みぃねこの備忘録

いろいろなこと、主に趣味の備忘録として活用。アフィリエイトやってません。お気軽にリンクからどうぞ。

NICEHCK DB2 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、低価格U5000帯で発売された1BA+1DDハイブリッドドライバモデルのNICEHCK DB2についてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://aliexpress.com/item/1005006486403517.html

 

amazon USはコチラ↓

https://amazon.com/dp/B0CT5F6FHY/nicehck+db2/

HiFiGoはコチラ

http:// https://hifigo.com/products/nicehck-db2

 

 

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1. NICEHCK DB2 について 

NICEHCKはAliExpressやamazonでポータブルオーディオ製品を販売する中華オーディオセラーです。数多の中華ポータブルオーディオ製品を販売するだけでなく、セラーオリジナルの製品を販売しており、中華ポータブルオーディオファンには有名なセラーです。特にイヤホンの自社オリジナルモデルは他社のOEM供給ではなく、開発にも携わることでセラーオリジナルモデルの「音」を確立している希少なセラーはブランド価値を高めていると云え、かくいう私もその音に魅かれている一人です。なので個人的に近年はケーブル開発に注力していると推察される商品展開は少し残念な思いを抱えています。同様の業態として同じ中華セラーのY社が競い合いセラーオリジナルイヤホンを販売していたあの頃が熱くて一番楽しかったという想い出です。

そのNICEHCKが低価格帯王道の1BA+1DDハイブリッドドライバモデルを新発売すると発表があり、早々にオーダーしたのはやはり期待値の高さです。決して先行限定缶バッチが欲しかったわけではありません。勿論無事に入手できましたが(嬉)。

閑話休題

近年の低価格帯のトレンドは1DD、シングルダイナミックドライバモデルと云えました。各社は次々にダイナミックドライバの振動膜(ダイヤフラム)を新たに採用したり、ダイナミックドライバの空間であるキャビティ構造の設計に力を入れ採用した素材のスペックを売りにするのではなくドライバの性能を上げる事に注力し、従来のダイナミックドライバを凌駕する特性を得る事に成功しました。それは、低価格帯の制約条件の壁を打ち破ることに繋がりました。従来定番だった安価なDDの特性を補うためにBAを追加する手法は、二種類のドライバを組合せることのデメリット、クロスオーバー調整が音質評価の肝となっており、初期はそれぞれ無調整で二つのドライバが自己主張する頭の悪い音(当時は誉め言葉)を価格帯で実現し話題を呼び人気が出ましたが、イヤホン本来の「音質の良し悪し」というものによってそれぞれのドライバの出力を調整したり、クロスオーバー調整を念密にしたり。調整しすぎてBAが鳴っていない問題等も騒がれたりもしました。そんな過去を振り返りましたが、実際にはビジネス文化の違いは顕著で、端的に「苦労しても低価格では実入りが少ない」ため複数ドライバモデルは廃れ、代わりにダイナミックドライバが見直されその可能性が追求され性能が向上し、シングルダイナミックモデルで十分という結論になったためと云えます。

 

さて、NICEHCK DB2のスペックですが、先述の通りバランスドアーマチュア(BA)ドライバを一基とダイナミックドライバ(DD)を一基づつ。異なるドライバを二基搭載するハイブリッドドライバモデルです。BAはカスタマイズドライバを。ダイナミックドライバは10mm径チタンメッキグラフェンダイヤフラムのドライバユニットを採用。特に従来のダイナミックドライバと比べ、バランスの取れたサウンドが期待できます。また、BAとDDのクロスオーバーをPCBボードを採用し最適化。音質を妥協しない姿勢が窺えます。

 

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NICEHCK DB2は同社のカスタマイズBAとチタンメッキグラフェンダイヤフラムのDDにより優れたオーディオ性能を得ることに成功しています。メーカー発表のf特からは全体的にフラットに寄せたサウンドを示しており、ハイブリッドモデルの強みを活かした高音域チューニングに期待させられます。実際に聴いてみるとフラットというよりはドンシャリという印象を受けますが、ただ高音と低音が強調されたリスニングサウンドではない音像を感じやすい描写のしっかりとしたサウンドを届けてくれます。

 

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シェル本体はPC製樹脂シェル本体に、アルミニウム合金のフェイスプレートベースにレジン樹脂のフェイスプレートが組み合わされています。 この方法は高級感のある外観を備えるのに最も合理的な方法と云えます。

 

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シェル内には10mm径DDユニットを配置し、BAドライバはステムノズル内に配置することでシェル本体をコンパクトにまとめ快適な着用感を実現。シェル本体に樹脂材を用いる事で軽量化を図っています。軽量なシェルによる快適なフィット感を確保することに成功しています。

 

最後に付属ケーブルです。DB2には取り扱いのし易い0.78径2ピンを採用しリケーブル可能としています。しかし、シェル側コネクタ部にはTFZタイプ(四角の凸タイプ)が採用されており、リケーブルの場合は通常の2ピンタイプでも可能となりますが、二本のピンで固定する形となる為、耐久性の面からはTFZタイプのコネクタを採用したケーブルを選択する方が良いでしょう。

商品購入時に3.5mmステレオミニプラグとマイク付き3.5mmステレオミニプラグが選択できます。この付属ケーブルはどちらも4芯線の高純度OFC導線が採用されています。一芯が太めの1mm線材はしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、DB2では初期セットケーブルとしてTFZコネクタタイプの十分な品質のものが付属しています。そのため、バランス接続を試したい方はTFZコネクタの4.4mmバランスプラグモデルを選択してください。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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NICEHCK DB2の納期としては現在(2024/2/3)国内amazonでは、本国発送扱いのため、AliExpressでやHiFiGoでオーダーした場合と同様の日数がかかります。それらの配送は現在はかなり安定しており、一週間前後で届くと思います。ほぼ平時に戻った印象です(※現在は中国春節休みとなっておりますので配送遅延の影響が予想されますので、ご注意ください)。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いというメリットがありますが、反面届くのに少し日数が掛かること。不具合時の対応に英語は必須となるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. NICEHCK DB2 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは白を基調としたスリーブタイプの中サイズの箱です。表面にはイメージキャラクターのイラストがほぼ全面にプリントされており、メーカー名とイヤホン名は上の方に小さく記載があります。

一見してイヤホンのパッケージには見えませんが、それがこの商品のキャッチーなポイントと云えます。

 

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スリーブを外すと先ほどのスリーブ表面に有ったメーカー名等の文字が消えたイラストのみの内箱が現れます。

 

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上蓋を外すと白を基調とした内装にイヤホン等が収納されています。

箱の下側にはイメージキャラクターイラストカードとその下に付属品が収納されたイヤホンポーチが収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプ2種の2セットと他にはケーブル、ケーブルバンド、イヤホンポーチです。低価格U5000帯としては十分必要なものが揃った付属品となります。

 

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NICEHCKのロゴと文字が入ったイヤホンポーチはコインケースタイプです。鞄に放り込む使い方には不向きですので、持ち運びの際は別途ハードタイプのケースを用意した方が実用的です。

 

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イメージキャラクター、Tian Huiのイラストカードが付属します。イヤホンの商品性を分かり易くしてくれるアイテムです。

 

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こちらはAliExpressのNICEHCK公式STOREにて購入者先着800名に付属した缶バッチです。2024/2/3現在付属終了していますが、これだけでこの商品を買う価値はあったとかなかったとか。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は上位モデルのNX7 mk4同様にオーソドックスなIEM風のもの。シェルは厚みが無く平らなデザインです。シェルが厚くないため耳へ収まる部分が薄くなっており耳から出っ張ることも無く収まるので装着感も良好です。フェイスプレート部はゴールドカラーのアルミニウム合金のベースプレートにレジン樹脂のフェイスプレートが組み込まれており綺麗な模様が特徴的です。シェル本体の透明PC樹脂が内部のドライバを視認できるメカニカルなデザインと相反する見た目は刺さる方も多いのではないでしょうか。樹脂と金属によるハイブリッド素材のシェル本体緒は重量感が少なく耳への装着時はその装着感の良さから重さを殆ど感じません。

フェイスプレートはカラーバリエーションがあり、紫の場合は鉱物の結晶を思い浮かべる模様が内部で光を反射して綺麗に輝きます。黒や青の場合はマーブル模様でありそれよりは落ち着いた雰囲気。この辺りは好みが分かれるところかもしれません。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの低価格帯と馬鹿にできないほど綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面も上位モデル同様に綺麗です。

カラーバリエーションは紫、青、黒の三色展開。加えて3.5mmステレオミニプラグのマイク有り無しを選択できます。今回は紫のマイク無しを選びました。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高純度の4芯OFC線の編込みタイプです。ケーブルの被覆カラーは薄い茶色と落ち着いた色合いでありながら、被覆の外側がクリアの綺麗な線材が採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はTFZタイプ2ピン仕様。極性は上側がプラスです。

この付属ケーブルは一芯あたり約1mm径とやや太さがありますが、しなやかで取り回しに苦労することはありません。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは良く使い勝手も悪くないため、バランス接続をしたい方以外はそのままでも十分楽しめると思います。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からNICEHCK DB2、KZ ZES

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NICEHCK DB2とKZ ZESの外観の比較として、サイズ感はZESは厚みがある為かなり大きく見えます。DB2のシェルは薄く平らですが、ZESは厚く立体的です。DB2は同社上位モデル同様のシェル造形であり、コンパクトと云えます。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはDB2は短く、太さはほぼDB2が太いものの一般的な太さです。ZESがかなり細いと云えます。角度は両機共にほぼ同じ。

DB2はZESと比べかなりコンパクトであり、オーソドックスな造形の見た目通り耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はDB2がTFZタイプ2ピン。ZESはKZ-Cタイプです。DB2のリケーブルの際は先述の通り通常の2ピンコネクタでも可能ですが、接続強度を考えるとTFZタイプを選択したいところです。

シェルの材質は、どちらも樹脂と金属のハイブリッドタイプですが、DB2の方がやはり軽量。装着時の重量は感じにくくなります。尤も耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくDB2は一般的なやや太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。どちらもステムノズル部に金属製フィルタがあり、異物混入による故障を防ぐ事ができます。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りDB2はステムノズルがやや太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。付属の小さめのイヤーピースで耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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※NICEHCK07イヤーピースサイズ表

付属のシリコンイヤーピースは黒色のS、M、Lの3サイズセットはやや背が高く口径小さめの弾丸形状と同社オリジナルのNICEHCK 07(以下07)がS、M-、M、M+、Lの5サイズセットです。07は傘がやや背が低い開口部が大きめのもの。某イヤピに似ていますが、それとはMサイズにバリエーションがあるオマージュモデルです。今回記事を書いていて初めて気が付いたのはMが2種有って、従来の白軸MがM+相当のサイズ。軸が青がMサイズ相当ということ。ずっと逆だと思っていて画像もその順番で並べていました。この場で訂正させていただき、今後はそれを元に説明していきます。

イヤホンに装着済みのイヤーピースは黒色タイプ Mサイズです。DB2は他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的なステムノズル形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒タイプは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプの印象です。07は中高音をクリアにして僅かに低音を弱めてタイトにさせ全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象で、いつも通り07 M-サイズ(黒軸)を耳の奥に栓をする装着でフィットしました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸いいつもの付属07タイプのイヤーピースで私はフィッティングが上手くいきましたが、音質的にもメーカーの意図するタイプは07の方という印象で、そのまま付属の07 M-サイズを使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. NICEHCK DB2 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り再生環境はスマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

以前はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えています。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属07イヤーピース M-サイズ(白傘黒軸)、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「僅かに中高音寄りだが中低音にも厚みがある音。高音は華やかで低音はしっかりと鳴る僅かに中高音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は落ち着き、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

やや普通からやや広めの印象。前後はそれほど奥行を感じませんが、左右はやや広さを感じられます。奥行きはそれほどありませんのでやや平面的な印象です。空間はそれほど広さを感じませんが窮屈な印象はありません。

 

高音域

華やかさは十分感じられます。華やかに鳴りますが煌びやかさは余韻が少なく上までの伸びやかさはそこそこ感じます。響きや余韻がやや弱く明るい音がしますので存在感はある華やかな音。ただ単に明るく騒がしく感じるような鳴り方ではありませんが繊細よりも割と荒々しさのある鳴り方。一方で線が細い印象もあり刺さりや尖りは感じませんので比較的攻めた高音域という印象です。解像感は悪くありませんが、描写の正確さよりもスパイスの効いたパンチのある味を楽しめます。

 

中音域

ハイブリッドの弱点である中音域の薄く感じられるところを上手く厚みを持たせて華やかさと濃さを持たせた音は、やや真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じられますが、このクラスでは出来が良いと云えます。音の分離は悪くなく線の細さも感じさせない鳴り方はDDの性能の高さを感じられます。音の立ち上がりは良好でキレの良い音を楽しめます。ボーカルはクリアでやや近い位置から寒色の声色を聴かせてくれます。

 

低音域

量感は十分で響きや広がりを感じられますが、大きく強く鳴らし音圧で誤魔化すような鳴らし方ではありません。それでも音階や強弱といった低音域の解像感を重視した音を目指していることを窺わてくれます。ベースラインは追いやすく感じられますが、ボーカルよりも前にでて邪魔するような不躾さはありません。重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、力強さがありますので力不足を感じません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく華やかにクリアで快活に鳴らしますが響きはもう少し。低音は十分な量感で力強さがあり不足は感じません。過度なバランスの音ではなく聴き易い出音のバランスは素直に良い音と云えます。

 

高音は明るく華やかになりますが、騒々しく感じるギリギリを攻めた印象は、解像感の演出を感じられます。とはいえ嫌な感じではなくハイブリッドモデルを良い意味で感じられます。上までの伸びやかさはそれ程感じられず、響きや余韻が感じられないことがその理由の一つと鳴りますが、過度な華やかさではなく聴き手が音楽を楽しく聴くために十分な鳴り方です。一方で高音域の誇張はあるため原音忠実とは違う強調感は嫌味の無い音に上手くまとめられているという印象を持ちます。無駄に強調した誇張の強い音は一聴して「おぉっ!」と好印象となりますが、暫くすると聴き辛い音になってしまうような脆さはありません。

中音は凹みを抑えられていて、ボーカルはやや近い位置にあり楽器の音はその周りにやや近い位置にあるためごちゃつきは否めません。分離悪くありませんが、厚みを持たせた結果のトレードオフという印象です。それでも薄く線の細いハイブリッドモデルの中音域とは異なり、充実感のある中音域に加え中音の域の下の方に厚みもある音は一体感を感じられます。

