みぃねこの備忘録

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Trn ST5 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの低価格中華イヤホンレビュー編ではなく、中価格A5000-U10000帯で発売された4BA+1DDハイブリッドモデルのTrn ST5についてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのTRN Promo Discount Storeから購入しました。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取り扱いがあります。

 

 

 

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1. Trn ST5について 

Trn ST5は中価格A5000帯中華イヤホンの多ドラハイブリッドモデルとして今年7月に新発売されました。

Trnといえば従来の低価格帯のドンシャリモデルを中心に発売し市場のトップランナー、KZのライバルとして鎬を削ってきましたが、最近はビジネスモデルを変更し成功を収めつつあり現在は中価格A10000帯でも他社に引けを取らない音質で注目を集めています。

実際、最近のTrnは発売したイヤホンはどれも「普通に音が良い」モデルとなっており、以前レビューした多ドラハイブリッドのVX Proや平面磁気駆動ドライバのKirinは中価格A10000帯のモデルとして他社に遜色のない音質で、寧ろその販売価格からはコストパフォーマンスは高いと云えます。

そのTrnが久しぶりに中価格A5000帯の4BA+1DD多ドラハイブリッドモデルを新発売するとなれば試してみたくなるのは仕方がありません。というのも近年はやはりスペック競争の渦中にあり、同価格帯では片側6ドライバ、5BA+1DDが最低ラインでした。尤も、片側5ドライバ、4BA+1DDは数年前までは高スペックモデルでしたので、時代は進化し今も続いているという事になります。

 

それではTrn ST5のスペックを詳しく見ていきます。先述の通り片側5ドライバ、多ドラハイブリッドモデル、4BA+1DDのドライバ構成です。同価格帯多ドラハイブリッドモデルの中で現在では物足りなさを感じてしまうドライバ構成ですが、振り返ってみると同社ではV90と同じドライバ数です。そのV90も後継機V90Sでは5BA+1DDとBAが1基増え片側6ドライバにアップグレードし価格帯のスペックが上昇してきていると感じていました。まあ、V90Sは高音域特化のヤバいモデルというオチですけど。

ST5の搭載ドライバは高音域用BAドライバには30095シングル二基を採用。中音域用BAドライバは50060シングル二基を採用し、中高音~中音域を担当。低音域用のダイナミックドライバに10mm径ベリリウムコート振動膜を採用し、中低音~低音域を担当。高音域用BAはステムノズル内に配置し、中音域用BAと低音域DDを全てシェル内部に配置しています。

V90とのスペックの違いは、片側5ドライバ、4BA+1DDの多ドラハイブリッドドライバ構成は同じ。高音域BAがV90では30019シングル二基とドライバの種類が異なり、ステムノズル内に配置。中音域BAは50060シングル二基と同じでシェル内に配置。低音域のDDは10mm径のカスタマイズドライバもシェル内に配置です。ドライバ構成だけで比較すれば配置は同じですが、高音域用のBAと低音域用DDが代わっていますので、出音が別物という想像に難しくありません。そして、それは一聴して感じられます。V90と最新作ST5では出音が全く異なります。

比較対象のKBEAR Robinのスペックは同じく片側5ドライバ、4BA+1DD多ドラハイブリッドモデルです。搭載ドライバは中音から低音域用のダイナミックドライバに10mm径の二重磁気ドライバを。高音域BAにKBEAR-IF-Kシングル1基を採用、高音から中音域を担当しステムノズル部に配置。中音域用BAにKBEAR-HI-Bシングル3基を採用、中高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置しています。RobinではBAをカスタマイズモデルを採用。実質高音域用を1基と中高音域用3基とすることで、高音域と中高音域の聴こえ方を調整しています。

前述の通りST5は高音域用BAドライバをステムノズル内に配置し高音域をダイレクトに耳に届ける想定です。それ以外のドライバはシェル内に納め、高音域2BAと中音域2BAと低音域1DDの3way方式とし、中価格帯以下のモデルに多い音導管を使用しないタイプです。個人的にはそもそも音道管が正義とは云いませんが、それの有無やシェル等の素材を含めてチューニングの一つだと考えています。

これに対し、Robinも高音域用BAをステムノズル内に配置し、その他ドライバはシェル内に、音道管は無し。高音域1BAと中音域3BAと低音域1DDの3way方式という高音と中音域のBAの数が異なるドライバ構成&配置です。

一般的に多ドラハイブリッドや複数BAモデルで採用する3way方式では各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングが重要です。ST5でもチップ抵抗を用いたPCB(実装基板)により各BAの出力を調整する方式を採用しています。

 

