こんにちは。
今回は中華イヤホンの複数BAモデルのレビュー編として中価格帯で発売されているKZ AS12についてレビューをまとめたいと思います。
今回は国内amazonのHiFiHear(@Qianqian_HRcase)から購入しています。
※以下、amazon販売ページリンク
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07TLWBXGT/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o02_s00?ie=UTF8&psc=1
現在HiFiHearでは在庫切れで取り扱いが無いようです (2019年12月7日)。
他社では未だあるようですね。
AliExpressでも有名どころのストアであれば取り扱いがありますし、その中でもNiceHCK Audio Store(@hckexin,@NiceHCK_Audio)は安心して購入できます。
KZ AS12はKZ社の複数BAイヤホンの最新モデルです。と、云えば聞こえは良いのですが、今年夏ごろのモデルです。その前今年春にAS16という片側8BA搭載モデルが発売されており、更にAS16の前にはAS10という片側5BAモデルが昨年夏ごろ発売しています。
つまり、最初が昨年片側5BA、次に今年春片側8BA、最も新しいのが今年夏片側6BAのAS12となります。
KZの複数BA搭載機としては最新モデルですし、AS10とAS16のフィードバックモデルとしてもっと話題に挙がっても良さそうなものですが、既に忘れられている存在…。
それもその筈、この複数BAを搭載したASシリーズはKZ社の兄弟ブランドCCA社からも今年初めにKZ社よりも先行して片側8BAを搭載したC16を皮切りに、片側5BAを搭載したA10が今年6月頃に発売され、更に他社もTRIPWIN TP10やKBEAR KB10も同じ片側5BAを搭載するモデルとしてほぼ同じ時期に挙って発売され食傷気味。
音質もそれぞれ少しづつ特徴を変えていますが、一括りにほぼ中高音はクリアで低音控えめの中高音寄りという音質傾向でした。そのためAS10の中低音寄りとは異なり、その系譜のモデルではありますが、直系とは云い難く趣向が違うモデルといえそうです。
そのため片側5BAモデルだけでもどれを選べばよいのかユーザーも絞り切れずに中には全て購入して比較する猛者もいたようですが、中高音がクリアで聴きやすかったものの万人受けするモデルとはいえず、泣かず飛ばすという憂き目にあったようです。
そんな中、最後発の片側6BAを搭載したAS10とAS16のフィードバックモデルと云えるAS12でしたが、同時期に発売されたKZ ZSXやCCA C12が5BA+1DDのドライバ構成で話題になり今更感のある片側6BAのドライバ構成だった本機はユーザーから敬遠され陰に隠れてしまった印象があります。
AS12はZSXやC12よりも少しだけ高価な販売価格が設定されていて国内amazonでは7,000円台後半でセラーによってクーポンで6,000円台で購入できますが、そのドライバ構成からは十分に安価な販売価格です。その理由は低域用BAはKZオリジナルと云えどもやはり中/高音域用のBAよりは高価となるため、低域にDDを搭載するZSXやC12よりも価格が上がってしまいますね。
そんなAS12を何故に購入したのかと云えば、以前C12とZSXをレビューし比較していたこともあり今回のAS12は「片側6ドライバモデルのハイブリッド機と複数BA機を比較したいと考えたから」となります。
そして、なによりも巷にはAS12のレビューが少ない。一部の評価ではAS12は好意的な評価が多くハズレは無いだろうと考えており、先述した低域のドライバはBAとDDでどちらが優れているのか単純に興味がありまとめてみたいから、ですね(笑)。
※CCA C12やKZ ZSXの過去記事もよろしければご参考ください
いつも通り前置きが長くなりましたが、そんな訳で何かと比較され話題となる中価格帯の複数BA搭載モデル、KZ AS12を同じ片側6ドライバを搭載した多ドラハイブリッドモデル、CCA C12とKZ ZSXとの違いを交えながら、レビューを纏めていきたいと思います。
さてKZ AS12はKZ AS16同様にシェル本体を樹脂製のシェルを採用しステムノズルとフェイスプレートが金属でZSXやC12と同じ構成です。C12は比較的オーソドックスなデザインでZSXは特徴的なフェイスプレートのデザインが採用されていますが、AS12ではAS16の流れを酌むデザインを採用しています。まあASシリーズとは真にこのことで共通の比較的大柄な樹脂シェルに特徴的なFPのデザインは既視感がありますね。