ボーカルはやや近い位置からクリアに聴く事ができます。演奏の音にも埋もれることはありませんが声色は寒色寄りで息遣いを感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声は分が悪いですが、アップテンポな曲では明快に聴かせてくれます。

低音の量感は十分。響きや広がりも感じられますが伸びやかとまではいかず。一発の力強さもありますが、音階や強弱の描写よりも音の濃さを重視した音は低音を疎かにしていません。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、力強さを感じられる音。従来の低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音ではなく、低音域の質感を重視した広がりを感じられる音です。

 

他機種との比較として同社のDB3では兎に角中低音域が濃厚な音。DB2の高音域を疎かにしない弱ドンシャリバランスとは異なります。DB3の2DDの内、小径1基を取り除いてもDB2の様なバランスの良い音にはならないと想定できますので、DB2のバランスの良いドンシャリが高レベルであることは確かです。

KZ ZESと比較した場合、BAの代わりにESMドライバを採用したモデルのZESはその音質傾向は高音はしっかりと上品に。低音はノリ良く鳴らし、中音は音に厚みがあります。音楽を聴く事を楽しませてくれる従来のKZサウンドは抑えられております。何よりも従来のBAを使った高音とは違いESMドライバは尖りがなく自然に解像感の高い音を聴かせてくれるところが最大の特徴です。そのため、DB2と最も近しい音でありますが、やはり高音域がBAというところに最も違いが出ます。なめらかさはESMには敵わないです。

Trn TA1 Maxと比較した場合、TA1 MaxはZES寄りの傾向。中高音寄りで、それらと比べるとTrnらしさのある音を聴かせてくれます。それでも低音はTA1 Maxの方がしっかりと鳴らします。とはいえ低価格帯で評価の高いKZ ZSN pro Xのドンシャリとも異なります。KZ ZSN pro Xでは中・高音が派手に鳴り、低音は強さがありますので、それとは出音の傾向が違います。やはりあの頃のKZは強ドンシャリなんだと思い返します。

 

一言で云えば同じ中高音寄りで評判の良い音の傾向という印象です。DB2の出音は中高音を重視したキレの良い音を鳴らし低音をやや抑えながら疎かにしない音。比較対象はKZ ZSN pro Xを除き明確なドンシャリ傾向とは一線を引きます。そのため、DB2は一聴すると明るく楽しい音を聴かせてくれますが、高音域の印象次第で評価が変わると云えます。尤も、Trn TA1 Maxは少し価格帯が上。KZ ZESはそもそも入手が難しい(色々あったので売ってない)ので、一択ですね。

 

※過去レビューも参考ください

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まとめるとNICEHCK DB2はセラーオリジナルモデルとしてレベルの高い音を聴かせてくれます。中高音域寄りの弱ドンシャリは低音もしっかりと鳴らし高音域はハイブリッドらしい明るい音を鳴らす。またハイブリッドモデルの中音域を仕上げるときの泣き所となる線の細さを改善した厚く鳴らす音造りは音楽的であり聴いていて楽しい音です。それは同価格帯で新しい形を魅せてくれた高音質モデルと云えます。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方や中高音重視、低音は邪魔という方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   ZES ≧ TA1 Max ≧ DB2 (質感の順。出音の強さはDB2

中音   ZES ≧ DB2 ≧ TA1 Max (質感の順)

低音   ZES ≧ DB2 ≧ TA1 Max (質感の順。出音の強さはTA1 Max)

ボーカル TA1 Max ≧ DB2 ≧ ZES (質感の順)

※終売、価格帯違いのため参考程度に

 

 

4. NICEHCK DB2 の総評

NICEHCK DB2は安定の高音質モデルと云えます。もちろん価格帯での評価となりますが、セラーオリジナルモデルでは評価の高い製品を世に送り出していると云えます。このDB2は音楽を楽しめる高音質イヤホンと同時にコレクションアイテムとしても評価できます。尤も同価格帯では間違いなく高音質と云えますし、ハイブリッドモデルを上手くまとめた製品と云えそうです。個人的に普通に高音質のイヤホンとしてお勧めできます。

 

最後に、今回は低価格U5000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2024年2月3日)は国内amazonでは4,000円台。HiFiGoやAliExpress等で約3,000円台で発売されており、現在は海外購入が安価です。それでもHiFiGoやAliExpressの本国発送は納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

DB2

以下、付属ケーブル、付属07イヤピ M-使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

TA1 Max

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★☆
分離★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

ZES

以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

ZSN pro X

以下、付属ケーブル、付属溝無黒イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★☆
分離★★★
お勧め度★★★★★ (演奏重視の方に)

※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Hidizs MP145 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A20000帯で発売された1PDモデルのHidizs MP145についてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://00m.in/oyxsM

 

HIDIZS直販サイトはコチラ↓

Hidizs MP145 Ultra-large Planar Magnetic HiFi In-ear Monitorswww.hidizs.net

 

 

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1. Hidizs MP145 について 

Hidizsは数多ある中華オーディオメーカーの中でも本格的なポータブルオーディオメーカーです。HidizsはAP80 Pro X等の小型のDAPが最も有名ですが、実はイヤホンにも評判の良いものが多くリリースされています。HidizsのイヤホンラインナップはフラッグシップモデルのMS5がA60000帯の4BA+1DDモデルとなり価格帯は頭一つ抜けております。同社の小型DAPと組合せて使用することを考慮するとMD4MS3等がボリュームゾーンと云え、狙い目のモデルとなります。そのMD4は4BAモデル。MS3は2BA+1DDモデルとなり、同社のイヤホンとDAPで揃えても約5万円で高音質で音楽を聴く事ができる環境を構築する事ができます。もっと云えば、HidizsのAP80 Pro Xは他社の小型DAP群と比べてもスペックが充実しており、デュアルDACチップとFPGAチップによる高音質化に加え、音楽ファイルフォーマットはFLACはもちろんのこと、ネイティブDSD64/128/256とMQA 8Xデコードに対応した高音質対応のモデルです。また、最近主流のTWSイヤホンとBluetooth接続が可能。BluetoothコーデックはLDACに対応していますので、手軽に無線接続で高音質を楽しむ事ができます。そういう意味では、スマホ以外に音楽再生機として小型DAPを検討している方には有力な選択肢と云えそうです。

そんなサブ機・入門機におすすめしたい小型DAP、Hidizs AP80 Pro Xと組合せたい同社のイヤホンラインナップに今回MP145が追加され早速入手しました。昨年クラウドファンディングで先行販売されていましたので既に入手している方も多いかもしれません。

MP145は大型の平面磁気ドライバを1基搭載したシングルドライバモデルです。シェルの素材に航空グレードアルミニウム合金を採用し、フェイスプレートデザインには鯨の尾鰭がモチーフされている印象的なモデルとなっています。

また、MP145にはシェル素材にチタンを採用したTitanium Editionもありますが、チタンは高価なことと加工が難しい素材ということもあり限定199本、通常モデルの倍の価格となっており現在(2024/1/6)は直販サイトで入手可能です。

 

HIDIZS MP145のスペックですが、先述の通り平面磁気ドライバを1基搭載したシングルプレーナードライバ(PD)モデルです。

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PDは14.5mm径と大型ドライバを採用。磁気回路はシンメトリーになるように正確に組付けられ、7+7個のN52H磁石を配置しています。この磁気回路設計により、高周波歪みが低減され効率が向上し、磁気間の最大磁束が約1テスラになります。

その結果、クリアで明瞭な深みのあるサウンドは音楽を生々しく魅惑的に感じる事ができるとHidizsは説明しています。

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メーカー発表のf特は厳正にテストされており、H-2019のターゲットカーブを正確にトレースしています。これは後述するMP145の全ての音質調整フィルタで確保されています。あくまでも音質調整フィルタは「味付け」としていて音質チューニングがしっかりとしていることへの裏付けとも云えます。

さらに、頭部伝達関数(HRTF)に基づき、バランスの取れたレスポンスの細部を慎重に調整することで、MP145の音場に奥行きをもたらすことに成功しています。その結果、ボーカルと演奏の定位感を正確に感じられ、ライブ会場にいるような感覚を得られるようにしています。

MP145 IEMの内部スペースは、14.5mmの大型PDユニットを搭載できるように設計されており、魅力的なオーディオパフォーマンスを得るために十分な音響空間を確保しています。さらに、クジラの尾鰭の形をしたフェイスプレート部には、2つの目立たず隠れた通気口があります。これらの通気口は、イヤホンキャビティ内の空気の流れを最適化し、音のクリアさと音圧バランスを調整しています。深みがあり没入感のある低音と上まで伸びる高音が特徴的です。

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MP145には、Hidizsの革新的な空気圧式サウンドチューニングフィルター交換技術を採用しています。これは3種のフィルタがそれぞれ高域強調のシルバー、バランスのピンクゴールド、低域強調のレッドという音質調整が可能です。

加えて、付属イヤーピースがボーカル強調、バランス型、低音強調という音質調整の一端を担っており異なる9種のサウンドスタイルを提供可能としています。この最先端のテクノロジーにより、MP145は9つのサウンドスタイルの組合せによりユーザーに多様な選択肢を提示することで、幅広い音楽ジャンルとユーザーの好みに対応できるとしています。

最後に付属ケーブルです。

MP145は、99.9999%の6N高純度単結晶無酸素銅銀メッキ線材を4芯編込み線としたケーブルを採用しています。この付属ケーブルは、低抵抗でより大きな電流を通すことが可能です。さらに銀メッキ層が単結晶銅線の表面の導電率を高め、信号損失を最小限に抑えています。その結果、中高域の解像度が向上し、驚くほどクリアなボーカルを聴かせてくれます。

また、1本あたりが太めの線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、MP145ではそんな心配はありません。そのためバランス接続を試したい方は初めから4.4mmバランスプラグモデルを選択してください。個人的に付属ケーブルの相性が良く、リケーブルする必要を感じません。

Hidizs MP145は、ドングルDACDAPでの使用に最適となるように設計されています。もちろんHidizsブランドの製品と互換性があります。プラグハウジング等は銅メッキされており耐久性が高くなっていますので長く愛用したい方には安心ですね。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

MP145の納期としては現在(2024/1/6)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。AliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、7日前後で届くと思います。感染症が流行した以前よりも早くなった印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Hidizs MP145 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたスリーブタイプの中箱です。表面にはイヤホンイラストがあり、メーカー名やロゴ、製品名等がピンクゴールドの文字で記載があります。


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パッケージ裏面にはスペックの記載があります。

 

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スリーブを外すとプラスチックケースの中箱がでてきます。上蓋にはメーカー名とロゴが刻印されています。金型一体成形ですね。


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上蓋を開けると黒を基調とした内装にイヤホンが収納されています。

その下側には付属品が収納された小箱が収められています。


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イヤホン台座と小箱を取り出すと、箱底部にイヤーピースが収納されています。


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小箱を開けると付属品が収納されたイヤホンポーチ等が収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が3セット。他にはケーブルとケーブルバンド、イヤホンポーチ、交換用フィルタ3種(内、1種はイヤホン本体組付け済)です。中価格A20000帯として必要十分なものが揃った付属品となります。

 

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Hidizsの刻印が入ったイヤホンポーチはソフトタイプですが、内部が起毛生地がありイヤホンを優しく包んでくれます。ただし、ポーチの外圧からは弱くなりますので完全に保護することを目的とするならば別途ハードケースタイプを用意する必要があります。

 

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ステムノズル部の交換用フィルタが三種付属します。内、ピンクゴールドフィルタはイヤホン取付済み。高域強調のシルバー、バランスのピンクゴールド、低域強調のレッドにより音質調整が可能になっています。それぞれ外側の金属フィルタの内側に繊維フィルタがあり、その膜厚によって調整されています。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの角を落とした丸みを帯びた造形は比較的オーソドックスなIEMの体です。シェルは一般的には大柄と云え、厚みもあるために結構大きく感じます。実際には耳へ収まる部分が上手く絞られており装着感は意外に良好です。航空グレードのアルミニウム合金素材をCNC切削加工されたオール金属製シェルは見た目よりも重量感が感じ難く、耳への装着時は装着感の良さから重さをそれ程感じません。

フェイスプレートには先述の通りクジラの尾鰭をモチーフしたデザインが施されており、印象的なフェイスプレートデザインとなりますが、想像していたよりも実物は派手でも奇抜でもないため普通のイヤホンと云えます。シェルカラーが単色で大人しいところがそういう印象を持たせているのかもしれません。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面も綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションはシルバー、ダークブルー、チタンゴールドの三色展開にそれぞれ3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランスプラグが選べます。加えて特別限定仕様のシェル素材がチタンのTitanium EDITIONがあります。今回は標準モデル、シルバーカラーの4.4mmバランスプラグを選択しています。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質99.9999%の6N4芯高純度単結晶無酸素銅(OCC)銀メッキ線の編込みケーブルです。ケーブル被覆のカラーは白色。一芯あたりが太い線材を贅沢に採用しています。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性は上側がプラスです。この付属ケーブルは太めのためやや堅さがありますが、意外にしなやかさがあります。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは悪くありませんので、音質的にもそのまま使用できます。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からHidizs MP145、LETSHUOER S12 Pro

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Hidizs MP145とLETSHUOER S12 Proの外観の比較として、サイズ感はMP145が大きい。MP145はシェルも厚みがありますし、S12 Proと比べると体積の大きさが分かります。まあS12 Proが比較的コンパクトですので、相手が悪いですね。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さは太さはMP145が長く太くなります。角度はどちらもやや起きています。

MP145はS12 Proと比べシェルが大きくなりますが、耳に収まる方は絞られた造形となっており思っていたよりも耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもフラット2ピンです。リケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。

シェルの材質は、どちらもオール金属製ですがMP145が大柄のためやや重量感はあります。それでもMP145の造形は工夫されており、耳への装着感が良いため、重さをそれほど感じません。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくMP145は太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

ステムノズル部にはどちらもフィルタがあります。MP145には音導管の先、ステムノズル外側に金属フィルタがあり、その内側に繊維フィルタがあります(MP145では内側繊維フィルタの肉厚によって三種の音質調整を実現)。そのためどちらも異物混入による故障を防ぐ事ができますし、MP145では音質にも寄与しています。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りMP145はステムノズルが太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。そのため付属イヤーピースで耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。