次にST5のシェル本体はオール金属製が採用されています。Robinではシェル本体が樹脂製でステムノズルとフェイスプレートは金属を採用。金属と樹脂によるハイブリッド構造ですが、CNC切削による綺麗な造形です。まあ、CNC切削なんてものはプログラムが肝ですし、加工時間が長いので高価という理屈は判りますが、売りにはならないかなと。それよりも音質への影響の方を無視できません。金属製シェルでは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなり、響きの美しさは金属が一枚上手です。もちろん、良い事だけではなく、痛し痒しの関係ではあります。

 

最後に付属ケーブルです。最近のTrnが新たな商品として最近力を入れているプレイヤー側の端子交換式ケーブルを採用しています。これはケーブルのプレイヤー側プラグ端子部をコネクタ化し、3.5mmと2.5mmバランスと4.4mmバランスのプラグに交換できる「プラグ交換システム(PCS)」を採用したケーブルが付属します。一見便利なようで3.5mmステレオミニプラグしか使わないユーザーにとっては無用なコネクタ部、接点が増える事を嫌う声もありますが、ST5に付属するPCSケーブルはその精度も悪くありませんので十分使えるケーブルと云えます。

 

※宜しければ過去のレビューもご参考ください

 

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Trn ST5の納期として今回AliExpressで購入しましたが、中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのprime扱いのようにはいきません。オーダーから約9日ほどで届きました。昨今、AliExpressでの購入では感染症の影響で中国からの輸送は平時の様にはいきませんでしたが、現在はかなり回復し国内で佐川急便に委託される輸送の場合はかなり安定してきました。尤も平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月以上。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。最近はHiFiGoの利用が多いのですが、こちらは何故かAliExpressよりも到着が早い事が多いのがその理由です。

どちらも海外ネットショッピングであり心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、私は活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での取扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Trn ST5実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングはTrnの最近の白を基調としたスリーブタイプの化粧箱で、表にはイヤホンイラストが印刷されています。

 

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スリーブを外すと黒の内装にイヤホンが収められ、その下側のカバーを開けると付属品が収められています。

 

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付属品は最近のTrnに付属する白色シリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種と従来の赤軸黒傘シリコンイヤピではない黒色タイプのS、M、Lの3種が1セットの計2セットに加え、フォームタイプ1組。他にはPCSケーブルとその交換用プラグ3.5mm、4.4mm、2.5mmの3種です。中価格A5,000帯として十分な付属品となります。

強いて云えば上位のVX ProやKirinではTrnの金属ケースも付属しますが、中価格A10000との差別化がされています。

次に本体を見ていきます。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホンの中価格A5,000帯として十分に綺麗な仕上りです。CNC切削の金属シェルは合わせ面も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは銀色のみ。

続いて付属ケーブルを見てみます。

 

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付属ケーブルは8芯銀メッキ無酸素銅(OFC)線、白(銀?)色の編込みタイプが採用されています。プレイヤー側はプラグ交換システム(PCS)対応。イヤホン側はKZ-Cタイプです。

 

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プレイヤー側コネクタはI字タイプでプラグ交換システム(PCS)対応。別途紹介しますが、交換用プラグが三種付属します。


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接続ミスが無いように勘合部に凹溝と凸レールがあり、所謂キー溝仕様となっていて、誰でも間違いなく接続間違いの無いようにしてあります。


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イヤホン側はKZ-Cタイプ、2ピン仕様、KZ極性(上がプラス)です。


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この付属ケーブルは耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。絡まり難くしなやかなものとなり中価格帯に付属するケーブルの中でも悪い印象はありません。殆ど全てのDAP等のプレーヤーにプラグ交換によって対応しますので、そのまま使用できますし白色ケーブルは被膜も綺麗な色味からは、シェル本体にマッチしています。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からKBEAR Robin、Trn ST5、CCA C10

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ST5とRobin、C10との外観の比較として、サイズ感はST5がシェルの厚みがあるもののフェイスプレートの大きさ等はほぼ同じ。見た目ではST5がやや大きく三機種中で体積は大きくなります。とはいえ三機種共に決して大きい部類ではなく一般的なサイズ感です。耳への収まり三機種共に問題なく装着感も良好です。

シェルの材質は、先述の通りオール金属製のST5に対し、Robinがシェル本体が樹脂製でステムノズルとフェイスプレートが金属製のハイブリッド、マルチマテリアル仕様となります。C10はステムノズル一体型の樹脂シェルに金属フェイスプレートとなっています。

そのため重量はST5が比較的重量を感じますが、耳への装着時には良好な装着感によってそれほど重さを感じないと思います。

ステムノズルの太さと長さ及び角度は三機種共にやや太めで角度もほぼ同じ。Robinがやや長めですが気になるほどではありません。ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがありRobinが一番目が細かく細目。ST5とC10は中華イヤホンでよく見る丸穴のフィルタです。Robinは音質への影響のあるタイプと云えますが、それ以外は異物混入による故障を防ぐタイプと云えそうです。

