みぃねこの備忘録

いろいろなこと、主に趣味の備忘録として活用。アフィリエイトやってません。お気軽にリンクからどうぞ。

Trm V90Sレビュー ※KZ ZAX CCA C12 比較含む

こんにちは。

今回は中華イヤホンの中から多ドラハイブリッドモデルのレビュー編として中価格帯で発売されているTrn V90Sについてレビューをまとめたいと思います。

今回はAliExpressのTRN Promo Discount Store(@TrnDiscount)のtwiter抽選企画で当選しています。twiterを始めて数年経ちますが初めて(まともなものが)当たりました(失礼)。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取扱がありますが、本国発送となっています。

 

 

 

f:id:miineco106:20201115134044j:image

 

 

 

 

1. Trn V90Sについて 

Trn V90Sは昨年レビューしたCCA C12やKZ ZSXと同じ5BA+1DDの片側6ドライバを搭載する多ドラハイブリッドモデルです。今年は既にKZ系ブランドからCCA CA16やKZ ZAXの7BA+1DDの旗艦多ドラハイブリッドモデルが登場しレビューしていますが、Trn社もVXを同時期に発売しています。このVXは6BA+1DDの旗艦多ドラハイブリッドモデルとして登場しており、本ブログでもレビューしています。

その後、発売したこのV90Sはモデルナンバーから当初昨年発売したV90の後継機として中華で良くある「S」モデルとしてチューニング変更をして登場したと思いきや、実はBAドライバを1基増やして5BA+1DD多ドラハイブリッドモデルとしての登場でした。

ドライバ構成では昨年のC12やZSXが既に5BA+1DD多ドラハイブリッドモデルを発売しておりインパクトに欠けること。同社が先に旗艦多ドラハイブリッドモデルVXを6BA+1DDで発売していること。止めはKZ系で今年CA16とZAXが7BA+1DDのハイブリッドモデルを発売していることから発売当初殆ど話題に挙がりませんでした。

そのため購入者も少ない様子で、ネット上でも殆ど購入報告がありませんでした。そりゃあ先に7BA+1DDのCA16やZAXを。或いは6BA+1DDのVXを購入した方達はVXの尖ったな評価に対して、ZAXの好評さもあり態々同社の下位スペックの多ドラハイブリモデルに興味を示さないのも仕方がありません。

発売当初は6,000円台の価格も早々に4,000円前後の価格となり、AliExpressセールでは公式セラーが2,000円という投げ売りっぷり。今回はTrn社の惨敗と云えそうです。

先代のV90はC12やZSXのBAが1基多い格上スペックモデルと互角に戦えていたのですが、今年のCA16とZAXに対してはVXでも敵わない、そんな印象を個人的に感じています。

そんな不遇のV90Sも今回twiter企画で当選し入手できましたので、折角なのでレビューをしていこうと考えた次第です。

 

さて、今年は中華多ドラハイブリッドモデルが豊作となりました。エントリーモデルでは片側4BA+1DDのCCA C10 proが。ミドルクラスとして片側5BA+1DDのCVJ CSNとTrn V90Sが。ハイエンドとして片側6BA+1DDのTrn VXと、片側7BA+1DDのCCA CA16とZAXが発売されています。また、オールBAの複数BAモデルも片側5BAのKZ ASFや片側10BAのKZ ASXに加え、先日発表された片側8BAのCCA CS16と気になる製品が新発売された事になります。…皆さん忘れていませんか、今年前半はCOVID-19によって経済が麻痺していたんです。世界の工場、中国が止まっていたんです。しかし、中国のスピードは本当に凄い。働き方改革も大事だけど、他社に後れを取ってしまったらそれこそ失業の恐れがあって、最悪無収入ですよ。日本、いやもっとコアに云えば企業はCOVID-19の混乱から政府のいう「働き方改革」とセットで考えるなんて風潮がありますが、そもそも働き方改革って生産性を損ねず(労働力を変わらず搾取し)に競争力を維持(働いていない時間は対価をカット)する都合の良さが見え隠れしています。電通が典型ですね。

どうも中小企業のトップは横並び体質が多いように感じます。大手がやり始め、中小が追従する。親会社、大口取引先の意向を受けての対応なのでしょうけど。

未だ「労使」の「使」が強い日本では先進諸外国の様な「個」が尊重され「自己責任」や「成果主義」の文化が根付くには「親方日の丸」の文化、もっと云えば経済対策が公共工事なんていう昭和の対策が変わらない限り難しいのではないでしょうか。昭和の生き残りが権力を誇示する政治家達が変わらない限り利権やなんやらで変わらない。変えられない。