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付属のHidizs Liquid Silicone イヤーピースは高透過性の液体シリコン製で、外耳道にぴったりとフィットするように人間工学に基づいて設計されています。高音に干渉することなく低音性能を向上させ、全体的なオーディオ品質を向上させる事ができるとメーカーは説明しています。

三種類のイヤーピースはそれぞれボーカル強調の白傘白軸短タイプ、バランス型の白傘黒軸タイプ、低音強調の黒傘黒軸長タイプのS、M、Lの3サイズセットです。

黒傘黒軸長タイプは低音強調という名の通り中低音域に厚みが出ます。白傘白軸短タイプはボーカル強調の名の通りボーカルが目立つようになりますが、高音と低音が細くなるために結果としてボーカルが目立つ印象です。白傘黒軸タイプはバランスの名の通り一番メーカーが想定している音質と云えます。実際中高音は過不足なく、低音も十分なバランス良く鳴ります。

また、他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的なイヤーピース形状は選択肢が増えますので安心です。

黒傘黒軸長タイプと白傘黒軸タイプのイヤピを耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。一方白傘白軸短タイプは傘が一番柔らかくコシが無いため、ワンサイズ大きくして耳に浅めに蓋をする装着としました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い私は付属イヤーピース、白傘黒軸タイプでフィッティングが上手くいきましたし音質的には一番バランスが良く感じたため、付属白傘黒軸(バランス型) Mサイズを使用しています。

一般的に中華イヤホンの低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Hidizs MP145 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り再生環境はスマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

以前はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えています。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りフィルタはバランス(ピンクゴールド)、イヤピは付属白傘黒軸バランス型イヤーピース Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中低音に厚みがある音。高音は華やかで低音はしっかりと鳴るやや中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は落ち着き、相対的に高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

やや広めから広めの印象。前後は奥行を感じ、左右は広さを感じられます。奥行きを感じられ立体感もあります。空間は広さもあり音の立体感を感じます。

 

高音域

華やかさのある印象を持ちます。過不足なく煌めき、音の消え入る様を描写し上までの伸びやかさを感じられます。響きや余韻の感じられる明るさのある存在感は明瞭に音を届けてくれます。華やかさはあるものの、無駄に騒がしいと感じるような常に前に出る音ではなく繊細さのある鳴り方は刺さりや尖りは感じません。解像感は良好ですが、解像感に全振りした刺々しさはなく、爽快に描写しています。

 

中音域

華やかさがありますが、真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音の分離が良く整理された鳴り方は距離感を正確に感じ易い。音の立ち上がりも良く解像感の良さを感じられ中音域を見渡せます。ボーカルはクリアで僅かに近い位置にあり、ニュートラルな声色の印象です。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりも感じられますが、響き渡るような広がりではなく、適度に落ち着く制動の良さが感じられます。厚みがある低音は大きく強く鳴らすことで解像感を妨げる様な鳴らし方ではありません。そのため音階や強弱といった低音域の解像感は感じ易く、ベースラインも追いやすい。中低音域に厚みがあるため気難しいことを考えずに没入感を得やすい印象です。ボーカルよりも前に出るような不自然さはなく距離感は不自然さはありません。重低音は沈み込みはそこまで深さはありませんが十分な深さ、力強さがありますので不足を感じません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく爽快に鳴らしてくれますが中低音に厚みがあるため強さをそれ程感じません。低音は適度な量感で力強さがあり不足は感じません。出音のバランスが良い音と云えます。

 

高音は明るく華やかで上まで伸びる煌めきがあり、響きや余韻を感じられます。遠くの小さな音が消え入る様をしっかりと描写してくれますので寸止め感はありません。誇張を感じない高音域は自然な耳心地の良い音。超高音域まで伸びやかになめらかに鳴り、小さな音も逃さず描写してくれます。解像感は良好で爽やかに小さな音を鳴らし、鮮明に大きな音を響かせる。高音の出力バランスを僅かに抑えながら上手く調整し整えている印象です。

中音は僅かに凹みを感じます。楽器の音はボーカルの周りに位置し距離感を適切に感じられます。ボーカルを邪魔しないやや後方に位置する演奏は立体的な音場を表現しています。そして中音域の下の方に厚みがある音はボーカルを邪魔することを心配しますが、分離が良く距離感の間違っていない整った音は解像感も良好です。

ボーカルは僅かに近い位置からクリアに聴く事ができます。周りの音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は適度で響きや広がりも感じられます。広がりはありますが地響きの様な響きというよりもブワッ~と広がりスーッと収まる様はここぞという一発の力強さも兼ね備えた音。音階や強弱の揺らぎの描写が良く、解像感と雰囲気の良さを両立しています。

重低音は沈み込みはそこまで深く沈みませんが、力強くズドゥーンと感じられる音。それは低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らすだけの低音とは異なります

 

他機種との比較としてLETSHUOER S12 Proと比較します。一言で云えばS12 Proの中高音寄りの弱ドンシャリとは異なる傾向です。S12 Proの出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音で、特長的だったのは広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でます。

MP145は中低音寄りの傾向となり異なるのですが、空間の広さや自然な音色はS12 Proよりも良い印象があります。一方、中高音域の空気感はやや分が悪い印象ですが、中低音の厚みがある鳴り方は雰囲気の良さで勝る印象。尤も、MP145では音質調整フィルタにより調整が可能となりますので、そもそもS12 Proの中高音寄りの音が好きな方には分が悪くなります。

まとめとしてMP145はS12 Proとは異なる音質であり、音場の広い解像感の高い中高音寄りの音が好きならS12 Pro。音場の広い解像感の高い中低音音寄りの音が好きならMP145という嗜好に依る選択ができそうです。どちらも音場の広い解像感の高い音ですし高音質と云えます。

 

次にMP145の音質調整フィルタによる変化を試してみます。

先ずシルバーの高域強調フィルタです。

空間の広さや解像感に大きな変化はありませんが、バランスフィルタに比べ高音域の主張がはっきりと出てきます。その分音場の立体感が薄れ僅かに平面的に感じられる印象もありますが、バランスフィルタでは高音域がもの足りないと感じる方にはシルバーフィルタの方が印象は良いと思います。中低音域もやや薄くなりますので、シルバーフィルタの方がMP145の実力を掴みやすいかもしれません。個人的にはシルバーフィルタとバランス型イヤーピースの組合せが好みです。

 

次にレッドの低域強調フィルタです。

こちらも空間の広さや解像感に大きな変化はありません。バランスフィルタと比べ中低音域の厚みのある音にも大きな変化は感じませんが、高音域がすっきりとして大人しい空間に変化します。大袈裟に云えばやや暗い音に感じます。シルバーの高域強調フィルタとレッドの低域強調フィルタの違いは感じ易く鳴りますが、間にバランスフィルタを挟み入れ替えてみるとほんの少しの味付けの違いとなりそうですが、しっかりと音質の変化を感じられます。

 

最後に現在はやや下の価格帯となりますが、比較対象としてTrn Kirinとの比較です。

中価格A10000-U20000帯の平面磁気ドライバ(PD)モデルの一つです。MP145と同じサイズ、14.5mm径のPDをシングルで搭載したモデルとなります。

Kirinの音質はPDの特徴を体感できる普通に良い音がするイヤホンです。整った出音は近しいと感じましたが、違いは音場。空間の広さや立体感はMP145が上。どちらも全音域をバランス良く聴かせてくれ、出音や音色は普通に音質の良いイヤホンです。過度に強調するところが無く自然に鳴らすところも同じ傾向ですが、中低音域の解像感や、全体的な解像感の高い音を聴かせてくれるのはMP145です。MP145の方は分離感が自然で高音域のレンジの広さと低音域の解像感の高さがあります。

 

※過去レビューも参考ください

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miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとMP145は大径平面磁気ドライバと音響空間による広い空間表現と音場をの正確さを感じられ広いレンジと高い解像感の高音質イヤホンと云えます。中低音域寄りの弱ドンシャリは高音域は伸びの良さと自然な強さで爽快に鳴らしながら、中低音域を厚めに鳴らす音造りは万人が受け入れやすい音質です。同価格帯では納得の高音質と云えますし、フィルタ交換によりイヤホンの持つベースの音質傾向をそのままに味付けを変えられますので安心感があります。そして個人的には高域強調フィルタとバランス型イヤーピースの組合せが好きな音でした。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれませんが、A20000帯でそれを求めるのかぁ…と、思います。

 

高音   S12 Pro ≧ MP145 ≧ Kirin (質感の順)

中音   S12 Pro ≧ MP145 ≧ Kirin (質感の順)

低音   MP145 ≧ S12 Pro ≧ Kirin (質感の順)

ボーカル MP145 ≧ S12 Pro ≧ Kirin (質感の順)

※Kirinは価格帯が異なる為、参考程度に

 

4. Hidizs MP145 の総評

Hidizs MP145はHidizsブランドの確かな実力を示してくれる商品と云えます。価格帯でも間違いなく高音質と云えますし、納得の高い高音質のイヤホンとしてお勧めできます。また、同社の小型DAPとの組合せても納得の高音質を体験できると考えます。今回は同社の小型DAPではなくスマホにドングルDACとの組合せでレビューしましたが、HidizsのドングルDACも試してみたくなりました。個人的にはA20000帯では失敗したくないという想いが強く不安がありましたが、実際に聴いてみれば非常にバランスの良い音質は音楽を楽しく聴く事ができる良いイヤホンと評価できます。

 

最後に、今回は中価格A20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2024年1月6日)は国内amazonやAliExpress等で20,000円台で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。HiFiGoやAliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

MP145

以下、付属ケーブル、付属白傘黒軸イヤピ M、バランスフィルタ、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

AFUL MagicOne レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A20000帯で発売された1BAモデルのAFUL MagicOneについてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonのHiFiGoで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://00m.in/T6IwI

 

HiFiGoのサイトはコチラ

AFUL MagicOne Single BA Driver IEMshifigo.com

 

 

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1. AFUL MagicOne について 

AFULは中華のオーディオメーカーです。AFULと云えば、多ドラハイブリッドモデルのPerformer 5とPerformer 8をラインナップに持つ、新興メーカーです。Performer 5をローンチ後、上位モデルのPerformer 8を発売し今注目のオーディオブランドと云えます。2021年に発売されたPerformer 5はその名の通り5つのドライバを搭載する4BA+1DDハイブリッドドライバモデルですが、自社の音響技術による音質は世界で認められており、ブラッシュアップさせた上位のPerformer 8は7BA+1DDハイブリッドドライバモデルとしての完成度の高い音質を評価されたモデルです。

そのAFULから今回新たに登場したのが、これまで評価されていた多ドラハイブリッドモデルから一変。シングルドライバ、それもバランスドアーマチュアドライバのみのMagicOneを発売しました。

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一般的にバランスドアーマチュア(BA)とダイナミックドライバ(DD)のハイブリッドドライバ構成のモデルは複数のドライバが個々に各音域を担当することで音の歪みを低減させながら厚みを持たせる事ができますが、シングルドライバのモデルでは全ての音域を一つのドライバが担うため、ドライバの性能が重要となります。加えて、今回はシングルBAドライバモデルです。BAは繊細な音を表現することに長けていますが、低音はDDに比べ不利と云えます。これをAFULの音響技術と自社開発のワイド周波数応答を実現したバランスアーマチュアドライバによってどんな音に仕上げているのか非常に楽しみです。

 

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さて、気になるAFUL MagicOneのスペックです。先述の通り革新的と云えるSE-Math電気音響相互変調技術を採用しています。このコア技術「SE-Math」は自社開発であり、RLC電気音響ネットワークと複雑な音響構造を通じて、ドライバによる原音との差を小さくし、高周波帯域の伸びも向上させ、レスポンスの良さとクリアな音場によりサウンドを快適にします。

次に、自社設計のMagicOne用特製のバランスドアーマチュアドライバーを採用。ワイドレンジの全周波数応答を可能とし、なめらかで自然な音色とトーンを実現しています。

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これらのドライバユニットを特許取得済みの3Dプリント音響管構造技術は物理的な周波数分割を実現。物理的なクロスオーバーによりMagicOneの各周波数応答を調整します。また、全長77mm x 外径0.91mmの共鳴管は長く超薄厚により音響設計が施され、深く響く厚い低音域を実現しています。このユニークなリアキャビティ・エアフロー設計を採用することで低音域を大幅に向上させています。

MagicOneは38オームの低インピーダンスにより、省電力化にを実現しています。これにより最適な音量レベルを得やすく、スマホやポータブルUSB DAC/AMP等でも、優れた音質を楽しむことができ、AFUL MagicOneの特徴と云えます。

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MagicOneは1BAドライバでありながら自社音響技術により優れたオーディオ性能を得ることに成功しています。メーカー発表のf特はフラットな特性を示していますが、1BAドライバモデルにありがちなかまぼこサウンドとはとは異なり、言われなければ1BAドライバモデルとは思わないような弱ドンシャリのダイナミックなサウンドです。

また、AFULではMagicOneのサウンドの特色を以下のように説明しています。

  • 低音域は強力で弾力のある低音に応答性が高く高密度
  • 中音域はボーカルを正確に、リアルなディテールを再現
  • 高音域は伸びに優れ、18KHzまで達してから徐々に減衰。やや明るいながらも耳障りで聴き疲れすることなく、さまざまな楽器の正確な音を再現
  • 解像度はなめらかでワイドレンジの全周波数応答。 ボーカルと楽器の両方を正確かつ精密なサウンドを楽しむことができ、全体的なリスニング体験を向上させる

 

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次に、シェル本体はオール樹脂製です。3Dプリント製の透明樹脂シェルはフェースプレートに雪の結晶の様なデザインが施されており、白いフェイスプレートと相まって美麗で高級感のある造形となっています。尤も、先述の通りこの3Dプリント製造による最適な内部音響も実現しています。

最後に付属ケーブルです。高純度素材のハイブリッドケーブルはワイヤーコアを使用した32+37芯線構成の高純度無酸素銅および無酸素銅銀メッキケーブルを採用。リッツ4芯線は同軸シールド構造の線材を特徴とし、外部ノイズの影響を受け難くスムーズな伝送を実現します。また、リケーブル可能とし、お好みのケーブルに交換することで、より多くの音への変化を楽しむことができます。更に、1本あたりが太めのシールド線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、MagicOneでは付属ケーブルの質が高くそのまま使用可能です。そのためバランス接続で使用したい方は購入時に4.4mmバランスプラグ仕様を選択することでメーカーの意図する音を楽しめます。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

