みぃねこの備忘録

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AFUL MagicOne レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A20000帯で発売された1BAモデルのAFUL MagicOneについてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonのHiFiGoで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://00m.in/T6IwI

 

HiFiGoのサイトはコチラ

AFUL MagicOne Single BA Driver IEMshifigo.com

 

 

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1. AFUL MagicOne について 

AFULは中華のオーディオメーカーです。AFULと云えば、多ドラハイブリッドモデルのPerformer 5とPerformer 8をラインナップに持つ、新興メーカーです。Performer 5をローンチ後、上位モデルのPerformer 8を発売し今注目のオーディオブランドと云えます。2021年に発売されたPerformer 5はその名の通り5つのドライバを搭載する4BA+1DDハイブリッドドライバモデルですが、自社の音響技術による音質は世界で認められており、ブラッシュアップさせた上位のPerformer 8は7BA+1DDハイブリッドドライバモデルとしての完成度の高い音質を評価されたモデルです。

そのAFULから今回新たに登場したのが、これまで評価されていた多ドラハイブリッドモデルから一変。シングルドライバ、それもバランスドアーマチュアドライバのみのMagicOneを発売しました。

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一般的にバランスドアーマチュア(BA)とダイナミックドライバ(DD)のハイブリッドドライバ構成のモデルは複数のドライバが個々に各音域を担当することで音の歪みを低減させながら厚みを持たせる事ができますが、シングルドライバのモデルでは全ての音域を一つのドライバが担うため、ドライバの性能が重要となります。加えて、今回はシングルBAドライバモデルです。BAは繊細な音を表現することに長けていますが、低音はDDに比べ不利と云えます。これをAFULの音響技術と自社開発のワイド周波数応答を実現したバランスアーマチュアドライバによってどんな音に仕上げているのか非常に楽しみです。

 

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さて、気になるAFUL MagicOneのスペックです。先述の通り革新的と云えるSE-Math電気音響相互変調技術を採用しています。このコア技術「SE-Math」は自社開発であり、RLC電気音響ネットワークと複雑な音響構造を通じて、ドライバによる原音との差を小さくし、高周波帯域の伸びも向上させ、レスポンスの良さとクリアな音場によりサウンドを快適にします。

次に、自社設計のMagicOne用特製のバランスドアーマチュアドライバーを採用。ワイドレンジの全周波数応答を可能とし、なめらかで自然な音色とトーンを実現しています。

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これらのドライバユニットを特許取得済みの3Dプリント音響管構造技術は物理的な周波数分割を実現。物理的なクロスオーバーによりMagicOneの各周波数応答を調整します。また、全長77mm x 外径0.91mmの共鳴管は長く超薄厚により音響設計が施され、深く響く厚い低音域を実現しています。このユニークなリアキャビティ・エアフロー設計を採用することで低音域を大幅に向上させています。

MagicOneは38オームの低インピーダンスにより、省電力化にを実現しています。これにより最適な音量レベルを得やすく、スマホやポータブルUSB DAC/AMP等でも、優れた音質を楽しむことができ、AFUL MagicOneの特徴と云えます。

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MagicOneは1BAドライバでありながら自社音響技術により優れたオーディオ性能を得ることに成功しています。メーカー発表のf特はフラットな特性を示していますが、1BAドライバモデルにありがちなかまぼこサウンドとはとは異なり、言われなければ1BAドライバモデルとは思わないような弱ドンシャリのダイナミックなサウンドです。

また、AFULではMagicOneのサウンドの特色を以下のように説明しています。

  • 低音域は強力で弾力のある低音に応答性が高く高密度
  • 中音域はボーカルを正確に、リアルなディテールを再現
  • 高音域は伸びに優れ、18KHzまで達してから徐々に減衰。やや明るいながらも耳障りで聴き疲れすることなく、さまざまな楽器の正確な音を再現
  • 解像度はなめらかでワイドレンジの全周波数応答。 ボーカルと楽器の両方を正確かつ精密なサウンドを楽しむことができ、全体的なリスニング体験を向上させる

 

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次に、シェル本体はオール樹脂製です。3Dプリント製の透明樹脂シェルはフェースプレートに雪の結晶の様なデザインが施されており、白いフェイスプレートと相まって美麗で高級感のある造形となっています。尤も、先述の通りこの3Dプリント製造による最適な内部音響も実現しています。