AS12のスペックは先述の通りZSXやC12の5BA+1DDハイブリッドと異なり低域用ドライバをDDではなくBAを搭載したオールBAの複数BA機です。最近では中価格帯でも全く珍しくなく中華の凄さですね。一方でBAとDDを搭載するハイブリッドモデルも発売されており、ユーザーが好みに応じて選択できるというのも中華の素晴らしさでもあります。
このAS12は片側に6ドライバが搭載されていて、その6BAドライバはKZオリジナルの新型30012デュアル(2BA)が高音域を。29689デュアル(2BA)が中音域を担当しており、低音域を22955デュアル(2BA)が担うことで3way方式を採用しています。そのためCCA A10等の5BAモデルの低域強化版又はAS16の高域BAを新型で補う形とした真にフィードバックモデルと云えます。
※A10、TP10、KB10の過去記事もよろしければご参考ください
そしてZSXやC12では高音域1BA+中音域4BA+低音域1DDと中音域に厚みを持たせていて、実際中音域の表現力は高く低音域もDDによる量感と力強さがありました。
AS12ではオールBA構成としそれらを高、中、低音域を各2BAの3way方式とし、これまで世の中に送り出された中価格中華複数BAイヤホンのように各ドライバが担当する音域が重なるクロスオーバーのチューニングポイントを活用できるかが重要となります。このチューニングポイント、経験則を活かしたチューニング次第で「当り」か「外れ」という評価に繋がってくるといえますね。
KZ AS12の納期としては流石の国内amazonの当日発送、翌日配達です。AliExpressにてオーダーした場合はチャイナポストを選択しても早くても約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間かかりますし、万が一の不良の際に返品交換に結構な手間と時間がかかります。
そんな訳で一般的にAliExpressでの購入は国内で購入した場合より安いが届くの少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。
それでは、早速KZ AS12の実機レビューを以下、まとめていきます。
パッケージングは黒を基調としたKZ社の豪華版の黒箱化粧箱です。
箱の蓋を開くと黒地の内装の台座にイヤホンが収納され豪華版のプレートも鎮座しています。またイヤホンが収納された台座を取り外すと、ケーブル等の付属品が箱の底に入っています。この辺りはいつも通りのKZの化粧箱ですね。
付属品はKZのいつものシリコンイヤーピースがS、M、Lの3種各1セットが付属します。その内、シリコンイヤピMサイズが本体取付け済みで、他にはケーブルです。A5K-U10Kの中価格帯としては少々さみしい付属品ですが、個人的にいつもの割切感は嫌いではないです。
ビルドクオリティですが、KZ AS12は中華イヤホンで心配されるような各所の仕上りに雑なところを感じません。KZと云えば仕上がりの雑さ等、多少のアレはあっても価格が安いのに音が良いという評判は今は昔ですね。安心して購入でき、お勧めできると思います。
カラーバリエーションは黒色(FP金色)と青(緑)色(FP銀色)の2種類あり、みぃねこは青色を選択しています。
付属ケーブルはいつものKZに付属する茶色の編込みタイプが採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプで、イヤホン側はKZ-Cタイプ(2ピン)でもちろんKZ極性(上がプラス)です。この付属ケーブルは耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に絡まりにくくしなやかなものとなりますが、中価格帯に付属するケーブルとして力不足の印象があるものの、そのまま使用できますし落ち着いた色合いのケーブルが本体色との一体感があり普段使いも可能ですね。
※画像左からAS10、AS12、AS06
AS12は流石にASシリーズですのでAS10やAS06と外観上の違いはフェイズプレートとステムノズルの違いです。先述の通りAS12だけステムノズルに金属製が採用されています。シェル本体の大きさはASシリーズとしてはほぼ一緒。フェイズプレートのデザイン等による厚みが異なるのみです。
これらのデザインは賛否あると思いますが一番のネックはシェル本体がZSXやC12等のハイブリモデルと比べて結構大柄になるところです。そしてそれらはやはり耳への装着感への影響は大きく人によって不満を感じるかもしれませんね。ただしシェル自体は大柄なシェルを感じさせない装着感の良さは好感が持てますね。次にステムノズルもASシリーズとしてほぼ一緒。太さや長さの違いを殆ど感じません。
また、このASシリーズ3機種ではAS12のみステムノズル先端端面にメッシュフィルターが装備されています。(AS06、AS10はステムノズル内、奥の方にある様子)