AFUL MagicOneの納期としては現在(2023/12/16)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。HiFiGoやAliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、10日前後で届くと思います。ほぼ平時に戻った印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. AFUL MagicOne 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたスリーブタイプの中箱です。表面にはイヤホンイラストがプリントされ、製品名の記載があります。

 

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スリーブを外すと内箱もシックな黒箱。中央にメーカー名が刻印されています。


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上箱を開けると黒を基調とした内装に白いフェイスプレートのイヤホンが収納されています。

箱の下側に付属品が収納されたイヤホンケースが収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セット。他にはケーブルとイヤホンケースです。中価格A20000帯としてはやや物足りなさはありますが、必要なものが揃った付属品となります。

 

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AFULの文字が入ったイヤホンケースはハードタイプでケースの底にはフェルト生地があり、イヤホン収納時の傷を防いでくれます。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は丸みを帯びたオーソドックスなカスタムIEM風のもの。シェルは無色透明で一般的な大きさですが、厚みがあり耳甲介艇に部の突起があるためにやや大きく感じます。実際には耳へ収まる部分がコンパクトになっており装着感は良好です。3Dプリントの樹脂製シェルはその見た目から重量があるような印象を受けますが、実際には軽量であり耳への装着時はその装着感の良さから重さを殆ど感じません。

フェイスプレートは先述の通りベースの白地に雪の結晶の様な模様を銀色で模られています。特徴的なフェイスプレートデザインと美麗な本体のイヤホンは高級感のあるデザインを求める人には良さそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面は判らないです。

カラーバリエーションは無色透明(白)の一色のみです。付属ケーブルが3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランスプラグを選択できますが、今回は4.4mmバランスプラグを選択しています。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高純度素材の4芯ミックス線です。高純度無酸素銅線と無酸素銅銀メッキ線の同軸シールド線材を2芯づつ使用した銀色被覆の編込み線です。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性は上側がプラスです。この付属ケーブルは1芯が太いためやや堅さがありますが、太い線材としては思ったよりもしなやかさがあります。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは悪くありませんので、お気に入りのケーブルを使いたい方以外は音質的にもバランスが良いためそのまま使用できます。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からCelest PhoenixCall、AFUL MagicOne

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AFUL MagicOneとCelest PhoenixCallの外観の比較として、サイズ感はPhoenixCallが一回り以上大きく見えます。MagicOneのシェルはカスタムIEM風でありシェルに厚みがありますが、PhoenixCallのシェルの方がもっと厚みがあります。まあ、PhoenixCallは多ドラモデルであり実際に体積もありますので、シングルドライバのMagicOneが一般的に普通のサイズの部類になると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはMagicOneが長く、太さはPhoenixCallがやや太くなります。角度はどちらもやや起きています。どちらもステムノズルの先端に返りが無くイヤーピースが抜けやすくなっています。

MagicOneは一般的なサイズ感となりますが、カスタムIEM風の造形によって耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもフラット2ピンです。リケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。

シェルの材質は、どちらもオール樹脂製。PhoenixCallは大柄なためやや重量感がありますが、耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくMagicOneは一般的なサイズよりもやや太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

MagicOneはステムノズル部先端に金属フィルターがあります。PhoenixCallは音導管の先、ステムノズル内側にフィルタがあります。どちらも異物混入による故障を防ぐ事ができます。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りMagicOneはステムノズルがやや太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。私は付属イヤーピースでは上手く調整できず、AET07 M-サイズを耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは黒と白の裾野が弾丸タイプです。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒イヤピは傘がやや固めで軸が赤と青の2色があり、左右で色分けすることでイヤホン左右の見分けにも便利です。その音質は音がダイレクトに届き、やや低音がしっかりとするタイプの印象。白イヤピは黒よりも傘がやや柔らかいタイプ。音質は中高音をクリアにして僅かに低音を弱めてタイトにさせ全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象です。黒白イヤピどちらも普段より小さめを耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させる装着を想定している様子ですが、前述の通り私は上手くフィットできず、手持ちのAET07イヤピM-サイズを使用しました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できない場合がありますが、今回は手持ちのシリコンイヤピで上手くフィットさせました。尤も、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. AFUL MagicOne 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

3.1. ドングルDACアンプでの音質チェック

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはAET07イヤーピース M-サイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中高音に華やかさがある音。ボーカルがクリアに届き低音は想像よりもしっかりと鳴るやや中高音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音の量感が少ないのに膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まりタイトに鳴り、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

普通からやや広めの印象。前後の奥行を感じ、左右に広さを感じられます。奥行きがあることで立体感を感じ易くなっています。空間は広さを感じ音に立体感が感じられます。

 

高音域

華やかな印象を持ちますが、騒がしく感じない。不足を感じない煌びやかさは上までの伸びやかさを感じられ響きや余韻もあります。どちらかと云えば明るい存在感がある華やかさは、無駄に騒がしいと感じるような押し出しの強さも常に前に出る様な感じでも無く繊細さも兼ね備えた鳴り方は刺さりや尖りを感じません。解像感は良好ですが、カリカリの解像感と云いうよりは音の輪郭を掴みやすい、鮮やかで爽やかに描写してくれます。

 

中音域

高音域よりは僅かに暗い印象ですが、十分な華やかさがあります。音の分離が良く整理されていて真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音の立ち上がりは良く解像感は良好です。ボーカルはクリアでやや近い位置から自然でニュートラルな声色の印象です。

 

低音域

量感は多くはありませんが適度な響きや広がりも感じられ、大きく強く鳴らすというよりは締まった音。音階や強弱といった低音域の解像感は良好。ベースラインは追いやすく気さくに、時に気安くとらえる事ができます。それでもボーカルよりも前に出るような不自然さはなく、それを邪魔する様な無神経さはありません。重低音は沈み込みはそれほど深くはありません。一方でタイトで力強さがありますので不足を感じません。中高音を邪魔することのない上品な低音です。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく鮮やかに鳴らしてくれます。低音はタイトで上品な強さですが、不足は感じません。寧ろBAで低音を強く鳴らす場合は中高音を邪魔しやすく、丁度良い出音のバランスと云えます。

 

高音は比較的明るい華やかさのある鳴り方。上の上までの伸びやかさがあり、響きや余韻を感じられ鮮やかな彩を感じられます。一方で高音域は2k-4kをピークに緩やかに下がります。それが過度な尖りを抑えており、結果響きと余韻を感じながらも不足を感じない爽やかな高音域を実現している印象です。誇張の少ない高音域は自然な音を彩り鮮やかな音を聴かせてくれます。超高音域までなめらかに鳴り、小さな音もかき消されずに感じ取れ、解像感や描写は良好です。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルはやや近い位置にあり楽器の音はその周りから後ろに位置しています。中音の域の下の方はそれ程厚みがありませんが、全体的に分離が良く整った音は立体感を感じられます。

ボーカルはやや近い位置からクリアに聴く事ができます。演奏の音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は多くはありませんが、適度に響き広がりも感じられます。どちらかと云えばタイトに一発の力強さやレスポンスに重きを置いた音は音階や強弱の描写も感じ易く、解像感と雰囲気の良さを両立しています。

重低音は沈み込みそれ程は深くありませんが、タイトで芯の強さを感じられる音。それでも低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音とは異なり上質です。低音域全体として上品な音と云えます。

 

他機種との比較としてPhoenixCallとの比較になりますが、それは多ドラのメリットを活かした広いレンジと各音域の解像感を得ながらごちゃつきを抑えた整った音は高音質と云えます。MagicOneも中高音域寄りの弱ドンシャリと云えますが、PhoenixCallの多ドラの前では鮮やかさにやや分が悪い。それでもMagicOneの高音域は上までの伸びと余韻、自然な強さで鳴らす音は誇張が少ない爽やかさは好印象です。

特にボーカルはMagicOneの自然で艶も息遣いも感じられるリアルさは同価格帯でも上位に入ると云えます。

低音は流石にPhoenixCallが一枚上手となりますが、MagicOneの低音はシングルBA機ということを忘れさせてしまう程しっかりとしている。正直シングルDD機では高音域を厚めに鳴らす音造りを重視して低音が疎かに鳴っている機種が多くあり、MagicOneのレベルの高さを証明していると云えます。

 

次に現在は実売で同価格帯となるLETSHUOER S12 Proとの比較です。S12 Proの出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音でした。また、特長はやはり広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でていてそれと比較すればMagicOneのもその傾向になりますが、中高音域の空気感は流石に分が悪いし低音も言わずもがな。そもそもS12 Proは発売当時MagicOneよりももう少し上の価格のA20000帯です。それでも全体としてMagicOneのシングルBA機が後ろに迫る音質を実現していることに驚きを隠せません。

 

※過去レビューも参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

3.2. DAPでの音質チェック

今回はいつものDACアンプにShanling UP5を使用していましたが、ちょっと思うことがってDAPを使用した感想を追記します。

 

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DAPにはHiby R6 gen II(国内ではnew Hiby R6。海外ではHiby R6 2020。R6 gen III、通称「R6 III」登場により呼称統一されたみたいです)を使います。プレイヤーはHiby Music、ローゲインで聴いてみます。R6 gen IIは中高音域寄りの音質傾向となりますが、低音域の力強さがあり、流石にドングルDACアンプのUP5とは違います。

UP5では全音域の出音バランスが良く、シングルBAモデルとして十分高音質と評価しましたが、R6 gen IIで聴いてみるとそれまで見せていた顔と異なり本来の力を魅せてくれます。

UP5でも十分だった中高音域は音の鮮明さに加え、より繊細な音で小さな音の消え入る様を掴みやすく、遠くで鳴る小さな音や近くの強い音は立体感に加え距離感を掴みやすくなります。そして最も異なるのは低音域です。UP5ではシングルBAモデルとしては十分な存在感のある上質な低音という評価から一変し、力強さが増しタイトでキレの良い音が楽しめます。BAの低音として上質で上品な音は、全音域をフラットな出音で鳴らし、MagicOneがシングルBAモデルではなくマルチBAドライバモデルと誤認しそうなレベルの高い音を聴かせてくれました。

これは言い換えればMagicOneをきれいに鳴らすには駆動力が必要と云えます。最初WM1AM2の4.4mmバランスで試した際にはそれ程感じませんでしたが、色々試してみるべきだよなぁと良い経験となりました。

 

3.3. 音質のまとめ

まとめるとMagicOneはシングルBA機でありながら複数BA機に迫る音を実現しています。それは多ドラのメリットであるワイドレンジと各音域の出音を調整し鮮明でありながら自然な音を鳴らす高音質モデルと云えます。中高音域寄りの弱ドンシャリは高音域は上までの伸びと余韻を持ち、タイトな低音域が音楽を破綻させずに鳴らす。ボーカルがリアルな音造りはバンドサウンドよりもボーカル曲でその特徴を活かすことがでします。そして同価格帯の中でも高音質と云えます。そして、MagicOneのもつ魅力を楽しむためにはアンプ部の力が肝要となります。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ MagicOne (出音の強さ)

中音   S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ MagicOne (出音の強さ)

低音   PhoenixCall ≧ S12 Pro ≧ MagicOne (出音の強さ)

ボーカル MagicOne ≧ S12 Pro ≧ PhoenixCall (質感)

※ドライバ構成が異なる為、参考程度に

 

4. AFUL MagicOne の総評

AFUL MagicOneは従来のAFULの多ドラモデルとは異なり同社の音響技術を注ぎ込んだシングルドライバモデルとして上質な音を届けてくれる特別な製品と云えそうです。それは音質的には大人しいものの聴き込めばその音色に心を奪われる高音質モデルです。価格帯ではシングルBA機は珍しく、同じシングルドライバでもシングルDD機が多く、ましてや複数BA機と相まみえるには不利と云えますが、少なくても同じシングルドライバ機を相手にした場合にシングルBA機で戦うことができます。個人的にはシングルBA機はQDCのシングルBA機を含めあまり良い印象はありませんでしたが、少なくてもMagicOneはシングルBA機が好きな方にお勧めできる高音質イヤホンと云えます。そして強力なアンプ部を持つDAPを愛用している美音好きの方にお勧めしたいモデルです。

 

最後に、今回は中価格A20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年12月16日)は国内amazonやHiFiGo、AliExpress等で20,000円を少し超える価格で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。HiFiGoやAliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はHiFiGoやAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

MagicOne

以下、付属ケーブル、AET07イヤピ M-使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★☆ (DD機好きの方は★4)

※☆0.51.0

 

PhoenixCall

以下、付属ケーブル、付属白傘赤軸イヤピ SDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

MagicOne(参考)

以下、付属ケーブル、AET07イヤピ M-使用、DAP Hiby R6 gen II
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★ (ドングルDACの場合★4.5)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

※2023/12/23 DAPでの音質チェック追記に伴い3.項を3.1.項、3.2.項、3.3.項に再編成及び、4.項追記修正

 

Kefine Klanar レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A10000-U20000帯で発売された平面磁気駆動モデルのKefine Klanarについてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonで取り扱いがあります。Linsoulが国内代理店となります。

 

AliExpressのKefine公式ストアでも取扱があります。

https://00m.in/Fppal

 

Linsoul直販サイトはコチラ

Kefine Klanarwww.linsoul.com

 

 

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1. Kefine Klanar について 

Kefineは新しい中華オーディオメーカーです。Kefineは今年9月に立ち上がった新興メーカーとして今後に注目のオーディオメーカーと云えます。

そのKefineのファーストモデルとして平面磁気駆動ドライバ(Planar Driver)を1基搭載したKlanarが発売されました。昨年から平面磁気駆動ドライバ(以下、PD)搭載モデルが続々登場し、従来の中価格A10000ーU20000帯だけでなく、U10000というかA5000帯でも従来のPDとは異なるSPD(Square Planar Driver)を搭載したモデルが登場しました。今回Kefine Klanarは一般的なPDドライバであり、正統派モデルとして期待値が高くなります。

 

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さて、Kefine Klanarのスペックですが、先述の通りPD(平面磁気駆動ドライバ)を1基搭載するシングルドライバモデルです。1PDには14.5mm径ドライバを採用。PDは従来のダイナミックドライバと比べ、バランスの取れたサウンドで広く評価されており、原音に忠実性と感情豊かに表現を誇張を抑え自然に近い音色で表現することができ、リアルで豊かなアコースティック楽器を再現できるとメーカーは謳っています。

 

