みぃねこの備忘録

いろいろなこと、主に趣味の備忘録として活用。アフィリエイトやってません。お気軽にリンクからどうぞ。

KZ ZAR レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビューとして、中価格A10000帯で発売された7BA+1DDハイブリッドドライバモデルのKZ ZARについてレビューをまとめたいと思います。

AliExpressで取り扱いがあります。

 

ja.aliexpress.com

 

国内amazonでも取り扱いがあります。

 

 

 

f:id:miineco106:20230504234835j:image

 

 

 

 

1. KZ ZARについて 

KZ ZARは中価格A10000-U20000帯中華イヤホンの多ドラハイブリッドモデルとして今年早々に発売されました。

そりゃあ買うよねと、発売と同時に直ぐに9Kでオーダーしたものの発送されずにキャンセル。KZ系プロモを名乗るセラーだったんですけどね。気を取り直し、今年の328セールで別のセラーで7Kでオーダーも同じく発送されずにキャンセル。これもKZ系国際の名前のセラーです。三度目の正直とするべく春のセールでも7Kでオーダーしましたが、発送されずにキャンセル。これは現在はファンリという名前に変わっています。Aliは無在庫販売が当たり前なのでしょうけど調達力の無いセラーは淘汰されて欲しいものです。二度あることは三度ある。…はぁ。

と、まあ、こんな感じで縁が無かったと諦めようと思っていました。ずっと追ってきたKZの多ドラ機を諦めきれずにずにいた或る日、AliExpress内を巡回してところ「15日配送」の商品を発見。少々高めの8Kというプライスでしたが、15日配送の表記を信じてオーダー。そしてやっと届きました。3Cクラブ、貴方の15日配送は信用するよ、と。

でも、オチがあって、この記事を書いている時点でKZ系国際にオーダーした商品がまた発送されない状況なんですよね。KZ系○○セラーはOfficialを含め信じてはいけないという事を覚えました。

閑話休題

近年KZが色々とやらかしたこともあり嘗てのライバルTrnの躍進が著しい昨今、そのKZが今年の初めにZAS以来の多ドラハイブリッド旗艦モデルとして片側8ドライバ、7BA+1DDハイブリッドモデル、ZARを発売しました。最近は数年前までのドライバを沢山積むのが正義というスペック競争時代は終焉し、搭載ドライバ数は頭打ち。セールス上も「片側○○ドライバ(従来より増やしました!)」では販売が伸びなくなっています。ユーザーの耳が肥えた事もあると思いますが、それよりもあまりにも短いスパンで新モデルが発売される割に音は大して変わらんじゃんという想いが、食傷気味となって飽きに繋がったのだろうと思います。

昨年は平面磁気駆動ドライバをシングルドライバ構成で搭載したPR1が従来のKZの多ドラ機と遜色の無い音を実現しており、そもそも音質を追求すればそれ程ドライバを積む必要がない事を自分たちで証明している皮肉な結果です。そして、昨今のトレンドはハーマンターゲット特性近似の普通に高音質のモデルが多数登場しています。一芸に秀でたモデルを低価格帯で発売するならば納得できなくもない商品も、今やA10000帯の販売価格となったKZの多ドラ機が見向きもされないのは仕方が無い事なのかもしれません。その癖に届かないんじゃあ誰が買うかよってなるのは最早自然の摂理と云えます。

とはいえ、厳しい話から始まった今回、個人的にKZの1年半振りの多ドラハイブリッドモデルには期待していますし楽しみです。

 

それではKZ ZARのスペックを詳しく見ていきます。先述の通り片側8ドライバの多ドラハイブリッドモデルは7つのバランスドアーマチュアドライバ(BA)と、一つのダイナミックドライバ(DD)という異なる二種のドライバで構成されています。これまでのU10000帯多ドラハイブリッドモデルの中では上位ですが、ZARはA10000帯に格上げされており、発売当時のTrn VX Proが片側9ドライバ、8BA+1DDハイブリッドドライバモデルでもU10000帯モデルだったこと。CCA HM20が片側8ドライバ、7BA+1DDハイブリッドドライバモデルでU10000帯でしたので、正直割高感がありますしスペックも見劣りします。同じKZ ZASやZAXが、片側8ドライバ、7BA+1DDハイブリッドドライバモデルでU10000帯でその後継機ということ。昨今の原材料高騰を考慮してもやはり割高感を拭えません。

