みぃねこの備忘録

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Trn TA3 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格U10000帯で発売された1BA+2DDハイブリッドドライバモデルのTrn TA3についてレビューをまとめたいと思います。

国内amazonのHiFiGoで取扱があります。

 

 

AliExpressでも取扱があります。

 

ja.aliexpress.com

 

HiFiGoサイトはコチラ

TRN TA3 2DD+1BA Hybrid Knowles Balanced Armature In-Ear Monitors With 2.5/3.5/4.4 Swappable Connectorshifigo.com

 

 

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1. Trn TA3について 

Trn TA3は中価格A5000-U10000帯中華イヤホンの1BA+2DDハイブリッドドライバモデルとして今年3月に新発売されました。このTA3は前回レビューしたMT4の2DDにBAを1基追加したモデルとなります。MT4が今年2月の発売開始であり、TA3が3月発売とMT4のローンチから既に販売計画に合ったモデルと云えそうです。

近年のTrnは普通に音質の良いモデルを多く発売し中華イヤホンの認知度に貢献していると云えます。これで日本の代理店が取り扱うようになれば、国内メーカーの低価格ラインナップはかなり厳しいことになりそうです。

それもその筈。「普通に音が良い」というのはイヤホンという商品群の中では最も重視されるべき品質です。勿論、音質傾向には好みがあり、一定の音質水準を超えるとそこからは個人の嗜好に依って評価されます。その一定の水準を超えるというのが現在家電量販店等で購入できる国内メーカーの低価格帯U3K商品群では選択肢が少ないという事実です。それはやたら低音を盛り重低音と謳ったメーカーの多い事。これには理由があって、ワイヤレスイヤホンが主流のマーケットの中では有線イヤホンというマイナー商品群では致し方がないのかもしれません。そのマイナーな商品群のコアなファンが国内メーカーを見限り、中華イヤホンに目を向けるのも仕方が無い事なのだと思います。

さて、Trn TA3は今年先行して発売されたMT4のBA追加モデルと云え、MT4のデュアルダイナミックドライバにバランスドアーマチュア1基を加えた進化系、1BA+2DDハイブリッドドライバモデルです。MT4はデュアルダイナミックドライバモデルとして完成度が高く、バランスの良い高音質モデルでした。しかし、MT4はバランスを重視した結果、高音域が従来のTrnの高音域重視の音作りよりは大人しめでした。それをBAを1基追加することでそれを補う狙いが窺えます。MT4の大小異なるサイズ径と異なる二種のダイヤフラムのデュアルダイナミックドライバ構成に高音域を補完するBAを搭載した1BA+2DDハイブリッドドライバ構成のTA3はMT4の進化版として、否が応でも注目せざるを得ません。

 

※TA3のf特(メーカーHP抜粋)

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メーカー発表のf特を引用し音質を想定してみます。グラフからは高音域にピークがあり、8k付近に最大ピークがあります。そこから10k以降に掛けて緩やかに右下がりとなり振れ幅も広めに上下しています。音域全体を見ると中音域が凹みがありますが、フラットなf特性となっています。

 

※MT4のf特(メーカーHP抜粋)

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次に比較として同社の2DDデュアルドライバ構成のMT4のメーカー発表のf特を引用します。グラフからはやや高音域寄りにピークがあり、2k付近に最大ピークがあります。そこからは高音域に掛けて緩やかに右下がりとなり振れ幅も広めに上下しています。音域全体を見ると中音域が凹むよくあるドンシャリサウンドのf特性となっています。

実際にMT4を聴いてみると高音域に強いピークのないドンシャリ傾向のサウンドです。

 

