感の高さを感じます。超高音域の伸びやかさまではそれほど程感じませんが、十分感じられます。

 

中音域

横の広さを感じるものの縦の奥行はそれほどでも無く空間の広さは感じ難いものの、響きの良さと華やかさは感じられます。前後の音が集まり団子感を感じる場合がありますが、音が重なるゴチャつきは感じ難く、左右に離れたところで鳴る小さな音や音の消えゆく様が掴みやすく解像感は良好です。ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、ややドライ気味ですが不自然さを感じるような声色ではありません。

 

低音域

量感は多くなく響きや広がりも適度にありますが音の広がる様を感じるような低音ではありません。どちらかと云えば量感で誤魔化す音ではなく芯のあるキレの良い締まった音。ベースラインは十分追えますが、クリアな中音とトレードオフの関係。重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが十分な強さがあります。

 

出音のバランス

一言で云えば高音域に強調感のあるやや中高音寄りの弱ドンシャリ。従来のKZのイメージとは異なる出音はバランスが良い。普通に良い音。

 

高音の煌びやかで響きのある音は華やかさがあり、KZらしい音。それでもただ強く鋭い尖った音が前に出てくる音ではなく、ちょっと強めに鳴る心地良さを感じられる音。長時間はきつくなるかもしれませんが、このぐらいなら良い演出だなぁと感じられます。超高音までの伸びやかさはそれ程感じませんが、高音域全体で不自然に強く鳴り不快に感じる尖りはなく、小さな音もしっかりと耳に届く綺麗な音。他の音域を邪魔することなく整理された鳴り方は「こういうので良いんだよ」と納得してしまいます。コスト制限から質の高くないDDの高音を補完する為のBAが高音を強調している過剰演出ではない、統制された高音は全体のバランスを整えており、不快感の無い高音を聴かせてくれます。

中音は凹みを殆ど感じず、空間は横に広がりを感じる一方で奥行を感じ難いため、音の分離はまずまず。縦方向に広さを感じませんが、横方向の左右に広さを感じられボーカルの周りに離れた位置から楽器の音が鳴ります。全体的に音は統制され見通し良く鳴り、解像感は良好で小さな音も遠くの音も埋もれずに感じられます。

ボーカルは自然な位置でクリアで聴きやすく、高音や低音に埋もれません。声色はドライ気味なものの息遣いが感じられ、明るさのある声は不自然さはありません。一方で女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声は分が悪く感じるかもしれません。

低音は量感は抑えられておりますが、全体のバランスで見れば十分な量感。高音中音をマスクする様な印象はありません。広がりや響きはそれほど感じられませんが、寧ろ締まった芯のあるキレのある音は強さもあり、小気味良い印象。リズミカルな曲との相性は良く、音の強さ、強弱を感じられアップテンポな曲との相性は良いと思います。バラードなどでは低音の広がり少なく、雰囲気がもの足りなく感じ気になるかもしれません。新型DDは従来の二重磁気ドライバとは異なる性質で、強く出る低音からは一線を引いた新しい音を聴かせてくれ、個人的に好きな傾向です。

重低音は沈み込みはそれほど深さを感じませんが、十分な強さです。

新型DDでは過度に低音を鳴らすのではなく芯がある強さのある音はタイトな音が高音中音の煌びやかで響きの良い音を邪魔せずに心地の良い音を聴かせてくれます。

ZS10 pro Xの音色は従来のKZのドンシャリとは異なり、弱ドンシャリバランスの整った高音低音からは従来の「解像感?強く鳴らしとけっ」からの脱却を感じられ、統制された出音に今後のKZに期待したくなる、そんな印象です。

 

さて、他機種との比較です。先ずST5との比較は、ST5は高音に強調感がある中低音寄りの弱ドンシャリの出音が音楽を楽しく聴く事ができ、同じリスニングイヤホンという土俵の上では音の完成度としてはST5の方に分があると思います。ST5の新型のベリリウムコート振動膜DDが、中高音のごちゃつきを改善しV90等で採用されていたDDよりも低音の強さは抑えられています。

ZS10 pro Xの全体の出音というかバランスは似ており、最新のTrnの音に似た感じは各音域のどこかを強調せずにバランスが良いです。違いを挙げれば音場はST5は奥行きがありZS10 pro Xはそれ程感じない。低音がST5の方がしっかりと感じられる。その分中音域に籠りを感じられる事があり、クリアさはZS10 pro Xに分がある。総合では前述の通りST5に分があると思います。

次にRobinとの比較ではこちらも出音のバランスが近いですが、よりフラット寄り。RobinはKBEARのどこかの音域を強調しないフラット寄りの弱ドンシャリの出音。ZS10 pro XやST5がやや高音域に強調感のある弱ドンシャリです。低音の質感はST5>ZS10 pro X>Robinですので、ST5の方がドンシャリが強いと誤解されるかもしれませんが、寧ろRobinがもの足りない音という印象。Robinは空間の音のごちゃつきはRobinでは感じられ、質感はZA10 pro XやST5が一枚上手と云えます。

 

※以前のKZ ZS10 Proのレビューもご参考ください

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※以前のGK GS10のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとKZ ZS10 pro XはかつてのライバルTrnに勝負を挑んだ多ドラハイブリッドモデルとして、ZS10 Pro以降のスペック競争の反省からライバルを研究し、KZの新たなステージを目指した最新のKZの音と云えるのかもしれません。

上位のKZ ZASには全体の質感で及びませんが、高音や中音域の質感は前作ZS10 Proよりも大幅に向上していると云えますが、それでもまだTrnには一歩及ばずという印象もあり、今後のKZの展開を注意していきたいと思います。

また、ZS10 pro Xはリスニング用途としての非常にバランスの良い、丁度良いドンシャリは、高音域の刺激的な強さや低音のドンの量が多いバランスを求め、演奏メインで聴きたい方はもの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   ZS10 pro X ≧ ST5 ≧ Robin (出音の強さ) 

中音   ST5 ≧ ZS10 pro X ≧ Robin (質感の順)

低音   ST5 ≧ ZS10 pro X ≧ Robin (出音の強さ)

ボーカル ST5 ≧ ZS10 pro X ≧ Robin (質感の順)

※出音や音色の参考程度に

 

 

4. KZ ZS10 pro Xの総評

KZ ZS10 pro Xは同社が数年前のZS10シリーズをスペック競争から回帰し、再度担いだ多ドラハイブリッドのエントリーモデルとして注目の商品です。その音質は従来のKZのドンシャリとは一線を画し、音質に主軸を置いて造ってきたと感じられる出来は、普通に良い音です。ブラインドテストをすればTrnと答えてしまうかもしれません。一方でKZにはそういう音を求めていないという方々には評価が分かれるかもしれません。そして何よりも現在Trnにリードされている覇権争いを再び手繰り寄せる事ができるのか、今後に注目していきたいです。

 

最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年10月8日)は国内amazonやAliExpress、HiFiGoで発売されておりますが、昨今の円安のため、国内amazonとの価格差がそれ程なく、国内amazonでの購入がお勧めです。AliExpressやHiFiGoでは本国発送のため、リスクが有り少々難があると云えます。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内amazonの取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressやHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

ZS10 pro X

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

ST5

以下、付属ケーブル4.4プラグ、付属白イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

Robin
以下、ケーブルKBX4905、付属イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★☆  
※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A5000帯中華多ドラハイブリッドイヤホンの商品のレビューとなりました。同社の価格帯ラインナップの中で間違いなく高音質です。が、ライバルにはまだ届かない…。今後も両社にはレベルの高い競争を続けて楽しませて欲しいと思いました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