ZARの搭載ドライバですが、高音域用BAドライバには30019sシングルを一基採用。中高音域用BAドライバには50024sデュアル(2BA) 三基を採用し、全てのBAはDDと並列にシェル内部に配置しています。次に低音域用のダイナミックドライバには新世代ダイナミックドライバを初採用。従来のKZ系定番の10mm径二重磁気ダイナミックドライバとは異なります。

比較対象のHM20の搭載ドライバですが、高音域用BAドライバには30019sシングルを一基採用。中高音域用BAドライバには50024sデュアル(2BA) 三基を採用し、全てのBAはDDと並列にシェル内部に配置。このBAの構成と配置はZARも同様です。しかし、低音域用のダイナミックドライバには第三世代「XUN-7」ドライバを採用し従来のKZ系定番の10mm径二重磁気ダイナミックドライバとは異なる7mm径二重磁気ダイナミックドライバはダブルキャビティ採用と5ミクロンの超薄膜ダイヤフラム(振動膜)という、新世代ダイナミックドライバとなります。

もう一つの比較対象のKZ ZASのスペックは、こちらも片側8ドライバ、7BA+1DDとドライバ構成数は同じ。搭載ドライバは中低音域用のダイナミックドライバに10mm径二重磁気ダイナミックドライバを。BAは30019シングルの一基が高音域を担当しダイナミックドライバに並列に配置。50024sデュアル(2BA)三基が中高音域を担当し、こちらもダイナミックドライバに並列に配置。ZARとZASの違いは高音域用BAと中低音域用DDが新型に変わっています。

ZARとZASではDD傍に配置したBAを内部の音響キャビティ構造により正確な製造を実現しています。一方、HM20では従来のKZ系と異なり各BAにつながる音導管を採用しています。ZARとZASではKZ ASシリーズの音導管の役割とドライバの位置決めを兼用する音導カバーをシェル内部に配置し音響キャビティ構造を採用という違いがあります。一般的な音導管を採用したHM20に対し、内部音響キャビティ構造のZARとZASですが、どれも高音域1BAと中音域デュアル3BA(6BA)と低音域1DDの3way方式となっています。

 

前述の解説では分かり易さを考慮し高音、中音、低音域の3Way方式と説明していますが、実際には高音域用BAは超高音~高音域を担当し、中音域用BAは高音域~中高音域を担当しており、純粋な中音域とは言い難く、中音域はほぼDDがカバーし、それが中音~低音域の広範囲を担っています。その為、DDの性能が音質の絶対性能を決めていると云っても過言ではありません。出音をどんな音色にするかはチューニング次第です。そのチューニングを中華多ドライヤホンではBA等のドライバの足し算により、解像感や分離といった音質の評価に拘る部分を補う意図がそこにあります。しかし、残念ながらメインのドライバを補う目的の補助ドライバがBAだとすれば、やはり多ドラハイブリッドドライバモデルの音の大枠を決めているのはDDです。このDDの質を上げるとコストが上がる。それを選択したくないから補助ドライバを入れて多ドラ化する。結果、出音が不自然になる。音に一体感を持たせ不自然な音にしないために必要最低限の補助ドライバだけにする。又はコストを一点集中しシングルダイナミックドライバにするという、現在の流れになっているのは本末転倒ではないかと個人的に思っています。音質の絶対評価は「ドライバの質=コスト」という現実には抗えない「価格なりの音」という評価が存在する理由と考察しています。

 

次にZARのシェル本体は樹脂と金属のマテリアルハイブリッド構造が採用されています。シェル本体は樹脂製で、樹脂製シェル本体に金属製ステムノズルとフェイスプレートを接合した金属と樹脂という異なる素材のハイブリッド構造となります。一般的にシェルやステムノズルの材質により音質への影響があり、金属製シェルでは高音域の響き、反響が樹脂に比べて大きくなり、響きの美しさは金属が良好です。一方樹脂製では金属音等の高周波の音が吸収されてしまい、やや強めに鳴らす事でバランスをとる場合もあります。そのため、樹脂製でも金属製でも良い事だけではなく、メリット/デメリットの関係があり、ZARでは音響キャビティ構造を採用することで意図した音を安定して耳に届ける事ができるようにしています。

