こんにちは。
今回はいつもの1BA+1DD中華イヤホンレビュー編、番外編として先日のKinboofi KBF MX2やTIN HIFI T3同様に中価格帯で発売されたSIMGOT EM2についてレビューをまとめたいと思います。
今回はSIMGOT JAPAN(@SIMGOT_JAPAN)様の巡回試聴の企画に参加させていただき発売前に試聴機をお借りしました。
国内amazonでも取り扱いがあり予約を開始しています。(2019年5月18日現在)
発売は5/22を予定しているそうです。
SIMGOT EM2は同社が久しぶりに日本で正規販売するモデルで過去にはEN700 Proが記憶に新しいのではないでしょうか。このEN700 Pro発売後しばらくの間日本での正規販売は行われず、その音質の評価の高さから人気機種となり国内正規品を購入できなかった方は直接中国からAliExpress等で購入するしかなく、或いは出物の中古を狙うなど入手性に難がありました。
そして暫しの沈黙を破り満を持して日本での正規販売を再開するにあたり新製品のEM2を引っ提げて登場するという演出も往年の(失礼)ポタオデファンの中で期待に満ちている訳ですね。
このEM2は以前レビューした中価格帯のTIN HIFI T3やKinboofi KBF MX2と同様の1BA+1DDのドライバ構成です。特にKBF MX2はEM2同様にKnowlesのBAを採用しているとのことで期待が膨らみます。ただしEM2のBAはKnowlesのフルレンジらしくDDとカバーする音域がどのように異なっているのかその役割分担に興味がありますし聴いてみたかったんですよね。
そんな訳で今回SIMGOT JAPANの巡回試聴の企画に参加することで国内発売前のモデルを試聴できたことを光栄に思いますしこの場を借りてお礼を申し上げます。
さてEM2ですが先述の通り中価格帯の手持ちで直接バッティングするのはKBF MX2となりますが価格帯は少し下のTIN HIFI T3も比較対象として相応と考えています。特にKBF MX2とは価格帯がA10,000となるため直接の競合相手と云えます。そのため今回はA10KのMX2やT3との音質傾向にどのような違いがあるのか気になるところですね。
EM2の納期としては国内amazonでマーケットプレイス扱いではありますが国内amazon倉庫からの発送ということもありプライム会員であればほぼ翌日には手元に届きますし、何よりamazonの手厚い返品保証制度によりユーザーファーストが保たれているのは心強いですよね。尤もSIMGOT社の製品ではそのような心配も稀有となりそうですが(笑)。
EM2のスペックはA10Kの中価格帯中華イヤホンでは珍しい1BA+1DDのハイブリッドです。それもその筈、昨年夏頃まではA10K以上のモデルでは3ドライバ以上の多ドラハイブリッドや複数BAモデルが主流でありそもそも少し安価なモデルでもA15K以上が殆どでした。
それが昨年秋からA10Kの。もっと云えばU15Kで評価の高い多ドラハイブリッドモデルを各社が販売し中心となっています(4BA+2DDとかね)。寧ろこの価格帯では複数BAモデルの限界なのか新製品を見かけなくなりましたね。
EM2はそんな中で1BA+1DDとドライバ数では見劣りするモデルとなってしまいますが、それを敢えて投入する訳ですからメーカーの自信が窺えますし実際ドライバ数よりもチューニングが肝要ということは周知の事実でもありますので、、。
2ドライバハイブリッドの場合、一般的にはその構成からBAが中高音域を、DDに中低音域を主に担当させ3ドライバ以上の構成よりも中音域が薄くなる傾向がありどの音域を重視するかによって音質に影響がでやすく2ドライバが不利となりますが、3ドライバ以上の構成なら中音域専用にドライバを一つ担当させることで補うことが可能となります。しかし先述の通りEM2はKnowlesのフルレンジBAを採用しDDとのクロスオーバーの谷を感じさせないようにすることでその弱点をつぶしてきました。
これは比較的性能が高く高価なKnowlesのBAによって安定した高音中音低音域のつながりを得るために必要なコストだったのかもしれませんね。
そしてこのチューニング次第でEM2が「当り」か「外れ」という評価に繋がってくるといえますが、BAにKnowlesを採用する構成はMX2やT3も同様ですので、これは否が応でも期待したくなりますよね。
それでは、早速SIMGOT EM2のレビューを以下、まとめていきます。
※画像のバーコード部は白塗りしています
パッケージングは黒箱を基調としたシックな化粧箱です。
表にはイヤホンイラストがプリントされ日本で正規販売するならコレはマストなHi-ResマークとさりげないKnowlesの文字が。
裏にはスペック等が記載されています。
内箱を取り出すと表面にシボ加工された黒を基調とする高級感漂う箱にロゴとEMシリーズの文字が。到底イヤホンの箱とは想像がつかない雰囲気があります。