いつからこの国はこんな国に成り下がったのでしょう。

悲しいことですがそれでも、私達は働かねばなりません。それは生きるために。そして未来を紡ぐために。だけど、それには自己犠牲なんて1ミリも考えなくても良いんです。誰かがやらなければなんて考えなくても良いです。それを考えるのはこれを読んでいる貴方ではなく、貴方の何倍もお金を貰っている政治家や経営者の責任、いや義務です。悲しいことですが一般人の私たちは人生の限りある時間を消費しその対価を得ているだけにすぎません。それがライフワークバランスでありそれの本質だと私は思います。

 

閑話休題

このV90SはV90の後継機として、それの改良型を想像していましたが、一聴して「そっちですかぁ」と落胆しました。というのも少し先に発売されたTrn VXの音に近く、昨年発売したTrn V90とは異なる音に感じたためです。KZ系は良くも悪くもその系譜の音というものを感じますが、V90SではV90の良さを捨て去り、VX寄りの音に寄せています。

個人的にV90Sは同社の今年発売モデルTrn STMやVXと同じ傾向の音づくりに感じます。

具体的には「ちょっと高音が強いバランス」です。KZ系のハイブリモデルは良くも悪くも高音と低音の強さのバランスが整っていて、やや低音が強いバランスです。そのため聴いていて心地よさのあるドンシャリです。一方最近のTrnは高音の方が明らかに強い。推測の域を出ませんが高音を強めにして解像感を演出しているのであれば、逆効果だと感じます。例えば女性ボーカルを聴かせたい場合に中高音を凹ませずにはっきりさせる場合がありますが、これはそうでもないです。単純にしつこい高音はしつこい低音よりも人を選ぶと思います。

 

とはいえ、昨年のZSXやC12以降中価格U10000の多ドラハイブリッドモデルが実に半年以上発売されておりませんでした。それが今年後半は各社怒涛のラッシュです。その波に乗れとばかりにTrnの新商品、多ドラハイブリッドイヤホンはそれでも魅力的に見えます。

だって、昨年もKZ ZSXやCCA C12の陰に隠れたTrn V90の後継機、V90Sが5BA+1DDとしてパワーアップして登場した訳ですから。

 

※KZ ZAXやCCA C12の過去記事もよろしければご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

いつも通り前置きが長くなりましたが、期待の中価格帯多ドラハイブリッドモデル、Trn V90Sを入手しましたので、昨年の注目モデルで5BA+1DDモデルのCCA C12と7BA+1DDモデルのKZ ZAXとの違いを含めながら、レビューを纏めていきたいと思います。

 

Trn V90SはカスタムIEM風のデザインが採用されていて、KZ ZAXやCCA C12のオーソドックスなデザインとは異なります。シェル本体はオール金属製とZAXやC12のフェイスプレートとステムノズルが金属でシェル本体は樹脂製とは異なります。サイズ感はV90Sがフェイスプレートが大きいためにやや大きく見えますが、ほぼZAXやC12と同じです。肝心の耳への収まりはカスタムIEM風デザインにより良好で、ZAXやC12で問題ない方は苦労することは無いと思います。そしてオール金属製シェルが特にC12との音質傾向とどのような違いがあるのか気になります。

 

Trn V90Sのスペックは先述の通りCCA12とドライバ数が同じですが、その構成が異なります。搭載ドライバは低音域用のダイナミックドライバにVXと同様の10mm径のデュアルマグネティックダイナミックドライバを。BAはV90同様に30019シングル2基が高音域を担当しステムノズル部に配置。同じくV90で採用した50060デュアル(2BA)1基とシングル1基が中音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置しています。単純にV90の構成からダイナミックドライバをVX同様の新型デュアルマグネティックダイナミックドライバに変更し、中音域用のBA、50060を1基増やしたと云えます。