最後に付属ケーブルです。高純度素材のハイブリッドケーブルはワイヤーコアを使用した32+37芯線構成の高純度無酸素銅および無酸素銅銀メッキケーブルを採用。リッツ4芯線は同軸シールド構造の線材を特徴とし、外部ノイズの影響を受け難くスムーズな伝送を実現します。また、リケーブル可能とし、お好みのケーブルに交換することで、より多くの音への変化を楽しむことができます。更に、1本あたりが太めのシールド線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、MagicOneでは付属ケーブルの質が高くそのまま使用可能です。そのためバランス接続で使用したい方は購入時に4.4mmバランスプラグ仕様を選択することでメーカーの意図する音を楽しめます。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

AFUL MagicOneの納期としては現在(2023/12/16)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。HiFiGoやAliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、10日前後で届くと思います。ほぼ平時に戻った印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. AFUL MagicOne 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたスリーブタイプの中箱です。表面にはイヤホンイラストがプリントされ、製品名の記載があります。

 

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スリーブを外すと内箱もシックな黒箱。中央にメーカー名が刻印されています。


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上箱を開けると黒を基調とした内装に白いフェイスプレートのイヤホンが収納されています。

箱の下側に付属品が収納されたイヤホンケースが収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セット。他にはケーブルとイヤホンケースです。中価格A20000帯としてはやや物足りなさはありますが、必要なものが揃った付属品となります。

 

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AFULの文字が入ったイヤホンケースはハードタイプでケースの底にはフェルト生地があり、イヤホン収納時の傷を防いでくれます。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は丸みを帯びたオーソドックスなカスタムIEM風のもの。シェルは無色透明で一般的な大きさですが、厚みがあり耳甲介艇に部の突起があるためにやや大きく感じます。実際には耳へ収まる部分がコンパクトになっており装着感は良好です。3Dプリントの樹脂製シェルはその見た目から重量があるような印象を受けますが、実際には軽量であり耳への装着時はその装着感の良さから重さを殆ど感じません。

フェイスプレートは先述の通りベースの白地に雪の結晶の様な模様を銀色で模られています。特徴的なフェイスプレートデザインと美麗な本体のイヤホンは高級感のあるデザインを求める人には良さそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面は判らないです。

カラーバリエーションは無色透明(白)の一色のみです。付属ケーブルが3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランスプラグを選択できますが、今回は4.4mmバランスプラグを選択しています。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高純度素材の4芯ミックス線です。高純度無酸素銅線と無酸素銅銀メッキ線の同軸シールド線材を2芯づつ使用した銀色被覆の編込み線です。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性は上側がプラスです。この付属ケーブルは1芯が太いためやや堅さがありますが、太い線材としては思ったよりもしなやかさがあります。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは悪くありませんので、お気に入りのケーブルを使いたい方以外は音質的にもバランスが良いためそのまま使用できます。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からCelest PhoenixCall、AFUL MagicOne

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AFUL MagicOneとCelest PhoenixCallの外観の比較として、サイズ感はPhoenixCallが一回り以上大きく見えます。MagicOneのシェルはカスタムIEM風でありシェルに厚みがありますが、PhoenixCallのシェルの方がもっと厚みがあります。まあ、PhoenixCallは多ドラモデルであり実際に体積もありますので、シングルドライバのMagicOneが一般的に普通のサイズの部類になると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはMagicOneが長く、太さはPhoenixCallがやや太くなります。角度はどちらもやや起きています。どちらもステムノズルの先端に返りが無くイヤーピースが抜けやすくなっています。

MagicOneは一般的なサイズ感となりますが、カスタムIEM風の造形によって耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもフラット2ピンです。リケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。

シェルの材質は、どちらもオール樹脂製。PhoenixCallは大柄なためやや重量感がありますが、耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくMagicOneは一般的なサイズよりもやや太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

MagicOneはステムノズル部先端に金属フィルターがあります。PhoenixCallは音導管の先、ステムノズル内側にフィルタがあります。どちらも異物混入による故障を防ぐ事ができます。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りMagicOneはステムノズルがやや太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。私は付属イヤーピースでは上手く調整できず、AET07 M-サイズを耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは黒と白の裾野が弾丸タイプです。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒イヤピは傘がやや固めで軸が赤と青の2色があり、左右で色分けすることでイヤホン左右の見分けにも便利です。その音質は音がダイレクトに届き、やや低音がしっかりとするタイプの印象。白イヤピは黒よりも傘がやや柔らかいタイプ。音質は中高音をクリアにして僅かに低音を弱めてタイトにさせ全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象です。黒白イヤピどちらも普段より小さめを耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させる装着を想定している様子ですが、前述の通り私は上手くフィットできず、手持ちのAET07イヤピM-サイズを使用しました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できない場合がありますが、今回は手持ちのシリコンイヤピで上手くフィットさせました。尤も、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. AFUL MagicOne 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