そして、シェル本体の形状からは3機種ともにシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要で、特にイヤホン側ケーブルコネクタ部はAS12のみKZ-C対応の凸があるタイプです。手持ちのリケーブル資産を活用する際には注意が必要です。
AS12はステムノズルが太めのため、耳へは付属の本体装着済みイヤーピースでは上手く位置を合わせ難く少々抜け気味となったため、いつものAET07に交換し奥の方に栓をするように装着ではなく、やや浅めに蓋をするように装着した形がみぃねこは一番しっくりきました(ASシリーズではこれで対応しています)。低~中価格帯では毎度付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じることが多くありますので手持ちのイヤピと交換しています。まあ、この辺りは個人差があるかもしれませんね。
このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)
なお付属ケーブルも片側6BAの性能を活かすためにYYX4762、8芯銀メッキ線へリケーブルしています。
それではいよいよ音質についてまとめていきます。
今回の再生環境はFiiO M9、直挿しアンバランス接続です。
これまで通り中価格帯はM9を基準としてレビューを行います。もちろんShanling M0やiPhone6sでも鳴らすことができましたが、中高音域の解像感や低音域の表現力で本来の性能を発揮できないと感じましたのでご容赦ください。
低価格帯のイヤホンの場合でその違いが気になる方は以前の「Shanling M0とiPhone 6sをDAPとして比較」をご覧ください。
それでは実際に聴いてみます。
ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳をとじて、倖田來未/Moon Crying。高音/低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。
先述の通りイヤピはAET07 Mサイズへ。イヤホンの本領を発揮させる為に付属ケーブルからYYX4762にリケーブルしています。
箱出しで聴いてみた第一印象は「クリアな中高音と低音は強調され過ぎない適度なバランスで聴きやすい」でした。(もちろんスマホ付属品とは大違いです)
こちらも箱出し直後は低音が少なめでボワつきも感じたため今回も先に鳴らし込みを行っています。
音場は左右の音に広がりがあり空間が広めに感じます。
分離は良好で解像感も良好ですが音数の多い曲では中高音域にやや重なりを感じます。
低音の量感は控えめですが少ない訳ではなく十分で広がりも適度に感じ、締まりとキレは普通程度。BAの低音としては十分な印象です。
重低音は沈み込みはそれ程深さを感じませんが十分な強さがあり、ベースラインは追いやすい。
高音は煌びやかさがあり華やかさもありますが、尖りはなく刺さりは抑えられている。クリアに聴こえ伸びも普通です。
中音は凹みを感じずクリアで、ボーカルの周りで華やかさがあり存在感は十分。
ボーカルは自然な位置にあり、中音に埋もれずに聴きやすい。
一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリ。
AS10とは異なり中高音をすっきりさせ高音の華やかさがあります。
C12やZSXとも異なる印象ですが、強いて云えばA10の軽すぎる低音域をちゃんと低音を感じられるように調整しなおしたと云えば伝わりやすいでしょうか。
AS12はZSXのように音場の広さを感じられます。C12の音場はやや狭くかんじるものの中音域にフォーカスされた音づくりとは異なります。
AS12は音場の広く音の響きは感じられますが、ZSX程の低音ではないためどうしてもあっさりしすぎるという違いがあります。ZSXのレビューでも書きましたが、中音域では特にボーカルの聴こえ方、感じ方に違いがでてきます。ZSXのボーカルは空間の広さも相まって自然な位置にありその少し離れた場所で演奏されているように感じられ、AS12もこの傾向があります。これはC12のような音場は広くないもののボーカルが近くに感じる傾向とは異なります。なんというかKZらしい派手さはあり華やかさはあるが音楽の深みが感じ難い、そんな印象を受けます。
次に低音域ですが、やはりZSXやC12のようなDDの深く強い、そしてキレのある音には敵いませんがBAの低音としては量感が控えめなものの十分に感じることができます。単純に低音を比較した場合、C12の方が強く感じ、ZSX、AS12の順となりますが、中価格のU10,000以下で搭載する安価なBAの低音では分が悪そうですね。
その代わりに高音域は音場の広さはもとより、ZSXやC12よりも華やかさがあり綺麗に整っていて音場の近さから相対的にC12が一番華やかさを感じますが、AS12はそれよりもマイルドながらも綺麗に感じられます。