ZAXの搭載ドライバは低域用ドライバをCA16同様に7mmデュアルマグネティックを採用した新型ダイナミックドライバで、C12の10mmから小型化されています。BAは定評がある30095シングル1基が高音域を担当しCA16と異なりZSX同様にステムノズル部に配置。新開発50024デュアル(2BA)2基が中高音域を担当しこちらはCA16同様にダイナミックドライバに並列に配置。更にCA16と異なり中音域用に30019シングル(1BA)2基がダイナミックドライバに並列配置され、低音域を前述のDD1基が担います。

C12の片側5BA+1DDドライバ構成は低域用ドライバを10mmデュアルマグネティックドライバを採用しています。BAには定評がある30095シングル1基が高音域を担当しステムノズル部に配置。こちらも定評のある50060デュアル(2BA)2基が中高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置しており、中音域重視が窺えます。そのC12が高音域30095シングル1基に中音域50060デュアル(2BA)を2基とDD1基の構成で、V90Sの高音域30019シングル2基に中音域50060デュアル(2BA)1基と同シングル1基の計3基とDD1基の構成からはV90Sの方がBAの搭載数から高音域をより重視していると推察できます。

特にそれぞれの高音域に採用したBAが30019と30095という違いも見逃せません。

この辺りは実際に聴いてみない事には判りませんが、V90Sへの期待感が高まります。

 

次に、先述の通りKZ ZAXは片側8ドライバ、7BA+1DDモデルで搭載するBAの種類が増え、一部異なるとともに、更に搭載位置も工夫されています。ZAXではC12の様にステムノズル内に1基配置しています。V90Sが、高、中、低音域を2BA+3BA+1DDの3way方式。C12が高、中、低音域を1BA+4BA+1DDの3way方式としていたものをZAXでは1BA+4BA+2BA+1DDの高、中高、中、低音域の4way方式と更にスペック上理想的なドライバ構成です。

とはいえ、3wayや4wayとこれまで世の中に送り出された中価格多ドラハイブリッド中イヤホンのように各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングのポイントを活用できるかが重要となります。このチューニングポイント、経験則を活かしたチューニング次第で「当り」か「外れ」という評価に繋がってくると云えますね。

 

Trn V90Sの納期は流石の国内amazonのようにはいきません。AliExpressのセールに重なりながらも約2週間と従来同様の、いやむしろ早めと云えそうです。それでもまだAliExpressの中国本土からの発送は中国からの航空便減便による輸送への影響が大きく、AliExpressにてオーダーした場合はそれなりに時間が掛かる覚悟は必要です。加えて万が一の不良の際に返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くの少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

  

2. Trn V90S実機レビュー

それでは、早速Trn V90Sの実機レビューを以下、まとめていきます。

 

f:id:miineco106:20201115134115j:image
f:id:miineco106:20201115134119j:image

パッケージングはいつものTrnのシンプルなスリーブタイプで白を基調とした化粧箱です。


f:id:miineco106:20201115134143j:image
f:id:miineco106:20201115134139j:image
f:id:miineco106:20201115134147j:image

外箱のスリーブを外すと白地の内装の台座にイヤホンが収納されています。

イヤホンが収納された台座の下側にはケーブル等の付属品が入っています。

 

f:id:miineco106:20201115134213j:image
f:id:miineco106:20201115134206j:image
f:id:miineco106:20201115134210j:image

付属品はいつものTrnの低・中価格帯商品と同様のシリコンイヤーピースがS、M、Lの3種各1セットが付属します。その内、シリコンイヤピMサイズがイヤホン本体取付け済みで、他にはケーブルです。A5K-U10Kの中価格帯としては少々寂しい付属品ですが、個人的にこれまで同様本体にコスト全振りは嫌いではありません。


f:id:miineco106:20201115134252j:image
f:id:miineco106:20201115134313j:image
f:id:miineco106:20201115134317j:image
f:id:miineco106:20201115134257j:image
f:id:miineco106:20201115134309j:image
f:id:miineco106:20201115134319j:image
f:id:miineco106:20201115134254j:image
f:id:miineco106:20201115134300j:image
f:id:miineco106:20201115134305j:image

ビルドクオリティですが、Trn製品を購入した際に音よりも先ず中華イヤホンで心配されるような各所の仕上りを心配します。今年購入した製品でも何かしらやらかしますが、今回はアタリでした。綺麗に仕上げられていると思います。しかし、ネット上の評判ではやはり色々とあったようですね…。

カラーバリエーションは赤色と黒色の2種で、今回は赤色にしました。

 

f:id:miineco106:20201115134344j:image
f:id:miineco106:20201115134348j:image
f:id:miineco106:20201115134341j:image