3.1. ドングルDACアンプでの音質チェック

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはAET07イヤーピース M-サイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中高音に華やかさがある音。ボーカルがクリアに届き低音は想像よりもしっかりと鳴るやや中高音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音の量感が少ないのに膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まりタイトに鳴り、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

普通からやや広めの印象。前後の奥行を感じ、左右に広さを感じられます。奥行きがあることで立体感を感じ易くなっています。空間は広さを感じ音に立体感が感じられます。

 

高音域

華やかな印象を持ちますが、騒がしく感じない。不足を感じない煌びやかさは上までの伸びやかさを感じられ響きや余韻もあります。どちらかと云えば明るい存在感がある華やかさは、無駄に騒がしいと感じるような押し出しの強さも常に前に出る様な感じでも無く繊細さも兼ね備えた鳴り方は刺さりや尖りを感じません。解像感は良好ですが、カリカリの解像感と云いうよりは音の輪郭を掴みやすい、鮮やかで爽やかに描写してくれます。

 

中音域

高音域よりは僅かに暗い印象ですが、十分な華やかさがあります。音の分離が良く整理されていて真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音の立ち上がりは良く解像感は良好です。ボーカルはクリアでやや近い位置から自然でニュートラルな声色の印象です。

 

低音域

量感は多くはありませんが適度な響きや広がりも感じられ、大きく強く鳴らすというよりは締まった音。音階や強弱といった低音域の解像感は良好。ベースラインは追いやすく気さくに、時に気安くとらえる事ができます。それでもボーカルよりも前に出るような不自然さはなく、それを邪魔する様な無神経さはありません。重低音は沈み込みはそれほど深くはありません。一方でタイトで力強さがありますので不足を感じません。中高音を邪魔することのない上品な低音です。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく鮮やかに鳴らしてくれます。低音はタイトで上品な強さですが、不足は感じません。寧ろBAで低音を強く鳴らす場合は中高音を邪魔しやすく、丁度良い出音のバランスと云えます。

 

高音は比較的明るい華やかさのある鳴り方。上の上までの伸びやかさがあり、響きや余韻を感じられ鮮やかな彩を感じられます。一方で高音域は2k-4kをピークに緩やかに下がります。それが過度な尖りを抑えており、結果響きと余韻を感じながらも不足を感じない爽やかな高音域を実現している印象です。誇張の少ない高音域は自然な音を彩り鮮やかな音を聴かせてくれます。超高音域までなめらかに鳴り、小さな音もかき消されずに感じ取れ、解像感や描写は良好です。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルはやや近い位置にあり楽器の音はその周りから後ろに位置しています。中音の域の下の方はそれ程厚みがありませんが、全体的に分離が良く整った音は立体感を感じられます。

ボーカルはやや近い位置からクリアに聴く事ができます。演奏の音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は多くはありませんが、適度に響き広がりも感じられます。どちらかと云えばタイトに一発の力強さやレスポンスに重きを置いた音は音階や強弱の描写も感じ易く、解像感と雰囲気の良さを両立しています。

重低音は沈み込みそれ程は深くありませんが、タイトで芯の強さを感じられる音。それでも低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音とは異なり上質です。低音域全体として上品な音と云えます。

 

他機種との比較としてPhoenixCallとの比較になりますが、それは多ドラのメリットを活かした広いレンジと各音域の解像感を得ながらごちゃつきを抑えた整った音は高音質と云えます。MagicOneも中高音域寄りの弱ドンシャリと云えますが、PhoenixCallの多ドラの前では鮮やかさにやや分が悪い。それでもMagicOneの高音域は上までの伸びと余韻、自然な強さで鳴らす音は誇張が少ない爽やかさは好印象です。

特にボーカルはMagicOneの自然で艶も息遣いも感じられるリアルさは同価格帯でも上位に入ると云えます。

低音は流石にPhoenixCallが一枚上手となりますが、MagicOneの低音はシングルBA機ということを忘れさせてしまう程しっかりとしている。正直シングルDD機では高音域を厚めに鳴らす音造りを重視して低音が疎かに鳴っている機種が多くあり、MagicOneのレベルの高さを証明していると云えます。

 

次に現在は実売で同価格帯となるLETSHUOER S12 Proとの比較です。S12 Proの出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音でした。また、特長はやはり広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でていてそれと比較すればMagicOneのもその傾向になりますが、中高音域の空気感は流石に分が悪いし低音も言わずもがな。そもそもS12 Proは発売当時MagicOneよりももう少し上の価格のA20000帯です。それでも全体としてMagicOneのシングルBA機が後ろに迫る音質を実現していることに驚きを隠せません。