最後に付属ケーブルです。高品質銀メッキ銅線の8芯編込みケーブルです。ZASに付属していたものと同一で中価格帯中華イヤホンとして過不足のないケーブルです。更に、8芯編込みケーブルはしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、ZARではバランス接続を試したい方以外はリケーブルする必要を感じません。

 

以上の通り、スペックからはZARはZASの正統な後継機であり、KZ系ブランド、CCA HM20がZASの系譜と云えるモデルであることを窺わせます。前作のZASは従来のKZの中でも音質の良いモデルでした。HM20もKZ系ブランドのモデルの中でも音質が良く、好評でしたが、その理由の一つとして、それまでKZでは頑なにステムノズル内に配置したBAを止め、全てシェル内部に配置し音響キャビティ構造化されたことを挙げます。もちろんステムノズル内に配置することがダメな訳ではなく、従来のKZの様に無調整で配置すると耳障りな高音になるということが問題だったと考察しています。そして、ドライバ構成を比較すればHM20は新型ダイナミックドライバと音導管の採用と着実に進化しています。今回のZARが、評判の良かったZASやHM20と出音にどのような違いを魅せてくれるのか、楽しみですね。

 

※宜しければ過去のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

KZ ZARの納期としてAliExpressでオーダーした場合、中国本土からの発送という事もあり、国内amazonのprime扱いのようにはいきませんが、オーダーから約一週間で届きました。最近はAliExpressでの購入でも従来の様に回復した印象です。特に「○○日配送」マークのある商品の発送は信頼できますし、平時のAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月以上。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。最近はHiFiGoの利用も多いのですが、こちらは何故かAliExpressよりも到着が早い事が多いのがその理由です。

どちらも海外ネットショッピングであり心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、私は活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での取扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. KZ ZAR実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

f:id:miineco106:20230504235019j:image

パッケージングはKZの豪華版の化粧箱です。表にはKZのロゴのみというシンプルなもの。

 

f:id:miineco106:20230504235040j:image
f:id:miineco106:20230504235037j:image

蓋を開けると黒地の内装にイヤホンが収められ、その下部に商品名の刻印された金属プレートが収められています。

その内装を開けると付属品が箱の底に収められています。

 

f:id:miineco106:20230504235053j:image

付属品は最近のKZに付属する溝有白色シリコンイヤーピースタイプではなく、従来の溝有黒色シリコンタイプのS、M、Lの3種1セット。他にはケーブルです。中価格A10,000帯としては寂しいもの。イヤホンとして使うための最低限の付属品です。

このあたりはイヤピ交換とリケーブル前提としたKZの割り切りなのかもしれませんが、A10,000でこれは酷いという印象を持ちます。

次に本体を見ていきます。

 

f:id:miineco106:20230504235132j:image
f:id:miineco106:20230504235137j:image
f:id:miineco106:20230504235134j:image
f:id:miineco106:20230504235129j:image
f:id:miineco106:20230504235146j:image
f:id:miineco106:20230504235151j:image
f:id:miineco106:20230504235140j:image
f:id:miineco106:20230504235143j:image
f:id:miineco106:20230504235149j:image
ビルドクオリティですが、中華イヤホンの中価格A10,000帯として綺麗な仕上りです。樹脂シェルと金属フェイスプレートの合わせ面等も綺麗に揃っています。

カラーバリエーションは黒色のみ。

 

f:id:miineco106:20230505000503j:image

そして注目するのはKZ系ではASシリーズで音導管に代わる音響キャビティ構造を採用していましたが、このZARではZAS同様に音響キャビティ構造を採用しています。DDから各BAに繋がる流路が確認できます。

 

続いて付属ケーブルを見てみます。

 

f:id:miineco106:20230504235154j:image

付属ケーブルはZASに付属するものと同一の8芯銀メッキ銅線を編込み線としたもの。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はKZ-C、2ピン仕様。極性はもちろんKZ極性の上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜にやや引っ掛かりがありますが、タッチノイズは殆ど感じませんし、肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。

従来のKZ系の付属ケーブルよりもグレードの高いものが採用されています。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

f:id:miineco106:20230504235235j:image

 