付属ケーブルは最新のTrnに付属する茶色の編込みタイプで、4芯単結晶銅線(OCC)タイプが採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプでメーカーロゴがさりげなくあります。イヤホン側はKZ-Cタイプ(2ピン)、もちろんKZ極性(上がプラス)です。最近の中華イヤホンはKZ-Cタイプが多く採用されていますのでリケーブルの際には注意が必要です。私は気にせず2ピン仕様を使っています。

この付属ケーブルはシュア掛け用にチューブで癖付けがあり耳への装着性、使用感はそれほど悪くはありませんし、全体的に絡まりにくくしなやかなものとなります。また、中価格帯に付属するケーブルとして力不足の印象があるものの、そのまま使用できますし落ち着いた色合いの本体とケーブルとの一体感があり普段使いも可能ですね。

 

※画像左からCCA C12、Trn V90S、KZ ZAX
f:id:miineco106:20201115134412j:image
f:id:miineco106:20201115134421j:image
f:id:miineco106:20201115134437j:image
f:id:miineco106:20201115134424j:image
f:id:miineco106:20201115134418j:image
f:id:miineco106:20201115134431j:image
f:id:miineco106:20201115134414j:image
f:id:miineco106:20201115134427j:image
f:id:miineco106:20201115134434j:image
V90SはV90同様に丸みがありカスタムIEM風の造形で、C12やZAXの方がシェルの造形がシンプルで本体の厚みがあるため、コンパクトに見えます。まあ、実際にはやや小さい程度ですね。

V90SはV90の丸みのあったフェイスプレートとは異なりVXにのように平面的です。装着感はカスタムIEM風の造形が好影響を与えていますし、実際装着感は良好です。C12やZAXではステムノズルとフェイスプレートが金属でシェル本体が樹脂製ですが、オール金属製のため重量は比較的重めとなります。それでもV90Sのオール金属製シェルはそれらよりも重量感がありますが、耳への装着感は軽く、重量の影響はあまり感じません。そのため人を選ばずに使えそうです。尤も耳の小さな女性や子供を除き、殆どの方で不満を感じることはないのではと思います。

次にステムノズルはV90Sはやや短く細め。ZAXやC12が太く長く感じますが、中華イヤホンでは一般的なサイズです。そのため太さに影響するイヤーピースの圧迫感は感じません。ただし、ステムノズルの角度が一番寝ていて、人によってはイヤーピースの選択がシビアになってしまうかもしれません。(後述しますが実際結構苦労しました。)

また、これらにはステムノズル先端端面にメッシュフィルターが装備されていてシェル内部への異物混入が防げますので、長期の使用にも耐えることができますね。

そして、シェル本体の形状や付属ケーブルからは3機種ともにシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

最後にV90Sはステムノズルがやや細く短め。更にやや寝ているため耳へは付属のイヤーピースでも装着感は悪くないのですが、少々音が軽く抜け気味となったため、いつものAET07も試しましたが上手くいかず、ディープマウントやフォームタイプも試しました。そして最終的にSedna EarFit Mに交換しやや浅めに蓋をするように装着した形が一番バランスが良くしっくりきました。Sedna EarFit(shortではない)は軸が長めでありV90Sのステムノズルが短めの場合に丁度良くなります。

低~中価格帯では毎度付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じることが多くありますので手持ちのイヤピと交換しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

なお片側6ドライバ、5BA+1DDの性能を活かすために付属ケーブルからTrn T4、8芯OCC線へリケーブルしています。

 

f:id:miineco106:20201123145150j:image

 

 

3. Trn V90S音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

f:id:miineco106:20201123145159j:image

今回の再生環境はSONY NW-ZX507、直挿しアンバランス接続です。

前回同様に中価格帯はZX507を基準としてレビューを行います。もちろんShanling Q1やiPhone6sでも鳴らすことができましたが、中高音域の解像感や低音域の表現力で本来の性能を発揮できないと感じましたのでご容赦ください。

低価格帯のイヤホンの場合でその違いを比較しました。気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」や「FiiO M5とSHANLING M0を比較」をご覧ください。

 
miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはSedna EraFit Mサイズ、Trn T4ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「高音がシャキッとした高音中音域が華やかな音色のややドンシャリバランス。」でした。