※Trn Kirinのf特(メーカーHP抜粋)
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最後にTrn Kirinのf特です。以前のレビューでも触れた通り価格帯が一クラス上となりますが、それらと比べた時にKirinのf特は全体的に同傾向のf特の印象を受けます。しかしそれらとは高音域の最大ピークの発生する周波数が異なります。Kirinはステムノズルフィルタ交換が可能であり厳密には異なりますが、TA3やMT4の高音域のピークは10k手前にあり、Kirinは5k付近にあります。加えて、それを超えた10k-20kの間にピークを持ちます。より高音域を強調している様な印象を持ちますが、実際に聴き比べてみるとそれは一変します。全体の印象は似ていますが、高音域の繊細さと低音域の質感は流石の中価格A15000-U20000帯モデルと云えます。全体では高音やや強めのフラット寄りのドンシャリですが、解像感の高い高音域は華やかでありながらしつこさの無い繊細な音は耳障りの無い一クラス上の音質を感じられます。

 

これまでのレビューでも考察した通り、f特は出音の参考にはなりますがそれで音質が分る訳ではなく聴いてみて音質を評価することが一番だと個人的に考えています。そのため実際に聴いてみたKirinとMT4は勿論のこと、TA3の高音域が全然違うというのは想像に難しくありません。

 

さて、Trn TA3のスペックですが、中華イヤホンの中価格帯では最近はみかけない1BA+2DD多ドラハイブリッドドライバモデルです。数年前は多ドラハイブリッドドライバモデルが多く発売されていましたが、近年では中価格帯では少なくなりました。その理由として元々U10K帯で採用されるダイナミックドライバでは求める音質を達成できず、BA等によって補完するのがトレンドでした。しかし、近年のダイナミックドライバの性能が向上し下手に多ドラ化するよりも質の高いダイナミックドライバを採用しシングルダイナミックモデルとした方が結果として音質が良いという状況に変わってきました。それを後押ししたのがユーザーの目が肥えた為らぬ「耳が肥えた」こと。「この価格で片側Xドライバ搭載!」ではユーザーが見向きもしないという市場に変化しています。

さて、TA3のドライバには異なるサイズとダイヤフラム(振動膜)のダイナミックドライバ(DD)を片側に二基搭載。これはMT4と同様です。そして高音域の補完としてバランスドアーマチュア(BA)を一基搭載したトリプルドライバ構成のモデルです。前述の通り最近では珍しい組合せと云えます。超高音域から高音域用のBAにはKnowles製33518を採用。これはMT4と異なり追加されています。高音域から中高音域用のDDには直径6mmのチタンコーティング振動膜を採用したダイナミックドライバを。これもMT4とは異なるドライバ変更しています。中低音~低音域用には直径10mmのベリリウムコーティング振動膜に加え、二重磁気のダイナミックドライバを採用しています。これはMT4と同じです。お気づきの通り、MT4にBAを追加しただけではなく、高音~中高音域用6mm径DDが変更し、追加したBAにはKnowles製33518を搭載するという結構力を入れたアップグレードと云えます。

複数ドライバ機で最も大事なことですが、異なる種類や複数のドライバを搭載するモデルでは各ドライバの担当する音域が重なるクロスオーバーチューニングが重要です。低価格帯はもとより、中価格帯のモデルでも曲によってつながりにやや不自然さを感じる場合があります。前述の通りTA3はBAと6mm小径DDと10mm大径DDのトリプルドライバ構成ですが、実質的には10mm径DDがフルレンジを担い、6mm径DDが中高音域を。BAが高音域より上の音域を補完する構成です。そのため鳴らし始めは曲にも依りますが高音域と低音域が独立して鳴っているようなつながりの不自然さを感じられる事があるのが気になります。特に低音が広がる強めの曲で感じやすいです。これは各ドライバがちゃんと仕事をしているという裏返しでもありますし、多くの場合鳴らし込むと不自然さが薄くなり解消します。

次にイヤホン本体にはステムノズルが金属製。シェル本体に樹脂製、フェイスプレートには亜鉛合金を採用し高級感のある外観としています。

最後に付属ケーブルです。高品質銀メッキ無酸素銅(OFC)線とOFC線の混合4芯編込み線を採用。加えてプレイヤー側はプラグ交換システム(PCS)のモデルです。

元々中華ケーブルメーカーの利点を活かしたものとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしているところもありますが、付属として高品質線材に加えPCSを採用している豪華仕様となります。

 