続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からKZ ZAS、KZ ZAR、CCA HM20

f:id:miineco106:20230504235317j:image
f:id:miineco106:20230504235314j:image
f:id:miineco106:20230504235320j:image
f:id:miineco106:20230504235307j:image
f:id:miineco106:20230504235325j:image
f:id:miineco106:20230504235323j:image
f:id:miineco106:20230504235312j:image
f:id:miineco106:20230504235328j:image
f:id:miineco106:20230504235309j:image

ZARとZAS、HM20との外観の比較として、サイズ感はHM20がコンパクトです。ZARはZASと同じシェルと採用しておりフェイスプレート(FP)のデザイン違いとステムノズルがZARの方が太くなっています。ZARもZASも比較的大柄のシェルとなっているため、HM20が一般的なものと比較しても小柄となります。

シェルの材質は先述の通り、HM20のみステムノズル一体型の樹脂シェル本体に対し、ZARとZASもシェル本体は樹脂製ですがステムノズルが金属製です。また、三機種共にFPは金属製となり、マテリアルハイブリッド仕様となります。

重量やはりZARとZASの方が比較的重量を感じますが、HM20もそれほど軽量とは云えません。三機種共に耳への装着時には良好な装着感によって極端に重さを感じる事はないと思います。

ステムノズルの太さと長さ及び角度はHM20がやや長めですが一般的な長さでZARとZASが短めです。太さはHM20が一般的な太さでやや太め。ZARとZASは細めでZASが一番細い。角度は三機種共に同じでやや起きています。ステムノズル部には全てにメッシュフィルターがありHM20が一番目が細かい繊維フィルター。ZARも目の細かいフィルターという感じ。ZASも細かく細目ですが、それには及びません。ZARとHM20は音質への影響のあるタイプと云えますが、ZASは多少音質に影響がありそうですが異物混入による故障を防ぐタイプと云えそうです。

装着方法は三機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、先述の通りZARはステムノズルが比較的細めのため、イヤーピースは装着感への影響を考慮し普段通りか、または傘の形状を考慮して社外品を選択する等、耳への装着感を重視し選択してください。

付属品のイヤーピースよりは普段使っているメーカーの物へ交換推奨です。

最後に付属イヤーピースを見てみます。


f:id:miineco106:20230504235334j:image
f:id:miineco106:20230504235331j:image

イヤーピースは従来のKZ系に付属する溝有黒色シリコンイヤーピースタイプが付属します。個人的にこのKZの溝有黒色イヤーピースでは傘がカサつきを感じ、堅めなこともありフィット感がイマイチです。最近のKZ系に付属する溝有白色イヤーピースでは適度なコシと傘表面にしっとり感があり遮音性も十分に感じます。A10000帯なのでもう少し良いものを付属してくれても良いと思います。

音質的には従来の溝有黒色イヤピは低音を厚くしてくれるタイプ。やはり、それよりも白色タイプの方が中高音がクリアに聴こえるタイプなので、未だマシだと思います。

この付属溝有黒色イヤピで私は耳が痛くなるため、手持ちのKBEAR 07 M-を耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

中華イヤホンでは付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じる事が多くあります。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

f:id:miineco106:20230504235347j:image

 

 

3. KZ ZAR音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

f:id:miineco106:20230504235406j:image

昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

 

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはKBEAR 07 M-サイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「明るく派手目に鳴り、高音と低音がしっかり鳴る。低音は量感のある鳴り方」です。また音量がいつもより大きく感じたので、普段より音量を2下げました。

箱出しではやや高音域に強調感と低音にボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は高音は落ち着き低音はほど良く締まり整い全体のバランスが良くなりました。

 

音場

普通からやや広め。奥行は感じ難く、横方向に広さがあります。やや平面的に感じられ立体感は薄めの印象です。

 

高音域

華やかさのある鳴り方で煌びやかさもあり響きもありますが、伸びやかさはそこまで感じられません。やや強調感を感じるものの嫌な感じはなく、存在感がある鳴り方。尖りは感じず刺さりは抑えられています。解像感は高めですが、鮮明な描写とは云えず、強調されている感じを受けるため、自然な感じではありません。超高音域の伸びも強調された他の高音にかき消されそれほど程感じません。

 