 

※過去レビューも参考ください

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3.2. DAPでの音質チェック

今回はいつものDACアンプにShanling UP5を使用していましたが、ちょっと思うことがってDAPを使用した感想を追記します。

 

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DAPにはHiby R6 gen II(国内ではnew Hiby R6。海外ではHiby R6 2020。R6 gen III、通称「R6 III」登場により呼称統一されたみたいです)を使います。プレイヤーはHiby Music、ローゲインで聴いてみます。R6 gen IIは中高音域寄りの音質傾向となりますが、低音域の力強さがあり、流石にドングルDACアンプのUP5とは違います。

UP5では全音域の出音バランスが良く、シングルBAモデルとして十分高音質と評価しましたが、R6 gen IIで聴いてみるとそれまで見せていた顔と異なり本来の力を魅せてくれます。

UP5でも十分だった中高音域は音の鮮明さに加え、より繊細な音で小さな音の消え入る様を掴みやすく、遠くで鳴る小さな音や近くの強い音は立体感に加え距離感を掴みやすくなります。そして最も異なるのは低音域です。UP5ではシングルBAモデルとしては十分な存在感のある上質な低音という評価から一変し、力強さが増しタイトでキレの良い音が楽しめます。BAの低音として上質で上品な音は、全音域をフラットな出音で鳴らし、MagicOneがシングルBAモデルではなくマルチBAドライバモデルと誤認しそうなレベルの高い音を聴かせてくれました。

これは言い換えればMagicOneをきれいに鳴らすには駆動力が必要と云えます。最初WM1AM2の4.4mmバランスで試した際にはそれ程感じませんでしたが、色々試してみるべきだよなぁと良い経験となりました。

 

3.3. 音質のまとめ

まとめるとMagicOneはシングルBA機でありながら複数BA機に迫る音を実現しています。それは多ドラのメリットであるワイドレンジと各音域の出音を調整し鮮明でありながら自然な音を鳴らす高音質モデルと云えます。中高音域寄りの弱ドンシャリは高音域は上までの伸びと余韻を持ち、タイトな低音域が音楽を破綻させずに鳴らす。ボーカルがリアルな音造りはバンドサウンドよりもボーカル曲でその特徴を活かすことがでします。そして同価格帯の中でも高音質と云えます。そして、MagicOneのもつ魅力を楽しむためにはアンプ部の力が肝要となります。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ MagicOne (出音の強さ)

中音   S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ MagicOne (出音の強さ)

低音   PhoenixCall ≧ S12 Pro ≧ MagicOne (出音の強さ)

ボーカル MagicOne ≧ S12 Pro ≧ PhoenixCall (質感)

※ドライバ構成が異なる為、参考程度に

 

4. AFUL MagicOne の総評

AFUL MagicOneは従来のAFULの多ドラモデルとは異なり同社の音響技術を注ぎ込んだシングルドライバモデルとして上質な音を届けてくれる特別な製品と云えそうです。それは音質的には大人しいものの聴き込めばその音色に心を奪われる高音質モデルです。価格帯ではシングルBA機は珍しく、同じシングルドライバでもシングルDD機が多く、ましてや複数BA機と相まみえるには不利と云えますが、少なくても同じシングルドライバ機を相手にした場合にシングルBA機で戦うことができます。個人的にはシングルBA機はQDCのシングルBA機を含めあまり良い印象はありませんでしたが、少なくてもMagicOneはシングルBA機が好きな方にお勧めできる高音質イヤホンと云えます。そして強力なアンプ部を持つDAPを愛用している美音好きの方にお勧めしたいモデルです。

 

最後に、今回は中価格A20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年12月16日)は国内amazonやHiFiGo、AliExpress等で20,000円を少し超える価格で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。HiFiGoやAliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はHiFiGoやAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

MagicOne

以下、付属ケーブル、AET07イヤピ M-使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★☆ (DD機好きの方は★4)

※☆0.51.0

 

PhoenixCall

以下、付属ケーブル、付属白傘赤軸イヤピ SDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

MagicOne(参考)

以下、付属ケーブル、AET07イヤピ M-使用、DAP Hiby R6 gen II
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★ (ドングルDACの場合★4.5)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

※2023/12/23 DAPでの音質チェック追記に伴い3.項を3.1.項、3.2.項、3.3.項に再編成及び、4.項追記修正