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Kefine Klanarは同社のカスタマイズPDにより優れたオーディオ性能を得ることに成功しています。全体的にはやや暗めのサウンドは、暖かみのあるサウンドです。

それはPDの振動膜にコンポジットダイヤフラムを採用し、強力な磁力のn55マグネットをカスタマイズしたドライバー構造により他製品を超える非常に強力な低音応答を実現。中音域は暖かさと豊かさを特徴とし、卓越したクリアさとディテールを維持しながら、他に類を見ない没入型のリスニング体験を実現したこのPDがKefine Klanarの最大の特徴と云えます。

また、メーカー発表のf特はやや高音域を抑え気味の特性を示しており、実際に聴いてみるとただ大人しいだけのモニターサウンドではない臨場感を感じられる豊かなサウンドを届けてくれます。

 

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シェル本体は5軸CNC精密機械加工を使用して、アルミニウム合金の金属ブロックから慎重に切削加工されています。 この方法は高級感のある外観に加え、原音に忠実なサウンドを再生するために設計されたチャンバー構造も実現しています。シェル設計は、小型で軽量な構造を優先し、長時間のリスニングセッションで快適さを確保するための職人技を極めた加工技術を表しています。

シェル内には14.5mmの大径PDを搭載しながらもコンパクトに仕上げられたシェル本体により快適な着用感を実現。これはシェルサイズを最小限に抑えるために、ドライバユニットに非常に薄い0.2mm厚が採用されたことでシェルの快適なフィット感を確保。人間工学に基づいたデザインにより、さまざまな耳の形状に適合しやすくしています。

 

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最後に付属ケーブルです。Klanarには取り扱いのし易い0.78径2ピンを採用しリケーブル可能としています。商品購入時に3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスプラグを選択できます。この付属ケーブルはどちらも合計4本の芯線で構成され、一芯あたり54本の導線が含まれています。また、異なる二種の線材を採用し、茶色のOFC線と黒色の銀メッキ銅線の組み合わせにより、温かみのある自然な音を豊かにしながら、鮮明さを犠牲にすることなく滑らかで透明な高音を実現します。

一芯が太めの1mm線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、Klanarではそんな心配はありません。そのため、バランス接続を試したい方は最初から4.4mmバランスプラグモデルを選択すればよいことになります。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

Kefine Klanarの納期としては現在(2023/12/2)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。AliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、10日前後で届くと思います。ほぼ平時に戻った印象です(※現在はBF/CMセールの配送混雑の影響がありますので、ご注意ください)。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Kefine Klanar 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは白を基調としたスリーブタイプの中サイズの箱です。表面にはイヤホンイラストがプリントされメーカー名とイヤホン名の記載があります。

裏面にはイヤホンスペックが記載されています。

 

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スリーブを外すと黒を基調とした内箱があり無地という潔さ。

内箱の蓋を開けると黒地の内装にイヤホン等が収納されています。

箱の下側に付属品が収納されたイヤホンケースが収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの2種が2セットとイヤホンに取り付けられていたMサイズのイヤピが1組。これは2種の内、1種と同一のもの。他にはイヤホンケースです。中価格A10000-U20000帯としてはやや物足りないものの必要なものが揃った付属品となります。

 

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Kefineの文字が入ったイヤホンケースはハードタイプでイヤホンをしっかりと保護してくれます。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は角に丸みを帯びたオーソドックスなIEM風のもの。シェルは一般的な大きさですが、厚みが無く平らなデザインです。シェルが厚くないため耳へ収まる部分が薄くなっており耳から出っ張ることも無く収まるので装着感も良好です。アルミニウム合金に黒アルマイト処理され、敢えて面粗度を下げたシボ処理の金属製シェルは落ち着きのある見た目です。それに加え金属製でありながら重量感が少なく耳への装着時はその装着感の良さから重さをそれ程感じません。

フェイスプレートはシンプルで中央部にメーカー名がワンポイントにあるだけの質実剛健といった出で立ち。派手な見た目よりもシンプルなデザインを好まれる方には好印象となりそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面も綺麗です。

カラーバリエーションは黒のみ。今回は3.5mmステレオミニプラグを選択しています。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質4芯編込み線。銀メッキ銅線とOFC線のミックスタイプです。シェルのカラーの黒に付属ケーブルの被覆カラーが黒と茶色のミックスと落ち着いた色合いがマッチしています。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性は上側がプラスです。スプリッター部とプラグ部にメーカー名があります。

この付属ケーブルは一芯あたり1mmと太くやや堅さを感じますが、思ったよりもしなやかで取り回しに苦労することはありません。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは良く使い勝手も悪くないため、バランス接続をしたい方は購入時に4.4mmバランスプラグタイプを選択すれば音質的にも十分ですし長く使用できます。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からKefine Klanar、Trn Kirin

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Kefine KlanarとTrn Kirinの外観の比較として、サイズ感はKirinがかなり大きく見えます。Klanarのシェルは厚みが薄く平らですが、Kirinは厚く立体的です。実際にKirinは体積も大きいです。KlanarとKirinはどちらも14.5mmの大径PDを搭載していながら圧倒的にKlanarの方がコンパクトと云えると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはKlanarが長く、太さはほぼ同じ。角度はKlanarがやや寝ています。

KlanarはKirinと比べかなりコンパクトであり、オーソドックスな造形の見た目通り耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はKlanarがフラット2ピン。KirinはKZ-Cタイプです。Klanarのリケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。

シェルの材質は、どちらもオール金属製ですが、Klanarではシェルをコンパクトにするために、ドライバユニットの小型化によりオール金属製であっても重量を感じにくくしています。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくKlanarはやや太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。どちらもステムノズル部に金属製フィルタがあり、異物混入による故障を防ぐ事ができます。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りKlanarはステムノズルがやや太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。そのため付属イヤーピースで耳の奥というよりは浅めに栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは黒色のやや背が低く傘が幅広の口径大き目の形状と一般的な黒色の裾野が弾丸タイプの二種です。イヤホンに装着済みのイヤーピースは黒色弾丸形状タイプ Mサイズです。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的なステムノズル形状は選択肢が増えますので安心です。

付属弾丸タイプは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプの印象です。傘幅広口径大タイプは中高音をクリアにして僅かに低音を弱めてタイトにさせ全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象ですが、傘にコシが無くペラペラのため私はフィット感がイマイチ。傘幅広口径大タイプはいつもよりワンサイズ大き目で耳に浅めに蓋をする装着に。弾丸タイプは耳奥やや浅めに栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属弾丸タイプのイヤーピースで私はフィッティングが上手くいきました。音質的にもメーカーの意図するタイプという印象で、そのまま初期装着の付属弾丸タイプMサイズを使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Kefine Klanar 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属白傘赤軸イヤーピース Sサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中低音に厚みがある音。高音は華やかで低音はしっかりと鳴るやや中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は落ち着き、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

やや広めから広めの印象。前後は奥行を感じ、左右は広さを感じられます。奥行きを感じられ立体感もあります。空間は広さもあり音の立体感を感じます。

 

高音域

華やかさは十分の印象。煌びやかさは適度で上までの伸びやかさはそれ程感じられませんが、響きや余韻は感じられます。やや暗めの印象ですが存在感は適度な華やかさ。兎に角明るい騒がしさを感じるような感じではない繊細な鳴り方。そのため刺さりや尖りは感じません。解像感は良好でそれに全振りする様な刺々しさはありませんので、聞き手にプレッシャーを与える様な感覚ではなく、心地の良い描写です。

 

中音域

厚みのある華やかさと濃さのある音は、真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音の分離が良い整理された鳴り方は上品さを感じさせます。音の立ち上がりも良く解像感も感じられ明朗に描写します。ボーカルはクリアで近い位置から自然で暖かみのある声色の印象です。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりも感じられますが、大きく強く鳴らし音圧で誤魔化すような鳴らし方ではありません。音階や強弱といった低音域の解像感は良好でベースラインは追いやすいく癖が無く分かり易く感じられますが、ボーカルよりも前に出るような不自然さはありません。重低音は沈み込みは深さがあり、力強さがありますので力不足を感じません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りの弱ドンシャリ。中高音域はやや暗く感じますがクリアで明快に鳴らし響きが良い。低音は適度な量感ですが、力強さがあり不足は感じません。聴き易い出音のバランスは素直に良い音と云えます。

 

高音はやや暗めの印象ですが華やかさは騒々しさはなく、上の上までの伸びやかさはそれ程感じませんが、響きや余韻が感じられ適度な華やかさは心地良く感じられます。一方で高音域は強調感がないため過度な響きを抑えられており、やや暗めの音という印象を持ってしまいます。無駄に強調せず誇張の少ない高音域は不自然さを感じない耳馴染みの良い音。超高音域までの伸びやレンジの広さはそれ程感じませんが、なめらかに鳴り、小さな音も感じ取れます。解像感や描写は良好で、鮮やかに小さな音をかき消されずに鳴らし、高音の出力を上手く整えているバランスです。

中音は凹みを感じず、ボーカルは近い位置にあり楽器の音はその周りに位置しています。分離も良く解像感の高い中音域でありながら中音の域の下の方に厚みがある音は濃厚な音を感じられます。

ボーカルは近い位置からクリアに聴く事ができます。演奏の音にも埋もれることはありません。声色は暖かく自然さを保ちながら息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも明朗に聴かせてくれます。

低音の量感は適度ですが響きや広がりも感じられます。響きもあり一発の力強さに重きを置いた音は音階や強弱の描写も感じ易く、解像感の高い濃厚な音は雰囲気の良さを感じられます。

重低音は沈み込みは深く、力強さを感じられる音。それは低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音ではなく、下から広がりを感じられる音です。

 

他機種との比較としてTrn Kirinと比較した場合、一言で云えば中高音寄りのKirinの弱ドンシャリとは異なる傾向という印象です。Kirinの出音は中高音を重視し低音を抑えタイトに鳴らす音。一方のKlanarは中低音が厚い濃い音。Kirinは兎に角中高音をクリアに爽快に鳴らす音であり、Klanarのそれは音楽を自然に聴かせてくれる音です。どちらが正しくてどちらが良い音と云う様なゼロかイチかという白黒で語るべきではないと思います。Kirinのそれは高音域の爽快感は心躍りますし、Klanarの音は音楽を聴く楽しさへの高揚感があります。それでも敢えて比較すれば、高音域はKirinの鮮やかさや爽快感は特筆ものであり、Klanarは真面目で地味な暗い音。中音域はKirin爽快感がKlanarの濃厚さからは薄口に感じられます。低音域は濃厚で音楽的なKlanarに対し、モニターライクなKirinとなります。全域のバランスはフラットに近いKirinに対し、同じ弱ドンシャリでも躍動感を感じられ情熱的なKlanarとなります。

Klanarは一聴すると地味な音ではありませんが高音域のやや暗い音への評価次第で印象が変わると云えます。

 

※過去レビューも参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとKefine KlanarはPDのメリットを活かした高い解像感と分離感を活かした情熱的で躍動感のあるサウンドを実現しており高音質と云えます。中低音域寄りの弱ドンシャリは高音域は比較的やや暗めとなりますが、響きと伸びは良好で中低音域を厚く濃厚に鳴らす音造りは音楽的であり万人が受け入れやすい音です。それは同価格帯でも間違いなく高音質と云え個人的に好きな音です。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方や中高音重視、低音は邪魔という方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   S12 Pro ≧ Kirin ≧ Klanar (質感の順)

中音   S12 Pro ≧ Klanar ≧ Kirin (質感の順)

低音   S12 Pro ≧ Klanar ≧ Kirin (質感の順)

ボーカル S12 Pro ≧ Klanar ≧ Kirin (質感の順)

※S12 Proは価格帯が異なる為、参考程度に

 

4. Kefine Klanar の総評

Kefine Klanarは新興オーディオメーカーとなりますが、そのファーストインパクトとして最も評価できる製品を世に送り出していると云えます。このKlanarは音楽を楽しめる高音質イヤホンと評価できます。同価格帯では間違いなく高音質と云えますし、PDを上手く活用した製品と云えそうです。個人的に普通に高音質のイヤホンとしてお勧めできます。Klanarは音楽を楽しく聴く事を思い出させてくれる、そんな高音質イヤホンと評価できます。

 

最後に、今回は中価格A10000-U20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年12月2日)は国内amazonやAliExpress等で約18,000円で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。AliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

Klanar

以下、付属ケーブル、付属砲弾タイプイヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

※2023/12/6 AliExpressリンク修正。1.項の導入部修正。

 

Rose Technics QuietSea レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A5000帯で発売された1DDモデルのRose Technics QuietSeaについてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonのHiFiGoで取り扱いがあります。

 

US.Amazonコチラを。

 

AliExpressはコチラを。

 

HiFiGoのサイトはコチラを↓

Rose Technics QuietSea Wired Dynamic IEMs In-Ear Monitorshifigo.com

 

 

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1. Rose Technics QuietSea について 

Rose Technicsは中華のオーディオブランドです。2015年10月に設立された新興ブランドでROSEブランドの製品設計、製造を行っていて「大胆なデザイン」、「より良いチューニングの追及」、「オリジナルの技術開発」をブランドコンセプトとしたコストパフォーマンスに優れた製品を発売しています。

Roseと云えば、BR5 mk2が有名です。BR5 mk2は5つのバランスドアーマチュアを搭載した複数BAドライバモデルです。木目フェイスプレートにクリアシェルを採用した綺麗な造形のモデルです。もちろん音質も中高音のクリアさとフラットで美麗で爽快な音を聴かせてくれる高音質モデルでした。国内では正規代理店によりイヤホン専門店等でも購入できるため中華イヤホンは視聴ができないという問題をクリアし、その音質はポータブルオーディオファンからも高評価を得ていました。販売価格は国内正規品が3万円後半と高価というところがややネックでした。

さて、Roseから今回U10000のQuietSeaが登場しました。これまで中心だった中価格帯以上の複数BAドライバモデルや多ドラハイブリッドドライバモデルでは流石に価格帯を下げる事ができませんでしたが、A5000-U10000帯のアンダー中価格帯にシングルダイナミックドライバモデルを投入してきました。実はRoseはU5K帯にAURA EVOというモデルも発売しており、同ブランドの中では一番安価なエントリーモデルとなりますが、所謂エントリーグレードという域を出ないもの。今回のQuietSeaはそれよりも上位の位置づけとなりますが、良いものを安価に届けようとする同社の拘りを感じさせるモデルと云えそうです。

 