中音域

横に広さを感じるものの縦の奥行も感じられます。空間が特に広いとまでは感じませんが、華やかさのある鳴り方も整理されており嫌な感じはありません。奥行を感じ難いものの音数が多くなっても音が重なり団子感を感じ難く、音のゴチャつきは抑えられています。そのため解像感はそこまで高くはありませんが、悪いとも言えない感じ。どちらかと云えばやや良好という印象です。ボーカルはクリアでやや近い位置から聴かせてくれ、僅かにドライ傾向ですが不自然さを感じるような声色ではありません。

 

低音域

量感は十分で響きや広がりも感じらる音。低く広がり響く様な低音ではありませんが、豊かな低音と云えます。悪く云えばやや緩い低音。ただ大きく量感のある鳴り方ではなく、やや強調感のある音は意外と音の強弱や輪郭を正確に再現してくれる解像感を持っています。ベースラインは追いやすく、それでも中音をマスクする様な前面に出るような強さではありません。重低音は沈み込みは深さがあり、十分な強さがあります。

 

出音のバランス

一言で云えば高音域にやや強調感のある僅かに中高音寄りのドンシャリ。従来のKZテイストを残しつつ出音はバランスが良く普通に良い音。

 

高音は明るく煌びやかで響きのある音は華やかさがありますが、ただ強く鋭く尖った音が前面に出てくる音ではなく、ちょっと強めに鳴る音。多少強調されたくらいが心地良い高音域を演出してくれます。超高音までの伸びはそれ程感じませんが、高音域全体で不自然な強さで鳴る訳ではないので不快に感じる刺さりはありません。他の音域を押しのけて鳴るような無粋はなく適度な強調感は「丁度良い」と感じます。過剰な演出感の無い高音は全体のバランスでみれば丁度良い、適度な高音です。

中音は凹みを感じ難く、空間は横の広さを感じる一方で奥行は感じ難くやや平面的な印象。音が中心に集まる重なりは抑えられていて分離感は良好ですが、奥行きを感じ難くボーカルの周りにやや近い位置に重なる楽器の音が音数が多い楽曲ではごちゃつきを感じます。一方で音数の少ない楽曲では整理され見通しの良さを感じられます。解像感や分離が悪くないのに何故かごちゃごちゃする音は相性が出やすいのかもしれません。

ボーカルはやや近い位置からクリアで聴きやすい。高音や低音に埋もれる事はありませんが、声色は僅かにドライ寄りです。それでも息遣いやコーラスが聴き取りやすく明るい声を聴かせてくれます。一方で女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声も感じられます。

低音は量感は十分で全体のバランスで見ればやや多めの量感。高音中音をマスクする様な印象はありません。広がりや響きを感じられますが、低く広がるような音ではありません。悪く云えば緩く広がる音。一方で強さがありますので雰囲気の良い印象。アップテンポのリズミカルな曲との相性はそこまで良くありませんが、音の強さ、強弱を感じながらノリの良い曲との相性は良いと思います。バラードなどでは低音のゆったりとした広がりは感じ易く、雰囲気良く聴く事ができます。HM20のXUN-7ダイナミックドライバとの違いが感じられます。

重低音は沈み込みは深さがあり、十分な強さで広がりはそこそこです。

 

ここで考察を一つ。

ZARのDDは同社のZS10 pro XのDDと同じかと思いましたが、違うようです。ZS10 Pro Xも10mm径のダイヤフラムを変更した二重磁気のタイプではありませんでした。それはどちらかと云えばタイトに鳴るタイプです。ZARではマグネットのギャップを改良しているようなので、それの改良型がZARに採用されていると推察します。ZARではZS10 pro XのDDよりも低音を聴かせてくれています。

 

さて、ここからは他機種との比較です。先ずZASとの比較します。

ZASは立体感のある鳴り方が特徴です。ZARでは立体感は感じ難くくどちらかと云えば平面的な印象です。低音の質感はZARの方が中低音域の厚みがあり雰囲気が良い印象です。ZASも重低音域の力強さはありますが、中低音というか低音域の上の方のベースラインは薄めですので、低音域が強い印象は持ちません。高音は強調感があるZARに対し自然な強さのZASという印象ですが、伸びはZASの方が良い印象です。その分ZASの方が尖りを感じる事があります。ZARはそういう意味でも角が丸く解像感はZASの方にやや分があります。中音域はZASの方が見通しが良くクリアさで上回るものの、ZARの厚みのある鳴り方の方が好みの方もいると思います。ZASもZARも同じドンシャリではありますが、出音の印象が異なります。正直嗜好による違いなので、何方が上という事ではありませんが、個人的にはZASの方が好きです。