内箱の蓋を開けると内装がこれまた黒を基調としイヤホンとイヤホンケースが収納されています。これの何がすごいって蓋の内側にも内装が貼ってありちゃんと保護しているところです。中価格帯でも中々無いですよ、これ。
真っ先に飛び込んでくるのがシェルの綺麗さですが、なかなかどうしてイヤホンケースの存在感もかなりのものです。
イヤホンを固定していた内装を取りだすとケーブルとマニュアル、シュア掛け解説、オーナー登録カードがあります。
イヤーピースはイヤホンケースの中に収納されています。
このイヤホンケース、、レザーですよ。ロゴ入りで。PUじゃないです。コストかかっていますしレザーって使い込むことで味が出るというか持主に馴染むところがあって所有欲が満たされるんですよね。(ウォレットは革を使っています)
開封しながら既に格の違いを見せつけられた形になりましたが、これイヤホンの箱だよね?と疑うほどの一見してイヤホンの箱とは思いつかないようなお洒落な化粧箱です。この辺りは流石SIMGOT、低価格帯とは違い所有欲を満たしてくれますね。
付属品はイヤーピースがシリコンS、M、Lの3種各2セット。開口部が大きめと小さめのタイプがあり、開口部大きめが中高音寄りに。小さめが低音寄りにできるようです。他にケーブル、ケーブル取付済みのケーブルバンド、レザーケースです。化粧箱や付属品も使用を想定し意図したものを付属させるなど豪華でコストかけすぎかなと受け取れますが、SIMGOT社の音質へのこだわりとユーザーファーストを感じられ好意的に受け取れます。中価格帯ともなればやはり付属品を豪華に充実させた方が購買層に訴えかけやすいというマーケティングの結果のような気もします。
ビルドクオリティですが、このEM2は非常に綺麗な仕上りで特に特徴的なフェイスプレートは金属と樹脂の複合体で加工技術の高さを感じます。どちらかのサイズが少しでも違えば隙間ができたり嵌らなかったりと製造現場は結構苦労するものですが、敢えてこの形にすることで求める音質に妥協しない姿には感服します。正直日本ならだれでも簡単に組み立てられるような造形を重視し妥協をしてしまう価格帯でもありますので(日本の製造業の強さでもある)。
閑話休題。
フェイスプレートのデザインは特徴的ではありますが全体のシェルの造形を見ればいたってシンプルな装着感の良さそうなデザインです。こういうところの遊び心は個人的にツボでございます。そして現物は中国製を感じさせない丁寧な造りで品質にもコストをかけているんだなと実感しますし流石の中価格帯です。安心して購入できるのではと思います。
カラーバリエーションは5色展開で薄紫、ピンク、薄緑、透明クリア、黒クリアです。今回試聴機でお借りしたのは薄緑となっています。
付属ケーブルは4芯の細いタイプとなりますが上質な線材を使用しているようで採用された3.5mmプラグや2ピンコネクタ、スライダー等、コストがかかっていることが分かります。低価格帯のリケーブル前提とは違いますし付属品で十分満足できますよというメーカーの自信が伝わりますよね。凡そ中価格帯でも付属ケーブルはコストカットの対象になりやすく最低限のものが付属していたりしますがEM2ではここにもコストを掛けていることが分かります。ただし2ピンコネクタがカバーで覆われて且つ凹凸による嵌め合いの特殊形状のためリケーブルの際には少し注意が必要ですね。
また2ピンコネクタ付近にはシュア掛け用のチューブ加工がされているため耳への装着性は個人差があるかもしれません。実際みぃねこはこのチューブ加工が耳に合わず装着したイヤホンが浮いてきて外れるという少し残念な結果となっていますが、多くの方は使用感も悪くないのではないでしょうか。そして全体的に絡まりにくくしなやかなものとなります。これは中価格帯でも交換前提の質感の悪いケーブルが付属する他の商品とは異なりそのまま使用できますし本体色のクリアカラーとも相まって質感が高く嬉しいですね。
シェルの大きさはMX2やT3と比較した場合にMX2よりも小さく、T3より大きくなります。
シェルの重量は樹脂がベースとなりフェイスプレートに一部金属が使用されているため比較的重量はありますがMX2やT3と比較してもやや軽いくらいです。ただし先述の通り付属ケーブルのシュア掛けチューブ加工により装着感今一つで付属イヤピでその装着感や音質的にも十分のはずが借り物にリケーブルのリスクは取りたくないので今回はイヤピでしっかりと固定させるために手持ちのイヤピを色々試し最終的にAET06でしっかりと耳に収められ音質的にも納得することができました。個人的に付属のイヤピの開口部小さめが気に入っておりましたが残念です。(みぃねこは付属品イヤピではフィット感及び音質も本来のものと異なると感じる場合、手持ちのイヤピに交換し使用しています。)
これは低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)
※今回は付属ケーブルがネックでしたが
それではいよいよ音質についてまとめていきます。
今回の再生環境はFiiO M9、アンバランス直挿しです。