QuietSeaの特徴は以下の通りです。

 

  • 改良された自己開発トポロジーダイヤフラムを採用した金メッキ真鍮素材のデュアルチャンバードライバユニット
  • 従来の可動コイルダイヤフラムと比較して、ナノ材料の堆積によりマイクロトポロジーを最適化。分割振動を大幅に低減し歪みは0.1% 未満。
  • 新世代の自社開発1.5テスラ磁気フラックス密度ユニットにより強力なアンプを必須としない
  • 5軸CNC精密加工の亜鉛合金製音響室は気流と振動を制御し正確にそして存在感を再現するできるように調整および最適化
  • 同価格帯では例を見ない5N4撚り線単結晶銅線の高品質ケーブル
  • 高品質の金メッキmmcxコネクタは耐久性が向上

 

スペックを詳しく見ていきます。

 

金メッキ真鍮素材のデュアルチャンバーに10mm径ダイナミックドライバユニットを組合せた設計です。 このドライバは、独自開発されたトポロジーダイヤフラムを採用しており、分割振動を大幅に低減し、歪みを限りなく小さく抑えることでクリーンなサウンドを実現しています。

また、このカスタム10mm径ダイナミックドライバユニットは強力な磁気設計を備えた設計です。ドライバの設計パラメーターは気流の制御と、より正確で活気のあるサウンドを生み出すように調整し最適化しています。1.5テスラを超える強い磁力により、ドライバの駆動を容易にしています。

 

QuietSeaは採用したダイナミックドライバが最大の特徴と云えますが、実はシェルの材質にも拘り、高品質の亜鉛合金素材を採用し、高精度の5軸CNC機械加工機による切削加工により製造されています。そのシェル内部には整流を調整し優れたサウンドバランスを得ることに成功しています。

また、特徴的な楕円形ステムノズルとコンパクトなシェルデザインは、人間工学に基づいた造形としています。

 

最後に付属ケーブルです。QuietSeaの付属ケーブルは5N4撚り線単結晶銅線です。その線材は高価であり、価格帯では例を見ない高品質ケーブルです。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

Rose Technics QuietSeaの納期としては現在(2023/10/28)国内amazonのPrime扱いで取り扱いがあります。当日発送、翌日配達は非常に便利です。HiFiGoやAliExpressでオーダーした場合でも現在は安定していますので、AliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月です。尤も万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Rose Technics QuietSea 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたやや大柄タイプの箱です。表面にはイヤホン名が中央部に大きく刻印されています。

 

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外箱から内箱を取り出すと黒を基調とした内箱の中央にイヤホン名が印字されています。

 

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内箱の上蓋を開けると黒地の内装に内装にイヤホンと付属品が収納されています。

 

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付属品のイヤホンケースを開けるとケーブルとイヤーピース等が収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が1セット。他にはケーブルとケーブルバンド、リムーバー、イヤホンケースです。中価格A5000帯として一通り揃った付属品となります。個人的にはイヤーピースは特殊形状なので音質傾向違いがもう1セット欲しいかなと。

 

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メーカー名の入ったイヤホンケースはハードケースタイプでイヤホンをしっかりと保護してくれます。

 

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某社のMMCX ASSISTと同様のケーブルとイヤホン本体を分離する器具(リムーバー)が付属します。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形はオーソドックスなIEMタイプ。シェルはコンパクトですが、特徴的な楕円形ステムノズルが装着感に影響がありそうです。ステムノズル側は金属製、シェル本体が樹脂製、フェイスプレートが金属製のマルチマテリアルのハイブリッド構造でありながら軽量であり重量はそれ程感じません。コンパクトなシェルは耳への装着感も良く重さを感じません。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格A5000帯として非常に綺麗に仕上っています。

カラーバリエーションはグレーとシルバーの2種。プラグサイズを3.5mmと4.4mmバランスプラグで選択可能です。今回はグレー、3.5mmを選びました。

さて、ikkoとの共同開発されたシェルは同社OH2のシェルデザインが採用されています。特徴的な楕円ステムノズルや三角おむすび型の造形は当にそれと云えます。

内部音響室がikkoと同様かどうかは残念ながら不明ですが、同社の商品説明からはそれを踏襲しているような内容に感じられますが、真偽不明。

※参考画像:IKKO OPAL OH2

 

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質5N4撚り線単結晶銅線です。価格帯的には宝の持ち腐れとも思える様な高品質ケーブルはメーカがこの線材でなければならなかったと拘りを感じさせます。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はmmcx仕様。この付属ケーブルの被覆はナイロンメッシュ製でさらさらした手触りが高級線材と理解させてくれます。線材は手触りも良く引っ掛かり等は皆無。高級線材の宿命ですが、太めの線材となりますのでしなやかさにはやや難がありますが肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側はシュア掛けで使うようにチューブで癖付けされています。前述の通り全体的に取り回しは悪くありませんので、ケーブルは細めでしなやかさ重視の方以外はそのまま使用することをお勧めします。

また、先述の通り付属ケーブルは3.5mmステレオミニ、4.4mmバランスプラグの2種が選択できます。今回は3.5mmステレオミニを選択しています。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からRose Technics QuietSea、TiNHiFi C3

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QuietSeaとTiNHiFi C3の外観の比較として、サイズ感は圧倒的にQuietSeaの方がコンパクトと云えると思います。それでもC3も決して大きいわけではないので、そのコンパクトさが際立つと思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはQuietSeaが長め。太さはQuietSeaが細め。角度はQuietSeaがやや寝ています。

シェルの材質は、C3がオール樹脂仕様ですが重量感はほぼ同じです。

QuietSeaは一般的なIEMに対し、C3はCIEM寄り。QuietSeaはそのコンパクトさが目立ちますし、何よりもその造形から耳への収まりが良く装着感は良好です。寧ろ耳への装着時はシェルが耳に嵌まる形であり、ステムノズルがやや長めイヤピ選びは通常のサイズよりもやや大きめの方が良いと思います。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもmmcxです。リケーブルの際はmmcxコネクタを選択しておけば問題ありません。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。QuietSeaはシンプルな金属フィルタですが、C3は音質調整フィルタとなります。

二機種共にシュア掛けで使用するタイプ。シュア掛けが苦手な方には注意が必要です。

なお、前述の通りQuietSeaはステムノズルが楕円形です。付属のイヤーピース以外を使用する場合、軸の柔らかいものがお勧めです。個人的には付属のLサイズでも良いのですがacoustune AEX50 Mサイズが上手くフィットして気に入っています。

イヤーピースは最適なものを選び実際に装着した際に圧迫感が少ないものを選ぶ必要があります。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは楕円形ステムノズルに合わせて傘と軸が楕円形の特殊形状タイプとなります。これはikko OH2でもそうでしたが、付属品以外の選択肢を大きく狭めてしまうため個人的には困ったもの。付属イヤピは全体的に柔らかく傘にコシが無いこと。MサイズとLサイズの差が大きく、その中間が欲しいのに…と、サイズ幅が極端なタイプです。付属Mサイズでは音が少し抜け気味になるため、いつもより大きめのLサイズで耳の奥に栓をするように装着しています。幸い傘が柔らかいため何とかなっている状態なので、常用にはAEX50 Mサイズを使うと思います。

付属イヤピは中高音をクリアにしてくれる印象です。耳への装着時はいつもより大きめのサイズのイヤピを耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

一応付属イヤーピースのLサイズで私はフィッティングができましたが、長時間は無理そうです。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピでなんとかフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Rose Technics QuietSea 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属 Lサイズ、付属ケーブルで聴いてみます。

箱出しで聴いてみた第一印象は「バランスの良い鳴り方。中高音がはっきりと鳴り、低音もしっかりと鳴る音。ボーカルもクリアに聴こえます。やや中高音寄りの弱ドンシャリバランス」です。

箱出しでは高音に荒々しさを感じましたが、鳴らし込み後は、高音が落ち着き低音の強さとバランスが取れた音という印象です。

 

音場

普通からやや広めの印象。前後に奥行を感じられ、左右に広さを感じられます。奥行きも感じられるので立体感のある、空間の広さを感じられます。

 

高音域

全体的に明るく華やかにやや強調感のある鳴りかたですが、刺さりは無く嫌な感じはありません。過不足を感じる事はありませんが上までの伸びやかさはそれ程感じないものの、響きや余韻は適度。必要以上に前に出る出しゃばった鳴り方ではありません。存在感は感じられますが、兎に角元気に騒がしいと感じるような痛々しい感じではありません。やや強調感のある鳴り方は分離と解像感は良好なものの何方かと云えば明朗さを重視した音。

 

中音域

高音域同様に華やかさがありますが、音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは抑えられ整理されて鳴り方ます。音の立ち上がりは良好で解像感も悪くありません。クリアな中音域を明るく鳴らします。ボーカルはクリアで自然からやや近い位置から僅かにドライな声色の印象です。

 

低音域

量感は抑えられ響きや広がりもそれ程感じませんが、芯のある音は強さを感じます。音階や強弱といった低音域の解像感はそこそこ程度ですが、ベースラインは追いやすくボーカルよりも前に出るような不自然さはありません。重低音は沈み込みはそれ程深さがありませんが、強さがありますので十分な低音という印象です。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリバランス。高音域は明るくやや強調感のある印象ですが不自然な強さではありません。低音は量感は抑え気味ですが、僅かに膨らむ中に適度な締まりがあり緩さを感じる様な音ではありません。中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルはやや近いためW字の出音の印象。全体ではやや中高音寄りながらも中低音に厚みがありクリアで明朗な音を聴かせてくれる出音のバランスです。

 

QuietSeaの音質傾向は、やや高音を華やかに鳴らしながら低音もしっかりと主張させるリスニングサウンドバランスです。中高音の響きや余韻は適度に感じられ華やかに明るく明朗に鳴りますが、やや誇張された印象です。それでも不快で耳障りのない丁度良い強調感と感じられると思います。そのため解像感が高いという印象はそれほど持ちませんが、分離は良好でごちゃつきを感じない整理された音です。例えば遠くで小さく鳴る音は大きな音にかき消されることも無く聴こえます。やや強調された音がそのように感じさせているのだと思います。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルが比較的前に出ていることと楽器の音はその周りに位置して鳴ることから華やかさは十分に感じられ分離も良く整った音は過不足を感じません。

そのボーカルはやや近い位置からクリアに聴く事ができます。周りの音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は僅かにドライに感じますが、不思議だったりざらつく事もありません。そのためバラードなどでしっとりとした艶のある声といよりはアップテンポな曲の方が相性の良さを感じます。

低音域は量感をやや抑えた音です。その分響きや広がりは適度という印象ですが、芯がやや大きめの音。やや膨らみますがそれでもボワつく低音とは異なり芯の強さがありますので不足はありません。中高音重視の方にはやや多いと感じるかもしれませんが、それでも中高音域を邪魔するような低音ではありません。

重低音は沈み込みはそれ程深くありませんが、十分な強さを感じられる音。深く響く様な重低音とはいきませんが、不足を感じる様な音ではありません。

 

他機種との比較としてTiNHiFi C3は中低音域を充実させながら高音域を自然に鳴らす音造りでした。見通しの良いクリアな中高音を持つやや中低音重視傾向ながらも高音も適度な強さで鳴らし音楽を小気味よく聴かせてくれます。

C3よりも高中音域の主張を感じますが、不自然に強調されている訳でもなく、適度な印象。低音域はQuietSeaよりもC3の方が量感はあり、中音域に厚みがあります。そのため全体としては似ている傾向ながらもQuietSeaの方がよりリスニングに寄った傾向の印象です。

QuietSeaとC3の音質傾向は中高音寄りと中低音寄りと異なりますが、C3の音は高音域がQuietSeaと比べ一音一音を強めに鳴らすことで不足感を補っているように感じます。一方中低音域はC3に分があります。

そのため、QuietSeaは全体のバランスとしてまとまっており、C3のややピラミッド型のバランスとは異なり正統派弱ドンシャリと云えそうです。

 

※過去レビューも参考ください

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まとめるとRose Technics QuietSeaはやや中高音域寄りのリスニングサウンドであり、解像感よりも音楽を聴く楽しさを感じられる音作りは、所謂のハーマン近似の音と云えそうです。

正直、ハズレの無いハーマンターゲットの音作りは海外では人気の出やすい音造りですし、日本国内のポータブルオーディオファンは中高音寄りフラットが人気が高い市場ですので、個人的には一般ユーザーにお勧めしたい商品です。

一方で従来の中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   CADENZA ≧ QuietSea ≧ C3 

中音   QuietSea ≧ C3 ≧ CADENZA

低音   C3 ≧ QuietSea ≧ CADENZA

ボーカル C3 ≧ QuietSea ≧ CADENZA

 

 

4. Rose Technics QuietSea の総評

Rose Technics QuietSeaは高音低音のバランスの良いリスニングサウンドとまとめました。やはりRose Technicsは高音質モデルを造るのが上手いメーカーと云えます。A5000-U10000クラスという価格帯の中ではトップクラスのサウンドモデルと云えそうです。QuietSeaの各音域をしっかりと聴かせてくれる音は一般ユーザー層には受けが良いと思いますし、海外では高評価となる音質傾向です。一方、日本国内のマニアには中高音重視の音が好まれている現状からは、個人的に有線イヤホンで良い音を探している方にお勧めしたいモデルとなります。シンプルに高音質を楽しめるイヤホンです。

 

最後に、今回は中価格A5000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年10月28日)は国内amazonやAliExpress等で7,000円台で発売されております。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。AliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

QuietSea

以下、付属ケーブル、付属イヤピ LDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

OH2

以下、付属ケーブル、付属シリコンイヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

C3

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

CADENZA

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (硬質な音)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格U10000帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Celest PhoenixCall レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A10000-U20000帯で発売された2FPD+2BA+1DDモデルのCelest PhoenixCallについてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonのHiFiGoで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://ja.aliexpress.com/item/1005005937545783.html?spm=a2g0o.cart.0.0.35582e1a6sJutP&mp=1&gatewayAdapt=glo2jpn

 

HiFiGoのサイトはコチラ

Kinera Celest Phoenixcall 1DD+2BA+2 Micro Planar Drivers IEMshifigo.com

 

 