装着方法は三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りST5はステムノズルが太めなため、イヤーピースは装着感への影響を考慮し普段より小さめ、または傘の形状を考慮して社外品を選択する等、耳への装着感を重視し選択してください。

 

付属品だけでイヤホンとして使えないかと云えば、決してそんなこともないですけど。イヤーピースは普段使っているメーカーの物へ交換推奨です。

最後に付属イヤーピースを見てみます。


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付属イヤーピースは最近のTrnに付属する白色タイプと黒色タイプがメインで付属します。個人的に従来のTrn付属の赤軸黒傘イヤーピースでは傘のコシは良いのですが若干パサつきを感じました。この新型黒色イヤーピースでは適度なしっとり感があり遮音性も十分に感じます。加えて白色タイプは適度な傘の弾力がしっかりと耳へのホールド感を持たせてくれます。

音質的には従来のTrn付属赤軸黒色イヤピよりも白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプの様です。比較的開口部が大きく高音がダイレクトに届くタイプです。

新型黒色タイプは装着感が改善し従来の赤軸黒色タイプの様に中低音域がしっかりと聴こえるタイプです。

また、イヤホン本体に初期装着されている別の白色イヤピとフォームタイプイヤピも付属しておりますので、極端に耳が大きいor小さいという事が無ければ殆どの方で困ることはなさそうです。

この付属イヤーピースの内、白色イヤピで私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

中華イヤホンでは付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じる事が多くあります。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Trn ST5音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云え、エントリークラスの代表となります。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云え、モニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能です。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属シリコン白色 Mサイズ、付属ケーブル4.4mmプラグです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「結構派手に鳴る。高音が響き低音もしっかりと鳴る。低音は量感よりもタイトに鳴る」です。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き低音は締まった音に。低音が落ち着いたことで高音が印象に残りやすく全体のバランスは僅かに高音を強調した最近のTrnの音を聴かせてくれるようになりました。

 

音場

普通からやや広め。縦横の空間では奥行を感じられ、何方かと云えば奥行の方に空間を感じられます。

 

高音域

煌びやかで響きも良く伸びやかさも感じられますが、やや強調感を感じられます。存在感があり華やかに鳴りますが、尖りは感じず刺さりは抑えられています。小さな音も埋もれ難く掴みやすい解像感の高い音。上の方には空間というか高さはそれ程感じませんが十分な空間を感じます。

 

中音域

縦の奥行を感じる空間には響きの良さがあり華やかさがありますが、音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じ難く、離れたところで鳴る小さな音や音の消えゆく様もも掴め解像感は良好です。ボーカルはクリアで自然な位置からやや近めから聴かせてくれ、僅かにドライ気味ですが不自然な声色ではありません。

 

低音域

量感は多くありませんが響きや広がりもある十分な量です。ボワボワする様な量感で誤魔化す音ではなく芯のあるキレの良いタイトな音。ベースラインは追いやすい。重低音は沈み込みはやや深く強さがあり十分です。

 

出音のバランス

一言で云えば高音域に強調感のあるやや中低音寄りの弱ドンシャリ。最新のTrnの音をベースに低音もしっかりと楽しめる出音はバランスも良い。普通に悪くない音。

 

高音の煌びやかさは十分で響きのある音は華やかさがあり、最新のTrnの音を踏襲しています。従来の前に出るような主張ではありませんが、強調感のある印象。超高音までの伸びやかさはそれ程感じませんが、高音域全体で不快に感じる刺さりはなく、小さな音でもしっかりと耳に届き音の消えゆく様も綺麗で不自然さはありません。他の音を邪魔せずに音が整理された音。低価格モデルの強ドンシャリではコストの制限から出来の悪いBAの高音の最初の一音だけが強調されたシャンシャンと鳴らし過剰演出の不自然な鳴り方ではない。統制された高音は全体のバランスを崩さずに綺麗な高音を聴かせてくれます。

中音は凹みを殆ど感じず、縦横に丸く広がる空間を感じられ音の分離は良好。横方向こそ左右にそれ程広さを感じませんが、縦方向の前後に奥行を感じられボーカルの周りに少し離れ楽器の音が鳴り、その音は統制され見通し良く鳴ります。解像感の高さを感じられ小さな音も遠くの音も埋もれずに感じられます。

ボーカルは自然な位置からやや近めに位置しクリアで聴きやすく、高音や低音に埋もれませんが、中低音の音に影響を受けてやや籠って感じられるかもしれません。声色は僅かにドライ気味なものの息遣いや艶も感じられます。掠れたり乾いたような不自然さはありません。女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声も楽しめると思います。