次にHM20との比較です。一聴して同傾向の音がしますが、やはりZARの方に低音域の力強さと厚みに分があります。HM20の強さと厚みが丁度良い方にはZARは強すぎると感じてしまうでしょう。高音域と中音域はほぼ同じ印象です。ボーカルがZARの方がやや近く感じられますので、この辺りも好みの違いとなります。

最後に中音域の厚みは同社のAS16 Proの中音域が同傾向と云えそうです。その二つで云えばBAの低音とDDの低音の違いがあり、低音域の質感はDDを搭載するZARの方が個人的に好みですが、ZARとZASとAS16 Proの三本を抑えておいて、余裕があればZS10 Pro Xを揃えておけばKZ系の複数BA機と多ドラハイブリッドモデルを堪能できると思います。

ZARは音楽を楽しく聴く事ができますし、中価格帯のリスニングイヤホンの中で音の完成度は高いので、KZから選ぶなら音質を疎かにしていないものを選びたいところです。

 

※以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとKZ ZARは同社の多ドラハイブリッドドライバ旗艦モデルとして、1年半ぶりの新製品に新型DDを採用し高音域のBA変更をする等、前作ZASをベースにKZ系他モデルからフィードバックを得て確実に音質をグレードアップさせた商品と云えそうです。

KZ系ブランドの中でもトップクラスの音質は極端な強ドンシャリモデルではなく適度なドンシャリサウンドバランスは普通に良い音を聴かせてくれます。

一方で、好みによりZASのバランスやHM20のバランスの方が丁度良いと感じられる方もいらっしゃると思いますし、どれの方が高音質とは一概に言い切れません。嗜好によってZARのようなリスニング用途としての出音のバランスの良い、丁度良いドンシャリよりも、高音域の刺激的な強さや低音のドンの量が多いバランスが好きな方にはもの足りなさを感じ評価が分かれてしまうかもしれません。

なお、音は確実に進化したZARはその販売価格がネックです。中華価格A10000帯となったKZ ZARにその価値を見出せるのか?が、今後のKZの課題ではないでしょうか。

 

高音   HM20 ≧ ZAR ≧ ZAS 

中音   ZAS ≧ ZAR ≧ HM20

低音   ZAR ≧ ZAS ≧ HM20

ボーカル ZAS ≧ ZAR ≧ HM20

※出音や音色の参考程度に

 

 

4. KZ ZARの総評

KZ ZARは同社の多ドラハイブリッドドライバ旗艦モデルとして一年半振りに登場しました。前作ZASをベースにKZ系CCA HM20等の良いとこどりしたドライバ構成は、新型DDを採用する等、真面目に作った様子が窺えます。その音質は前作ZASをブラッシュアップしCCA HM20を凌ぐKZ史上の最高作と云えそうです。KZのお家芸ドンシャリ」を下品にならないように上手くまとめたバランスの良い出音は、普通に良い音です。リスニングイヤホンとしてA10K帯の中でも遜色の無いレベルの高い音という印象です。一方でKZ系に求める音は「強ドンシャリ」という方々には評価が分かれるかもしれません。

とはいえ現在はAliExpressで9,000円前後、発売当時は10,000円超のプライス。国内amazonでは13,000円と正直高い。A10Kの商品なのに付属品がショボかったりするパッケージングにその価値があるかどうかは疑問しかありません。KZにはTrnの様に実直にモノづくりに向き合ってほしいと個人的に思う次第です。

 

最後に、今回は中価格帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年5月6日)は国内amazonやAliExpress等で発売されておりますが、昨今の円安のため、国内amazonとの価格差がそれ程なく、国内amazonでの購入がお勧めです。AliExpressやHiFiGoでは本国発送のため、リスクが有り少々難があると云えます。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中価格中華イヤホンに挑戦してみようと検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内amazonの取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressやHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

そしてなによりも購入するセラーにはくれぐれもご注意くださいませ。

 

ZAR

以下、付属ケーブル、イヤピ KBEAR 07 M-DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

HM20

以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

ZAS
以下、付属ケーブル、イヤピKBEAR 07 M-、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  
※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