この様にKZ AS12ではZSXと同様に音場の広さを感じながらC12やZSXのように中高音、特に高音域をより綺麗に聴かせてくれる音づくりで、A10等の中高音寄りのバランスを低音域を改善させることで高中低音域全ての音域バランスを改善させより聴きやすくした音質傾向とした、AS10、AS16を経て、A10(CCA)等をフィードバックさせた進化版としてのモデルと云えそうですね。
まとめとして、KZ AS12はKZの複数BAモデルにおける最新且つ最適なバランスの現時点で最善のモデルとして十分満足できるモデルと云える仕上がりで、人によってはAS10の中低音寄りに伴う中音域の籠りに感じる部分が苦手で、AS16程の高音域の派手さは苦手な方には本当にお勧めできるのではないでしょうか。
ですが、この価格帯にはやや安価でZSXやC12という多ドラハイブリッドの優良機が存在し、それらとの比較ではZSXが最もKZサウンドとしての完成形と云え、DDの低音が苦手又は、BAの低音が好みという方にはAS12を選択いただく方が間違いないと思います。一方、今回の比較対象としたCCA C12はボーカルをフォーカスしたリスニング用途にお勧めで、みぃねこはKZ ZSXの音場の広さや雰囲気の良さを聴いた今でもC12の方を推していますけど(笑)。
尤もAS12やZSXとC12のリスニング用途としてのバランスの良さは中華イヤホンには高音域の刺激的な強さや低音の量が多い強ドンシャリを求めるという方には物足りないと感じ評価が分かれてしまうかも知れません。
蛇足ですが、以前のレビューでも触れていますが単純にドライバ数を増やす足し算では未だ限界があります。残念ながらそれをBAオンリーの低~中価格帯複数ドライバ搭載モデルが証明しています。それでも次々と投入される中華の新モデルが我々を楽しませてくれており、今後も期待していきたいですね。
高音 AS12 ≧ C12 ≧ ZSX
中音 C12 ≧ ZSX ≧ AS12
低音 C12 ≧ ZSX ≧ AS12
ボーカル C12 ≧ ZSX ≧ AS12
音場 ZSX ≧ AS12 ≧ C12
最後に、今回は国内amazonのセールなどで実売6,000円台で購入できる中価格帯中華イヤホンの紹介となりました。現在(2019年12月7日)もamazonで取り扱いがありますし、AliExpressではフォロワー割等で5,000円台前半とお求め易い価格ですが、その入手性に少々難があります。とはいえこれまでの中価格中華イヤホンの中でも安価な実売価格となりますし、その音質を含めクオリティは日々進化を感じられ十分満足できる内容となっていますので低~中価格中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になった方は安心確実なamazonで。新商品を少しでも早く入手したい、少しでも安い方が良い方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。
AS12
以下、ケーブルYYX4762、イヤピAET07 M使用、DAP M9
高音★★★★☆
中音★★★★
低音★★★★
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★☆
※☆0.5、★1.0
ZSX
以下、ケーブルYYX4732、イヤピAET07 M使用、DAP M9
高音★★★★☆
中音★★★★
低音★★★★☆
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
C12
以下、ケーブルYYX4761、イヤピAET07 M使用、DAP M9
高音★★★★☆
中音★★★★☆
低音★★★★☆
音場★★★☆
分離★★★★
お勧め度★★★★★
※☆0.5、★1.0
AS10
以下、ケーブルYYX4762、イヤピAET07 M使用、DAP M9
高音★★★☆
中音★★★★☆
低音★★★★☆
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★☆ (中音の厚みが欲しい方★5)
※☆0.5、★1.0
あとがきとして、今回は複数BA搭載モデルの中価格中華イヤホンの新商品のレビューを多ドラハイブリッドモデルの兄弟機と併せて比較をまとめてみました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですね。今後も低価格を中心に、複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。
また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ
※2019/12/13 誤記修正