箱だしではやや低音に緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音が締まり落ち着きました。

音場は普通からやや広め。曲によって広く感じます。

高音ははっきりとしていて煌びやかさ華やかさがあり響きが特徴的です。刺さるか刺さらないかのギリギリの強さが、曲によって尖りを感じる場合があります。

低音は量感は適度ですが、強さを感じます。キレや締まりは適度、ベースラインは適度です。

重低音は沈み込みの深さを感じ十分な強さがある。

中音は高音同様に華やかさがありますが、高音域程の強さはありません。

ボーカルはクリアでドライ気味ですが、自然な位置に感じます。

一言で云えば中高音寄りのドンシャリに近いバランス。

補足すると、高音域は一番主張があり低音域が相対的に控えめに感じます。それでも低音域はしっかりしていて高音や中音域よりも前に出るような主張ではないため、高音域が一歩前に感じられます。

もっと云えば、高音はシャリつくような華やかさで存在感を示し、伸びと響きのある音を感じられます。

中音は凹みを感じますが、華やかさがありボーカルのやや後ろの周りに位置し邪魔をしません。音数が多い曲ではボーカルに演奏の重なりをやや感じますが、それに埋もれることはなくクリアに聴こえます。そのボーカルはクリアで聴きやすく息遣いを感じられます。ただしバラードではドライ気味なため女性ボーカルとの相性を感じられる事があるかもしれません。

低音は適度な量感で強さがありますが、やや緩さを感じます。それでもTrnの低音は弾むような低音の傾向でそれをV90では感じましたが、かなり抑えられておりその反面量感は控えめに感じます。KZ系の低音には芯が感じられますが、このあたりは嗜好の違いとしてご参考程度に。

低音は高音に比べ前に出るような主張は控えめながらも曲を十分に下支えしており心地良さを感じますが、それ故に曲によっては中高音の華やかさが目立ち、物足りなく感じてしまうかもしれません。それでも低音は所謂量感でお茶を濁してはいませんので、一聴すると低音は控えめに感じ逆ピラミッドの印象となってしまいそうですが、量感で誤魔化そうとしない低音域は十分な強さがあり、華やかさのある高音と中音域で、やや高音強めのドンシャリに上手くまとめていると思います。

 
このバランスは以前レビューした5BA+1DDのCCA C12やKZ ZSXと比較した時に音の傾向はそのどちらでもなく、ZSXの音場の広さにC12の高音の強さと同社Trn VXの低音を改善した音。またはCCA C12の音場を広くして中音域を控えめにし、ボーカルを適度な位置にして低音を控えめにした音と云えそうです。

そして最新の7BA+1DDのCA16やZAXと比較した場合、異なるのは中低音域で特に暖かさを感じる音のCA16とは正反対の音づくりで、傾向が近いZAXにも音の広がりとシャープさには及ばず。加えて最も異なるのはその解像感です。一段下の印象です。

次に6BA+1DDの同社Trn VXと比較した場合、VXで感じた高音中音域の分離や解像感は特徴的で、一方では音に違和感を覚えましたが、V90Sではそれが無く、従来通りの多ドラハイブリッドの音であり良くまとまっていると思います。

また、一番の比較対象であるC12やZSXと最も異なるのは解像感で、中音域を厚くしたドライバ構成のC12やZSXでは中高音域の凹みを抑えられていますが、V90Sではその凹みを感じます。そのためボーカルは聴きやすいものの、よくあるドンシャリの中音域に留まった感があります。更に低音域では中高音の解像感を得るために量感を抑えた結果、高音域の強さが目立つ印象に。そういう意味ではやはり同社VXの改良型と云え、前作V90の後継機でありながらVXのフィードバックモデルと云えそうですね。

 

そのためC12よりもZSXの音が好きだけどもう少しだけ高音に鋭さと低音の主張が少ない音を探している方や兎に角多ドラで中高音寄りのバランスの音を求めている方には好評となるのではないでしょうか。

一方CCAの系譜でC10やCA16の様な大人しくも繊細さのある音が好きな方には違和感を感じてしまうかもしれません。

 