※宜しければ過去記事もご参考ください

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Trn TA3の納期として今回HiFiGoでオーダー、1週間強で届きました。現在(2023/3/18)は国内amazonでprime扱いとなっています。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なくほぼ回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販のリスクです。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Trn TA3実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングは黒を基調とした商品名とイヤホンイラストがプリントされたスリーブタイプの化粧箱です。

 

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スリーブを外すと内箱にはイヤホンイラスト付きの黒地の内蓋があります。

 

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内蓋を外すと内箱上側の黒地の台座にイヤホンが収納されています。

下側には付属品が収納された小箱があります。

 

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付属品は2種のシリコンイヤーピースS、M、Lの2セットに加えTrn新型イヤーピースT-earのMサイズ黒軸1ペアの計3種。他にはPCSケーブルとその交換用プラグ3.5mm、4.4mm、2.5mmの3種です。中価格A5,000-U10000帯として十分な付属品となります。

強いて云えば上位のVX ProやKirinではTrnの金属ケースも付属しますが、中価格A10000との差別化がされています。

 

次にイヤホン本体を見ていきます。

 

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ビルドクオリティですが、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせません。低価格帯でよくあるシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションは黒色のみ。

 

次にケーブルをみていきます。

 

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付属ケーブルは高品質銀メッキ無酸素銅(OFC)線とOFC線の混合4芯編込み線を採用。加えてプレイヤー側はプラグ交換システム(PCS)対応。イヤホン側は丸型ハウジングのKZ-Cタイプです。


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プレイヤー側コネクタはI字タイプでプラグ交換システム(PCS)対応。交換用プラグが三種付属します。

この付属ケーブルは耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。絡まり難くしなやかなものとなり中価格帯に付属するケーブルの中でも悪い印象はありません。殆ど全てのDAP等のプレーヤーにプラグ交換によって対応しますので、そのまま使用できますし茶色と銀色の混合色ケーブルは被膜の色味もシェル本体にマッチしています。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

続いて他機種とのサイズ感や造形の比較です。

 

※画像左からTruthear x Crinacle ZERO、Trn TA3、Trn MT4

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Trn TA3は前回レビューしたMT4で触れた通りMT4やXuanWuと同じシェルです。フェイスプレートのデザイン違いだけで比較的オーソドックスな造形です。比較用のTruthear x Crinacle ZEROが割と大柄な造形のため、TA3の一般的な造形からはサイズ感は大きく感じますが、大きくて耳に持て余すようなことはありません。TA3もMT4もZEROもXuanWu同様に比較的軽量となり、装着時にはその装着感の良さもあり殆ど重量を感じません。

また、ZEROはステムノズル一体型オール樹脂シェルですが、TA3やMT4はXuanWu同様にステムノズルとフェイスプレートが金属の本体は樹脂シェルです。

ステムノズルの長さや太さと角度はTA3とMT4とXuanWuが同じ。ZEROが太く長め。角度はやや起きています。

また、ステムノズル部には三機種全てにフィルターがあり異物混入による故障を防げます。ZEROとTA3とMT4は金属フィルタですが、XuanWuでは繊維フィルタを採用しそれらの金属フィルタと異なり音質に影響があるタイプです。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからは三機種共にシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、装着感はステムノズルの長さや太さに影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。

 

最後に付属イヤーピースです。

 

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付属イヤーピースは音質の好みで使い分け可能な3種のタイプです。注目は新型T-ear Tipsイヤピです。某メーカーのイヤピを彷彿させるもの。傘はしっとりと柔らかい中にコシもありフィット感は良好です。音質的には高音域をやや減衰させるタイプです。

黒傘はく高音と低音をしっかりさせるバランスタイプ。白傘は開口部が大きく、中高音域をクリアにするタイプです。

音質的には好みにもよると思いますが、白傘タイプが個人的にはしっくりきました。このイヤーピースを私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしています。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Trn TA3音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属白 Mサイズ、付属ケーブル4.4mmプラグです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「クリアで自然な中高音域としっかりと鳴る低音域のドンシャリ」でした。