低音は量感は多くはありませんが、全体のバランスで見れば十分な量感。僅かに中低音域をマスクする様な印象はありますが、籠りは抑えられていますし暖かさを感じられる。広がりや響きも感じられますが、寧ろ締まりの良い芯のあるキレのある音は強さもあり、小気味良い印象。リズミカルな鳴り方は音の強さ、強弱を感じられる音の印象です。アップテンポな曲との相性は良いと思いますが、バラードなどでは低音の広がりがもの足りなく感じ気になるかもしれません。ベリリウムコート振動膜の低音として良さの感じられる鳴り方であり、力感不足の無い適度な低音は、僅かにボーカルをマスクする様な印象もありますが十分クリアに聴く事ができます。

重低音は沈み込みはやや深く強さがあります。DDの芯がある強さのある音は高音中音域を下支えするには十分な音は高音中音の煌びやかで響きの良い音を邪魔しません。

 

ST5は高音に強調感がある中低音寄りの弱ドンシャリの出音は音楽を楽しく聴く事ができるリスニングイヤホンという印象です。新型のベリリウムコート振動膜DDが、中高音のごちゃつきを改善し従来のDDよりも低音の強さは抑えられています。ドライバの絶対性能が上がれば出音に影響があるという事例として興味深いです。

全体の出音は最新のTrnの音を感じられ各音域の強さのバランスが良く、V90を超えたと感じられる出音は好感が持てます。もっと云えばV90の頃のTrnの低音は弾むような低音であり、それが良し悪しというよりも嗜好の違いを感じさせていました。

またV90との比較では出音のバランスがV90の強ドンシャリに対し、ST5の弱ドンシャリの様に数年前のTrnの音が変わっています。V90の高音は主張が強く前に出るような音。DT5では統制された高音は刺激的な音とは一線を画します。トレンドで云えばST5が現在主流の音であり、良い音と云えると思います。まあ二年以上前の機種と比較するというのもアレなんですが。

次にRobinとの比較では出音のバランスが近く、比較対象としては適切。価格はST5が上ですが。RobinはKBEARのどこかの音域を強調しないフラット寄りの弱ドンシャリの出音。ST5が僅かに高音域に強調感のある弱ドンシャリです。低音の質感はST5が勝っているので、ST5の方がドンシャリが強いと誤解されるかもしれませんが、解像感が勝っています。高音と中音はどちらも前に出すぎない鳴らし方ですが、空間の音のごちゃつきはRobinでは感じられますので、質感はST5が勝っていると云えます。

 

※以前のTrn V90Sのレビューもご参考ください

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まとめるとTrn ST5はTrnの多ドラハイブリッドモデルの新しいエントリークラスとして最新のTrnの音を踏襲し、リスニングイヤホンとして完成度の高さが魅力の新商品です。

上位のVX Proには及びませんが、低音の質感だけで見ればST5も勝るとも劣りません。

リスニング用途としての強いドンシャリバランスとは言い難く、高音域の刺激的な強さや低音のドンの量が多いバランスを求め、演奏メインで聴きたい方はもの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

そして何よりもTrnは一聴して高音質と云える音質傾向が、市場をリードすると云っても過言ではありません。もしも2,3年前のTrnで懲りてしまった方は機会があれば試して欲しい、そんな想いを抱かずにはいられません。

 

高音   ST5 ≧ Robin ≧ V90 (質感の順。出音の強さはV90) 

中音   ST5 ≧ Robin ≧ V90 (質感の順)

低音   ST5 ≧ Robin ≧ V90 (質感の順。出音の強さはV90)

ボーカル ST5 ≧ Robin ≧ V90 (質感の順)

※出音や音色の参考程度に

 

 

4. Trn ST5の総評

Trn ST5は同社の多ドラハイブリッドのエントリーモデルとしての最新のTrnの音を示すモデルであり、それに相応しいモデルと云えます。Trnの音を手軽に体験したい場合にお勧めできるモデルと云えます。

また、同社が追う立場から追われる立場に代わり、これからの市場をどの様にリードしていくのか興味が尽きません。

 

最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2022年9月3日)は国内amazonやAliExpress、HiFiGoで発売されておりますが、昨今の円安のため、国内amazonとの価格差がそれ程なく、国内amazonでの購入がお勧めです。AliExpressやHiFiGoでは本国発送のため、リスクが有り少々難があると云えます。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内amazonの取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressやHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

ST5

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

Robin
以下、ケーブルKBX4905、付属イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★☆  
※☆0.5、★1.0

 

V90
以下、ケーブルYYX4733、イヤピAET07 M-使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★ 
※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回はいつもの低価格中華1BA+1DDハイブリッドイヤホンではなく、中価格A5000帯中華多ドラハイブリッドイヤホンの商品のレビューとなりました。同社の価格帯ラインナップの中でトップクラスの音質はレベルの高さを感じさせられました。日々進化を見せる中華イヤホンはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