次に、ケーブルをT4からYYX4745へ交換。16芯銀メッキOFC線、2.5バランスです。

何故に?という事ですが、3.5mmアンバランス接続では少しパワー不足を感じたという、まあ思いつきです。

DAPには同じくZX507を使用しましたが、YYX4745の2.5バランスプラグに4.4変換を使用しています。

結果、これは正解でした。高音と低音の主張のバランスが良くなり、高音の主張が適度になり、低音は量感が増え解像感が増し、音の強弱が聴き分けられます。ボーカルを邪魔せずに演奏が一歩後ろその周りにいる。かなり好印象です。

尤も、ZX507はZX300からアンバランスが強化されたと云っても、やはりバランス接続の方が音が良いということも影響していると考えます。

さて、V90Sは再生環境を選ぶようです。もしもスマホ直挿しやエントリークラスDAP等のアンバランス接続で聴いていて高音が強すぎると感じた場合にはポータブルアンプを使用したり、ミドルクラスDAPのバランス接続にすることで、バランスの良い本来の音を楽しめそうですね。

 

まとめとして、Trn V90SはKZ系の音とは異なりKZの後追いではなく新しいTrn系の音を目指し試行錯誤している、そんな印象を受けました。その理由として昨年までの分かりやすいドンシャリとは異なる今年の音づくりを感じられるからです。

ですが、このV90Sは再生環境によってかなり印象が違う音になるため、これだけで満足する音ではないというのはやはりマニア向けと云えます。一般層にもKZ ZSTが売れたのはスマホで音楽を聴くのに1,000円のイヤホンが凄い!だったからですよね。

邪推かもしれませんが、Trnは国内外有名メーカーのハイエンドモデルの音に寄せた音を目指しているのかもしれませんね。個人的にはその完成にはまだまだ時間が掛かりそう、そんな気がしますし、完成したとしても10万円の中華イヤホンには手を出さないと思います。中華イヤホンには純粋にコスパを求めますし、それを楽しみたいので。

 

蛇足ですが、以前のレビューでも触れていますが単純にドライバ数を増やす足し算では未だ限界があります。残念ながらそれをBAオンリーの低~中価格帯複数ドライバ搭載モデルが証明しています。それでも次々と投入される中華の新モデルが我々を楽しませてくれており、今後も期待していきたいですね。

 

高音   V90S ≧ C12 ≧ ZAX (単純な強さの順)

中音   ZAX ≧ C12 > V90S

低音   C12 ≧ ZAX > V90S (単純な強さの順)

ボーカル C12 ≧ ZAX > V90S

音場   ZAX ≧ V90S ≧ C12

 

 

4. Trn V90Sの総評

さて、Trn V90Sは高音域をややフォーカスし高音と中音域に華やかさのある中高音寄りのドンシャリイヤホンとまとめました。

そして従来からの中華イヤホンファンにも安心のドンシャリはライバル機とは異なる傾向を楽しめる一本として楽しめる一本となっています。

もっと云えばKZやCCAとのライバルとして不足の無い商品でありますが、既にZAXやCA16が発売されており、今更感があります。去年の暮れ又は今年の初めに発売していれば、ZSXやC12のライバル機としてお勧めできる存在になったのではと個人的に思う次第です。

 

最後に、今回はAliExpressで先月発売された中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2020年11月23日)はAliExpressやamazon(中国発送)で発売されており、一足先にAliExpressで4,000円台で購入可能。ブラックフライデーでは2,000円で入手可能です(これは本当にその値段でセールするかわかりませんけど)。一方amazonではまだprime扱いはなく6,000円前後を想定しています。そのためAliExpressの方が安価に入手できますが、その入手性には現在特に難があります。とはいえこれまでの低価格中華イヤホンの中でも安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、少しでも安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。 

 

V90S
以下、ケーブルT4、イヤピSedna EarFit M使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★☆
分離★★★★
お勧め度★★★★★ (低音好き★4)
※☆0.5、★1.0

 

C12
以下、ケーブルYYX4761、イヤピAET07 M使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★☆
分離★★★★
お勧め度★★★★★  
※☆0.5、★1.0

 

ZAX
以下、ケーブルT4、イヤピAET07 M使用、DAP ZX507アンバランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★
お勧め度★★★★★ 
※☆0.5、★1.0 

 

V90S ※参考
以下、ケーブルYYX4745、イヤピSedna EarFit M使用、DAP ZX507バランス接続
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ 
※☆0.5、★1.0

 

あとがきとして、今回はいつもの中価格中華多ドラハイブリッドイヤホンの新商品のレビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