箱だしでは高音域と低音域がやや不自然に分離した音で遠い高音域と近くて膨らむ低音は緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音は締まった音になり高音域も自然で定位に不自然さがなくなりました。

 

音場

普通からやや広め。前後の奥行も感じられ、左右の広さもあり、立体的な空間を感じられます。

 

高音域

僅かに誇張された強さ量で鳴りますが、よくある低価格のBAの様な一音一音が強く鳴る印象はなく、煌びやかで明るい華やかな鳴り方は、誇張された華やかさに感じる事のない鳴り方です。特に小さな音が埋もれずに耳に届きます。クリアな見通しの良い空間に上まで伸びる感じは、高音の描写や表現力にこだわりのある方も納得できるのでは。一方で刺激的な高音域を求める方にはやはり物足りないかもしれません。誇張を感じない自然に近い煌びやかさは響きや余韻も感じられますが、瞬発的なキレは程々。超高音域までの伸びも良好です。全体的に音圧は大きくありませんが、小さな音を見逃さずに統制された整った音の高音域は、立体感を感じられます。

 

中音域

空間は普通からやや広めと特筆すべきものはありませんが、空間の見通しの良さがあります。空間に響く華やかに鳴る音は、凹みを感じ難く音数の多い曲でもごちゃつきを感じません。また、多ドラの音が重なり中心に集まる団子感は感じられず分離の良さが整理された空間をに響く音を楽しめます。全体的に音の立ち上がりが良いキレのある音は音の強弱と大小を美麗に描写してくれます。

ボーカルはクリアで自然な位置から聴かせてくれ、僅かにドライ気味なものの息遣いを感じられ熱っぽさを感じられます。

 

低音域

量感は適度に抑えられ、余韻も感じられますが低く広がるような感じではありません。それでもモニター的なタイトな面白みのない音ではなく適度に広がり芯のある強さのある音。全体的な印象として締ったキレのある音は強弱や音階を描写します。ベースラインは追いやすいが、前に出すぎる事はありませんのでボーカルを邪魔しません。重低音の沈み込みはそれほど深さを感じませんが、芯の強さを感じます。

 

出音のバランス

一言で云えばしつこさの無い華やさのある中高音寄りの弱ドンシャリ。出音は中高音を中心に低音は適度な強さのある万人受けするバランスです。中高音をクリアに聴かせてくれるフラット寄りの弱ドンシャリバランスという印象です。

 

高音の華やかさはMT4に比べ上までの伸びや小さな音を埋もれさせずに煌びやかに表現してくれる印象です。そういう意味では僅かに誇張された音であり自然な音ではないのかもしれませんが、クリアな空間も相まって自然に近い強さで鳴る音は質感が高く好感を持ちます。低音は最近のTrnの中高音域をマスクしない見通しの良さを確保した締まりのあるタイトに鳴るバランス。そのため比較的刺激の少ない音に物足りなさを感じられるかもしれません。MT4と比較すれば僅かに誇張することで高音域は煌びやかで響きも良く華やかに鳴り解像感を高く感じますが、XuanWuの様に不自然な金属の響きだけが耳に残ったり、MT4の様に限界を感じる音ではありません。寧ろKirinに近い完成度という印象です。尤も、Kirinとの違いはその音場と中高音域の解像感です。Kirinの立体感のある音場と音の輪郭の掴みやすさは一歩譲ります。一方でMT4との比較では僅かに誇張された高音域は自然な音ではないかもしれないけど、MT4では地味な音に聞こえてしまった高音域はTA3では美麗さのある響きをクリアな空間に広がります。TA3くらいの誇張が全音域でバランスの良い音に感じられ解像感と音楽性を両立できていると感じます。

またMT4では、自然な高音域が存在感は大きくはないものの、ゆったりとした曲を聴く際には騒がしさの無い心地の良い高音域を楽しめますが、TA3ではゆったりとした曲でもアップテンポな曲でも心地の良い高音域を楽しめます。これはケーブルの違いも無視できません。TA3では高純度の太い線材を採用しており低価格帯付属ケーブルとは一線を画します。MT4で感じた空間のざらつきがTA3では感じられず、澄んだ空間を感じられますので、前述の高音域の小さな音がかき消されずに耳に届くのも合点がいきます。