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1. Celest PhoenixCall について 

Celestは中華オーディオメーカー、Kineraのサブブランドです。Celestと云えば、以前SPD(Square Planar Driver)を1基搭載したPandamonをレビューしています。そのCelestは他にもA5000帯で1BA+1PDハイブリッドモデルのGumiho(九尾)をラインナップしており、それらで採用された平面磁気駆動(PD)はSquare Planar Driver(SPD)と、他社とは異なるドライバが話題になりました。それもその筈。イヤホンでは円形のドライバが多く採用されているのに対し、このSPDは名前の通り四角形のドライバであり当時インパクトがありました。更にPD搭載モデルがA5000という安価な販売価格が注目されました。

そのCelestから今回新たに登場したのが、2FPD+2BA+1DDのPhoenixCallです。所謂多ドラモデルとなりますが、一般的なバランスドアーマチュア(BA)とダイナミックドライバ(DD)のハイブリッドドライバ構成に加え、Flat Panel Driver(FPD)を採用。異なる3種のドライバで構成された特別なイヤホンと云えます。

 

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さて、Celest PhoenixCallのスペックですが、先述の通り3種のドライバを搭載した多ドラハイブリッドドライバモデルです。1DDには7mm径ダイナミックドライバを採用。低音域を担います。2つのBAには中音域を担うカスタマイズBAを1基と中高音域を担うカスタマイズBAを1基採用。高音域は超高音域までの広いレンジをカバーする6mm径FPDを2基搭載。このFPDはマイクロプレーナードライバとなり、このFPDがCelest PhoenixCallの最大の特徴と云えます。

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PhoenixCallは3種の異なるドライバにより優れたオーディオ性能を得ることに成功しています。全体的に明るいサウンドは、深みのある弾力のある低音を持ち、より穏やかで自然なサウンドです。ミッドレンジはソリッドで自然なサウンドを持ち、高周波はクリアで明るくクリーンです。サウンドステージは広々として自然で、滑らかなボーカルと強い解像度で、快適な音楽体験を提供します。

メーカー発表のf特は非常にフラットな特性を示していますが、実際に聴いてみると大人しいモニターサウンドではない臨場感を感じられながらもクリアなサウンドを届けてくれます。

 

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シェル本体はオール樹脂製です。フェースプレートには古代中国の神話「山と海の伝説」の伝説的なシーンをモチーフに描かれたプレートが封入され、光の反射で鮮やかに彩ります。シェル内部には樹脂が封入されており各ドライバに繋がる音導管が確認できます。シェルカラーはクリアと青紫の二種があり高級感のあるデザインとなっています。

最後に付属ケーブルです。高級線材を採用した5N8芯高純度銅線を銀メッキした編込み線は、明瞭さと透明性が高く音をクリアに伝えます。また、リケーブル可能とし、お好みのケーブルに交換することで、より多くの音への変化を楽しむことができます。更に、1本あたりが太めの1mm線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、PhoenixCallではそんな心配はありません。そのためバランス接続を試したい方以外はリケーブルする必要を感じません。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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PhoenixCallの納期としては現在(2023/9/9)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。HiFiGoやAliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、10日前後で届くと思います。ほぼ平時に戻った印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Celest PhoenixCall 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは紫を基調とした観音開きタイプの中箱です。表面にはFP同様に中国神話をモチーフした鳥群のイラストが描かれており、箱中央部に製品名のPhoenixCallの記載があります。

 

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箱を開けると黒を基調とした内装にイヤホンが収納されています。

箱の下側に付属品が収納された小箱が収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セットとイヤホンに取り付けられていたSサイズのイヤピが1組。他にはケーブルとケーブルバンド、イヤホンケース、ブックチャームです。中価格A10000-U20000帯として必要十分なものが揃った付属品となります。

 

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Celestの刻印が入ったイヤホンケースはハードタイプでイヤホンをしっかりと保護してくれます。

 

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二羽の鳥をモチーフしたブックチャームが付属。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は丸みを帯びたオーソドックスなカスタムIEM風のもの。シェルは一般的な大きさですが、厚みがあるためにやや大きく感じます。実際には耳へ収まる部分がコンパクトになっており装着感は良好です。樹脂製シェルは見た目よりも重量感がありますが、耳への装着時はその装着感の良さから重さをそれ程感じません。

フェイスプレートには先述の通り中国神話を模したデザインが施されており、シェルが紫と青の二色を左右で使い分けています。特徴的なフェイスプレートデザインと美麗な本体のイヤホンは他の人とは違うものを求める人には良さそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面は判らないです。

カラーバリエーションはクリアと紫青の二色展開です。今回は紫青を選択しています。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質5N8芯高純度銅線に銀メッキを施した編込み線です。シェルのカラーによって付属するケーブルの被覆のカラーが変わります。クリアには白色が。紫青にはそれに合わせて紫青の被覆線材が採用されています。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性はKZ系と同様に上側がプラスです。この付属ケーブルはやや堅さがありますが、意外としなやかさがあります。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは悪くありませんので、バランス接続をしたい方以外は音質的にもそのまま使用できます。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からCelest PhoenixCall、LETSHUOER S12 Pro

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Celest PhoenixCallとLETSHUOER S12 Proの外観の比較として、サイズ感はPhoenixCallがやや大きく見えます。PhoenixCallのシェルに厚みがありますのでそう見えますし、実際にも体積は大きいです。とはいえPhoenixCallも一般的には普通のサイズの部類になると思いますので、寧ろS12 Proがコンパクトと云えると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはPhoenixCallが長く、太さはPhoenixCallがやや太くなります。角度はどちらもやや起きています。

PhoenixCallはS12 Proと比べやや大きくなりますが、PhoenixCallはオーソドックスな造形の見た目通り耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもフラット2ピンです。リケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。

シェルの材質は、PhoenixCallはオール樹脂製。S12 Proはオール金属製のためこちらの方がやや重量感があります。PhoenixCallはシェル内部に樹脂が充填されており重量感はありますが、造形がオーソドックスのため、耳への装着感が良く、重さをそれほど感じないレベルです。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくPhoenixCallはやや太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。PhoenixCallは音導管の先、ステムノズル内側にフィルタがあります。どちらも異物混入による故障を防ぐ事ができます。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りPhoenixCallはステムノズルがやや太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。そのため付属イヤーピースで耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは黒傘黒軸のやや背が低く傘が幅広形状と一般的な白傘白軸の裾野が弾丸タイプとイヤホンに装着済みの白傘赤軸弾丸形状イヤピがSサイズ1組の3種です。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒イヤピは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプの印象です。白イヤピ2種は中高音をクリアにして僅かに低音を弱めてタイトにさせ全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象です。その白イヤピの赤軸タイプは某イヤピのオマージュ品の様子。白軸タイプよりも傘の材質がしっとりしていてより装着感が良い印象です。黒イヤピは耳に浅めに栓をする装着に。白イヤピは耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属イヤーピースで私はフィッティングが上手くいきました。また、白傘赤軸イヤピの方が装着感が良く感じましたので、そのまま初期装着の付属白傘赤軸Sサイズを使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Celest PhoenixCall 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属白傘赤軸イヤーピース Sサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中低音に厚みがある音。高音は華やかで低音はしっかりと鳴るやや中高音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は落ち着き、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

やや広めから広めの印象。前後は奥行を感じ、左右は広さを感じられます。奥行きを感じられ立体感もあります。空間は広さもあり音の立体感を感じます。

 

高音域

華やかさのある印象を持ちます。過不足のない煌びやかさは上までの伸びやかさを感じられますが、響きや余韻はそこそこ。明るく存在感がある華やかさはあるものの、無駄に騒がしいと感じるような常に前に出る様な感じではない繊細さも兼ね備えた鳴り方。そのため刺さりや尖りは感じません。解像感は良好ですが、解像感に全振りする様な刺々しさはありませんので、爽やかに描写してくれます。

 

中音域

明るい華やかさがありますが、真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音が整理された鳴り方です。音の立ち上がりも良く解像感も感じられ明朗に描写します。ボーカルはクリアで僅かに近い位置から自然でニュートラルな声色の印象です。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりも感じられますが、大きく強く鳴らす誤魔化すような鳴らし方ではありません。音階や強弱といった低音域の解像感は悪くありません。ベースラインは追いやすくその機嫌を窺う様な気難しさはありません。より分かり易く感じられますが、ボーカルよりも前に出るような不自然さはありません。重低音は沈み込みは深さがあり、力強さがありますので過不足を感じません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく明朗に鳴らしてくれます。低音は適度な量感ですが、力強さがあり過不足は感じません。出音のバランスが良い音と云えます。

 

高音は明るく華やかに鳴り、上の上までの伸びやかさはありますが、響きや余韻がそれ程多くはないので適度な華やかさに感じられる場合があります。それでも明るさは十分で上までの伸びやかさがあるため、寸止め感はありません。一方で高音域の谷がありそれが過度な響きを抑えており、結果それほど多くないという原因の様な気がしますが、誇張の少ない高音域は不自然さを感じない耳触りの良い音。超高音域まで伸びやかになめらかに鳴り、小さな音も感じ取れます。解像感や描写は良好で、爽やかに小さな音や鮮明に大きな音を鳴らし、高音の出力バランスを上手く調整し整えられている印象です。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルは僅かに近い位置にあり楽器の音はその周りに位置しています。中音の域の下の方に厚みがある音は分離も良く整った音は解像感も悪くありません。

ボーカルは僅かに近い位置からクリアに聴く事ができます。周りの音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は適度で響きや広がりも適度に感じられます。響きよりも一発の力強さに重きを置いた音は音階や強弱の描写も感じ易く、解像感と雰囲気の良さを両立しています。

重低音は沈み込みは深く、力強さを感じられる音。それは低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音ではありません。

 

他機種との比較としてLETSHUOER S12 Proと比較した場合、一言で云えば中高音寄りの弱ドンシャリと同じ傾向という印象です。S12 Proの出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音でした。また、特長はやはり広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でます。それと比較すれば中高音域の空気感はやや分が悪い印象ですが、低音は負けていませんし、そもそもS12 ProはPhoenixCallよりもやや上の価格A20000帯です。全体としてPhoenixCallはかなり肉薄していると思います。尤も中高音域の解像感を重視した場合にはS12 Proが一枚上手です。

 

次に現在はやや下の価格帯となりますが、比較対象としてTrn Kirinとの比較です。

中価格A10000-U20000帯の平面磁気駆動(PD)モデルの一つです。14.5mm径のPDをシングルで搭載したモデルとなります。

Kirinの音質はPDの特徴を体感できる普通に良い音がするイヤホンです。整った出音は近しいと感じましたが、違いはやはり音場。空間の広さや立体感はPhoenixCallが上手。どちらも全音域をバランス良く聴かせてくれ、出音や音色は普通に音質の良いイヤホンです。どちらも過度に強調するところが無く自然に鳴らしながら、解像感の高い音を聴かせてくれますが、PhoenixCallの方が高音域のレンジが広く、低音域の解像感も良いです。

 

※過去レビューも参考ください

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まとめるとPhoenixCallは多ドラのメリットを活かした広いレンジと各音域の解像感を得ながらそのデメリットであるごちゃつきを抑えた整った音とした高音質と云えます。中高音域寄りの弱ドンシャリは高音域は上までの伸びとあくまでも自然な強さで鳴らし、中低音域を厚めに鳴らす音造りは万人が受け入れやすい音です。そいて同価格帯では間違いなく高音質と云え個人的に好きな音です。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ Kirin (質感の順)

中音   S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ Kirin (質感の順)

低音   PhoenixCall ≧ S12 Pro ≧ Kirin (質感の順)

ボーカル S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ Kirin (質感の順)

※価格帯が異なる為、参考程度に

 

4. Celest PhoenixCall の総評

Celest PhoenixCallはKineraのサブブランドとしてかなり特殊というか尖った製品を世に送り出している印象です。その中でもPhoenixCallは音質的にもかなり評価が高くなりそうな気がします。価格帯では間違いなく高音質と云えますし、その中でも上位に入ると思います。個人的に普通に高音質のイヤホンとしてお勧めできます。メーカー発表のf特では極端にフラットなものでしたが、実際に聴いてみれば非常にバランスの良い音質は音楽を楽しく聴く事ができる良いイヤホンと評価できます。

 

最後に、今回は中価格A10000-U20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年9月9日)は国内amazonやHiFiGo、AliExpress等で18,000円台で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。HiFiGoやAliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はHiFiGoやAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

PhoenixCall

以下、付属ケーブル、付属白傘赤軸イヤピ SDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

BGVP P05 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編として、中価格A5000帯で発売された1DDモデルのBGVP P05についてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonのHiFiGoで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。 

Bgvp-ダイナミックドライバーインイヤーP05ヘッドセット,10mm puセラミックHDD,iems,Hi-Fi,Android用ヘッドフォン,タイプCマイクとmmcx - AliExpress

 

HiFiGoのサイトはコチラ

BGVP P05 PU+Ceramic Dynamic Driver IEMshifigo.com

 

 

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1. BGVP P05 について 

BGVPは中華のオーディオブランドです。BGVPと云えば、数年前の多ドラハイブリッドのスペック競争の渦中にA10000帯でBGVP DMGという4BA+2DDハイブリッドドライバモデルを発売しており、2DDの力強い低音域に4BAの華やかな中高音域が特徴の強ドンシャリモデルが人気を集めていました。その後、DMGの後継機として6BA+1DDハイブリッドモデル、DMSを発売。こちらは同傾向ながらドンシャリを抑えたモデルであり癖が弱まりバランスを改善していましたが、DMGの強ドンシャリインパクトを超えられなかったという印象でした。尤もそのころには多ドラブームは落ち着き、強ドンシャリよりも低音を抑えた解像感重視の音が日本のポータブルオーディオファンの中で主流となっていて少し登場が遅かったという時代に埋もれたモデルと云えました。その後もBGVPは中価格帯から高価格帯でハイブリッドドライバモデルを中心に商品展開していましたが、競争の激しい中華メーカーの中では新興メーカーの勢いに押されており、以前のように注目されてはいませんでした。それはBGVPの音質傾向はリスニングサウンドにまとめられており、良い意味でドンシャリの美味しいところを引き出すのが上手いメーカーです。この音質傾向は海外の中華イヤホンファンから支持されており、音質に定評のある古参メーカーとして認知されていますが、海外と日本の音質の主流が異なるため、評価が分かれています。またBGVPはハイブリッドドライバモデルの音造りが上手いメーカーと認識しています。個人的には従来の多ドラハイブリッドモデルを洗練していって欲しいと思います。