前回のMX2、T3同様に中価格帯イヤホン相応のDAPということでFiiO M9を基準としてレビューを行いますのでご容赦ください。尤もiPhone6sやShanling M0でも十分鳴らすことができましたが特に低音の良さを引き出し中高音の解像度を感じるためには相応のDAPを使用することをお勧めします。気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。
それでは実際に聴いてみます。
ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳をとじて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りイヤピはAET06 Mサイズ、ケーブルは付属品を使用しています。
箱出しで聴いてみた第一印象は「中高音がクリアで低音もしっかりしていて聴きやすい」でした。(もちろんスマホ付属品とは大違いです。)
箱出し直後は低音域が少し弱く感じたため今回も先に鳴らし込みを行い聴き込んでみました。
音場は普通からやや広めで音の分離感は良好で中音域の小さの音が埋もれずに聴こえます。
低音は量感は十分で適度な広がりもあり締りとキレがあり芯を感じます。重低音の表現力として深く沈み込みベースラインも追いやすい質の高さを感じます。
高音は煌びやかさと伸びを感じますが刺さりは感じませんし低音に埋もれることはありませんが、前に出すぎない絶妙のバランスです。シンバルも低価格帯のシャンではなくシャ~ンとちゃんと聴こえます。左右でパンした際のそれぞれの音の響きも十分に感じることができます。
中音はクリアでありながら存在感を示しボーカルを邪魔しません。
そのボーカルは近くも遠くもなく適度な距離感で聴きやすく音の中心にいて自然ななめらかさと伸びやかさがあります。
傾向を一言で云えばややドンシャリですが質の高い低音に支えられたクリアな中高音が心地よいバランスの音質であり音楽を楽しく聴くという目的に対し最適解を提示された
と感じます。
これは先日レビューしたMX2の全音域を明快に鳴らす中低音寄りのややドンシャリやT3のすっきりクリアな中高音域の中高音寄りのややドンシャリとは異なり一聴して非常にわかりやすく聴きやすい音質傾向です。これはそれらの様に特にこの音域を重視し誇張した音作りではなく音楽そのものを楽しく聴くってこういうことだよねと、ユーザーと共有しようとしている、そんな印象を持ちました。
EM2の音作りはMX2やT3とは違っていてそれらが良い悪いではなく、聴く方の嗜好を寧ろ万人向けにしたような音というと伝わりやすいでしょうか。
この様に低価格帯と異なり中価格帯ではバランスを重視したチューニングというのを感じられます。それ故に同じリスニング向けのイヤホンとしてMX2やT3では突き抜けてはいないながらも個性を感じることができましたがEM2では無個性と云えるようなチューニングと感じます。しかしながらこの無個性は聴いてみてつまらない音ということではなく、実は相当難しい、オールラウンドに使えるという最大の個性と云えるのではないでしょうか。
まとめとしてEM2は1BA+1DDのモデルでありながら多ドラハイブリッドを含めたA10000-U15000の中でも上位の仕上がりと云えそうなモデルでありとにかく音楽を楽しく聴きたい方にはお勧めできますし好評となるのではないでしょうか。一方とにかく音の派手さや強い個性を求める方からは評価が分かれることになりそうです。
さてSIMGOT EM2は最近の中価格帯中華イヤホンの中で音楽を楽しく聴くことができるイヤホンなのでお勧めできるとまとめました。
手持ちではお蔵入りしたイヤホンもありますが、いつかこれらのイヤホンも1BA+1DDイヤホン同様にレビューしてみたいと思います。それらも気長にお待ちいただけますと幸いです。
最後に、今回はA10K-U15K以下で買える中価格中華イヤホンの紹介となりました。現在amazonにて12,800円で予約受付中です。これまでの低価格帯と違い少々価格が上がり中価格帯の実売価格となりますが、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっていますのでちょっと良いイヤホンを中価格帯の中華イヤホンから購入を考えていて少しでも気になった方は安心確実の国内amazonでの購入も検討してみてくださいね。
EM2
以下、付属ケーブル、イヤピAET06 M使用、DAP M9
高音★★★★☆
中音★★★★★
低音★★★★★
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
あとがきとして、今回は1BA+1DDの中価格中華イヤホンの商品をレビューをしてみました。1BA+1DDの中価格中華イヤホンとしてはこれが4個目となります。
今後も気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