 

同価格帯の同社ST5との比較では、ST5は高音に強調感がある中低音寄りの弱ドンシャリの出音は音楽を楽しく聴く事ができるリスニングイヤホンでした。ベリリウムコーティングの振動膜DDが、中高音のごちゃつきを改善し従来のDDよりも低音の強さは抑えられ、全体の出音が最新世代のTrnの音は各音域のバランスが良く、特に統制された高音は刺激的な音とは一線を画す現在主流の音でした。これはTA3の高音と低音よりもやや強めに鳴るためにTA3よりはドンシャリ寄り。TA3が高級機にあるようなフラット寄り傾向ということを感じられます。どちらも良い音ですので個人の嗜好で選択するレベルと云えます。

XuanWuとの比較ではXuanWuが少々やり過ぎ感のある高音域のために、TA3の高音域は自然な音に感じられると思います。XuanWuの高音はST5よりも強めですのでそれぞれの嗜好によって好き嫌いが分かれそうです。

TA3では、MT4のネガティブだった地味で線の細い高音域をBAによって上手く補完し物足りなさを感じない質感の高い高音域に進化しただけでなく、実は中高音域の6mm径DDがチタンコーティングダイヤフラムに進化したことが、高音域全体の質感向上に寄与していることを窺えました。

 

※以前の同社ST5のレビューもご参考ください

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まとめるとTrn TA3はTrnの普通に良い音を重視した良バランスの音。高音域をこれまでのやや誇張し強めに鳴らし解像感を得ていたところからレベルアップを感じられました。また、小径DDをMT4からグレードアップすることで小径DDがこれまでこのクラスの多ドラで主流だった中高音域を中華BAが担った時の荒さを改善し、数年前からの進化著しいDDとのハイブリッドドライバ構成が自然な音を鳴らす事ができる中価格U10000帯でもトップクラスの高音質と云えそうです。

一方、XuanWuで採用されたBAとSPDのハイブリッドドライバはSPDの進化に期待し、これからも楽しみなドライバと云えそうです。尤も、XuanWuの場合、BAの活用の仕方に調整の余地がありそうだというのは以前お話しした通りです。

なお、TA3はリスニング用途としてのナチュラルなバランスであり音楽を分析的に聴きたい方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   TA3 ≧ ST5 ≧ XuanWu (質感)

中音   TA3 ≧ XuanWu ≧ ST5 (質感)

低音   ST5 ≧ TA3 ≧ XuanWu (質感)

ボーカル TA3 ≧ ST5 ≧ XuanWu (質感)

 

 

4. Trn TA3の総評

Trn TA3はTrnらしい良バランスの高音質は同価格帯でもトップクラスと云えます。中価格U10000帯中華イヤホンでは最近は数の少ない多ドラハイブリッドドライバモデルとなりますが、下手にドライバを多く使用せずに少数精鋭としながら仕上げの付属ケーブルは完成度の高さを感じられます。尤もその高音質は相対評価であり、上には上がいる訳ですので、絶対値ではありません。それでもTrnの極端な音質傾向ではない「普通に良い音」は安心してお勧めできるメーカーと云えると思います。

TA3はMT4はTrnらしいアプローチで音質をブラッシュアップした高音質モデルと云えます。

 

最後に、今回は今年3月に発売された低価格A5000-U10000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年3月18日)はHiFiGoで7,000円台で販売し、国内amazonではprime扱いの7,000円台後半となっています。海外通販でもHiFiGoの発送は早く届くのも早い印象があります。これまでの中華イヤホンの中では安価な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、低価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

TA3

以下、付属ケーブル4.4mmプラグ、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ 

※☆0.51.0

 

MT4

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ (高音好きの方★4)

※☆0.51.0

 

ST5

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

XuanWu

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★☆
分離★★★★☆
お勧め度★★★★★ (高音強調が苦手の方★4)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの低価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品が出ればチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