さて、そのBGVPから今回U10000のBGVP P05が登場しました。これまで中心だった中価格帯以上の多ドラハイブリッドモデルではなく、A5000-U10000帯のアンダー中価格帯のシングルダイナミックドライバモデルです。このP05は同ブランドの中では安価なモデルとなりますが、所謂エントリーグレードという位置づけではなく、良いものを安価に届けようとする同社の拘りを感じさせる仕上がりとなっています。

そのP05の特徴は以下の通りです。

  • 強力なダイナミックドライバーを備えたパワフルなサウンド
  • 特許取得済みのチューニングシステム
  • 繊細で絶妙なデザインで軽量且つ人間工学に優れたシェル
  • リケーブル可能な多層ワイヤシールドで包まれた6ストランド3N OFC無酸素銅銀メッキケーブル

それではスペックを詳しく見ていきます。

 

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P05に採用された高品質の10mmカスタマイズダイナミックドライバーは、スムーズな高周波拡張とクリーンな低周波帯域応答を約束するPU+セラミック構成を採用。この二つの素材により広い周波数応答範囲を得ると共に優れた明瞭さと解像度を備えた高品質のサウンドを提供します。

 

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次にシェル内部キャビティを調整するプレッシャーリリーフ設計により、サウンドリークとループサウンドチューニングによって、ボーカル密度とサウンドステージのプレゼンテーションを調整可能にしています。バランスドサウンディングフィルターと低音に焦点を当てたサウンディングフィルターの2種を付属しそれぞれに交換することで、2つの異なるサウンドシグネチャーを楽しめます。

上記2つがBGVP P05の最大の特徴と云え、P05が単にエントリーグレードではない魅力のあるモデルと云えます。

P05はシェルの材質にも拘り、高品質の6シリーズ航空グレードのアルミニウム合金素材を採用し、高精度のCNC機械加工機による切削加工により製造された円筒形のシェル形状としています。シェル表面にはサンドブラスト処理を行い、更に酸化防止処理を加えた外観は工業製品としても美麗に仕上がっています。

また、非常に軽量なシェルはわずか3.4グラム(ケーブル含まず)と、人間工学に基づいた形状との組み合わせで、軽妙な装着感は非常に快適です。そして、P05ではシュア掛けとストレートダウンの着用パターンで使用可能であり、ユーザーが自由に選択できます。

 

※Equalization Filter Set(バランスタイプの組合せ)

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※Bass Filter Set(低音を強化した組合せ)
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先述の2つのサウンドシグネチャーは円筒型シェルの先端にあるステムノズルと終端(フェースプレート部)のフィルターの2か所をそれぞれの組合せに交換することで2種の音質傾向を楽しめます。


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それぞれの音質傾向はハーマンターゲットカーブに対し、ほぼトレースしたBass Filter Setとやや低音域を抑え高音域をやや強めにしたEqualization Filter Setとなりますが、実際に聴いてみた印象は真にその通りです。Equalization Filter Setは中高音域の解像感の高さを感じられ、Bass Filter SetはBGVPのお家芸という印象。聴き易い適度なドンシャリです。

最後に付属ケーブルです。P05の付属ケーブルは多層ワイヤシールド線の6芯撚線です。その線材は3N無酸素銅を銀メッキ処理した線材を採用した並列フラットケーブルです。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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BGVP P05の納期としては現在(2023/8/26)国内amazonのPrime扱いで取り扱いがあります。当日発送、翌日配達は非常に便利です。HiFiGoやAliExpressでオーダーした場合でも現在は安定していますので、AliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月です。尤も万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. BGVP P05 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたスリーブタイプの箱です。表面にはイヤホンイラストが中央部に大きくプリントされており、左上には商品名が大きく印字されています。

 

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スリーブを外すと黒を基調とした内箱の中央にメーカー名が印字されています。

内箱の上蓋を開けると黒地の内装に内装にイヤホンと付属品が収納されています。

 

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付属品のイヤホンケースを開けるとケーブルとFilter Setが収納されています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セットとフォームタイプMサイズが1組。他にはケーブルとケーブルバンド、Filterが2セット(1セットはイヤホンに組み込み済み)、イヤホンケースです。中価格A5000帯として必要十分なものが揃った付属品となります。

 

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メーカー名の入ったイヤホンケースはハードケースタイプでイヤホンをしっかりと保護してくれます。

 

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Filterは2セット付属し、左からEqualization Filter SetとBass Filter Set。それらの違いはEqualization Filterの方がステムノズルが短め、終端側フィルタは内側フィルタが薄くなっています。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は先述の通り円筒形のもの。シェルはコンパクトですが、円筒形の筒の長さがあります。金属製シェルでありながら非常に軽量であり重量はそれ程感じません。耳への装着感も良く重さを感じません。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格A5000帯として非常に綺麗に仕上っています。

カラーバリエーションはシルバーのみ。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質6芯銀メッキOFC線の並列フラットケーブル。価格帯的にはややケーブルにコストカット感があります。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はmmcx仕様。この付属ケーブルは被覆にやや引っ掛かりがありますが、しなやかさがありますので肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側はシュア掛けにもストレートでも使えるようにチューブ等で癖付けされていません。全体的に取り回しは悪くありませんので、国産メーカーの同価格帯のリケーブルできないイヤホンで不便を感じない方やバランス接続をしたい方以外はそのまま使用しても良いと思います。

また、付属ケーブルはマイク無し3.5mmステレオミニ、マイク付き3.5mmステレオミニ、USB Cマイク付きの3種が選択できます。今回は3.5mmステレオミニを選択しています。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からTiNHiFi T2 EVO、BGVP P05

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BGVP P05とTiNHiFi T2 EVOの外観の比較として、サイズ感はほぼ同じ。どちらも円筒形のシェルでコンパクトと云えると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはT2 EVOに対し、P05が交換可能な為、Equalization Filterはほぼ同じ。Bass Filterの場合は長めです。太さはほぼ同じ。角度はどちらも円筒形のため同軸であり同じです。

シェルの材質は、何方もオール金属仕様ですが重量感はあまり感じません。

一般的なIEMに対し、そのコンパクトさが目立ちますし、何よりもその造形から耳への収まりが良く装着感は良好です。寧ろ耳への装着時はイヤピが耳に嵌まる形であり、ステムノズルがやや太めのためイヤピ選びは通常のサイズよりもやや小さめで良いと思います。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもmmcxです。リケーブルの際はmmcxコネクタを選択しておけば問題ありません。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。全て金属フィルタですが、P05は金属フィルタの内側に更に音質調整フィルタがあります。

二機種共にシュア掛けとストレートで使用する事ができます。シュア掛けが苦手な方には朗報ですね。

なお、前述の通りP05はステムノズルがやや太めです。イヤーピースを最適なものを選び実際に装着した際に圧迫感が少ないものを選ぶ必要があります。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースはVocal Ear TipsとBass Ear Tipsの二種に加え、フォームタイプとなります。Bassタイプは傘にコシが無くサイズ幅が極端です。実用的なのはVocalタイプです。こちらは某イヤピに似ていて、使い勝手は良好です。正直これ一択。

Vocalタイプは白イヤピは中高音をクリアにしてくれる印象です。耳への装着時はイヤピを耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属イヤーピースのVocalタイプで私はフィッティングが上手くいきました。また、Vocalタイプの方がP05の本領を発揮できると感じましたので、普段のサイズよりも小さめの付属VocalタイプSサイズを使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. BGVP P05 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属Vocalタイプ Sサイズ、付属ケーブル。先ずはEqualization Filter Setで聴いてみます。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中高音がはっきりと鳴る華やかさのある音。低音は量感は抑え気味ですがしっかりと鳴る音。やや中高音寄りのフラット寄り弱ドンシャリバランス」です。

箱出しでは高音に荒々しさを感じましたが、鳴らし込み後は、高音が落ち着き低音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

普通からやや広めの印象。前後はそれほど奥行を感じませんが、左右はやや広さを感じられます。奥行きをそれ程感じないこともあり立体感はそこそこですが、左右の空間を感じられますので窮屈さはありません。

 

高音域

全体的に華やかさのある印象を持ちます。強調感のある強さで鳴りますが、刺さりも無く嫌な感じはありません。過不足を感じる事はありませんが上までの伸びやかさはそれ程感じないものの、響きや余韻が適度にありますので存在感は十分。全体的な華やかに鳴りますが、無駄に騒がしいと感じるような出しゃばった感じではないあくまでもやや強調感のある鳴り方は分離も良く解像感は良好で鮮明さはこの価格帯として上々。

 

中音域

華やかさがありますが、音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは抑えられ整理されて鳴り方ます。音の立ち上がりが良く解像感も悪くありませんしクリアな中音域を明朗に鳴らします。ボーカルはクリアで自然な位置から僅かにドライな声色の印象です。

 

低音域

量感は抑えられ響きや広がりもそれ程感じませんが、芯のある音は強さを感じます。音階や強弱といった低音域の解像感はそこそこ程度ですが、ベースラインは追いやすくボーカルよりも前に出るような不自然さはありません。重低音は沈み込みはそれ程深さがありませんが、強さがありますので過不足を感じません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリからフラットに近いバランス。高音域は明るく鮮明にやや強調感のある印象ですが不自然な強さではありません。低音は量感は抑え気味ですが、締まりがあり過不足はありません。出音のバランスは中高音中心に解像感重視の現在の日本のポータブルオーディオファン好みの音と云えます。

 

Equalization Filter Setの音質傾向は、やや高音の華やかさを中心とした低音の主張を抑えた解像感重視のバランスです。中高音は響きや余韻も感じられ華やかに明るく鮮明になりますが、やや誇張された印象です。それでも不快な耳障りさはなくこのくらいで丁度良いと感じる方の方が多いかもしれません。そのため解像感が高いという印象を持ちます。低音域は抑えられており、響きや広がりは控えめ。それでもタイトに鳴る低音域は強さがありますので不足はありませんが、低音重視の方には少ないと感じる方が多いと思います。その分中高音域を邪魔することなくクリアで見通しの良さがあります。

 

次にBass Filter Setです。こちらはハーマンターゲットカーブをほぼトレースしており、バランスの良さは一聴して感じます。Equalization Filterのような中高音域の華やかさはありませんが、適度に必要な量を必要な時に自然な強さで鳴らします。自然な強さで鳴るため不自然さを感じることはありませんし演出感の少ない自然な鳴り方は耳触りが良いものの、やはり伸びやかさはそれほどありません。強調感がない分なめらかに鳴ります。解像感や描写は悪くありませんが、鮮明という程ではなく、僅かに暗い音の印象です。しかし、Equalization Filterの音を聴いた後なのでそれを感じ易くBass Filterだけ聴いていれば整えられた高音の印象です。

中音はEqualization Filterよりも僅かに凹みを感じますが、ボーカルは自然な位置にあり楽器の音はその周りに位置しています。華やかさは十分に感じられ分離も良く整った音。

ボーカルは自然な位置からクリアに聴く事ができます。周りの音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は適度で響きや広がりも適度に感じられます。その一方、締まりのある音は、スピード感のある曲にも対応する懐の深さがあります。音階や強弱の描写も悪くありませんし雰囲気の良さも十分に感じられる整った音。

重低音は沈み込みはそれ程深くありませんが、より強さを感じられる音。低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音ではありませんので、物足りなさはあります。適度な低音域は中音域の下の方にも厚みを持たせてくれます。

Equalization Filterとの比較では解像感のEqualization Filterに対し、自然なBass Filterという印象です。どちらも高レベルの音と云えます。

 

他機種との比較としてTiNHiFi T2 EVOは見通しの良いクリアな中高音の中高音重視傾向ながらも低音も適度な強さで鳴らし音楽を小気味よく聴かせてくれるTiNHiFiの音を踏襲しており、高音中音は華やかでも見通し良く、低音は抑え気味ながらも芯があり強さのある音。中音域はこの価格帯でよくあるごちゃ付きを抑えクリアでドライ気味のボーカルは聴きやすい音質傾向でした。P05のEqualization Filterの音は近似しており、それの上位互換と云えそうです。

またP05のBass Filterの音は強いて云えばTiNHiFi C3の傾向に近い印象です。しかしC3では高音域が少し物足りない印象がありますが、それを上手く改善している上位互換機と言えるかもしれません。

次にCADENZAとの比較では、CADENZAがやや中高音寄りのドンシャリです。以外にも低音がしっかりとした音は、高音域は鮮明にしっかりと鳴らし、中音域を華やかに彩らせた高中音域を聴かせる硬質な音です。そのためP05のEqualization Filterの音に近くなりますが、解像感ではP05に分があります。

 

※過去レビューも参考ください

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まとめるとBGVP P05はEqualization FilterとBass Filterによって二つの音質を使い分け楽しむ事ができます。それぞれは中高音域の解像感重視だったり、流行りのハーマンの音だったりとその音質傾向は確実に変化を感じられます。そして何よりもそれら二つの音は高いレベルであり、P05がただのエントリーモデルではない事を証明していると云えます。

ハズレの無いハーマンターゲットの音作りは海外では人気の出やすい音造りですし、日本国内のポータブルオーディオファンは中高音寄りフラットが人気が高い市場です。それらをカバーするBGVP P05は個人的にお勧めできる商品です。

一方で従来の中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   P05 ≧ CADENZA ≧ C3 

中音   P05 ≧ C3 ≧ CADENZA

低音   C3 ≧ CADENZA ≧ P05

ボーカル C3 ≧ P05 ≧ CADENZA

※Equalization Filterで評価

 

4. BGVP P05 の総評

BGVP P05は二つのFilter Setにより二種類の音質を楽しめますし、それぞれが高音質と云えます。価格帯で見ればA5000-U10000クラスとBGVPの中でもエントリーモデルに見えますが、決してそんなことはなく音質重視の選択でも普通に高音質のイヤホンとしてお勧めできます。Bass Filterをセットすれば各音域の聴かせ所を間違わない音は一般層には受けが良いと思いますし、海外では高評価となる音質傾向です。一方Equalization Filterでは日本国内のマニアにも納得の中高音重視の音。個人的にはEqualization FilterがP05の美味しいところを一番楽しめると思いますが、Bass Filterも捨てがたい。非常に楽しめるイヤホンと云えます。

 

最後に、今回は中価格A5000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年8月26日)は国内amazonやAliExpress等で発売されております。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。AliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますしその入手性には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、低価格中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

P05

以下、付属ケーブル、付属Vocalタイプイヤピ S、Equalization Filter、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

C3

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

CADENZA

以下、付属ケーブル、付属イヤピ MDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (硬質な音)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